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[OnGoing Re:View]Vol.45 ユーザーの要望をつめこんだPXW-Z280

2018-08-31 掲載

txt:猿田守一 構成:編集

PXW-Z280の使い勝手はいかに?!

4K対応ハンドヘルドカメラの切り札としてSonyが満を持して世に出すPXW-Z280(以下:Z280)は、NAB Show 2018の直前にSonyよりプレス発表が行われた。その後NAB Show 2018で実動機のお披露目となったわけだが、その時PRONEWSのNABスペシャルレポート取材で真っ先に取材させていただいた。その時担当されたSonyの方が「皆さんのご要望を全て入れましたよ」という第一声がとても印象に残っている。

今回PRONEWS編集部よりカメラを預かり、実際にどの程度我々ユーザーの要望が反映されているのかという部分も含め、使い勝手を中心に検証してみたいと思う。

Z280の特長は1/2インチExmorR 3CMOSセンサー搭載により、高感度で色分離に優れた高精細な4K収録が可能な点だ。また、広色域・広ダイナミックレンジでの記録が可能なHDR収録(S-Log3、HLG)が可能。4K収録で大きな問題であったピントの問題も本機では進化した顔検出AF機能により収録時の撮影者の負担を軽減させてくれる。「顔優先AF」モードに加え、顔のみを追従する「顔限定AF」、さらに特定の人物を登録する事で、その人物の顔だけを追従する「顔限定AF」モードなど、多岐にわたる撮影環境でも特定の人を追い続ける事が可能になった。この事はシビアな4K収録現場で大いに役に立つ機能ではないだろうか。

まず梱包を解きZ280を手に取った瞬間、バッテリーをまだ搭載していないにもかかわらず、かなりずっしりとした重さを感じた。付属のBP-U30を搭載すると約3kgの重量となる。ハンドヘルド型の筐体で3kg というのはヘビー級という感じではないだろうか。筐体はマグネシウム合金を採用しており、業務機らしく非常に堅牢な作りに仕上がっている。デザイン的にはPXWシリーズに共通するボタンやツマミ類の配置となっている。

使いやすくなったメニュー画面

撮影を行う時、必ず収録用メモリーのフォーマットや記録形式をどの方式にセットするかという事は撮影前に必ず行う事なのだが、この頻繁に行わなければならない部分が、今までのカメラではメニューの最下段付近にあるSYSTEMの中に紛れ込んでいる事が多く、非常にストレスを感じる部分であった。

このメニュー部分をユーザーがカスタマイズして、自分が使いたい機能をUSER項目に登録する事でストレスフリーなセッティングを行えるようになる。この機能は既にPXW-X200に搭載されていたが、さらにブラッシュアップされた形で本機に搭載された。このUSER部分には19の項目を登録することができる。登録や削除、移動などとても分かりやすい形で設定できる。メニューボタンを押すと最上位部分にこのUSER欄があるのはありがたい。またこのUSER項目はアサイナブルボタンに割り当てる事も可能だ。必要時にすぐUSERメニューにアクセスできる事は非常に有難いと感じる部分である。

高解像度な17倍FUJINON製レンズ

Z280に搭載されているレンズは、広角側5.6mm望遠側95.2mm(35mm換算 30.3mm~515mm)となっている。引きがもう少し引けると良いのだが、レンズ部分の大きさやコストの関係からこの倍率とサイズのレンズになったと聞いている。このレンズはフォーカス・ズーム・アイリスそれぞれのリングでマニュアルコントロールできる3本リング仕様。

マニュアルでの動きはやはりENGレンズにはかなわないという印象だ。PXW-X200のレンズの動きに近い印象だ。もう少しフォーカスやズームリングに粘りがあると映像表現に幅がでると思うのだが、ズーム部分も消費電力の少ない(トルクの少ない)サーボモーターを使用するため、どうしても粘りがあると動きが悪くなってしまうというジレンマがこの手のカメラには課せられているようだ。

実際にフィールドで使用してみた感想だが、バリアブルNDを使う事により被写界深度を簡単に調節できる事が確認できた。開放値f1.9に加え、1/2インチの撮像素子ということで、1/3インチサイズよりボケ味のある映像を収録することができる。

 ong45_z280_ND4F16-.jpgBT.2100 ND1/4 F16
※画像をクリックすると拡大します
 ong45_z280_ND128Fopen-.jpgBT2100 ND 1/128 F1.9(開放)
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比較的ピントの山をつかみやすい高解像度のレンズではないだろうか。F12(2,000lx)の高感度S/N比63dBの低ノイズは伊達じゃない!試しに夜の暗い環境下での花火映像を撮影してみた。

