txt:岡英史 構成:編集部

レンズは資産

見た目以上にコンパクトで軽量なシネレンズだ

撮影における機材としてレンズは非常に大事である。光の入り口が良くなければその後のエンジンが幾ら良くてもそれを補正するのはまず無理だろう。業務用カメラと言えば一昔前はハンドヘルド系のデジが一般的でもちろんレンズは一体型が主だった。ショルダー系のカメラは2/3~1/3型でB4マウントの交換レンズがあったがそれは完全に撮影現場に合わせ、焦点距離の物を使うのが一般的だった。

その概念を破ったのはキヤノンCINEMA EOS だ。C300と言うのは間違いなく、このカメラの登場がただの撮影現場に併せた選択から撮影スタイルに併せたレンズ選びになって来た。勿論シネマの世界では当たり前の事だがブロードキャストの現場でレンズの特性を考えるようになったのは本当に今までの概念がひっくり返ったとも言って良い。

その当時は高価なシネレンズを扱える現場というのは中々予算的に厳しく、通常はスチルレンズを使うのが主流だったが、残念ながらスチルレンズでは構造上ズームワークは出来ない。それでもCanonのカメラとEFレンズの組合せならAFを効かせながらのレンズワークがなんとか出来る場面もあるが、Eマウントであるα7系のカメラだとそうは行かない。Gレンズでも同じ様な事が出来なくはないが、やはりその限界はある。

そんな中でミドルレンジでも手が届く様なシネマレンズが数本出てきた。CanonからはCN-E18-80mmと言う万能レンズの登場、更にSIGMAからもHigh Speed Zoom Line18-35mm/T2が登場、これでEFマウントのカメラはOKだが、α7等のEマウントレンズは?変換付けてと言うのもマウントがやや心配だ。そこで登場したのがFUJINON MKシリーズ。CP+で初お目見えし、筆者も実機を触ることが出来たがその感触は非常に良い物を感じることが出来た。Eマウントユーザーにはそのコンパクト軽量、しかも低価格と言うことでFacebookのタイムラインでも購入した方の開封式がちらほら見れるようになった。ダメ元でNAB期間中にデモ機を申請してみたら、予想より早くお借りすることが出来たので先ずはファーストインプレッションを届けたい。

RIGを組むと言うこと

シネレンズだけあってこの手のRIGには非常によく似合う

本当はα7系で組むと良いのかも知れないがこのレンズはS35センサー(又はAPS-Cサイズ)に併せてあるので、敢えて小型のミラーレスでの現場を想定しての組み込み。本当はα6500辺りで組み込みたい所だが、今回は手持ちのNEX-5Rで。今更感がする機材だが使い方によってはまだまだ現役で十分行けるカメラでもある。組合せ的にはEVFと外部レコーダー(SAMURAI BLADE)を組んでProres収録という想定。バランス的にも全く問題ない。このレンズならワンマンオペで行くはずなのでフォローフォーカスは左側のみの仕様。

簡単オープンロケを想定して使ってみたが中々感触はよい。EVFの見え方が明らかにマウント変換を付けたレンズよりもシャッキリと見えるのは、やはり専用マウントで剛性が良いからなのだろうか?カメラ自体をα6500に変えて外部収録をSHOGUNに変更すれば4K収録のAカメとしてそのまま使える感触がある。

ENGレンズとして

筆者的には此方の組合せがシックリ来る

CP+で持った時にこの軽さだと振り回してもマウントに負担は少ないはず?!と考えていたがまさににドンピシャ!このカメラもかなりニッチな部類のEA50。いまブライダルのメイン機材はこのカメラを使っているが、ENGからの移行ならこのカメラが一番使い易い(FS7は別)。意外とこのカメラのバランスやスコープがFS7にフィードバックされていることは知られてないがバランスは良い。

ワイド18mmとテレ50mm無茶をしなければこの1本でも現場はまわせる

今回もその読みでデジワイも組み付けた完全に大判センサーのENG仕様。この状態でショルダー部分にジャストフィット。このままサブ機でブライダルの現場に持ち込んでみたがフルマニュアルのレンズまわりはレンズワークが意のままに出来て非常に気持ちが良い。テレが55mmでやや物足りないが、EA50は最大2倍のデジタルエクステンダー使えるので36-100mm相当で使えるので先ずは問題なし。T2.9通しの明るいレンズはそれだけでも価値がある。そしてENGレンズとの一番の違いはシネレンズであると言うこと。これは使ってみないと表現し難いが中々良いトーンを出してくれた。

総評

販売価格42万円はミドル~ローレンジには決して安いとは言い切れないかも知れないが、この画を撮れるなら間違いなく安く感じるはず。シネレンズとは言え意外とクッキリとピンは取りやすいし、開放からしっかりと色も乗ってくる感じを受けた。何よりもこの価格でブリージングが殆ど感じられないのは企業努力をリスペクトしたい。今年のNABではこのレンズにFS5を組み合わせて取材をする予定なので、その様子は次号に書きたいと思う。


[岡英史のNewFinder FUJINONMK] 後編

WRITER PROFILE

岡英史

岡英史

モータースポーツを経てビデオグラファーへと転身。ミドルレンジをキーワードに舞台撮影及びVP製作、最近ではLIVE収録やフォトグラファーの顔も持つ。