土持幸三の映像制作101

txt:土持幸三 構成:編集部

役者とともに作り上げた2本の短編作品

「イッツ・ア・ショータイム」

昨年の7月8月のコラムで書いた「ネットシネマ・ゴールデンエッグ」。その第3回目に向けて昨年末から演技ワークショップとオーディションを経て1組13人を2組担当して1本ずつ15分の短編映画を制作した。このコラムが公開される頃には編集が終わり、ゆっくりできる頃だと願いたい。

前回と違い1組の人数が数人ではあるが増えた。10人でも15分の短編に全員出演させてセリフをつけるのは非常に大変な作業であったが、今回はさらに大変になっている。また、現在発売されている脚本・監督のVシネマ「我王伝」もそうだが、脚本を書くときはほとんどの出演者は決まっていない。主役など重要な数名が決まっている事はあるが、僕の場合、書き終わってから決まることが多い。

ただ、今回のように出演者が決まっており、人数が多く、なおかつ演技経験がバラバラの役者たちなので、できるだけ僕が思う一人一人の良さ、強みを探るべく演技ワークショップでは一人一人と直接話をし、それぞれのイメージを作り、短編に登場するキャラクターへ落とし込んでいった。要するに役者一人一人に当て書きをしたのだ。

前回一番苦労したのは役者たちのスケジュール調整で、短い期間に撮影を集中させると、初心者を含め思うように演技が出来ず時間がかかり、その後のスケジュールの関係で思うような演出ができなかったので、今回はロケーションごとに日にちを決めて撮影した。移動もなく、その場所のシーンを撮り終える分量で脚本も書きスケジュールも組めたので、予定通りに撮影ができ、小道具や衣装に前回よりも注意を割く事ができた。合計すると15分の短編2本に9日間かけたことになる。短い日は1時間、長くて8時間という感じだった。

シンプルな撮影を心掛けた

撮影は前回同様にワンマンオペレーション。照明をあて、カメラをまわし、演出をして足りない所は出演者に担当してもらった。ワイヤレス・ブームマイク録音はほぼ、彼等に担当してもらった形だ。ただ今回は電車移動が多かったので(実際に電車でも撮影したのだが)いかに機材をコンパクトにして運ぶかを考えた。

一週間滞在用の大型スーツケースを購入し、その中にカメラ以外の機材は全て入るようにした。カメラとレンズはバックパックのカメラバッグに入れ、ゴロゴロとスーツケースを転がしながら現場へ向かうという、なかなかできない経験ではあったが、カメラはミラーレスで小型のうえケージやモニターは無し、レンズも単玉が4本、LED照明を3つとスタンド、録音関係の機材が収まった。ジンバルを使っての撮影もあったが、こだわりを捨てアクションカメラと、その対応ジンバルの使用で非常に小型で収まる。実は購入したてのスーツケースが3日で壊れて、慌てて近所の家電量販店で購入するというアクシデントがあったが、撮影は概ね予定通りに終了できた。

手の空いた役者がスタッフになる

今回は脚本を役者それぞれに当て書きしたのがある程度うまくいった手ごたえを感じた。ただ、実際の撮影になると緊張でなかなか演技ができない役者もいたし、撮影前のワークショップや衣装を合わせの際に「想定よりもっとできるのではないか?」と思い登場を大幅に増やした俳優もおり、想定外の事が起こるのも映像制作の醍醐味でもあるので楽しめたのが良かった。

「復讐の紅」

役者たちは一様に皆、真剣に向かい合ってくれた。遠くは大阪や福島から通っている人もいて、それぞれに良い緊張感を与え、真剣にならざるを得なかったのであろう。それが逆に僕に良い意味でのプレッシャーとなり作品に反映されていることを願う。今回の作品「イッツ・ア・ショータイム!」「復讐の紅」は4月7~8日限定で渋谷ユーロスペースで公開されるので興味のある方は是非、劇場に観に来てほしい。

WRITER PROFILE

土持幸三

土持幸三

鹿児島県出身。LA市立大卒業・加州立大学ではスピルバーグと同期卒業。帰国後、映画・ドラマの脚本・監督を担当。川崎の小学校で映像講師も務める。