今年はバンクーバーでの開催。写真はバンクーバーの観光名所として知られるガスタウンの蒸気時計
txt:鍋潤太郎 構成:編集部

はじめに

夏である。夏と言えばSIGGRAPHである。SIGGRAPH 2018は、カナダ・バンクーバーのダウンタウンにて、8月12日~8月16日の5日間開催予定である。

今回も恒例のSIGGRAPH 2018見どころを予習してみる事にしよう。渡航前、スケジュールを検討する際にご活用頂ければと思う。

※このコラムで紹介されている内容は7月後半の情報です。開催内容、時刻や会場のホール等が予告なく変更される事も予想されます。最新情報は、SIGGRAPH 2018公式サイト最新のアドバンス・プログラムをご参照ください

SIGGRAPHって何?

まずは「SIGGRAPH(シーグラフ)」をよくご存知ない方の為に、SIGGRAPHとは何か?を簡単にご紹介しておこう。SIGGRAPHは、毎年夏にアメリカで開催される、コンピュータ・グラフィックス分野の世界最大級の国際コンベンションである。正確には国際学会および展示会なのだが、連日映像作品の上映やVFXメイキング講演、ユーザー・イベント、パーティー等が開催される事もあり、その楽しさや華やかさから「祭典」的な存在としても知られている。

国際学会の性質にふさわしく、大学の研究者や、ハリウッドのVFX現場で開発された最新技術の論文発表も行われ、ここで公開された論文が、最新ハリウッド映画やゲームの技術に応用される事例も少なくない。アメリカのCG・VFX界では「情報共有」の考え方が浸透しており、こういった最新技術を惜しげもなく公開し、みんなでシェアしていこうという姿勢が見られる。その姿勢はオープンソース等に代表される業界標準化にも通じるものがある。

SIGGRAPHの歴史は古く、第1回は1974年にコロラド州の都市ボルダーで、参加者わずか600人で開催された。参加者数及び出展者数のピークは1997年のロサンゼルス開催で、参加者48,700人に出展者539。それからは徐々に規模が小さくなり、ここ数年は参加者14,000人前後、出展者数150前後を推移している。昨年のロサンゼルスは参加者16,500人とやや改善したものの、近年の開催規模は残念ながら最盛期の3分の1程度に縮小してしまっている。しかし、CGの最先端技術の論文発表や、VFX作品のメイキング講演、エレトリック・シアターに代表される映像作品の上映など、まだまだ魅力は満載である。

SIGGRAPHは、毎年開催地を変えて実施され、過去にはボストン、シカゴ、フロリダ、ダラス、そしてラスベガス等の全米各都市で開催された事もあった。しかし近年は規模縮小の影響もあってか、CG&VFXが盛んなロサンゼルス近郊やカナダのバンクーバー等で開催される事が多い。そんな中、来る2020年には初めてワシントンD.C.での開催が計画されているそうで、久しぶりの東海岸での開催が楽しみである。

SIGGRAPHでは「この場に来ないと見れない、門外不出の映像」が公開される事も少なくなく、著作権の関係でオンライン等では公開されていない極秘映像の数々を見る事が出来る。また、SIGGRAPHの場で憧れの著名人に出会えたり、実際にVFXを制作した著名VFXスタジオのスーパーバイザー等によるメイキング講演が生で聴講出来るのは、大変貴重な経験となるだろう。

バンクーバー国際空港から、ダウンタウンへの移動手段は

SIGGRAPH 2018の会場となる、バンクーバー・コンベンションセンター(SIGGRAPH2011にて筆者撮影)

会場のコンベンションセンターはバンクーバーのダウンタウンにあり、多くの方はダウンタウン近郊のホテルに宿泊される事と思われる。バンクーバー国際空港(YVR)からダウンタウンへの移動はいくつか方法があるが、信頼できる消息筋によれば、スカイトレイン(SkyTrain)と呼ばれる電車を利用するのが便利だという。ダウンタウンまで9ドルほど、25分程度で乗り換え無しで移動が出来る。

