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[鍋潤太郎のハリウッドVFX最前線]Vol.90 第16回VESアワード受賞式 スペシャル・レポート

2018-03-09 掲載

取材:鍋 潤太郎 画像提供:VES

はじめに

2月13日(火)夜、ロサンゼルスのビバリー・ヒルトン・ホテルにおいて、第16回VESアワード授賞式が華々しく開催された。エントランスにはレッドカーペットが敷かれ、報道陣がフラッシュを焚き、タキシードやドレスに身を包んだVFX業界関係者がリムジンで乗り付け、会場はハリウッドの映画賞にふさわしい華やかな雰囲気に包まれた。今回は、その模様をスペシャル・リポートでお届けしよう。

VESとは

まず最初に、VESについてお馴染みでない読者の方の為に、VESとは?を簡単にご説明させていただこう。

VESは「Visual Effects Society」(米視覚効果協会)の略で、米監督協会、脚本家協会、俳優協会等と並ぶ、ハリウッドのれ映画ギルドの1つである。設立は1997年で、昨年記念すべき20周年を迎えた。ハリウッドを中心とする映画&テレビ等の映像業界におけるVFX業界に従事するプロフェッショナル達で構成される、「VFXのプロの、プロによる、プロの為の協会」である。

現在、米国および35ケ国に約3,700人という会員数を誇る。もちろん、日本からでも加入が可能である。会員は年々増え続けており、文字通り世界最大規模のエフェクト業界のギルドである。会員になるには、5年以上の現場経験を有する事が条件とされる他、現役会員2名からの推薦状が必要とされる。そして、年2回行われる理事会の承認を経て、晴れてメンバーになる事が出来る。

ちなみに、このVESは、日本では稀に「ベス」と誤読される事があるようだが、アルファベット3文字を「ヴィ・イー・エス」と呼ぶのが正式な呼び名である。

VESアワード授賞式とは

VESアワード授賞式は、ハリウッドのアワード・シーズンである毎年2月に開催され、「VFX界のアカデミー賞」と謳われている。ここでは、世界中から応募されたVFX作品の中から、映画、TV(ドラマ、コマーシャル)、アニメーション、ゲームなど、全24カテゴリーに及ぶ最優秀作品が、VES会員の投票によって選出される。そして授賞式では、各部門の受賞作品の発表及び表彰が行われる。受賞者には、VESアワード名物の「月顔トロフィー」が贈られる。

VESアワード名物の「月顔トロフィー」を手にする、映画「猿の惑星: 聖戦記」のスーバーバイザー達

華やかな授賞式

今年で第16回目を数えるVESアワード受賞式。2003年2月にロサンゼルスのスカーボール・カルチュラル・センターで記念すべき第1回授賞式が開催され、それ以降はハリウッドのパラディアム・シアター(2004 第2回~2006 第4回)、ハリウッド&ハイランドのグランドボールルーム(2007 第5回~2008 第6回)、ハイアット・リージェンシー・センチュリープラザ・ホテル(2009 第7回~2011 第9回)と会場を移しながら開催され、第10回目以降は、ここビバリー・ヒルトン・ホテルでの開催に落ち着いている。

ちなみに、この授賞式は事前にチケットを購入さえすれば、「誰でも」入場する事が出来る。ただし、チケット代は1人450ドル(VES会員は会員価格225ドルで購入可能)と高額だ。しかし、ハリウッドの映画賞の華やかな授賞式に参加出来て、ディナーもついて、業界の著名人やハリウッドのセレブリティを間近で拝む事が出来るのだから、そのメリットは大きいと言えるだろう。

ビバリー・ヒルトン・ホテルはビバリーヒルズにあり、ゴールデン・グローブ賞授賞式の会場としても有名な場所である。ビバリー・ヒルトン・ホテルのボール・ルームには、特設ステージが設営され、1,000人以上の参加者が出席。ちなみに、VESの発表によれば、チケットは今年も”SOLD OUT”(完売)だったという。

授賞式はVES代表のエリック・ロスの挨拶からスタート。

冒頭で挨拶する、VES代表のエリック・ロス

司会は、2011年以降、人気コメディ俳優のパットン・オズワルトが続投している。映画「LIFE!/ライフ」や、ピクサー作品「レミーの美味しいレストラン」のレミーの声などで有名なパットン・オズワルトは、今年も絶妙なトークで会場を盛り上げていた。

