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[いまさら聞けない用語集]#03 S-Log/S-Gamut編~これから始めるS-Log/S-Gamut

2017-10-18 掲載

S-Log/S-Gamutとは?

ソニーの「S-Log3」と「S-Gamut3」は、ポストプロダクションの工程で幅の広い階調表現を実現するLogカーブと色域だ。S-Log3は、広いダイナミックレンジをデータとして残せるので、制作者が撮影現場で、ハイライトの飛びや、シャドウのつぶれを気にしなくてはいけない状況を減らすことができ、撮影現場でクリエイティブなシーンを作りこむことに集中することが可能だ。また、ポストプロダクションで、自由自在に変更に柔軟にトーンや色を調整ができる。その一方で、Log撮影は難しく、気軽に手を出すことはではないという人もいる。

そこで、ソニーのS-Log3やS-Gamut3とは何なのか?どのように撮影を行い、どのようにポストプロダクションを行えばよいのか?ソニーのCineAltaカメラシリーズの開発にも関わってきたソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ株式会社の遠藤一雄氏と、大貫淳氏にお話を伺った。

写真左から:遠藤一雄氏と大貫淳氏
  • ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ株式会社
    プロフェッショナル・プロダクツ本部 企画マーケティング部門
    商品企画1部1課 統括課長
    遠藤一雄氏
  • ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ株式会社
    プロフェッショナル・ソリューション&サービス本部
    メディアセグメント事業部門 メディアシステム設計部 1課
    大貫淳氏

S-LogやS-Gamutとはどのような技術なのか?

――S-LogやS-Gamutはどのような技術なのかを教えてください。また、現在どのような機種に搭載されていますか?

遠藤氏:フィルム映像は、デジタルに変換する際に「Cineon-Log」と呼ばれるLog形式で記録をする「Telecine」(テレシネ)という作業が行われます。S-Logは、このCineon-Logを参考に独自のLogカーブを提案し、10bitとして記録をしてLogに変換後、XAVCなどのコーデックで圧縮や現場モニターでの運用性を考慮したガンマモードです。

ビデオカメラのITU-R BT.709(以下:709)の画は、肌色などのコントラストは非常に高くきれいに撮れるのですけれども、肌色の部分を明るく撮ると、通常のビデオガンマ709の特性から、高輝度のほうは潰れてしまいます。そこで、S-Logでは高輝度の部分を伸ばすために全体のコントラストを下げて収録しています。このように収録することでS-Logの画は実際の見た目は肌色が少し暗めでぱっとしない画に見えるかもしれません。しかし、収録データとしては幅広いダイナミックレンジを収めて収録しています。

S-Logはもともと制作系のハイエンドカムコーダーに搭載していた機能で、初めて対応したのは2000年に発売をした24p収録に初対応した「HDW-F900」です。その後改良を加えつつ、2007年に「F23」、2008年に「F35」、2012年には「F65」へ搭載してきました。

現在発売中のラインナップの中では、スーパー35mmのセンサーを搭載する「PMW-F55」や「PMW-F5」など主に大判のセンサーをもつシネマカメラ系に搭載しています。また、XDCAMメモリーカムコーダーの「PXW-FS7」「PXW-FS5」のほかに、最近ではライブ系カメラの4K/HDライブカメラシステム「HDC-4300」にも対応しています。

S-Logに対応する「PMW-F5」(左)と「PXW-FS5」(右)

――S-Logには初代のS-LogとS-Log2、S-Log3があります。どんな違いがありますか?

遠藤氏:S-Log2、3はセンサーのダイナミックレンジが広がってきたことを受けて、広いダイナミックレンジに対応しつつ、使いやすいカーブに修正しました。初代S-Logのダイナミックレンジは800%で、S-Log2ではダイナミックレンジが1300%になりました。S-Log3は、さらにグレーディングをしたときに余裕をもたせる形に変更をしまして、その際にS-GamutもS-Gamut3に改修してS-Log3とS-Gamut3をペアで展開する形になりました。

――S-Logで撮影することでフィルムと同等のラチチュードを確保できると言われています。実際には、どの程度のラチチュードの幅がありますか?

遠藤氏:下図はS-Logのカーブで、横軸はStop値になります。グレースケールの18%反射率のところがFStop値のゼロで、そこからラチチュードは6Stopぐらいまで得られます。つまり、アイリスを6段開けたところまで白飛びしないでキャプチャーをすることが可能です。

S-Logの特性曲線

――S-Logを使う場合と使わない場合の判断は、何を基準に考えたらよいでしょうか?