詳細はこちら。荷物が多い方、観光も含めいろいろ車で巡りたい方は、レンタカーを借りるのも楽しいだろう。

チケット&レジストレーション

SIGGRPAH2018のチケット&レジストレーション情報はコチラから見る事が出来る。最もリーズナブルに視察しようと思えば、機器展だけ(Exhibits Only)に入場出来るチケットは50ドルから。視察目的によって様々な種類のチケットがあり、最も高いBusiness Symposium & Full Conference Platinumのチケットは、非会員&7月20日のディスカウント期限以降だと2,500ドル(高い!)。

※学割も用意されているので、学生のみなさんは要チェックである

昨年から、レジストレーション・バッジにID写真が入るようになった。これは、他人のバッジで入場する事を防ぐ目的があるらしい。その関係で、友人のバッチを借りたり、職場の同僚とバッチを使い回したりする事が出来なくなったので、ご注意。オンライン・レジストレーションの際にはJPEG画像が必要なので、上記リンクをチェックしてほしい

※チケットの購入は事前にオンラインでも可能だが、現地に行ってから窓口で購入する事も出来る

アドバンス・プログラムとアプリを入手しよう

SIGGRAPH 2018のアドバンス・プログラムのPDFが公式サイトから閲覧&ダウンロード出来る。

アドバンス・プログラム

まずはこれをゲットして、全体像を把握しておくと、行動予定が立てやすくなる事だろう。アドバンス・プログラムは、スケジュールが時系列で掲載されているので大変判り易く、使い勝手も良い。内容は定期的に更新されているので、既にダウンロードした方も、ご出発前に最新のPDFファイルに更新しておくと良いだろう。また、スマホ用アプリも用意されているので、こちらも便利である。

チケットの種類によってアクセスに制限がある

SIGGRAPHにはさまざまなイベントや講演があるが、チケットのカテゴリーによっては入場出来ないものあるので、注意が必要である。

チケット(レジストレーションのカテゴリー)は下記の6種類がある。

フル・コンファレンス・プラチナ 売り切れ/SOLD OUT
フル・コンファレンス
セレクト・コンファレンス
エキシビット・プラス
エキシビット・オンリー
ビジネス・シンポジウム(新設。週末限定+オプション付)

アドバンス・プログラムを見ると、各イベントに入場可能なチケットが、上記のような色のドットで識別されている。例えば、ハリウッド映画のVFXメイキング講演等が見れるプロダクション・セッションは、

Production Sessions

のように記載されており、「セレクト・コンファレンス」以上のチケットでないと入場出来ないようになっている。事前にアドバンス・プログラムを確認した上で、購入するチケットを決めると良いだろう。

今年の見どころ

さて、今年で開催45周年を迎えるSIGGRAPH 2018だが、今年はどんな見どころがあるのだろうか?ひとくちに「見どころ」と言っても、参加される方の専門職種によって着目点が異なると思うが、ここではVFXアーティストの諸兄が興味を持ちそうな分野を、筆者の独断と偏見に基づき、ピックアップしてみた。


■基調講演

SIGGRPAH2018の基調講演は、ILM(インダストリアル・ライト&マジック/本社:サンフランシスコ)のシニア・バイス・プレジデントに5月に就任したばかりのロブ・ブレドー氏が予定されている。ILMxLABにおける最新VRテクノロジー、ILMにおけるVFXワークフロー、話題の映画作品にまつわる話など、興味深く幅広い内容のスピーチが行われる事が期待されている。基調講演を聴講するには、「ビジネス・シンポジウム」「セレクト・カンファレンス」「フル・カンファレンス・プラチナ」「フルカンファレンス」のカテゴリでのレジストレーションが必須となる。

Keynote Sessions
Monday, 13 August, 2-3:15 PM
会場:West Building, Ballroom AB


■機器展(Exhibition)

機器展を一回りするだけで、今年のトレンドが把握出来る(SIGGRAPH 2017にて筆者撮影)

Exhibition全カテゴリーのチケットが対象

会期中の火水木の3日間に渡って行われるのが、機器展。これにあわせて月曜に現地到着のスケジュールを組む方も多いようだ。

ここでは、さまざまCG/VFX関連のソフト&ハードの最新動向を見る事が出来る。会期中に一回りするだけで、今年のトレンド、各分野の勢い、そして大人の事情などが一通り把握出来る場でもある。2D&3Dアプリケーションの各ベンターが構えるブースでは、最新バージョンのデモや、ユーザー事例のプレゼンテーションなども行われる。人気アプリケーションのTシャツやバッジ、ノベルティ・グッズなどをゲットするのも楽しみの1つだ。今年は、昨年の出展社数150より多い、158社以上が出展予定という。ちょっと楽しみである。


