txt:ふるいちやすし 構成:編集部

映画「千年の糸姫」がアジア国際映画祭で最優秀監督賞と新人女優賞を受賞!

2月に行われたアジア国際映画祭にて上映された映画「千年の糸姫」で最優秀監督賞と新人女優賞(主演:二宮芽生)を戴いた。ん?なんで今頃?と思ったのは皆さんだけではなく、当の私もそう思った。

かなり変わったケースではあるが、実は審査は映画祭から始まって、この度、台湾・台北で行われた第二回アジア国際映画祭でその表彰式が行われたのだ。これはこの映画祭がアジア各国を巡り、交流を持つための主催者側の思惑だという。いいアイデアだと思った。今後もタイやマレーシア、アジア各国で行われることを期待している。

私も台湾を訪れるのは初めてのことだし、中国語がわからない私は英語で話すしかなかった。少し違うが見慣れた漢字で書かれた町のサインすら理解できないというのは、ヨーロッパにいるより違和感が大きい。目の前で、韓国の人と中国の人がなぜか日本語で話しているところも見たし、改めてアジアって複雑だなと感じた。そういう意味で台湾は完全な異国なんだが、中国本土と比べると、どこか親しみやすいし人々も穏やかで友好的だった。スケジュールの合間を縫って街を歩き回ったが、屋台のご飯がことごとく美味い。一度、ゆっくりと撮影に訪れてみたいものだ。

それにしても驚いたのはその授賞式の規模と豪華さだった。台北ナンバーワンのホテル、The Grand Hotel(円山大飯店)の一番大きいホールで、ディナーショースタイルで行われた。そこにアジア各地からVIPが集まり、見たところ、軽く千人は超えていたように思う。中には大物政治家や日本からも衆議院議員が来ていたり、あまりに大規模だったので少し気になって見てみると、第十回世界和平大會という大会とドッキングし、そのメインイベントとしてアジア国際映画祭の表彰式が行われていたのだ。なるほど、これもいいアイデアだと素直に思った。映画好きや関係者だけで行われていたならこうはいかなかっただろう。

そもそも映画という文化をより広く拡げるならば関係者以外にも見てもらう必要がある。国内外問わず、映画祭の動員にはそれぞれの実行委員も頭を悩ませているが、こういった違う種類の人が多く集まるイベントとの同時開催は、ひょっとしたら今後増えてくるかもしれない。歓迎すべきではないだろうか。

この豪華ホテルにはセレモニーが行われた巨大ホールとは別に映画館とも言えるホールがちゃんとあって、正に理想的な場所ではあったが、日本ではそういう施設がなかなか見当たらない。フィルムからデジタルになって、設備も随分手軽になり、大した技師も必要なくなった。是非ともそういうホテルができてほしいものだ。オリンピックを見に来る人々も夜は暇だろうし、ホテル内で映画を観られたら嬉しいだろう。私たちのように海外の映画祭に出品する人は必ず英語字幕版の作品を持っている。そういう日本映画を集めればインバウンドエンターテインメントとして喜ばれるに違いないと思うのだが。

今あるべき映画の“かたち”

何れにしても映画というものは、そろそろ形を変えてもいい時期に来ているのではないだろうか?今、大手配給会社やシネコンのやっているシステムが利益を上げており、多くの人を楽しませていることは事実だろうし、それにケチをつけるつもりは毛頭ない。

ただ、膨大な製作費と広告費を使い、映画館に数十万人の導引をしなければB級だという考えを変えたいのだ。そりゃ大きな経済効果はかっこいいものだし、多くの産業や雇用も産んでくれる。ただ、そうでなければ映画ではないというのは時代錯誤も甚だしい。映画は人に美と感動を与えるものという意味ではもうその可能性は立証されている。

規模の問題ではないし、特に日本映画に関しては小さなマーケットの中で大きすぎるお金が動くので、残念なことに内容よりニュース、広告性が重視されている傾向は否めない。その分、プチシネには自由があると思う。そこを内容に結びつければ経済価値と別の意味では十分A級のものが生まれる可能性がある。いや、すでに生まれている。だからこそ、必要なのは小さくてもいいから、マーケットと呼ばれるものだ。プチシネを作り続けられる分のプチマーケットでいい。若いアーティストでも作り続けられるだけでいい。出演者、スタッフが活動し続けられるだけでいい。それに必要なことは直接的にはスポンサーとオーディエンスの意識なんだろうけど、結局それを惹きつけるのは作品の良さだし、ミニシアターとVOD。結局全てだ。

だが、今ミニシアターとVODに関してはだんだん盛り上がりを見せている。私も幾つかミニシアターの相談を受けているが、いつも問題になるのは上質なコンテンツをどうやって集めるかだ。そこでみんな頭を抱えてしまう。クリエイター諸君。今が頑張り時なんだ。とにかくクオリティーを上げてたくさん作ろう!

また、マーケットはやはり世界に向けられるべきだろう。それはVODというプラットフォームがある以上、そんなに難しいことではない。ただその為にまず字幕をしっかり作ること、特にアメリカではクローズドキャプションが必須となる。これは耳の不自由な方の為、台詞だけではなく、必要なSEも文字化するものだ。元々シナリスト用のファイルだったが、今はAdobe Premeire Proでも作れる。ただし、翻訳にはセンスが必要になるので字幕を作るときに同時にお願いすべきだろう。そういったことも含めて、クリエイター側に求められることも多い。それは海外配信するその時に考えていたのでは手間も倍増するので作り始める時から世界を視野に入れる事が重要だ。

インディーズ、プチシネはメジャー映画への階段だと考えている人もいる。それはそれでいい。ただし、2軍意識は捨てて、ここに一流のフィールドをしっかり作ること。それが大切なのだ。以前、ここでお話ししたプチシネ世界配信に特化した製作配給会社を作るということ。やっぱり夢でも発言はしておくものだ。素晴らしい出会いがあり、実は実現化に向けて動き出したのだ。これはライフワークとして、なんとか成功させたいものだ。詳しい進展はまた今度お話しすることにしよう。

WRITER PROFILE

ふるいちやすし

映画作家(監督・脚本・撮影・音楽)。 日本映画監督教会国際委員。 一般社団法人フィルム・ジャパネスク主宰。 極小チームでの映画製作を提唱中。