取材&写真:鍋 潤太郎

はじめに

ハリウッド・ボウル。入口にあるサイン。ジョン・ウィリアムズの名前が見える

ロサンゼルスは「エンターテインメント・キャピタル」と呼ばれ、ハリウッドのお膝元でもある。そんなロサンゼルスに住んでいると「ハリウッドならでは」の、映画に関連した貴重なイベントに参加する機会も少なくない。そこで今回は、本題のVFXとはやや話題が逸れるが芸術の秋という季節柄もあり、趣向を変えて、ハリウッド・ボウルで開催されたジョン・ウィリアムズによる映画音楽のコンサートの模様を紹介しよう。

ジョン・ウィリアムズ本人がLAフィルを指揮し、自身が作曲した映画音楽の数々を演奏するという非常に豪華なコンサートであった。どの映画もVFXを駆使した作品ばかりで、その意味では、まさに本欄で紹介するにふさわしいコンサートと言える。

ジョン・ウィリアムズって誰?

ジョン・ウィリアムズをご存知ない方のために簡単に説明させて頂くと、「スター・ウォーズの映画音楽を作曲した人」と言うのが一番わかりやすいだろう。スピルバーグ作品やスター・ウォーズシリーズ、ハリー・ポッターシリーズなどのサントラを作曲した、ハリウッドを代表する映画音楽の作曲家の1人である。

今年で御年85歳を迎えるジョン・ウィリアムズだが、まだまだ現役である。しかもこの年末には「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」が公開を控えている。

ハリウッド・ボウルとは

1万7千人の大観衆。巨大な野外音楽堂である

ハリウッド・ボウルは音楽好きの方ならご存知かもしれない。ハリウッドサインに近い山の中腹の、広大な地形を利用して作られた野外音楽堂である。座席数17,376席という規模を誇り、毎年6月から9月までがシーズンである。シーズン中はクラシックやジャズ、ロックまで幅広いジャンルのコンサートが、連日連夜開催される。今回の「John Williams:Maestro of the Movies」は3日間連続で開催されたにも関わらず、チケットはほぼ「SOLD OUT(売り切れ)」に近い状態でその人気ぶりがうかがえた。

John Williams:Maestro of the Movies

このコンサートは過去10年以上に渡り、ほぼ毎年開催されている。例外だったのは2年前の2015年で、同年末公開の「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」の作曲に専念するため、この年だけはお休みであった。

コンサートは、前半と後半の、休憩を挟んでの2部構成である。数年前まではジョン・ウィリアムズが全曲の指揮を振っていたが、さすがにご高齢なのだろうか、昨年より前半は映画音楽の作曲家デイビッド・ニューマンがタクトを振り、後半をジョン・ウィリアムズが指揮という構成で行われている。

ステージ前半では、デイビッド・ニューマンがハリウッドの無声映画からトーキーへ、そして白黒からカラーへと変革した古き良きハリウッドを彩った名作、そして彼の父親で映画音楽作曲家アルフレッド・ニューマンが手掛けた映画作品のサントラなどを披露した。

  • 「ロビンフッドの冒険」(1938)より「マーチ」
  • 「ドラキュラ」(1979)より「Night Journeys」
  • 「ドクトル・ジバゴ」(1965)より「Excerpts」
  • 「嵐が丘」(1939)より「キャシーのテーマ」
  • 「スタア誕生」(1954)より「”Born In A Trunk”メドレー」

オーケストラの演奏をバックにステージ上のスクリーンには映画の名場面が映し出され、ハリウッドの歴史を綴った素晴らしい演奏であった。

さて、休憩を挟んだステージ後半。オーケストラメンバーがステージに揃いチューニングが終わると、いよいよジョン・ウィリアムズがステージに登場した。足取りもしっかりされていて、まだまだお元気そうである。今年も「インディ・ジョーンズ」「スター・ウォーズ」「ハリー・ポッター」などおなじみの名曲を披露し、観客を喜ばせた。

