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[Point of View]Vol.85 NHKエンタープライズ「ネップアンフィニ」、4K HDR制作ワークフローにAJA FS-HDRを採用

2018-06-08 掲載

専用ハードウェアが実現する、HDR制作最大のメリットとは

4K・8Kコンテンツ制作を効果的に行うワークフローブランドとして高い評価を得ているNHKエンタープライズ「ネップアンフィニ」。今回、AJA社のHDRリアルタイム変換コンバーター「FS-HDR」を新たに採用し、より効率的でコストパフォーマンスが高いシステム構築を実現するとともに、HDR制作現場に大きな変革をもたらそうとしている。Colorfront Engineを使いこなしてきたネップアンフィニだからこそ実現できる、業界最先端の4K HDR映像制作とは。NHKエンタープライズ グローバル事業本部事業開発センター デジタル・映像イノベーション エグゼクティブプロデューサー 伊達吉克氏にお話しを伺った。

NHKエンタープライズ グローバル事業本部事業開発センター デジタル・映像イノベーション エグゼクティブプロデューサー 伊達吉克氏

4K制作を支えるワークフローブランド「ネップアンフィニ」とは

NHKエンタープライズが2014年に立ち上げたネップアンフィニは、4K・8K番組制作ワークフローを確立するにあたり、その中核となるソフトウェアとして開発された。

伊達氏:様々なカメラフォーマットやフレームレートが混在する4Kコンテンツの制作において、それらを効率的に管理し、テレビ番組制作に適応させることは必須課題。そういった課題を解決するために開発したソフトウェアがネップアンフィニです。

その結果、ネップアンフィニは4K制作市場に大きなインパクトを与え、システムとして他のポストプロダクション(以下:ポスプロ)などにも販売された。現在ではソフトウェア名称のみならず、ワークフローのブランド名称として知られている。

あらゆる変換プロセスを司る「FS-HDR」

 pov83_FS-HDR_mullticnannel_workflow_big.jpg※画像をクリックすると拡大します
 pov83_FS-HDR_4Kworkflow_big.jpg※画像をクリックすると拡大します

FS-HDRは、1RUラックマウント型の万能コンバーター・フレームシンクロナイザー。4K/UltraHDおよび2K/HD/SDのコンテンツ制作ワークフローにおいて、リアルタイムで低遅延処理と色の忠実性を実現する。放送局やOTT事業者、ポスプロなどに必要なHDR/WCGに特化して設計されたAJA製品だ。

アカデミー賞やエミー賞の受賞歴を持つ、ハンガリーのColorfront社と提携して開発された同製品には、Colorfront社独自のビデオ・カラースペース処理アルゴリズムColorfront Engineを搭載。4K/UltraHD/2K/HD/SDでのカラースペース変換、フォーマット変換、フレーム同期、アップ/ダウン/クロスコンバージョンに対応。また、マルチチャンネル処理機能も実装されており、 最大4チャンネルの2K/HD/SDのHDR/SDR変換を同時に行うこともできる。

最大の特徴は、SDRからHDR、HDRからSDR、HDRから他のHDRフォーマットへの変換を、小型の1RUスタンドアロン機器でリアルタイムに処理できること。BT.709とBT.2020の相互変換、さらにはHD SDR(BT.709)素材とUltraHD HDR(BT.2020)素材の変換など、カラースペースとアップ/ダウンコンバージョンを同時に行える、万能コンバーターに仕上がっている。

Colorfront Engine搭載のFS-HDRがもたらした汎用性

ソフトウェアベースの変換エンジンとしてColorfront Engineを活用してきたネップアンフィニにとって、FS-HDR採用の決め手となったのが「ハードウェアの利点」だという。

FS-HDRのHDR/WCGカラー制御機能に利用されているColorfront Engineの画像処理アルゴリズムは、HDR/SDRの制作を単一ワークフローで実現できるシステムとして高く評価されており、ネップアンフィニにおいても中核のひとつになっている。

一方、ソフトウェアベースのColorfront Engineでは、稼働するためにハイスペックなPCと様々なオプションが必要とされ、価格面を含め汎用性に課題があった。Colorfront Engineを搭載したFS-HDRは、量産型のスタンドアロン機器としてハードウェア化されているため、システム全体をシンプルにまとめるとともに、価格面の課題も解消し、ライブ放送などのリアルタイム制作を保証する。

SDR制作のノウハウをHDR制作に活かせる機能性

改めて伊達氏にFS-HDR、そしてColorfront Engineの魅力について聞いてみた。

伊達氏:Colorfront Engineが特に優秀なのは、SDRにおいても「HDR感」を見た目に残すことができることです。私たちがSDR制作で培ってきたノウハウとクオリティをそのままFS-HDRに転用することができる。僕らが目指してきた「テレビ番組制作のための仕組みづくり」の中でも、極めて大きな意味を持ちます。

Colorfront Engineがハードウェアに搭載されたFS-HDRについても、「これまで利用してきたソフトウェア版と遜色なく使えている」と評価。過去4年間の蓄積を活かせることに加え、専用ハードウェアならではのメリットも生まれてきたという。そして何よりも、FS-HDR導入の最大のメリットは、4K制作現場に機材ごと持ち込めるようになったことだとしている。

