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[Ready Steadi Go!]Vol.04 最新テクノロジーを吸い込むステディカム

2018-02-23 掲載

txt:柏原一仁(銀一株式会社) 構成:編集部

開発をし続けるギャレット・ブラウン氏

Steadicam Volt

前回は電動ジンバルとステディカムの違いを書いたが、ローテクなステディカム、このまま死に体なのかというと、そんなこともない。ギャレットは、40年経った今でも開発を続けていた。それがこの「Steadicam Volt」と「Steadicam M-1 Volt」だ。

Steadicam M-1 Volt

“Volt”と名付けられたこの2つは、見た目こそ大きく違うものの、いわゆるローテクなステディカムに、ジャイロで水平方向の揺れを抑える機能を合体させたものだ。電動ジンバルと大きく違うのは、ロール方向の「左右に動く揺れ」と、ティルト方向の「上下角」のみを制御し、パン方向はステディカムの動きを殺していないところ。これにより、いわゆるブレに見える原因のみを取り除き、それでいてアーティスティックな画作りが行える。

また、モードを切り替えると、ティルト方向もロックが可能になる。これにより、見上げる・見下ろすようなショットを、ティルトを意識せずに行うことができ、より構図に集中できるだろう。いままでステディカムを扱ったことがある方なら、感動すること間違いなしだ。


さてこのVoltシステム、簡単にぱっと生まれたわけではない。開発には、ギャレットやジェリーのほかに、スティーブ・ワグナー氏が参加した。彼は“Wagner Horizon”という水準器をステディカム用に開発・製品化する際に協力した開発者のひとりだ。水平や水準に対して興味を持っていたスティーブ氏は、小型ハンドヘルド型の電動制御ステディカムのプロトタイプを持ち込み、そこからギャレットがアイデアを広げていった。

ギャレットとスティーブは、お互いのアイデアを具現化するために別々にデザインを行った。ギャレットがスティーブに「こういうものにしたい。」と提案したときには、それを実現するソフトウェアの理論はおおよそ出来上がっていたそうだ。M-1 Voltのシステムは、ギャレットとスティーブの共同パテントになっている。

ハード、ソフト両方のデザインを進め、開発には2年を要した。そして完成したのがVoltとM-1 Voltだ。2017年のCine Gear Expoでプロトタイプが発表されたM-1 Voltは、あっという間にステディカムオペレーターに知れ渡った。“試乗”した世界中のトップオペレーターからも太鼓判の高評価で、ギャレット自身も「この40年で一番の発明だ。」と振り返る。

M-1Voltの真価はいかに?

それではいったい何がここまで評判なのか?一番の理由はステディカムらしさ、思った通りにコントロールできるそのフィーリングを一切殺さないことだ。そして、ステージのコントローラーとジンバル付近に搭載されるモーターユニットの約1kgのシステムだけで、このシステムが完結していること。ビッグリグユーザーからすれば、1kgなんてほとんど重量増とは感じられないだろう。負荷が増えないのに安定性が向上するなんて、とんでもない!

M-1 Voltコントロールボックス

M-1 Voltはロール耐性、ティルトの戻り力、振幅量を調整できるのだが、ドロップタイム、いわゆるスレッドが水平から垂直に落ちる90°の振れの時間を限りなくゼロに近くなるよう設定し、モーターで重力を“演出”する。その重力の演出もまるで重力が実際に効いているかのような自然さで、「よくできている」なんて言葉では片付けられないほどだ。トップオペレーターが「(ラクすぎて)オペレートが下手になる。」と口にするほど圧倒的な安定感を生み出すM-1 Volt。しかし、やはり集中して画作りを行えることこそがステディカムにとって、オペレーターにとって重要なのだ。

M-1 Volt

40年前の偉大な発明から、電動ジンバルとのコラボレート製品や、今回紹介したVoltシステムのようにまったく新しいアプローチをも吸収し、ステディカムは進化し続ける。次はどんなオモチャが出てくるだろう?とワクワクドキドキしながら、ブレないのは、より良い画を撮りたいと純粋に思うその気持ち。ステディカムはこれからも、より良い画を撮るために人が操る機材、その最も人に近い場所に存在する撮影機材であり続けるだろう。


WRITER PROFILE

柏原一仁 日本大学芸術学部写真学科卒、銀一株式会社海外商品部勤務。 銀一が世界中から輸入する写真・映像用品ブランドのマーケティング担当。静止画・動画・音声と様々な技術に翻弄される日々。好きな食べ物はからあげ。


[ Writer : 柏原一仁 ]
[ DATE : 2018-02-23 ]
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