txt:吉田泰行(株式会社アルマダス) 構成:編集部

イントロダクション

DJIが初代のジンバルであるRoninを発表したのは2014年のこと。Roninはライバル機種に比べコストを大幅に下げつつも、ペイロードが本格的なシネマカメラを積める7.2kgもあり、拡張性の高さからインディーズ系からプロまで様々な撮影現場での導入が進んだ。

それから3年。DJIから最新ジンバルであるRonin 2が発表された。初代Roninに比べモーターパワーや操作性が大幅に改良されており、プロ向けのジンバルとして大きく生まれ変わった。まずはスペックなどから今までのDJIジンバルとの違いを見ていきたい。

ペイロード

Ronin 2が、今までのDJIジンバルと大きく異なる点としてペイロードが挙げられる。Ronin 2のペイロードは13.6kgと、Roninの2倍近くに達し、シネマズームなど本格的な撮影セットアップにも対応可能だ。

DJIジンバルのペイロード一覧
Ronin 7.2kg
Ronin-M 3.6kg
Ronin-MX 4.5kg
Ronin 2 13.6kg

モーターがRoninの8倍も強力になったため、運用の柔軟性も大幅に向上している。ジンバル運用の基本は、カメラのバランスを取ることから始まる。従来機種ではバランスをかなりシビアに取らないと振動が発生し、映像が歪むことがあったがRonin 2はモーターの力により押し切ることが可能だ。撮影現場では、レンズ交換やセットアップの変更ごとに時間をかけてバランスを取ることは難しい。そうした中で、パワフルなRonin 2は撮影準備にかかる時間を大幅に短縮できる。

カメラケージ

筆者がRonin 2で一番改良された点として、カメラケージを挙げたい。大型のカメラをRoninに載せる場合、サードパーティーのボルト留めの拡張アームを使う必要があった。これによりかなり大型のセットアップでも対応できるようになったが、拡張アームを装着する際に誤って配線を切ってしまったり、スタンドに拡張アームが当たりバランス調整にCスタンドが必要になったりと、取り回しが悪かった。

Roninは拡張アームを取り付けて大型のカメラの搭載が可能である。しかし取り付けには細心の注意が必要で、内部の配線を切ることもあった。また拡張アームを取り付けるとスタンドとジンバルが干渉する問題もあった

Ronin-MXも業務用カメラの搭載が可能だが、カメラケージがRonin-Mと同じ小型サイズのため最大ペイロードに達する前にバランスが取れなくなったり、業務用カメラがケージに入らないことが多々あった。また、業務用カメラ搭載の場合、カメラケージの奥行きが狭くカウンターバランスユニットを付ける必要があった。

Ronin-MXのカメラケージはRonin-Mと同一のサイズで、大型カメラの取り付けには非常に苦労する。軽量レンズ以外の取り付けは難しく、上記写真のようにカウンターウェイトを付けないとバランスを取ることができない

しかし、Ronin 2ではカメラケージがあらかじめ大型に作ってあるため、ほぼ全てのシネマカメラの搭載が可能である。特にケージの高さが拡張されているので、EOS C300 Mark IIなどビューファインダーが突き出しているようなカメラでも問題なく搭載が可能だ。アームも5cm拡張可能なため、従来のようなボルト留めの延長アームを取り付ける必要もなく、業務用カメラを使うプロにとっては非常に使い勝手が良いシステムだ。

拡張性の高さ

Ronin 2は、アームの各所に電源ポートやSDIポートが複数箇所埋め込まれており、撮影の利便性が非常に高くなっている。カメラのほかOdysseyやATOMOS SHOGUNなどのレコーダーも、D-Tapポートから給電が可能で非常に便利だ。