7回連続で司会を務めた、ハリウッド映画でもおなじみ、人気コメディ俳優パットン・オズワルト

今年の著名ゲスト

VESアワード受賞式は毎回、VFX作品にゆかりのあるハリウッドのセレブが、賞のプレゼンターとして登場する事でも話題だ。

今年は、まず映画「美女と野獣」の野獣役でおなじみのイケメン俳優、ダン・スティーヴンスが最優秀背景賞[アニメーション映画部門]のプレゼンターとしてステージに登場。

そして、最後の最後にメガトン級の超サプライズ・ゲストとして登場したのが、なんと、マーク・ハミル

マーク・ハミルの名前がアナウンスされた瞬間、観客は全員発狂した(笑)。マーク・ハミルは、最優秀視覚効果賞[実写映画部門]のプレゼンターとして登場。

「私が封筒を開けて、“受賞作品は…『ラ・ラ・ランド』です”と発表したら、面白いと思いませんか?」と昨年のアカデミー賞で起こった珍アクシデントを引き合いに出し、笑いを誘っていた。

今年のハイライト

今年の受賞式の話題をさらったのは、まず映画「猿の惑星:聖戦記」が最優秀視覚効果賞[実写映画部門]を始め4部門で受賞。またピクサーの長編アニメーション「リメンバー・ミー」も、4部門で受賞を果たした。

最優秀視覚効果賞[アニメーション映画部門]を受賞した「リメンバー・ミー」のピクサー・チーム

テレビ部門では「ゲーム・オブ・スローンズ」は今年も相変わらず強く、5部門を制覇。今年最も多くの部門で月顔トロフィーを獲得した。

「ゲーム・オブ・スローンズ」は最優秀視覚効果賞[実写テレビドラマ部門]を獲得

コマーシャル部門では、空を飛びたいという夢を抱くダチョウを描いたサムソンのCM「Do What you Can’t; Ostrich」が最優秀視覚効果賞[コマーシャル部門]ほか3部門に輝いた。

サムソンのCMは、最優秀キャラクター・アニメーション賞[コマーシャル部門]も獲得

特別賞

VESは毎年、VFX業界で優れた功績を残した人物に特別賞を贈っており、その受賞セレモニーもハイライト・イベントとして行われた。

今年は、映画「アイアンマン」「アイアンマン2」「ジャングルブック」の監督として知られ、脚本家、プロデューサー、そして俳優としても知られるジョン・ファヴロー氏に生涯功労賞(Lifetime Achievement)が贈られた。ファヴロー監督は現在は実写版「ライオン・キング」でメガホンを取り、忙しい日々を過ごしているという。

生涯功労賞(Lifetime Achievement)を受賞したジョン・ファヴロー監督

また、「アバター」や「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズ、「キングコング」(2005)等で4つのアカデミー視覚効果賞に輝いた実績を持つ、VFXスーパーバイザーのジョー・レッテリ氏にジョルジュ・メリエス賞(George Melies Award) が贈られた。

ジョルジュ・メリエス賞を受賞した、ジョー・レッテリ氏

ちなみに、このジョルジュ・メリエス賞は2009年に制定された賞で、創造的なビジョンと技術面で優れた功績を残したと認められる人物に贈られる。この賞が贈られるのは実に6年ぶりで、最も最近の例では2012年の第10回授賞式でダグラス・トランブル氏が、2010年の第8回授賞式にエド・キャットマル氏が、それぞれ受賞している。

ハリウッドで活躍する日本人のノミネート

VESアワードの話題として外せないのがハリウッドで活躍している日本人2名のノミネートである。今年は、

■瀬尾 篤氏(Sledgehammer Games)
最優秀視覚効果賞[リアルタイム部門] ゲーム「コール オブ デューティ ワールドウォーII」

左から、瀬尾 篤氏、ギャレス・リチャーズ氏、ダニー・チャン氏 (瀬尾篤氏 提供)

■藤田竜士氏(Industrial Light & Magic)
最優秀エフェクト&シュミレーション賞 [実写映画部門] 映画「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」

VESアワード授賞式に出陣前の藤田竜士氏(藤田竜士氏 提供)

の2名の方が、それぞれノミネートを果たした。惜しくも受賞は逃したものの、世界的にも権威あるVESアワードでノミネートされた功績は非常に大きいと言えるだろう。

日本からも、もっと応募を!