ハードウェアだからこそできる現場持ち出し運用

NHKエンタープライズでは現在、FS-HDRを専用カートに組み込み、4K制作現場に持ち込み、運用するという新たなスタイルを確立した。

4K HDRとはどのような映像なのか、現場の制作者が実際に見て確認することが、この運用方法の目的。いわゆる“作り手の意図”をより正確に反映すべく、ネップアンフィニが新たに提唱する4K HDRコンテンツ制作のスタイルだ。

伊達氏:これまで再現できなかった色域や輝度が、HDRでは再現できます。これを制作側が理解し、演出手法の一つとして取り入れていくことで、HDR化の意義が生まれます。

撮影現場でFS-HDRの仕上がりを確認することができれば、制作段階から意のままにFS-HDRを活用することができる。無論、現状のモニター事情等を考慮すれば“完全版”とまではいかないが、それでもコントラスト、暗部やハイライトの出方を現場で確認することができれば、HDR時代の新たなコンテンツ制作への一歩となる。

その先鞭を切るのがColorfront Engineであり、それをハードウェアとして搭載したFS-HDRというわけだ。

制作者の意識を変えたHDRのインパクト

NHKエンタープライズでは、すでに現場にFS-HDRを持ち込み、実践に取り組んでいる。その場でFS-HDRを確認可能となった点について、現場制作者の反応も上々だという。

伊達氏:今まで気にしていなかった部分を気にしなければならない、とネガティブに考える制作者はおらず、みな「演出に活かしたい」と考えてくれています。百聞は一見にしかずで、実際にその眼でFS-HDRを確認することで「より良いコンテンツを作りたい」という制作者の精神に訴えかけることができるようです。

FS-HDRの機能性により、手間をかけずにHDR化を実現できている点も大きいという。

伊達氏:映像の質が上がることがわかりやすいオプションとして、HDRの敷居をいい意味で下げてくれています。ポスプロにとってはもちろん、制作プロダクションにとっても放送にFS-HDRを本格的に採用するためのツールとなりえます。

ポスプロ作業が完了するまで待つのではなく、現場で最終的な図の仕上がりを確認、描くことができる。この有用性は、制作者たちにも大きなインパクトを与えているようだ。

AJAとColorfrontへの信頼

現在、ネップアンフィニは15社で採用されており、放送局の系列を超えて動くことも多く、それぞれの得意・不得意を活かしつつ、4K、8K、FS-HDRなど高度なコンテンツ制作において協力体制を築いている。今回のFS-HDR導入については、ネップアンフィニをすでに採用している各社も高い関心を寄せているそうだ。

伊達氏:ハードウェア化によって、Macでも使えるようになったのは大きな利点でした。新規の拡大はもちろん、すでにネップアンフィニを採用している既存各社にとっても、運用の幅が拡がりました。

実際、ソフトウェアをMacで利用する際には、HDR/SDRの同時出力ができず(4K出力が2系統必要となるため)、両者を見比べながら作業するためには高価なWindows版を用意する必要があった。FS-HDRの登場は、こうした作業環境を大きく改善するものであり、汎用性は飛躍的に高まったと言える。

Colorfront Engineを搭載したAJAへの信頼も厚い。

伊達氏:日本国内での知名度を含め、AJA製品の信頼度は高いですね。FS-HDRもColorfront Engineの良さをしっかり引き出した製品にまとまっています。

実際、ネップアンフィニにはFS-HDR以外にも、Io 4K、Ki Pro Ultra、Corvid 88やその他ミニコンバーターなど、様々なAJA製品が組み込まれており、ワークフローを支える存在となっている。

今後に向けた展望

NHKエンタープライズは、NABでの発表直後からFS-HDRに注目し、2017年9月に製品を導入した。前述のとおり、現場への導入を含め、すでにコンテンツ制作で活用されており、その有用性を高く評価している。

「現場への持ち出し」という新たな活用方法が生まれたことに伴い、今後の製品にもそうした使い道に対応した展開を求めているようだ。また8K制作を見越した運用も視野に入れており、伊達氏は「HDRに関しては今後、8K制作が増えてくると考えています」とコメントしていた。

製品のポテンシャルを最大限に引き出し、より効率的なワークフロー確立を目指すネップアンフィニからのニーズは、AJA製品のさらなる進化に好影響を与えてくれそうだ。

FS-HDRが支えるHDR制作の革新的取り組み

データ管理を軸に、4K、8K、FS-HDRなどの次世代サービスを放送へ持ち込むためのワークフローを確立してきたネップアンフィニ。「テレビ番組の制作にオフラインとオンラインのワークフローを持ち込んでも、実用に耐えられる仕組みが作りたい」という同社が掲げていた当初の狙いは、いまなお進化を続ける次世代サービスにもその対応力を見せている。

そして、FS-HDR導入に伴う現場へのシステム持ち出しは、ポスプロとプリプロダクション、そしてFS-HDR制作のワークフローにおいて、大きな変革をもたらすことが期待される。

伊達氏:HDRは、これまでと異なる感覚を演出できるプラスアルファの要素です。当然、視聴者の皆様にもこれまでにない体験を提供できる。その良さを活かすためにも、FS-HDRを活用した新たな現場制作環境の形を提唱していきたい。

現場とポスプロが一体となった、新たな画づくりへの追求。この取り組みにおいてFS-HDRが担う役割は、極めて大きい。


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編集部 PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートを中心にお届けします。


[ Writer : 編集部 ]
[ DATE : 2018-06-08 ]
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