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[東京Petit-Cine協会]Vol.91 ワークショップの意義を考える

2018-03-30 掲載

txt:ふるいちやすし 構成:編集部

伝統ではなく時代に合わせた作品作りを

今回はワークショップについて考えてみたい。こうも日進月歩が続くと、我々プロフェッショナルでも日々勉強をしなくてはならないわけだが、私自身がラッキーだったと感じることは、時代的にビデオカメラの初期段階から、その日進月歩に合わせてゆっくり学べている事だと思う。今の若い人達は初心者でもいきなり高性能に発達してカメラを持たされ、それがまた日進月歩を重ねてゆく。それはそれで幸運とも言えるのだろうが、取っ掛かりは大変だろうと思う。

技術的な事を理解するだけでも大変だろうが、果たして美術的、または表現といった部分の教育はしっかりされているのだろうか?数年前に大手映像専門学校の講師を務めた事があったが、少子化が進む中、就職率を競う専門学校にアーティストを育てる気風は全く無く、ウェディングや放送局関係の旧態然とした多人数のチームで働く為の教育しかされていなかった。中には高校時代に既に短編作品を幾つか作り、映画監督を夢見て入学したのに、その大きなチームの制作スタッフに振り分けられ、モチベーションを完全に失ってしまってるかわいそうな学生もいた。重ねてそこで教えられてる事は伝統と言えば聞こえがいいが、内容は古臭いものばかりだった。

とある大学の卒業制作上映会にも行ったことがあって、そこで同じような作品を立て続けに見せられてうんざりした。「小さな閉ざされた世界で悶々とした青年の鬱積していたものが、やがて爆発し、そして走り出す。その先は海とか山とか、そこで大声を出してスッキリする」。設定こそ違えど、そんな感じの作品ばかりだ。それはおそらく30年くらい前から作り続けられている「東京ムービー」。しかも6本中5本がフィルムで撮られていた。これはもう教授陣の好み、アナクロニズムとしか言いようがない。

確かに文化を伝えるのに、その伝統を教えることはいい事だ。だが、デジタルカメラの表現力が飛躍的に向上し、SDカードに無限に収録できるような時代に、ましてやこれからの時代を担う若者に、あえて難しいフィルムを扱わせるということがどれだけの意味を持つのか、私には理解できない。それでいい作品ができればいいが、未熟な若者たちに「残り、後、〇〇フィート!」なんて脅迫をすれば、撮影、美術、演技において散漫になることは目に見えて明らか。まぁ何かの意味を信じてやっているのだろうが、せめて今の時代と環境だからこそできる新しい可能性を、たとえ教授たちが教えることができなくても、そのきっかけを若者たち自身が見つけるような教育をするべきではないだろうか?

先輩やレジェンド達へのリスペクトがないわけではない。ただそれは彼らと同じ手法で同じような作品を作るというものではなく、彼らの映画に対する精神と情熱をもって、今の時代に出来うる最高のものを作るということなのだ。もし彼らが今を生きていれば何をするだろう?そう考える事こそ本当のリスペクトというものだと思う。

こんな時代にこそワークショップをやるべきだ

とは言え、専門学校や大学に就職率を忘れてくれというのも難しいだろう。どうしても今現在の状況にマッチした人材を育てるのが第一ということなのだろう。そこでワークショップというものがとても重要だと考える。現在のところ、メーカーの新製品発表という意味合いを持つワークショップが多く開催されているが、学校ではできない映画を作るための教育を根底からやっていくべきだと思うのだ。それこそ若者だけではなくベテランでも年配者でも受けられるようなものはあまり見られない。

ビデオカメラの表現力が革命的に進歩したのは10年足らず前の事。それまでの常識の中で撮影していたビデオグラファーはベテランであれプロであれ、学ばなければならない。そこから現実的に小さなチームで映画を作るきっかけを与え、プチシネがどんどん生まれるような環境ができていけば素晴らしい。更に出演者も一同に学べるようなワークショップなら素晴らしい機会になるだろう。そこに被写体がいて、被写体も常に撮られるという状況だ。

何より小さなチームのメリットは何と言ってもコミュニケーションの濃密さだ。そういう場で意気投合すれば、もうすぐに作品が生まれる。受講料を抑えるにはスポンサーは必要だろうが、メーカーや販売店が積極的になってくれることを切に願う。常々思うのだが、日進月歩の製品がああなった、こうなったと説明するだけではなく、それをこう使えばこんなに面白い事ができるよ!という文化的アピールまで手を伸ばせば、結果的にマーケットは拡がる。その中から素晴らしい作品が生まれれば、更にアーティスト、つまりユーザーは増えるだろう。だからこそメーカー、販売店が力を入れるべきだと思う。

何れにしても、ハリウッドや東○やテレビ局がどういうお金で映画をどう作っているかなんて関係ない。身近なカメラとパソコンがあれば少しの仲間と劇場レベルの映画を作れる。そういう時代が来ていることは確かだ。もうバンド組むくらいの感覚で映画ができてもおかしくない。それをなんとか伝えたい。大学や専門学校で無理ならば、小中学生でも構わない。そして私たちも次々生まれる新技術に振り回されることなく、美しく意味ある映画を作るために学ばなければならない。

最近私がワークショップで講師をしていて感じるのは、若い役者に関わらず、全体的にコミュニケーション能力が落ちて来ている。だが映画を作るのにはそれは致命的なことだ。裏を返せば映画を作ることで生身のコミュニケーションを取り戻せるきっかけになるように思う。そしてそれを教えると、始めはみんな躊躇するが、最後には決まって生き生きした目になる。これは新型カメラの性能を紹介するだけでは決して生まれないダイナミクスだ。“ヒト”が使ってこその道具。使うところまで導くワークショップがどんどん増えていってほしいものだ。


WRITER PROFILE

ふるいちやすし 自身で脚本、監督、撮影から編集、音楽までもこなすマルチプレーヤー。


[ Writer : ふるいちやすし ]
[ DATE : 2018-03-30 ]
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