txt:柏原一仁(銀一株式会社) 構成:編集部

RØDE Microphonesの歴史を紐解く

RØDE Microphonesというブランドをご存知だろうか。その名の通りマイクを製造しているメーカーだが、どこの国のブランドだろうか。アメリカ?それともヨーロッパ?音響系の機材はヨーロッパのものが多く、「RØDEはオーストリアのブランドだっけ?」と聞かれることも少なくないが、実はカンガルーが飛び跳ねる、オーストラリアのブランドだ。

その歴史やどう製品が作られているのか、知っている人も少ないだろう。今回は、RØDE Microphonesというブランドについてご紹介したい。

1月のシドニーのビーチ。日差しサイコー!

RØDEはオーストラリア・シドニーに本社をおく音響機器製造ブランド。RØDE Microphonesはブランド名として呼称され、企業としての名称はFreedman Electronicsである。Freedman Electronicsは、RØDE Microphones、EVENT、Aphex、SoundFieldの各ブランドの開発・製造を行う企業で、2017年には創業60周年を迎えた。意外なことに歴史は長いのだが、日本にRØDEが知られるようになったのは2000年代前半のことではないだろうか。

RØDEは内製にこだわり、多くの製品をシドニーの本社で製造している。オフィス・工場・倉庫が一体となりコンパクトに見えるが、その中にはさまざまな機械、製造ライン、チェックルームから梱包ラインまでもが所狭しと並ぶ。

多くの企業が外注、リソースのアウトソーシングを進めている昨今、その真逆を行き、超高額な工作機械をどんどん導入し、自社での製造を拡大し続けている。営業チーム、マーケティングチーム、デザインチーム、技術チームが一堂に会するオフィスは抜けがよく、製品アイデアから設計までの流れが見通しやすい。これに自社で持つ工作機械を組み合わせれば、プロトタイピングにとどまらずプリプロダクションサンプルの製造までをローコスト、ハイスピードで行うことができる。

製造も、たとえば外注していれば製造数が読めなくてパーツが余る、足りないということも発生するが、自社製造であれば需要に合わせて調整できる(なんと真鍮製のXLRコネクタピンまでシドニーで作っている)。これによって、コストパフォーマンスの高い製品を世に出せる好循環が生み出されている。近年では積極的に技術を持つ会社を買収し、その技術をFreedman Electronicsグループの製品開発に活かしていくことで、さらなるパフォーマンスをRØDEの価格で実現している。

マーケティング手法も、放送・音響業界のそれとは違い、独自の手法をとる。早くからソーシャルメディアによるプロモーションに力を入れ、総フォロワー数は2018年7月現在、のべ77万6000人。また、My RØDE Reelというショートフィルムコンペティションを2014年から毎年開催しており、世界中から1500以上もの応募作品を集めている。多くの協賛企業からも協力を得て、賞品総額100万ドル以上と一大イベントを行っており、ひとつのマイクメーカーのやるイベントの規模を超えているのでは…と思うほど。ビジネス的なやり取りよりも、よりユーザーとの繋がりやコミュニケーションをとることに重きを置く企業姿勢からくるものだろう。

製品保証の期間の長さも、コミュニケーションのひとつかもしれない。RØDE製品は、一般的な製品と比べて長い製品保証期間を設定している。たとえばガンマイクの多くは10年間の製品保証。メーカーHPよりユーザー登録していただければ、10年保証の証書が発行される。もちろん無料だ。カメラに比べて、レンズやマイクは製品の寿命が長い。だからこそ、愛着を持って長く使ってもらいたい。そのためのサポートとして、保証を厚くする。多くのパーツは日本国内でも保有し、なるべく早い対応ができるように準備している。

RØDEアンバサダーの久連石氏とRØDE本社に“突撃”

今年の1月、RØDE本社に日本でアンバサダーをしていただいているアオイスタジオの久連石氏と訪問した。久連石氏は北野作品をはじめとして、多くの映画作品の現場で20年以上活躍する録音マン。一方そのバックボーンには、音楽録音の現場で活躍した背景があり、森高千里やGLAYなどの録音にも携わっている。そんな久連石氏に現場でRØDEを使ってもらって1年ほど。そろそろ“溜まってきた”部分もあるだろうと、フィードバックのために本国へ“突撃”してきた。

もちろん日本だけではなく、世界中から「こうしてほしい」「ここがどう」という意見は毎日のようにシドニーに集まる。ひとつひとつの意見をまとめるのも容易ではない中、当日は開発のトップであるPieter Schillebeeckx氏が対応してくれた。彼は2016年にRØDEが買収したイギリスSound Field出身。Sound Fieldと言えば、最近のトレンドであるアンビソニックマイクの基礎を作り上げたブランドである。

いまは、アンビソニックマイクはもちろん、全てのRØDE製品の開発の指揮を執っている。久連石氏からのフィードバックはここでは具体的にご紹介できないが、技術的に、また経験的に裏打ちされたものばかりで、「なるほど」とうなる意見ばかり。「すぐに対応するよ」というものもあり、しっかりとフィードバックができた。これらのフィードバックが製品に反映されることを願うばかり…。

そのほかにも、社内を歩いていると営業スタッフやサポートスタッフ、製造から出荷に当たるスタッフまでもがみんな気さくに挨拶し、積極的に自分の仕事を熱心に説明してくれた。会社の雰囲気がとても明るく、また心から歓迎されていると感じたワンシーンだ。社内イベントの数も非常に多く、たとえば金曜日はビールデー、週末はバーベキュー、クリスマスにはみんなでパーティと、アットホームな空気が魅力的である。

社員同士が親睦を深めることにより、、会社が一丸となって、良い製品づくりに取り組めるのだろう。そして、自分たちが誇りに思える製品を通して、良い作品づくりに寄与したいという気持ちが広がっていくのだろう。もちろん、自分たちも楽しんで製品づくりに携わっているという空気が伝わってくる。そして、多少なりともその一端を担っていることに対して、個人的にも誇らしく思う。

訪問時にちらっと見た今年まだ発表されていない製品も、今後いろいろと出てくるはず。ぜひお楽しみに!

WRITER PROFILE

柏原一仁

リリーヒルワークス代表。銀一株式会社にて映像機器・写真用品のセールス・マーケティングを経て独立。好きな食べ物はからあげ。