 ong45_z280_HDR0dB-.jpgBT.2100 GAIN 0dB
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 ong45_z280_HDR0dB-.jpgBT.2100 GAIN 12dB
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 ong45_z280_HDR12dB-.jpggBT.2100 GAIN 18dB
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 ong45_z280_SDR0dB-.jpgBT.709 GAIN 0dB
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 ong45_z280_SDR12dB-.jpgBT.709 GAIN 12dB
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 ong45_z280_SDR18dB-.jpgBT.709 GAIN 18dB
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ゲイン0dBの状態でVFを確認すると、ほぼ見た目と同じ程度の明るさに写っている。ちなみに+18dBまで感度を上げたが、この時のノイズ感はやはり目立つものであった。この時の映像では後ろに写っている街の明かりが肉眼よりかなり明るく映っている事に驚いた。

https://www.pronews.jp/pronewscore/wp-content/uploads/2018/08/ong45_z280_Still0822_00019.jpg +18dBノイズ感はあるが報道系の取材時などではこの明るさは重宝するであろう。
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自分の中で「明るさは正義」という部分があるのだが、このカメラは十分なレベルのカメラであると感じた。

HDR系はHLGまたはS-Log3

このカメラに搭載されているHDR(ハイダイナミックレンジ)系のガンマはHLG(ハイブリッドログガンマ)とS-Log3のみとなっている。PQやS-Log2を搭載していなかったのが意外だった。この辺りはこのカメラの方向性から来るもので、主にシネマ用途というよりはBroadcast方向にベクトルが向いているので「放送用」と割り切った選択を行った様だ。HLGはBT.2100準拠なので、今後放送される4K HDR放送にも対応できる方式を採用するのは自然の流れだろう。この分野ではやはり業界を牽引していく立場のSonyなので、今後の流れを作るマイルストーン的なカメラになるのではないかと思う。

HLGを選択した場合以下の4つのプリセットを選ぶことができる(マニュアルより引用)。

HLG ITU-R BT.2100相当の設定
HLG1 HLG2よりもノイズを抑えた設定。但しダイナミックレンジが狭くなる
HLG2 ダイナミックレンジとノイズのバランスを考慮した設定
HLG3 HLG2よりもダイナミックレンジ広い 但しノイズレベルが上がる
 ong45_z280_BT709-.jpgBT.709
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 ong45_z280_BT2100-.jpgBT.2100 収録素材より切り出し
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本機でのHDR収録ではファインダーや液晶モニターはHDRに対応していないため、ガンマ表示アシスト機能を入れる事で撮影しやすい表示に変えることができる。ただし外部出力やメモリー記録された映像に関しては適用されない。

実際にHLGで収録された映像をHDR再生可能なモニター環境で視聴しなければいけないのだが、残念なことに今回はそのような視聴環境が無かったため、この部分の充分な検証が出来なかったことをお詫びいたします。

収録の要はSxS

本機はSxS PRO+、SxS PRO、SxS-1、SxSカードアダプターを使用する事で SDXCやXQDでも収録可能となっている。しかし、下位メモリーカードになるほど、記録フォーマットにより記録できない、または安定的な記録が望めない等の制限が生じてくる。

今回Sonyさんよりお借りしたデモ機にはSxS PRO+に対応するカードリーダーが同梱されていなかったので、残念ながらSxS PRO+で撮影したステージでの映像をPCに取り込むことができなかったのだが、後に付属のUSBケーブルを使う事によってPCに取り込むことができることが判明した。代わりにと言っては何なのだがXDCAM EXで普段使用しているSxS-1カードでの収録がどこまで可能なのか試してみた。

結果はXAVC-I UHDはNG。XAVC-L UHDは記録可能だった。さすがにXAVC-Iはイントラ記録なので最大600Mbpsとなるデータ量を記録する事は不可能であった。ただXAVC-Lではデータ転送速度は150Mbpsまでに抑えられているのでSxS-1でも十分対応が可能となっている。筆者もそうなのだがXDCAM-EXを使用していた者にとってはXDCAM-EXの資産をそのまま使うことができるので、新規にこのカメラを導入する場合メモリーに関しては投資を抑えられる。どうしてもイントラ収録が必要な場合はSxS PRO+が必要になるので、それぞれの現場環境に合わせて揃えると良いかもしれない。デモ機に同梱されていたSxS PRO+ 128GBは4KをXAVC-Iで収録した場合おおよそ22分という収録時間なので、あっという間にメモリーは一杯になってしまった。この辺りは注意が必要だ。

同時にSDXCカードでも検証してみたのだが、UHD XAVC-Lを選択した場合 モニター画面に「非サポートメディア」とのワーニングが一時出るのだが、収録は一応可能であった。長時間記録テストを行っていないので、コマ落ち等無く収録できるのかどうかの検証が必要(今回使用したSDXCメディアはSanDisk製Extreme PLUS V30規格のメディア)。