■エレクトリック・シアター

SIGGRAPH2011(バンクーバー)のエレクトリック・シアター会場

SIGGRAPHの数あるイベントの中で、VFX屋にとって絶対に外せないのが、このエレクトリック・シアターである。著作権の関係でネット上では公開されないような映像も多数含まれ、まさに必見である。昨年までは夜の2回のみの開催だったが、今年はVFX関係者が多く参加する事を見込んでいるのか、月・火・水の夜3回が実施されるようだ。良い傾向である♪

セレクト・コンファレンス以下のカテゴリーのチケットは、別売りチケットを購入すれば鑑賞可能である。

Electronic Theater
Monday 13 August 6:00 PM-8:00 PM
Tuesday14 August 9:00 PM-11:00 PM
Wednesday 15 August 8:00 PM-10:00 PM
チケット:40ドル(但しフルコンファレンス以上には、このチケットが含まれている)
会場:West Building, Ballroom AB

※日によって開始時刻が異なるので、ご注意を
※火曜だけ遅い時間帯なので、この夜に呑み会やパーティー参加を予定されている方はご注意(重要)
※コンピューター・アニメーション・フェスティバルの一環として、VRシアターも連日開催予定である

■Virtual, Augmented and Mixed Reality – Immersive Pavilion

昨年も大好評だったVRビレッジ(SIGGRAPH2017にて筆者撮影)

2016年から始まったVRビレッジは昨年も好評だったが、SIGGRPH 2018では、これを更に発展させた展示を開催するという。これは、バーチャルリアリティ(VR)、拡張現実感(AR)と複合現実感(MR)の最先端情報を垣間見る為の「全く新しい、没入型パビリオン(Immersive Pavilion)」という形で、

(1)ゲームを体感出来るVrcade

(2)規模の大きな展示を行うVillage

(3)コンピュータ・アニメーション・フェスティバルの一環でもあるVRシアター

の3つで構成される予定だという。場所はEast Buildingの Exhibit Hall Aで、日曜から木曜まで、連日開催される。

入場可能なチケット:全てのカテゴリ

詳細はコチラ

Sunday, 12 August,1:30-5:30 PM
Monday, 13 August,10 am-5:30 PM
Tuesday, 14 August,10 am-5:30 PM
Wednesday, 15 August,10 am-5:30 PM
Thursday, 16 August,10 am-3:30 PM

会場:East Building, Exhibit Hall A


■トークス

各分野の舞台裏やアイデアを披露する「トークス」も、VFX関連の面白いプレゼンテーションが聴講出来る。下記はその一例だが、今年もかなり盛りだくさんである。

Talks

詳細はコチラ

Skinny & Flexible
Time:Tuesday, 14 August 201810:45am – 12:15PM
会場:West Building, Room 301-305

-Robust Skin Simulation in ‘Incredibles 2’
-Mobilizing Mocap, Motion Blending, and Mayhem: Rig Interoperability for Crowd Simulation on ‘Incredibles 2’
-Bringing Skeletons To Life for Coco
-Blow it Up Real Good

Time:Thursday, 16 August 20183:45PM – 5:15PM

Location:West Building, Room 211-214, Vancouver Convention Centre

-‘Star Wars: The Last Jedi’ − Effects Simulation
-A Collocated Spatially Adaptive Approach to Smoke Simulation in Bifrost
-‘Rampage’: A Pipelined Approach to Managing Large-Scale Character-Driven Effects
-SimpleBullet: Collaborating on a Modular Destruction Toolkit


■プロダクション・セッション

ハリウッド映画のVFXメイキング講演等が見れるProduction Sessionsは、オススメ(SIGGRAPH 2017でのProduction Sessionsにて筆者撮影)

ここでは、最先端技術をプロダクションに応用したプレゼンテーションが行われ、毎年かなり見応えのあるメイキング講演が聴講でき、まさにVFX屋必見である。下記はその中からおもしろそうなものを抜粋。