遠藤氏:S-Log3で撮ると少し曇ったようなコントラストが低い映像として収録されます。そのために主にカット編集だけをしてつなげてすぐに完パケをしたいのであればS-Logよりも、709のガンマカーブで収録したほうが手間がかからないのでオススメします。コントラストが高いシーンの撮影でカラーグレーディングに少し時間ががかけられる場合は、S-Log3で記録することをお勧めします。後から簡単に調整ができます。

――色域には、「S-Gamut」や「S-Gamut3」のほかに「S-. Gamut3.Cine」があります。それぞれどのような特徴がありますか?

遠藤氏:シネマカメラセンサーの色域はTVの709や、DCIのP3よりもずっと広い色域を意図して設計されています。S-Gamutは、そのデータを効率よくポストプロダクションで利用してもらうために、S-Log2提案時に一緒に提案をしたものです。

S-Gamut3は、ITU-R BT.2020(以下:2020)、HDRの制作向いてます。色域はS-Gamutそのままに、色域内の色再現性をより高めています。S-GamutにS-Gamut2はありません。S-Gamut3の「3」はS-Log3に合わせて付けたもので、S-Log3と組み合わせて使うことを意図しています。2020の色域より少し大きく、色度点がほぼ一致しており、2020の制作に向いています。

S-Gamut3.Cineは、P3や709 SDRの制作に向いています。色域と、色度点の頂点の方向が一致していることから、Saturationを少し変更するだけで、P3や709の色域に簡単に合わせ込むことができます。

S-Gamut3は2020の色域に近いことから、2020の制作に向いている S-Gamut3.CineはP3や709の制作に向いている

――S-Log2とS-Log3の特徴やそれぞれのLogカーブの特徴などを教えていただけますか?

遠藤氏:S-Log3は、ハイライトを曲げる処理(いわゆるShoulder、Roll Off)を行っていないので、白飛びする周辺の色変化を極力抑えています。シャドウ(いわゆるToe)の部分の特性がよりLogに忠実に直線に近くなったことで、S-Log2よりシャドウが良く残ります。また、輝度を変えたときに色が変化してしまうことなく、忠実な色再現になります。ダイナミックレンジが十分にあり、カメラよりやや広めに設定しているので、グレーディングにそのまま使えるカーブになっています。

また、S-Log3は圧縮との親和性が高いのも特徴です。たとえば他社のLogをわれわれのコーデック、あるいは一般のメジャーなコーデックを使うと圧縮ノイズの増大を招いて画像が荒れることがあります。S-Log3は、先ほどのカーブの中に圧縮との親和性を十分考慮していまして、10bitで圧縮し終わった後も画質劣化を最小限にすることが可能です。

――S-Logでの撮影は現場ではなく後処理で色調整を行うことになりますが、現場でのルックの確認方法など、S-Logでの撮影のはどのようになりますか?また、撮影の際に注意することは何でしょうか?

遠藤氏:通常の運用では709のLUTを当てますが、ハイライトとシャドウを見る場合にはLUTをオフしてS-Log3で収まりを確認します。カメラのダイナミックレンジは、すべてモニターで確認可能です。さらにWaveformを使える状況なら、より正確にハイライトを確認できます。

S-Logでの撮影の際に注意をすることは、S-Log3は記録するためのLogのカーブであり、S-Log3の映像を観てアイリスを合わせるのはお勧めできません。S-Log3はハイライトまですべて収録するために中間の輝度は少し下がり気味になっています。S-Log3の画を観てアイリスを設定してしまうと、意図せず少しアイリスを開け目にする傾向があります。そうではなく、709のLUTが、カメラに装備されているので、709LUTをONにした状態で普通のビデオの撮影のように、肌色を確認しながらアイリスを調整してください。このようにすればS-Logはきちんと幅広いダイナミックレンジをデータとして記録します。

また、709で肌色やコントラストを決めておいた後、一時的に709LUTをオフにするとコントラストが低いS-Log3が表示されます。この時にハイライトやシャドーがきちんと収まっているかを確認できます。このように、一時的にS-Log3に戻してハイライトやシャドーを一時的に確認をすることでも安心して撮影できるのではないかと思います。

S-Logに709のコントラストを与える方法

――S-Log3はポストプロダクション工程で調整することを前提としているので、収録したままではコントラストが低い眠い映像になります。恐らく、S-Log3を記録しようかどうか迷っている方には、後からどうやって扱っていいかわからない方も多いと思います。ポストプロダクション工程でS-Logを扱うお勧めの方法はありますか?

