txt:栁下隆之 構成:編集部

一眼動画カメラでのNDフィルターの役割

一眼動画機を正しく使っている方々には釈迦に説法だが、あえてその話題に触れてみたい。動画撮影の露出コントロールにはNDフィルターが必須アイテムだが、「屋内のみだから使わないよ」という方もゼロではないだろう。しかし、外光差し込む窓際でボケ感を狙いたい場合などでは、NDフィルターが必須アイテムとなってくる。

ここで技術的な内容を整理しておきたい。何故NDフィルターが必要なのか?それは、シャッタースピードが一定以上に早くなると、視覚的に違和感のある動画になってしまうからだ。

露出が一定なる様にISOを変えながら、シャッタースピードを変化させた例だが、撮影は4K30Pで1/125以上では1コマ1コマが止まった様に見えて、動画としては違和感がある。三味線の撥の動きはかなり早いので、1/125でも少し残像を感じるが、動画の1コマとしてはそれでも違和感を感じるし、1/250以上は完全にアウトだ。

自然な残像(=モーションブラー)が残る適正なシャッタースピード(一般的にはフレームレート×2倍程度)に固定して撮影すると、露出調整は絞りかISO設定という事になるが、大判センサーの持ち味であるボケ感を出すには、開放に近い絞りで撮影する事になる。したがって、外光差し込む窓際ならNDフィルターで適切に減光する必要があるという訳だ。

さて、最近では安価な濃度可変型ND(バリアブルND)フィルターもあるが、濃度を変更した際に色転びが発生したり、偏向膜の性能により色の透過特性がまちまちなど、おすすめ出来ない性能の物が数多くある。それらを考えると、安易にバリアブルNDフィルターを用いるよりも、従来のNDフィルターを複数段階の濃度で用意して交換する方が、画質自体は安定した物が得られる。ただ、毎回ねじ込みでフィルターを着脱するのは現実的では無いので、そこがジレンマとなってくる。

筆者はニッコールの単焦点レンズを5本セットにして動画用に常用しているが、ステップアップリングでレンズの前枠をφ77mmに統一して、カールツァイス製のレンズギアを装着してある。前枠径を統一してあるのは、当然フィルターの使い回しを考慮しての事で、現場に持ち込む全てのレンズが同一口径になっていれば、必要なNDフィルターのサイズも一種類で済むという訳だ。現在でも着脱の面倒を考えて、バリアブルNDフィルターを使う事はあるが、筆者の唯一信頼に足る性能はケンコー社製のバリアブルNDXだけで、高価な製品だけにレンズの本数分購入して付けっ放しという訳にはいかない。加えて、バリアブルNDは構造的に強い逆光時には2枚のガラスの内面反射でフレアーが発生する事もあり、全ての状況において万能では無い。結局のところ、バリアブルNDと従来のNDフィルターを併用しており、画質に拘る単焦点レンズとNDフィルターの着脱が現場のスピード感を削ぐ事になっていた。

そんな悩みを解決してくれそうなのが、2017年11月に開催されたInterBEE2017で見つけたマンフロットから新発売のマグネットフィルターホルダーXUME(ズーム)だ。

まるでフィルターのパッケージの様相。レンズアダプターと、フィルターホルダーを一対として使う

少々前置きが長くなってしまったが、早速使い勝手を見ていきたい。筆者のレンズセット=ニッコール5本セットに組み合わせてみた。前枠系は77mmに統一してあるので、レンズアダプターとフィルダーホルダーは同じφ77mmを必要数用意する事になる。製品としては49mmから82mmφまでラインナップされているので、自分のシステム合わせて導入すれば良い。

レンズアダプターは装着したいレンズの本数分、フィルターホルダーはフィルターの枚数分用意する事になる

フィルターにホルダーを装着し、レンズ側にはアダプターを装着する

ホルダー付きのフィルターを、レンズ前枠に装着したアダプターの近づけると、磁力でパチッと吸い付く様に装着される

磁力はそこそこあって、レンズを激しく振った位で外れる事は無かった。指で引っ張れば簡単に外れる程よい磁力だ

現場にはND2、4、8、16の4枚セットを持参して、各々を組み合わせて使用している。マグネットホルダー付きの状態でも、愛用のMindShift製のフィルターポーチに綺麗に収まった

フィルターホルダーを現場に投入する前に、画面のケラレなどを入念にテストしておく必要があり、今回はFull35とAPS-C(Super35)相当のセンサークロップの切り替えが出来るニコンD5で16:9の画角での実写テストを行った。ただし、筆者所有のフルサイズ用の20mm/f1.8という超広角レンズでのテストなので、全てのレンズで発生する事象では無いことを事前にご承知おきいただきたい。

この様に白の背景紙を画面全体に入れて、フィルターによるケラレを確認した

フィルターを1枚だけ装着した状態では、絞り開放でも全くケラレは無い

注)1枚、2枚装着共に中央部からなだらかに暗くなっているのは、レンズの周辺減光でありフィルターによるケラレでは無い

2枚+アダプターの状態では四隅にケラレが生じていて、絞っても改善されなかった

フィルターアフダプターとホルダーを使用せずに、2枚のフィルターを直接ねじ込んで重ねたらケラレは無くなった

センサークロップモードでSuper35相当にすれば、当然ながらケラレは生じないどころか、レンズ中央部を使用しているので、周辺減光も全く気にならなくなった。フルサイズ用レンズでも周辺部分では性能の限界があり、被写体によってレンズの選択はとても重要になる

まとめ

筆者が一番恩恵を感じた使い方は、バリアブルNDフィルターとの組み合わせで、ネジ込む動作で不用意にフィルター濃度を変えてしまうのを防げた事を付け加えておきたい。さらに、フィルターを強くネジ込んだ際の固着や、レンズの前枠の磨耗を防ぐ効果もあるので、着脱という機能から生じる多くの副次効果を考えれば、値段以上の価値があるだろう。

一つだけ気になったのは、レンズ側のアダプターにレンズキャップを固定する溝が切られて無い点だ。従来のレンズキャップはフィルター枠のネジ溝の引っかかる事で固定されるので、そのままでは固定出来ないのだ。フィルターホルダーをキャップ分余計に用意して従来のキャップをマグネット着脱できる様に出来るが、専用のマグネット式レンズキャップが用意されているので、そちらを追加で用意すればスマートに使えて便利だろう。 近々レンズ本数分の専用キャップを追加導入して、フィルターシステムをコンプリートさせたいと思う。

さて、ご紹介したマンフロットXUMEマグネットフィルターホルダーは、レンズの画角、前玉径、フィルター枠の厚み等々の複数の要因でケラレが生じる事もあるので、普段使用するレンズで事前にテストしてから現場に投入して頂きたい。そこだけ注意すれば、これほど便利で現場の時間短縮につながるアイテムを使わない手は無いだろう。一度使えば手放せないアイテムになる事請け合いだ。

今後機会があれば、現場の使用感を詳細レポートしてみたいと思う。

WRITER PROFILE

栁下隆之

写真家アシスタント、現像所勤務を経て、撮影機材全般を扱う輸入販売代理店で17年余り勤務の後に、撮影業界に転身。一眼カメラによる撮影を得意し、代理店時代に手がけたSteadicamや、スタビライザー系の撮影が大好物。