これからの制作ワークフローに必要なデバイスを求めて

4K収録が一般化しつつあるなか、ファイル容量の増加や記録デバイスの信頼性、ワークフローの効率化などが課題となっている。記録デバイスは大容量かつ高速なメモリーが開発され、収録での圧縮コーデックも効率の良いものを採用し、単純にHDの4倍というわけではないものの、HDより大容量かつ高速転送が必要なことには変わりはない。

番組制作では現状HDが基準とはいえ、番宣や衛星放送のために収録は4Kで行うことも増えているという。そこで今回、4Kワークフローにおける記録デバイスについて、数多くのテレビ番組を手掛けるマリモレコーズの江夏由洋氏にお話をお伺いした。

4K制作ワークフローに革命が起きたプロフェッショナルRAID

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マリモレコーズの江夏由洋氏

江夏氏:一般の番組はHD収録ですが、4Kでの収録も増えています。予告編を4Kでとか、イベントで使うとか、市販コンテンツとしてなど、色々です。今、ソニーのPXW-FS7を2台とα6300、α7R II、α7S II、4Kアクションカムで旅番組を毎週制作していますが、全編撮影は4Kです。

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Thunderbolt 2とUSB 3.0の2つのインターフェイスに対応。ファンの音も静かだ

江夏氏:実は今回の4K収録が実現できたのは、ソニーのプロフェッショナルRAIDのおかげで、この商品がなければ今回の番組ロケ自体が成り立ちませんでした。

このRAIDはThunderbolt 2とUSB 3.0の2つのインターフェイスに対応していて、転送レートも最大で440MB/sあり、バックアップの時間も従来機の1/3程度です。現場で撮影した素材をコピーしたり、プレビューはもちろんですが、簡単な編集などもコマ落ちすることなく行うことができました。

メモリーカードリーダーを複数ぶら下げて(接続して)おいて、その日収録したメモリーカードから一気にコピーすることで、極めて短時間でコピーが終了します。その分スタッフの休息(睡眠)やほかの作業を行うことができるので、とても効率的です。だいたい1日(1回)の収録で10枚以上のXQDメモリーカード、4枚程度のSDカードを使いますが、数時間でコピーが完了します。

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その日収録したメモリーカードから一気にコピーができ、短時間でコピーが終了

江夏氏:こうしてコピーした素材は、その場でプレビューして簡単な編集もその場で行います。編集とかの作業は主にディレクターが行いますが、自分で持ち込んだMacなども使用します。旅番組の場合は、ドラマみたいにきっちりとした台本があって撮影することがあまりなく、たまたまいい画が撮れたから入れようとか、だったら明日はこういう画を撮っておきたいなどの作り込みがすぐにできるので、こうした番組にはもってこいですね。

この時にディレクターの編集ソフトと本編で使う編集ソフトを同じ製品にしておいて、プロジェクトファイルも一緒に保存しておくとすごく効率が良いです。本編では基本的にCMの挿入の位置とか全体の尺を整えるという作業に集中できますからね。

それと本編でもこのRAIDをそのまま使うようにしています。インジェストしなくても充分な転送レートがあるので、最後の最後まで使うことで、インジェストやコピーなどで無駄な時間を使わなくても済むのですごく効率が良いです。

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江夏氏:こういう使い方をする場合、可搬性とかも重要なポイントになります。内部だけでなく外装にも衝撃吸収のためのゴムバンパーがあり、倒したり、ちょっとぶつけたりしても安心です。もちろん、充分注意して扱っていますが、戦場のような収録現場では何があるかわかりませんからね。

無駄なコピー作業とかを一切行わずに済みますし、簡単に持ち運びもできるので、必要な場所に持っていって接続するだけでどこでも作業ができちゃいます。昔と違ってデスクトップのPCじゃないと編集できない時代ではないので、従来のワークフローを引きずる必要はないと思います。もちろんその背景にはこうした機材があってこそという話になりますけどね。

