txt:手塚一佳 構成:編集部

LEICA.DAS WESENTICHE. Oskar’s legacyにて発表された新製品

ライカカメラジャパン株式会社は2017年11月22日、アルフレックス東京にて行われた「LEICA.DAS WESENTICHE. Oskar’s legacy(ライカエッセンス。オスカー・バルナックの伝統)」にて、新型スチルカメラ「Leica CL」および、TLマウント用軽量パンケーキレンズ「ライカ エルマリート TL f2.8/18mm ASPH.」を発表した。

ライカAG社主アンドレアス・カウフマン博士自らが来日して大勢のファンと報道陣の前で製品発表を行った

この発表では、ライカカメラAGの社主アンドレアス・カウフマン博士や、ギャラリー部門を指導するカリン・カウフマン夫人自らが参加し、製品の解説自体も開発担当のマイケ・ハーバーツ女史自らが発表するなど、ライカAGドイツ本社の総力を挙げた注力が一目でわかる構成であった。同社の日本市場への注目度の高さが覗える。

「LEICA.DAS WESENTICHE. Oskar’s legacy」はアルフレックス東京にて行われた。家具店での開催というのはおもしろい

Leica CLは、APS-Cサイズセンサーを搭載したクラシカルなデザインのスチルカメラで、その最大の特長は「DAS WESENTICHE」であること。つまり、エッセンスだけを抽出したミニマル構成のカメラであることだ。Leica CLには、驚くべきことにマイク端子もなければ充電端子もなく、それどころかUSB端子すらない。あくまでも内蔵したSDXCカードへの収録と、Wi-Fi経由でのコントロールのみが外部との接続になり、一見して端子穴が全く見当たらない。

ライカ カリン・カウフマン夫人によるギャラリー部門の説明は非常に興味深いものであった

センサーサイズですら、前述の通りライカ判(フルサイズ)ではなくAPS-Cサイズ、つまりはPRONEWS読者ならおなじみのS35サイズセンサーだ。アマチュアスチルカメラマンの中にはこのセンサーサイズに不満を持つ人も居るというが、現実に99.9%以上の歩留まりを必要とするプロスチルの世界に置いては、当然に被写界深度の深すぎないAPS-Cサイズセンサーは多用されている。そしてもちろん、実際にこのサイズのセンサーでの画質に何の問題もないことは、我々映像屋なら説明の必要もなく既知の通りである。

ライカプロフェッショナルストア東京の大上氏が手にしたLeica CL。非常にコンパクトだ

ライカ側でも、もちろんこのAPS-Cサイズセンサーの画質が充分であることは認識しており「もしオスカー・バルナックが現代にいたら、必ずやAPS-Cセンサーをライカに選んだだろう」というライカ工学技術者の言葉を引用して、大判センサーにこだわりがちなユーザーへの理解を求めていた。

機能説明は、開発担当のマイケ・ハーバーツ女史自らによるもの。クラシカルな外見に反して、非常に高度な機能が詰め込まれていることがわかる

Leica CLの動画ファイル形式としては、MP4一択。しかも4Kでは3840x2160p(4K)30fpsのみ、HDにおいても1920x1080p(FHD)60fps、1920x1080p(FHD)30fps、1280x720p(HD)30fpsのみという潔さ。もちろんEU標準の最大29分までの録画時間だ。

カメラ単体で全てが最低限で完結しているのがこのLeica CLの最大の特長であり、それは、動画用としても同じなのである。もちろんメインのシネマカメラの1台目としてこのLeica CLを選ぶというのであれば、いかなライカマニアの筆者としてもそれはいかがかと思う。しかし、サブカメラとして、あるいは学生が学生制作に使うミニマム構成のシネマカメラとしては、必要充分にしてコストも展開も読みやすく、とても使いやすいカメラではないかと言える。

「もしオスカー・バルナックが現代にいたら、必ずやAPS-Cセンサーをライカに選んだだろう」というライカ技術者の言葉

スチルカメラベースのシネマ撮影も、昨今ではRIGが巨大化し、どこにカメラ本体があるのかわからない状態での撮影を多々目にすることがある。しかし、それであれば初めからシネマカメラを買えばいいだけのことである。業務用シネマカメラでも、例えばパナソニックAU-EVA1のようなリーズナブルで軽量高機能なカメラも出てきているので、機能を付けたいのであればそれを選ぶべきなのだ。わざわざそうした選択肢の中でスチルカメラを使って映像を撮るというのは、やはりスチルカメラならではの撮り味や軽量性を求めるべきであり、そうすると、このLeica CLのMP4収録で明確にライカ画質で撮れ、しかも機材追加も一切ないという特性は重視すべきではないかと思うのだ(欲を言えば、ファームアップなどで24PやDCI 4Kには対応して欲しいところではあるが)。