遠藤氏:弊社が無償配布している「RAW Viewer」というアプリケーションは、WindowsとMac版の両方がダウンロードできるようになっています。概念は他のカラーグレーディングツールと同じなので一般的なツールと同じように扱えます。RAW Viewerで体験していただければもう少し複雑なツールでも応用して使っていただけるのではないかと思います。

大貫氏:RAW Viewerを起動をすると中央のClip Viewerに表示しているのがS-Log3の映像で、コントラストが低い状態で表示されます。左のクリップリストエリアのサムネールはビデオカメラと同様の709を当てた画像を表示しているので、S-Log3との違いを確認できます。

http://www.pronews.jp/pronewscore/wp-content/uploads/2017/09/DVK_03_girl2-slog3.jpg 画面中央のClip ViewerにはS-Log3で撮影された状態の眠い画が表示されている
※画像をクリックすると拡大します

遠藤氏:LUTを使った変換方法から紹介します。右にある「Look Profile」には「LC_709」「LC_709TypeA」「SLog2_709」「Cine+709」などのLUTを収録しています。709の制作なら一番上の「LC_709」を選択します。これを選択すると色もそれなりに乗ってコントラストも高くなり、なおかつ白飛びしていない状態になります。

基本的にはこの「LC_709」または「LC_709TypeA」を当てればそのままある程度お使いいただけます。LCはLow Contrastの略で、実際の709より少しだけコントラストと彩度を抑え気味にしていて、グレーディングの余裕を持たせています。後は映像やシーンに応じて「Lift」「Gamma」「Gain」の3種類のパラメータで簡単に調整できます。Liftは、白レベルを保ちながら黒レベルを調整する機能です。Gammaは中間階調を調整します。Gainは明るい部分のライトをコントロールする機能です。

これらの機能を使ってWaveformの波形モニターの機能も合わせながら、コントラストをどのぐらい残したいかを設定します。意図して飛ばすケースもあると思います。後から自在にコントロールできる自由度がS-Log3で撮影をした際の最大のメリットになります。

「Look Profile」から「LC_709」を選択

遠藤氏:あともう1つお勧めしたいのは、709やP3の制作ならば、LUTがなくてもLift、Gamma、Gain、Saturationを少し動かすだけで簡単にS-Log3を709のようにできる方法があります。下記の方法はカラリストの方が良く行っている方法です。

まず、Waveformの波形モニターで確認するとS-Logは少し黒が浮いているのがわかります。この状態からLiftを使って0%ぐらいに下げて黒の締まり具合を決めてください。真っ暗に潰したいのか?少しコントラストを残したいのか?どこまで潰すのかは意図によって考えて調整します。

次にGainを上げて、ハイライトのレベルを調整します。シーンの意図にもよりますが、もしクリップするギリギリを狙ってハイライトを設定するならWaveform機能をつかうとわかりやすいでしょう。Gammaで肌色付近の中間コントラストを調整します。

最後にSaturationと呼ばれる色を乗せる機能を少し上げて肌色等の色の乗りを少し良くします。これで、普通の709らしい画が実現できます。

他のカラーグレーディングツールでもLift、Gain、Gamma、Saturationの機能はありますので、同じ手順を行うことでS-Logは簡単に加工できます。

Waveformの波形モニターで確認をしながら「Lift」「Gamma」「Gain」のカラーホイールを操作することでもS-Log3を709のようにすることが可能

――最近はライブ系のカメラにもS-Logを搭載していますが、どのように使われているのでしょうか?

遠藤氏:S-Log3はHDR制作にも親和性が高いです。ライブの放送の場合も、S-Log3/R2020でシステムをすべて構成しておき、HDRプロダクションコンバーターユニットの「HDRC-4000」で最終段にて放送方式に合わせた信号に変換を行う「SR Live for HDR」と呼ばれる4KライブHDR制作ワークフローがあります。

SR Live for HDRは、中のワークフローがすべてS-Log3/R2020になっています。モニタリングもS-Log3にLUTを当てて、ハイダイナミックレンジでモニタリングしつつそれで全部のコントラストを調整したものを最終的に出力する際にHLGに変換して出すという非常にシンプルなワークフローになっています。ライブやファイルベース含めて多数のトライアル制作を行っています。

S-Log収録で広がる映像制作

RAWやX-OCNは、シーンリニアで記録されているために、グレーディングの際にそのままだと使いづらいという人もいる。そういう人は、RAWにS-Log3を当てるとよいだろう。RAWの素材もLift、Gain、Gammaで直感的に触れるようになる。

そういう意味ではRAWを使う人達にとっても、S-Log3はカラーグレーディングの工程を楽にするための中間Logとしても使える。S-Log3は記録だけでなく、ポストプロダクションのグレーディング用のLogとして使用できるというのも覚えておくとよいだろう。


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[ Writer : 編集部 ]
[ DATE : 2017-10-18 ]
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