さて、今年も日本からの作品が1本もノミネートされなかったのが大変残念だ。過去には日本の作品がノミネートを果たした事が何度もあり、ノミネートのみならず、受賞を果たせる可能性も充分にあるのだ。来年のVESアワードでも、是非とも日本からの奮っての応募を期待したいものである。

VES公式サイト

第16回VESアワードの受賞作品一覧は下記のとおり(受賞作品名およびタイトルは原題のまま)

最優秀視覚効果賞[実写映画部門]
(Outstanding Visual Effects in a Photoreal Feature)
「War for the Planet of the Apes」

最優秀助演視覚効果賞[実写映画部門]
(Outstanding Supporting Visual Effects in a Photoreal Feature)
「Dunkirk」

最優秀視覚効果賞[アニメーション映画部門]
(Outstanding Visual Effects in an Animated Feature)
「Coco」

最優秀視覚効果賞[実写テレビドラマ部門]
(Outstanding Visual Effects in a Photoreal Episode)
「Game of Thrones; Beyond the Wall」

最優秀助演視覚効果賞[実写テレビドラマ部門]
(Outstanding Supporting Visual Effects in a Photoreal Episode)
「Black Sails; XXIX」

最優秀視覚効果賞[リアルタイム部門]
(Outstanding Visual Effects in a Real-Time Project)
「Assassin’s Creed Origins」

最優秀視覚効果賞[コマーシャル部門]
(Outstanding Visual Effects in a Commercial)
「Samsung; Do What You Can’t; Ostrich」

最優秀視覚効果賞[博展映像部門]
(Outstanding Visual Effects in a Special Venue Project)
「Avatar: Flight of Passage」

最優秀キャラクター・アニメーション賞[実写映画部門]
(Outstanding Animated Performance in a Photoreal Feature)
「War for the Planet of the Apes; Caesar」

最優秀キャラクター・アニメーション賞[アニメーション映画部門]
(Outstanding Animated Performance in an Animated Feature)
「Coco; Hèctor」

最優秀キャラクター・アニメーション賞[テレビ番組/リアルタイム部門]
(Outstanding Animated Performance in an Episode or Real-Time Project)
「Game of Thrones; The Spoils of War; Drogon Loot Train Attack」

最優秀キャラクター・アニメーション賞[コマーシャル部門]
(Outstanding Animated Character in a Commercial)
「Samsung; Do What You Can’t; Ostrich」

最優秀背景賞[実写映画部門]
(Outstanding Created Environment in a Photoreal Feature)
「Blade Runner 2049; Los Angeles」

最優秀背景賞[アニメーション映画部門]
(Outstanding Created Environment in an Animated Feature)
「Coco; City of the Dead」

最優秀背景賞[テレビ番組/コマーシャル/リアルタイム部門]
(Outstanding Created Environment in an Episode, Commercial or Real-Time Project)
「Game of Thrones; Beyond the Wall; Frozen Lake」

最優秀デジタル撮影賞[実写部門]
(Outstanding Virtual Cinematography in a Photoreal Project)
「Guardians of the Galaxy Vol. 2; Groot Dance/Opening Fight」

最優秀モデリング賞[実写/アニメーション部門]
(Outstanding Models in a Photoreal or Animated Project)
「Blade Runner 2049; LAPD Headquarters」

最優秀エフェクト&シュミレーション賞 [実写映画部門]
(Outstanding Effects Simulations in a Photoreal Feature)
「War for the Planet of the Apes」

最優秀エフェクト&シュミレーション賞 [アニメーション映画部門]
(Outstanding Effects Simulations in an Animated Feature)
「Coco」

最優秀エフェクト&シュミレーション賞 [ドラマ/コマーシャル/リアルタイム部門]
(Outstanding Effects Simulations in an Episode, Commercial, or Real-Time Project)
「Game of Thrones; The Dragon and the Wolf; Wall Destruction」

最優秀コンポジット賞 [実写部門]
(Outstanding Compositing in a Photoreal Feature)
「War for the Planet of the Apes」

最優秀コンポジット賞 [実写テレビドラマ部門]
(Outstanding Compositing in a Photoreal Episode)
「Game of Thrones; The Spoils of War; Loot Train Attack」

最優秀コンポジット賞 [実写コマーシャル部門]
(Outstanding Compositing in a Photoreal Commercial)
「Samsung; Do What You Can’t; Ostrich」

最優秀視覚効果賞 [学生作品部門]
(Outstanding Visual Effects in a Student Project)
「Hybrids」


WRITER PROFILE

鍋潤太郎 ロサンゼルスを拠点とするVFXジャーナリスト。


[ Writer : 鍋潤太郎 ]
[ DATE : 2018-03-09 ]
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