このカメラで採用されている記録フォーマットは下記の通り。

撮影時に気になったのだがメニュー上での記録フォーマット選択画面で、ビットレートやビット深度などが表示されると助かると感じた。以前のモデルでもそうなのだが、SPやLPモードと書かれていても実際には何Mbps?という事もある。現在収録用コーデックが乱立している中だと、意外と混乱してしまう部分ではあるので、この様な表記は各社していただきたいところだ。

便利機能を試してみる

PMW系のカメラに搭載されていた機能にオートアイリス時の読み出し範囲を決める項目が存在したのだが、このカメラにも搭載されている。

液晶画面上に四角い枠で表示されているのがアイリス検知エリア この枠はいくつかのプリセットがある。それ以外にカスタマイズ可能

この機能は例えばステージ撮影などのステージ上の明るさと背景部分の明るさが乖離した場合、指定した範囲の明るさを元にオートアイリス値を決めてくれる。なので背景が暗くてもステージ上の明るさを元に常にアイリスを合わせてくれるというありがたい機能。この機能があれば少人数でのマルチカム収録などに投入できる。またGenlockの入出力も装備されているので、複数台カメラを使用したスタジオやステージ収録などマルチカムな現場でそれぞれのカメラの同期を取ることができる機能は実にありがたい。

4chオーディオ

HDモデルであったX200の後継という位置付けに近いモデルのZ280だが、X200で採用されていた電子接点マルチインターフェイスシュー(MIシュー)をZ280では上部に前後2か所に装備した。これにより前側にはオプションのHVL-LBPC(LEDライト)を装着し、後方にSMAD-P3D(シューマウントアダプター)を介し、2チャンネルポータブルチューナーURX-P03Dを装着することができる。これによりオーディオを4ch記録可能となっている。

MIシューは前後2か所

一つ気になったのが、Z280のオーディオレベル調整ボリュームだ。このボリュームは左に回し切ったところ(絞り切った)でクリックしオートモードとなる。仮にオートモードで収録中にマニュアルに変更するような場合はオートモードから右にツマミを回し、クリックを超えたあとはマニュアルの絞り切った0となり音声が途絶えてしまうので、その辺りは充分注意が必要だ。

AI機能搭載?!顔認識オートフォーカス

今回のテストではこの顔認識オートフォーカスを検証する事が出来なかったのだが、NAB Show 2018の会場で実際に手に取ってみた時の印象はかなり賢いという印象だった。顔にフォーカスが合うまでの時間や両目が見えていない横顔での認識精度など、かなり満足のいく内容に感じた。

顔優先AF:人物を検知した際顔にフォーカスを合わせるモード

顔限定AF:人物を検知後、画面から顔が隠れた場合などフォーカスを固定。一時的に顔が隠れた場合のフォーカスの迷いを防ぐモード

顔登録機能:認識されている顔の中から任意の顔を登録できる。この機能によりインタビューの時など取材対象者を優先してフォーカスを追うことができる。

詳しい事はSonyサイト。

最後に

本機を使用して気になった部分をもう一つ上げるとすると消費電力の多さだ。仕様書には記録時にビューファーや液晶表示をONにした状態でHDMIやSDI出力をONなどフルに動かした時は36Wという大飯喰らいとなってしまう。これには少々驚いた。筆者はPMW-350ユーザーなのだが、PMW-350はビューファーを使用した状態でも18Wとかなり低消費電力だったため、36Wという倍の消費電力という事に驚いた次第だ。同梱されてきたBP-U30ではあっという間にインジケーターが下がってきてしまうため、外に持ち出しての検証時にはかなり電源のON・OFFに気を使った。久しぶりにBP-90を使用していた頃のベーカム運用時の事を思い出してしまった。

全体を通すと、流石Sony!かなり優秀なカメラという印象だ。この価格帯のカメラで、ここまで完成度の高いカメラという事は、今後の放送業界や業務分野でHD機器からの買い替えや買い足し需要に大きく貢献するのではないかと思う。またBT.2100に対応したハンドヘルドカメラというマイルストーン的な位置付けになる記念すべき製品ではないかと筆者は思う。9月には弟分のPXW-Z190がリリースされる。今後のSonyの展開に目が離せない。


WRITER PROFILE

猿田守一 企業用ビデオ、CM、ブライダル、各種ステージ記録など撮影から編集まで地域に根ざした映像制作活動やCATV局などへの技術協力なども行っている。


[ Writer : 猿田守一 ]
[ DATE : 2018-08-31 ]
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