txt:岡英史 構成:編集部

機材搬入

機材の運搬に何を使ってる?

例えば3カメスイッチャーの現場で必要な物は?と問いかけるとカメラ・三脚・SW・ケーブル・etc…。色々な機材がありそれらはワンカメの時より明らかに3倍以上の機材量が加わってくる。さてそれをどうやって運ぶのか?人力を使って人海戦術で一気に運び込むと言う回答はバジェットも大きく撮影部としての人数も多い現場だろう。中継車が絡むような現場だとこの方法は有意義だ。

では多くのミドルレンジでの現場はどうだろうか?3カメスイッチャー(以下:SW)でも二人で現場を廻して居る場合が一番多いのでは無いだろうか?その時には人海戦術と言う言葉は全く意味をなさない。自然と機材を何かに乗せて搬入口から撮影現場に持って行かなければならない。

その場合何を使って機材を運び込むのか?一般的には「台車」と呼ばれる物を使用している方が一番多いと思う。しかし一般的な台車の大きさでは3カメスイッチャー一式の機材量を一気に運べる事はないので最低でも2往復はしなければならない。よく考えてもらえばわかると思うが、機材搬入の時間と言うのは他のセクション(照明・音響)も一緒に仕込んでいる場合が多いので非常にゴチャゴチャしている。そんな中を何往復するというのは少なからずともトラブルの元になる。

なお、今回は簡易的な3カメ収録と言う想定で機材(荷物)を選んだ

しかもフリーランスの集まりだと特にスタッフジャンバー的な物はなくバラバラで現場入りし、台車をゴロゴロしてると「あの人達一体何?(誰?)」と思われること必至。搬入時に自分達がどういう立場でココに来ているのかをアピールするのは悪いことではない。むしろ誰が見ても「あっ、ビデオ屋さんが来てる」という認識を裏方だけじゃなくクライアントにも一目でわかるのはやはり重要視しても良いのでは?さて、今回は筆者が使ってる台車(ビデオカート)を紹介したい。基本は一発で運べる大きさが基本としてる。

中型エアータイヤカート

特にオープンロケで公園等の不整地の時に使用している台車だ。元々は園芸用のカゴを運ぶ物をコンパネとパンチングを張って機材的にダメージが無いようにしている。このカートはハンドル部分も折り畳み式でではなく、本体に差し込んでネジで留めるタイプ。ただしハンドルの差し込みは前後にあるため、自在タイヤを前にするか後ろにするかでその使いまわしが変わってくる。自在輪を後ろにすれば細かい旋回に対応できるが、重量級の機材の時は後ろ側に固定輪を使った方が安定は格段に良い。

大きさ的にはミニバンのラッケージ半分位の大きさなので小型乗用車にはちょっと乗せるのは厳しいかもしれない。このカートは結構色々な方が使ってるのをFacebookでも時々見かける。考えていることは同じで、やはり一気に運び込んだ方が現場的にまわしやすいことと、駐車場から現場までの道路状況を考えずにガンガン行ける所が大きい。一般的な台車ではタイヤの荷重が大きくて不整地で使うには全く適さない。この手のAIRタイヤは外ロケなら必須だ。

フォールディングタイプ・カート

このカートは黒澤フィルムでも使用されている折り畳み式のカート。とある照明技師が自分で沢山の照明を一気に運べてハイエースにバラしてもそのままでも後ろのラッケージスペース半分に収まるように作ったオリジナルの物(オリジナルとは言えワンオフではなく複数台存在している。TriCasterでも有名なD-STORMではTriCaster専用の物も所有)。

オールアルミ製なので見た目以上に軽いが、耐荷重は一つの棚で100kgと、ビデオ機材程度なら全く問題はない。タイヤはスタジオ等の平面な所専用としてるので大きめの抗菌整音タイヤを装備。ゴムタイヤでは場所によってはゴム跡に気を配らなければいけないが、このタイヤなら病院の床でもOKだ。とにかく写真見て貰えればわかるが、バラしたときのコンパクトさは類を見ない。軽自動車でも楽勝で積み込み可能。なお、天板は4段階で高さ調整可能なので、今回載せた荷物の1.5倍なら問題なく楽に積み込める。

INOVATIV Scout 37 EVO

今回の真打ち的なビデオカートを最後に紹介しておこう。INOVATIはビデオカート専門と言っていいメーカーなので、もうなにも言う事が無いくらい使い易い。類似品としてマグライナー等があるが、INOVATIの良いところは天板の間に全てを収納してこの手のカートとしては非常にコンパクトに出来るところだ。

全ての折り畳み部分は軽い力加減でパチパチと小気味良く組立が可能。慣れれば片手でも出来るかも知れない。タイヤの向きのも前後入れ替える事が出来るので今回の機材量なら全部積み込んでも片手で十分動かせるくらい滑らかに軽い。

このコンパクトな収納は凄い!

さらに色々な純正アクセサリーをラインナップしているので、このカートをベースに色々な基地作りをすることができる。一般的に有名なのはステディカムのセッティング台兼スタンドとして非常に格好が良い。最近ではドローンの発着基地や現場でのオンセットグレーディングの基地として特にシネマやCM系の現場ではよく見かける。一つ難点あるとすれば台車と考えると価格がやや高い事だろう。しかし使ってみると納得できるガジェットなので、自分で所有しなくてもレンタルして一度使ってみて欲しい。間違いなく欲しくなるはずだ。

総評

一般的な台車は荷物もしっかり乗らないしタイヤも小さいので安定性は最悪

ここ数日は現場への運び込みにINOVATIを使っているが、何処の現場でもクライアントやディレクターの評判が良い。特にモニター出しするような制作系だと天板に19inch程度のモニターを置いても、まわりにまだスペースが出来るので色々な小物も取り出しやすい。やはり見た目は大事!

専用のビデオカートはまだまだ個人でポンと所有する物(金額)では無いが、その使い心地や運搬のしやすさを考えるとレンタルでも良いので予算を入れ込んで使ってみて欲しい。そろそろ宅配便と同じもので、大事な機材を運び込む事を考え直しても良いのでは?

WRITER PROFILE

岡英史

岡英史

モータースポーツを経てビデオグラファーへと転身。ミドルレンジをキーワードに舞台撮影及びVP製作、最近ではLIVE収録やフォトグラファーの顔も持つ。