革製のアクセサリ群も、クラシックで非常に美しい

今回の発表の中、このLeica CLを社主アンドレアス・カウフマン博士は繰り返して「CL2」と呼称していた。これはもちろん旧ライツ・ミノルタで設計図を共用して日独同時生産した旧Leica CLを「1」として意識しての発言であるが、つまり、同社のパートナーであるパナソニックを始めとする日本各社の技術を多く導入して作られた今回の新型Leica CLが、旧Leica CLと同じく、日本とも縁が深いカメラであるという意味合いとも受け取れ、ライカAG主要メンバーが、他のどこでもなくわざわざ日本を選んでの発表に踏み切った背景が覗え、大変に興味深い。

とはいえ、もちろんLeica CLは日本国産カメラではなく明確にドイツ製カメラである。その画質特性は低照度においても極めてハイコントラストであり、シャープなエッジが常に得られる。日本のカメラのパステルカラー寄りの画質特性とは明確に異なる、いわゆるライカ画質のものだ。レンズ群も、日本にもよくあるAPS-Cサイズの軽量コンパクトなTLマウントレンズ群だけではなく、ドイツの色濃いゴリゴリの超重量レンズ群であるSLマウントレンズ群も使用可能だ。

中でも、Leica SLの標準レンズであるVARIO-ELMARIT-SL 24-90mm f/2.8-4 ASPH.をLeica CLに付けると35mm換算で36-135mmとなり、標準域を完全にカバーできる。同レンズは特性上ズーム時に音が出る上、ズームにあわせて輝度が明確に変化するためそのまま動画用ズームレンズとしては使いにくいが、それでも撮影ごとにズームを固定して超高画質の単玉レンズ群を手に入れるのと同じと思えば、非常に使い勝手はよい。

早速試してみたLeica CLの真価は?

Leica CLとライカ エルマリート TL f2.8/18mm ASPH.によるテスト撮影。APS-Cとはいえ充分だ

メインのカメラとして、Leica SLのようなしっかりとしたシネマ対応スチルカメラやパナソニックのAU-EVA1のような軽量シネマカメラを置き、そのサブ機としてこのLeica CLを用意しておくのは、2017年末のミドルバジェット撮影の一つの正解ではないかと思う。また、荷物に制限の多い旅の動画カメラや、ネイチャー向けとしてはこのLeica CLは最高の1台と言えるだろう。価格も367,200円と、ライカにしては非常にリーズナブルであり、充分に手が届く。

Leica CLとTL f2.8/18mmによる会場での手ぶれ補正なし、オートフォーカステスト撮影。パンケーキとは思えない画質だ

Leica CLとSL 24-90mm f/2.8-4による会場での手ぶれ補正付き、オートフォーカスのテスト撮影。レンズ性能を生かした手ぶれのない撮影ができている

また同イベントでは、パネルトークとして、ハービー山口氏と小山薫堂氏による軽妙なLeica CLテストユーザートークが行われた。非常に軽妙な語り口のハービー山口氏の主導で、実は小山薫堂氏によるLeica CLのテスト機による作品が、ハワイの海での立ち泳ぎでの片手撮影(もちろん非防水!)による一か八かの撮影であることが明かされるなど、非常に興味深いセッションであり、会場の笑いを誘っていた。おおらかで熱心なユーザーが多く、そうした彼らが支えるからこそ、LeicaはLeicaであり続けることができるのだろう。新機種の、実にLeicaらしいそぎ落とした高性能と、シンプルで力強い未来を感じるイベントであった。12月の発売が何とも待ち遠しい。

Leica CLテストユーザーである、ハービー山口氏と小山薫堂氏による軽妙なトークセッションは大いに盛り上がった

WRITER PROFILE

手塚一佳

デジタル映像集団アイラ・ラボラトリ代表取締役社長。CGや映像合成と、何故か鍛造刃物、釣具、漆工芸が専門。芸術博士課程。