詳細はコチラ

プロダクション・セッションは、セレクト・コンファレンス以上のカテゴリーが対象だが、例外として12日の日曜日に、全カテゴリーのチケットを対象とした、「ジュラシック・パーク」25周年を記念し、元ILMで「アビス」「マスク」「ターミネーター2」等を担当したパイオニア、スティーブ・ウィリアムズ氏をゲストに迎えての特別試写が行われる。興味のある方は要チェック!である。

Production Sessions:“Jurassic Park”25th Anniversary Screening(with Steve “Spaz” Williams Introduction)
Sunday, 12 August, 8:45-11:15 PM
会場:West Building, Ballroom AB

下記は、セレクト・コンファレンス以上が対象の通常プログラムから、面白ろそうなものを抜粋。

今年は、「ブレードランナー2049」「ゲーム・オブ・スローンズ」「インクレディブル・ファミリー」「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」のメイキング講演に加え、「シュガー・ラッシュ2」、Laikaの新作「Missing Link」などの未公開作品の極秘映像なども公開される予定。

Production Sessions

LAIKA’s “Missing Link”: Raising the VFX Bar
Tuesday, 14 August, 3:45-5:15PM

Three Keys to Creating the World of“Ready Player One”
Wednesday, 15 August, 10:45AM-12:15PM

“The Incredibles 2”: Suit Up, It Might Get Weird!
Wednesday, 15 August, 2-3:30 PM

Generations of Houdini in Film
Wednesday, 15 August, 3:45-5:15 PM
Industrial Light & Magic
Double Negative
Walt Disney Animation Studios
Framestore

Making the Kessel Run in Less Than 12 Parsecs – The VFX of“Solo: A Star Wars Story”
Thursday, 16 August, 2-3:30 PM

The Making of Marvel Studios’“Avengers: Infinity War”
Thursday, 16 August, 3:45-5:15 PM

ジョブ・フェア

海外でのポジションを探すなら、ジョブ・フェア(SIGGRAPH 2017にて筆者撮影)

SIGGRAPHでの就活やジョブ・リサーチを予定しておられる方は、是非こちらへ。リクルーターやスーパーバイザーとコネクションを作れるチャンスの場でもある。ここでは、www.creativeHeads.netの求人板を通じて、SIGGRAPH開催前、そして終了後も求人中の各社とコネクションを築く事が可能となっている。事前に書籍「ハリウッドVFX業界就職の手引き」を読んで海外就活の予習しておく事をお忘れずに!

JOB FAIR(全カテゴリのチケットが対象)

会場:機器展会場内

Tuesday, 14 August, 9:30am-6:00PM
Wednesday, 15 August, 9:30am-6:00PM

おまけ

(1)シーグラフ以外の見どころ

過去の本欄で筆者がご紹介した「SIGGRAPH“以外”の意外な見どころ~バンクーバー編~」では、バンクーバーでのSIGGRAPH以外の楽しい情報を、そこはかとなく書き綴っている。4年前の記事ではあるが、ご参考になる事と思う。

(2)期間中、現地での個人セッションをご希望の方は、ご連絡を!

筆者はSIGGRAPH 2018期間中、現地にて視察&取材予定である。海外VFX就職のご質問やご相談、海外のVFX業界の最新動向等についてお話を聴いてみたい個人or企業の方を対象に、アポイントメント・ベースでのセッションを、空きスケジュールを利用してお受けする予定である。ご希望の方は、nabejuntaro@gmail.comまで。

おわりに

SIGGRAPH 2018の参加を予定している、そこアナタ。念の為に、今すぐパスポートの有効期限をチェック!←コレ、意外と落とし穴である。、筆者の周囲でもパスポートの有効期限切れに気づかず、海外旅行を断念されたケースをチラホラお見掛けしている。

皆さん、「家に帰って、玄関の鍵を開けるまでが、SIGGRAPH」です。どうか安全で快適な旅を。それでは、SIGGRAPHで!

WRITER PROFILE

鍋潤太郎

ロサンゼルス在住の映像ジャーナリスト。著書に「ハリウッドVFX業界就職の手引き」、「海外で働く日本人クリエイター」等がある。