YouTubeにアップされている、当日の様子から

そんなコンサート中盤、思わぬサプライズが用意されていた。ジョン・ウィリアムズが、静かに、こうアナウンスした。

ジョン・ウィリアムズ:みなさん。本日のスペシャル・ゲストです。元バスケットボール選手、コービー・ブライアント氏です。どうぞ。

コービーがステージに現れた瞬間、観客が全員発狂したのは言うまでもない(笑)。実はこのコンサート、5分間の短編アニメーション「Dear Basketball」(親愛なるバスケットボールへ)のプレミアでもあった。これは、コービーがNBAの2015~16シーズンを最後に引退した際に発表した同題のポエムをベースに作られた作品で、「リトル・マーメイド」のアリエルをデザインしたことでも知られる元ディズニーのベテランアニメーターグレン・キーンがドローイング&アニメーションを描き、コービーと個人的に親交のあるジョン・ウィリアムズが作曲を担当したショート・フィルムである。

オーケストラの演奏をバックに「Dear Basketball」が上映され、しかもコービー本人がライブでナレーションを担当。この「プレミア上映」の場にいることができたのは、一生に一度、あるかないかの貴重な体験だったかもしれない。

YouTubeにUPされている「Dear Basketball」(親愛なるバスケットボールへ)当日の様子

さて、ステージ後半の演奏で最も盛り上がったのは、やっぱりというか、当然というか「インペリアル・マーチ(帝国のマーチ/ダース・ベイダーのテーマ)」であった。曲が始まると、満員の観客席からは一斉にライトセーバー(なぜかみんな持って来ている)が乱舞した。これだけの数のライトセーバーが舞うと、かなり壮観である。

YouTubeにアップされている、当日の様子から

ジョン・ウィリアムズによれば、観客席でライトセーバーが乱舞するこの光景は、ハリウッド・ボウルで「自然発生」した、ここでしか見られない風物詩なのだそう。当初、ライトセーバー持参者はごく少数だったのが、毎年どんどん増え続け、とうとう観客の大半が持参するようになってしまった(笑)。今ではコンサート当日に売店でもライトセーバーが販売されるようになり、LAフィルのメンバーまでステージ上からライトセーバーを振りかざしていたのが印象的であった。

圧巻!!「ダースベイダーのテーマ」では何千本というライトセーバーが舞う

アンコールは「E.T.」で、最後を締めくくるにふさわしい素晴らしい演奏であった。後半ステージの演奏曲目は下記の通り。

  • 「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」(2008)より「The Adventures of Mutt」
  • 「未知との遭遇」(1977)40周年記念劇場再リリース(9月に全米で実施)より「Excerpts from Close Encounters of the Third Kind」
  • 「ハリー・ポッターと秘密の部屋」(2002)より「The Chamber of Secrets」
  • 「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」(2004)より「Aunt Marge’s Waltz」
  • 「ハリー・ポッター」シリーズより「Harry’s Wondrous World」
  • 「Dear Basketball」
    特別ゲスト&ナレーション:コービー・ブライアント
  • 「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」より「Scherzo for X-Wings」
  • 「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」より「レイのテーマ」
  • 「スター・ウォーズ」より「メイン・タイトル」

アンコール:

  • 「サブリナ」(1995)」より「テーマ」
  • 「スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲」(1980)より「インペリアル・マーチ(ダースベイダーのテーマ)」
  • 「スーパーマン」(1978)より「マーチ」
  • 「E.T.」(1982)より「フライング・テーマ」

前半と後半で、全18曲が演奏された。

おわりに

このような、素晴らしいコンサートであった。ハリウッド・ボウルはハリウッドのチャイニーズ・シアター付近から徒歩で行くこともでき、シーズン期間(6月から9月)にロサンゼルスを訪れる際には是非訪問して頂きたい場所の1つである。ここでのコンサートは、きっと良い思い出になるだろう。

ハリウッドボウル公式サイト

WRITER PROFILE

鍋潤太郎

ロサンゼルス在住の映像ジャーナリスト。著書に「ハリウッドVFX業界就職の手引き」、「海外で働く日本人クリエイター」等がある。