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[ココロカメラ]Vol.20 創作の時間

2017-08-22 掲載

txt:オースミユーカ 構成:編集部

脚本は楽しみながら書く

鴨川をみながらカフェで脚本作業

現場仕事がなくなって、創作ばかりしている時間がたまにやってくる。神様がくれたありがたい時間と思って脚本作業にあてている。

今は大好きな映画監督に頼まれたオリジナル脚本のリメイクを一本と、漫画原作を一本の計二本を作業中。これがたのしい。何がいいって物語がすでにあるってことは、こんなに楽チンなのかと目から鱗なのだ。普段はオリジナルを書こうとのたうち回っているので、原作をベースに肉付けや編集をしていく作業の気が楽なこと!執筆作業は楽しさと同時に産みの苦しみも味わうから、暗いトンネルの中にいるような時間が少ない分だけ気分も軽い。裏を返せば、オリジナルで面白い物語を書ける人というのに本当に敬意を払うし、永遠の憧れだ。

しかし、脚本を書いたからといって実際に撮影され、音楽がつけられ、みんなの元に届けられるかといえば、そんなはずもない。映像制作にはたくさんの超えるべき壁がある。

先日、一年間悩み続けた映画の仕事が白紙に戻った。脚本打合せも進み、助監督はどういう人がいいのか、主演のスケジュールが空き次第すぐにでも撮影に入るなど話し合ったりもした先の出来事だったのでダメージも大きい。オリジナル作品だったために迷走し、物語のいい落としどころがみつからなくてみんなの気持ちが先に進まなくなっていたのがひとつの敗因だったかもしれない。やはりオリジナルで行く時には物語の力と、それを引っ張る人の強いモチベーションが必要なのだということを痛感する一年であった…。

でもこれは映画の世界では本当によくある話。私も以前クランクイン一ヶ月前に制作の話がすべて吹っ飛んでしまったこともある。まぁ映画にしろテレビにしろCMにしろ、企画とはいい距離感でのんびりとつきあっていくしかない。私がいままで書いた企画も形になったものはたぶん1%くらいというのが現実で、それでもあきらめずに映像にできることを信じコツコツ前に進んでいくしか道はなさそうだ。

「BOOK AND BED TOKYO」泊まれる本屋で本を読まず脚本を書いた

というわけで、私は形になるかわからない企画といい距離感でつきあうために、旅と企画・脚本を抱き合わせにして楽しむことにしている。何にしろPCさえあればどこでもやれるのが執筆作業のいいところ。落ち着きの無い私は東京中の喫茶店を巡っては書き、京都の鴨川をみながら書き、BOOK AND BED TOKYOに泊まっては書き、スリランカに行く飛行機の中でも書いた。執筆はプレッシャーとの闘いでもあるので、逆に半分遊びながら書くくらいのスタンスがちょうどいい。餌をぶらさげながら、時には餌をむさぼりながら書くことでなんとか前に進めるのだ。

京都府伊根。舟屋の立ち並ぶ美しい風景が残っている

そんな遊びながら書き続けているさなか、京都のはずれ伊根という場所にいった時のこと、途中車で通った宮津にてふと思う。そういえば「宮津劇場」という映画館の支配人をかつて私の祖父がやっていたという話を聞いた事がある。劇場支配人としてキネマ旬報に連載していた時期もあったらしく、図書館に通ってバックナンバーを探したこともあるが、みつからなかった。私が2歳の時に亡くなった祖父の戦時中の話なのでずいぶん古いが、あたりに行けば手がかりがあるかもしれないと急に思い立ち、友達を引き連れて宮津で途中下車した。

さながら探偵のごとく道行く老人に話しかけ、昔映画館があったであろう場所を聞きながら探って行ったところ、かつての「宮津劇場」はマンションになっていた。しかし劇場の名前を出すとみんなそれぞれ記憶をたどって、思い出の映画の話をしてくれる。中でも「サウンド・オブ・ミュージック」(1965年公開)がいかに長い行列を作っていたか話してくれる方々が多数。目の前のおばあさんが、今は亡き夫と新婚の時に行った話などを語ってくれると、こちらまでじんわりと胸が熱くなる。なかなかどうして私のファミリーヒストリーも映画とは切ってはきれない縁のようだ。

こうして遊びながら書くという作業の中にも、執筆を加速させてくれる出来事が急におとずれるから面白い。

「宮津劇場」のあった場所にはマンションが建っていた。手前の石垣だけはかつてのままで幼き頃の父の記憶とドンピシャ

子どもの頃から物語に取り憑かれていた。とにかく面白い話を読みたい、知りたい、作りたい。その思いが本を手にとること、映画館に足を向けさせることにつながっているのだと思う。そしていつか映画の神様に振向いてもらえるように、うっとりする物語を作りたい。日々PCの向こうの背景を変えつつ創作の時間を楽しんでいる。


WRITER PROFILE

オースミ ユーカ 映像ディレクター。企画、脚本から演出までジャンルを問わず活動。


[ Writer : オースミ ユーカ ]
[ DATE : 2017-08-22 ]
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