土持幸三の映像制作101

txt:土持幸三 構成:編集部

小学校での映像授業が今年も始まる

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今年も映像授業が始まった

今年も川崎市の小学校での映像授業が始まった。学校によって内容や長さは違うが、上映会なども含めて2月まで続いていく。基本的には5年生に対して行うのだが、毎年、先生方の求めているものも変化するのが楽しい。川崎市では、市民が地域の身近なニュースを撮影・編集したものを「かわさき市民ニュース」としてYouTubeにチャンネルをつくって公開しているが、小学生も学校から飛び出して、地域の映像を自ら企画・撮影・編集する日も近いかもしれない。

その川崎市のとある小学校では、来年が創立60周年記念だとの事で、2年に渡り地域の方々に子供達がインタビューしていき、創立当時の学校付近の様子や、実際に通った方の当時の思い出、未来の小学校への期待などを聞いていく。2年間のインタビュー映像をまとめて記念式典等で上映するとのこと。ここの校長先生は映像に加えて自作パソコン制作もご趣味としてお持ちのようで、会議室には校長先生がお造りになった高性能自作パソコンが設置されており、先生方が動画編集や写真補正などが行えるになっている。

今回、小学生によるインタビュー撮影という事だが、機材は例年通りで、民生用カメラに外付けのビデオ用コンデンサマイクと三脚のセットだ。インタビューなので本来ならワイヤレスマイクやダイナミックマイクが定番なのだろうが、高品質を目指している訳ではないので、外付けのビデオ用コンデンサマイクに付属の延長コードを装着して撮影に臨むことにする。実は昨年、別の小学校で地域の職人さんなどにインタビューする、という授業を行ったので、それを参考にし、先生方と打ち合わせした。

60周年に向けてのインタビューの場合、自分の学校の歴史を勉強するのは当然だが、インタビューする相手、インタビュイーの情報を知り、その方の小学校・地域への関わり方や、知っている専門的な事(職業など)から質問を考え、予定されている10数名のインタビュイーの話す内容が、なるべくバラエティーに富むよう、子供達に理解してもらうのが重要であることを説明した。

また、各グループ(4~5人)が担当のインタビューイーのご自宅に伺ってインタビューする場合、各クラスの担当グループがバラバラに行くと負担が増えるので、時間割の調整をお願いして、担当のインタビュイーのご自宅には同じ時間帯に全グループが行く事が出来るように提案した。また、各グループが撮影機材を持っていくとゴチャゴチャしてしまうので、機材は2セットをインタビュー場所に置いたままにして、あとで撮影済みSDカードの中身を、それぞれのグループに戻すことにした。この辺りは昨年の授業からの反省点で、やはりカメラが複数あると、インタビュイーの話が長い場合に編集が楽になるのである。

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この隙間に詰めるしかない…

ただ、頭が痛い問題は音だ。Vol.8の「子どもたちの失敗から学ぶこと」でも書いたが、インタビューの場合、子供達が無意識のままにマイクをオフにしてしまう事が多い。これは物理的にオフにできないよう、つまようじの先を切ってオフ側の隙間に詰め、対応しようと思う。

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物語を制作する小学校は本格的な撮影をする

子供達が地域の人々に自分達の学校創立時の様子や、今後の課題などを2年かけてインタビューし、動画にまとめて創立記念式典で上映するという試みは非常に新しく、これを少数ではあるが、公立の小学校で授業として取り入れている所に川崎市の素晴らしさを感じる。例年通り、1つの小学校では夏休みの宿題として全員、短編のシノプシスを書いてくる。現在、クラスで選んだ1つのシノプシスを脚本にしている最中だ。この学校では子供達が創ったオリジナル脚本をプロ機材を使用し、プロの撮影監督の指導のもと撮影して5分程度の短編を制作する。教える方も真剣にならざるを得ない。

WRITER PROFILE

土持幸三

土持幸三

鹿児島県出身。LA市立大卒業・加州立大学ではスピルバーグと同期卒業。帰国後、映画・ドラマの脚本・監督を担当。川崎の小学校で映像講師も務める。