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撮影の現場は戦場のような状況になることも。そうした現場では機能性能以外にも重要なことがある

江夏氏:こうしたワークフローで使えるRAIDは限られた製品しかありません。たぶん3機種くらいじゃないでしょうか。その中でもソニーのプロフェッショナルRAIDは、編集を含めたワークフローにおいて一気通貫で使用でき、現場に持ち出せる信頼性や可搬性を備えているので、このような使い方にピッタリでした。4TBのPSZ-RA4Tと6TBのPSZ-RA6Tの2機種がありますが、今回は6TBを使いました。というのは、素材からプロジェクトファイルまで全てを入れるとちょうどよい容量なんです。

今回の番組は1本30分で、2日間ほどで2本分の撮影を行います。2日間で2TB程度のファイルサイズとなり、PSZ-RA6Tの1台に2回分すべてを入れておくことができます。最近はメジャーなタレントさんとかだとスケジュール的に難しいことが多いです。その上、空撮とか水中撮影もありますしね。

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旅番組で使用したFS7とα6300。α6300はロケハンや水中撮影などにも使用した

江夏氏:同旅番組では、空撮(ドローン)や水中撮影(α6300)も行いました。スケジュール的にはタイトですが、それを口実に映像表現であまり妥協したくありません。旅番組だと壮大な自然を空撮で撮ることでうまく表現できるんじゃないかと。そうしたこともドローンなどの新たな機材が出てきたので実現できるようになったといえるでしょうね。

ロケ現場でも安心して使える頑丈な業務用SDカード

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ソニーの業務用SDカードは、モールド構造で頑丈な作りになっている。防水防塵対応なので、どんな環境でも安心して使用可能だ

江夏氏:プロの収録現場でも、映像表現のためにSDカードを使用する機器を使うことが増えています。今回もα6300の記録はSDメモリーを使用しました。今までは他社製品を使用していましたが、ソニーの業務用SDカード「2SF-64P」が発売となったので、このSDカードを使用しました。

2SF-64Pはモールド構造になっていて、非常に丈夫で防塵防水仕様になっているそうです。耐久性が高いというのは、他社のSDカードと一線を画していて、SDカードの形態をとってはいますが、これはもう“業務用メモリーカード”だと思います。時間との闘いであるロケ現場にはメディアの信頼性は大前提なので、この商品はとても安心です。現場では細心の注意を払っていても何があるかわかりませんからね。

タイトなスケジュールだと撮り直しもきかず、うっかり海に落としたなどのアクシデントがあっても大丈夫という安心感はすごく重要ですよね。もちろん、そんなことは撮影中にありませんでしたが。

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現場的には馴染みのあるDVテープのケースと同じサイズ。ケースに収録内容などのメモを入れておける

江夏氏:もうひとつ、ソニーのカメラにソニーのメモリーという、なんかベタですがそういう安心感もあります。SDメモリーカードに限りませんが、カメラメーカーは動作確認済みのメモリーをWebとかで公開しています。これは確認済みのメモリー以外はなにかあっても保証しませんということにもなると思います。たぶん過去に問題があったのでしょうか。そういう意味でも同じメーカーということは安心感があります。

メモリーとメモリーIOデバイス、ドライバーの組み合わせで転送レートが違ってくるので、同じスピードクラスでも組み合わせによって転送レートに違いがあるようです。ソニーの業務用SDカードは自社のカメラで検証済みなので、安心して使えます。あと、メモリーが入っているケースはDVテープのケースと同じサイズになっていて、現場的には馴染みがあって扱いやすいのではないでしょうか。

記録デバイスに求めること

江夏氏:業務用SDカードだけでなくプロフェッショナルRAIDもそうですが、やはり現場をわかっている設計思想は重要です。細かいところかもしれませんが、そうしたことがソニーのブランドを使う信頼感というか“安心感”ではないかと思います。

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