なおRonin 2の給電は、Inspire 2用のTB50バッテリー(出力97.5W)2本で行う。RISING SUN ROCK FESTIVALで行った検証でRED WEAPON 8Kを使って撮影を行ったが、REDとOdyssey7Q+、DJI Focusを給電しつつ2時間半ほど撮影が行えた。REDは燃費があまり良くなく、IDXのDUO-C190でも2時間弱しか撮影できないため、この検証結果には驚いた。なので、消費電力の少ないほかのシネマカメラではRonin 2を使いつつ、もっと長時間撮影ができるのではないかと感じた。

重量

Ronin 2は、プロ向けの機能を大幅に強化した代償として従来機種より重量が増えている。Roninの本体重量が4.2kgに対し、Ronin 2の撮影時の自重(本体+グリップ+バッテリー2本)は、約7.5kgで手持ちでの撮影はかなり厳しい。運用にあたっては耐荷重の大きなリグは必須である。一眼レフなどをメインカメラとしているコンパクトな撮影を行うユーザーには、サイズの点からあまり向いていないであろう。

ただしRonin 2は、大型の業務用カメラを使うプロを想定ユーザー層としている。これだけのペイロードを確保するにはモーターやシステムがどうしても大型にならざるを得ない。Ronin 2には高品質なカーボンをフレームとして採用しており、同種のシステムでは可能な限り軽量化はされている。リグを含めハイエンドな機材を運用しているユーザー層は問題なく運用できるのではないであろうか。

Ronin 2 in Action

今回作例として、中日本航空株式会社の協力を得てAS350ヘリコプターにRonin 2を搭載した。搭載カメラはRED WEAPON 8Kで、レンズはフルサイズに対応した数少ないシネズームであるZEISS 28-80mm CZ.2を使用した。

筆者が行う従来のヘリコプター空撮では、RoninやRonin-Mを使用していた。しかし、ヘリコプター飛行時の微振動を吸収しきれず、必ず編集でスタビライズ処理を行う必要があった。またモーター出力が不足しているため、ズームレンズを装着すると振動が発生する問題もあった。空撮ではワイドの撮影が基本であるものの、特定の被写体を撮りたい場合かなりの制限が生じていた。

今回重量の大きなZEISS 28-80mm CZ.2で空撮を行ったものの、全く問題なく運用が行え、特にRonin 2のカメラケージは上下でガッチリとカメラをロックするため微振動が大幅に軽減された。

ズームを行う際、ZEISS 28-80mm CZ.2では内部でレンズの重量バランスが変わってしまうが、Ronin 2のモーターパワーの力で押し切り大きな振動は発生しなかった。今回最大4K 80mm(35mm換算で204mm)のズーム撮影を行なったが顕著な振動は発生しなかった。

ヘリコプター空撮では、CineflexやShotoverなどの高性能なジンバルの方が、取り回しや運用の面ではベストなソリューションではある。しかしシステム単価が1億を超え、日本にはこれらのシステムを完備したヘリコプターはごく少数である。地方ロケの場合は東京から撮影現場までヘリコプターを輸送する費用がかかり、かなりのコストが発生してしまう。

■Nagoya City Aerials:Shot on Ronin 2&Zeiss 28-80mm CZ.2

一方Ronin 2を用いたヘリコプター空撮の場合、撮影できる角度に制限はあるものの、かなりの品質での撮影が可能だ。またチャーター費用も30分(AS350)で15~20万円程度と比較的安価なため、全国の空港に配備されているAS350を使えばコストを大幅に抑えた本格的なヘリコプター空撮が可能になる。今回はヘリコプター空撮という特殊な撮影に挑戦したが、Ronin 2のパワーの強さを大いに実感できた撮影であった。

まとめ

Ronin 2は今までのDJIジンバルとは一線を画したプロ向けのジンバルシステムである。ペイロードや取り回しが大幅に改善されており、大型のカメラでも問題なく運用可能だ。重量が重いなど課題はあるものの、シネマカメラを本格的に運用するハイエンドユーザーにとっては、あまり大きな問題にはならないであろう。リグを使った撮影からカーマウント、ヘリコプター空撮まで多種多様な現場で今後もRonin 2は活躍するのではないか。

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