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[Report NOW!]「そうかえん」スカパー8Kライブパブリックビューイング実験をスカパーが行う理由

2018-09-06 掲載

txt・構成:編集部

富士総合火力演習「そうかえん」で行われたスカパーの試みとは?

陸上自衛隊が毎年8月に行う、富士総合火力演習「そうかえん」。戦車等が実弾射撃するところを一般見学できる唯一の機会として、高い人気を誇るイベントだが、スカパーは4年前(2015年/平成27年度総合火力演習)からCS 124/128(4K)にて、業界に先駆けて4Kで生放送を行ってきた(HDもBSスカパーにてサイマル放送)。

平成30年度の今年は、これまでと同様の4K、HD同時生放送に加え、8Kのライブ収録にもチャレンジ、パブリックビューイングという形で、衛星経由の生中継の実証実験を行った。4Kと8Kのライブ収録と送信、再生をどの様な設備で実現したのか。そうかえんの舞台となる、東富士演習場の収録現場と、パブリックビューイングの場となったアストロデザイン本社(東京都大田区南雪谷)の模様をご紹介しよう。

8Kカメラ映像を共有しながら4K/8K両方の番組を制作するシステムを構築

F65RSは、BPU-8000との組み合わせで8K出力に対応したものを使用

まずは、富士演習場の収録現場。こちらは4K用(本放送向け)、8K用(パブリックビューイング向け)と別々に2台の衛星通信車を用意し、双方独立した送出環境を実現。制作の本拠となる中継車も、4K中継車を中心に、音声製作車、8K中継車と3台を用意していた。

これは8K映像からのダウンコンバートによるサイマル4K/HD制作ではなく、4Kカメラ2台、4Kスローカメラ2台、8Kカメラ3台と別々に用意し、4K/8Kの映像収録と制作をそれぞれ独立して行うためだが、さらに特長的なのは、8K→4Kへのダウンコンバーターはもちろん、4K→8Kアップコンバーターも用意し、相互に映像を混在できるシステムを構築。4K放送は8Kカメラ3台+4Kカメラ2台+4Kスローカメラ2台、7台のカメラによる制作を行いつつ、8Kパブリックビューイングは、8Kカメラ3台+4Kスロー2台、5台による制作という相互の映像を一部兼用しつつも、独立した別番組として送出するという、離れ業的なオペレーションを実現していた。また、4K/709 SDR、8K/2020 HLGと別々でのガンマで送出。4K-8K間は解像度に加えてガンマ変換も行って相互運用する複雑さだ。

アストロデザインの8KカメラAH-4801-G

個々のカメラに目を向けてみると、4KカメラはソニーのシステムカメラHDC-4300に加え、4Kスロー用にソニーHDC-4800/朋栄FT-ONEを用意。8KカメラはアストロデザインAH-4801-G、シャープ8C-B60A、ソニーF65RS+BPU-8000が使われていた。

シャープ8KカムコーダとPROTEC光伝送装置

これらのカメラは全て中継車に光ファイバで映像伝送をしているが、8KについてもPROTEC製光伝送装置を使い、12Gx4本分の映像に加え、リターン映像&リモートコントロール用信号含めて従来同様の1本の光ファイバケーブルで実現。敷設コストは4Kと変わらず、4K-8Kでカメラポジションの変更にも対応できるそうだ。

パブリックビューイング会場

一方、パブリックビューイングの場となったアストロデザイン本社では、衛星受信設備を屋上に設置。実は今回の衛星送信は8K映像1本としてではなく、2SI分割(2 Sample Interleave…2画素単位に細かく区切って4つの映像として分割する方式)により分割された4本の4K映像を個別にHEVCにエンコードし送信。受信側でも個別にデコードした後、再度束ねて1本の8K映像として再生する方式をとっている。そのため、エンコーダーの前段、デコーダーの後段共にフレームシンクロナイザを入れて同期をとり、8Kプロジェクターへ入力する必要があるが、既存の4Kエンコーダー/デコーダー環境の組み合わせで実現でき、送信設備に関して新規の設備を開発することなく実現していた(エンコーダー/デコーダー共に富士通製IP-HE950を4台使用)。

アストロデザインに設置されたパラボラアンテナ アストロデザイン側の受信、再生設備

会場では150インチの8Kプロジェクターで上映すると共に、スカパープレミアムサービスで放送している4K総合も同時に受信し4Kテレビで視聴できる環境も用意。8K/4Kの差がわかる興味深い環境となった。

8Kレーザープロジェクター

実際に視聴したが、8Kカメラによる映像を中心に制作しているPV会場の映像と、8Kカメラと4Kカメラ両方を使った4K放送との両立に成功しており、150インチサイズという大画面ながら、40インチの4K放送と見比べて解像度に遜色なく、巨大な戦車の映像を高精細に楽しめる8K映像のポテンシャルを充分体感することができた。演習現場で見学すると、観客席から戦車や砲塔まで200m以上離れてしまうが、100~80倍ズームによる拡大映像と、砲弾の発射の瞬間まで見えるスーパースローの映像も加わり、ある意味現場を超えた視聴体験ができたことも偽らざる感想だ。

スカパーが8Kに積極的に取り組む理由

スカパーJSAT株式会社 今井豊氏

現在スカパーは東経124/128度CSで4K放送を3チャンネル送出し、12月には東経110度CSで8チャンネル、BSで1チャンネルの4Kチャンネルを追加することを予定しているが、8Kのチャンネル開設の予定はない。しかし、今年5月にアストロデザインと富士通と共同で映像伝送実験を行い、今回の8Kパブリックビューイングを実現させるなど、積極的に8Kの制作・送出実験に取り組んでいる。その理由と狙いについて、スカパーJSAT株式会社の今井豊氏に伺った。

――スカパーJSATが8K送出実験に取り組む理由を教えてください。

12月からNHKさんが8K放送を行いますが、民間の放送局が8K放送するにはまだまだハードルが高く、まずは4K放送からと言うところではないかと思います。ただ、ここ1~2年でアストロデザインやシャープの8K機材、海外ではRED Digital CinemaやNLEの8K対応など放送周辺の機材が出てきました。もしかしたら、日本の視点や自分たちの都合とは別のところで8K映像が進化してしまうかもしれません。

現状の環境、すなわち研究開発を含まない4Kを中心した機材で今自分たちがどこまでできるのだろう?という答えを探すところからスタートしました。スカパーの視点で8Kの利用を考えると、衛星利用の観点からも、パブリックビューイングに応用して行くことが自然です。

――現状手に入る機材で構成されているというコメントでしたが、機材選定のポイントや複雑なシステムを構成し、動作を実現させる上でのポイント、やってみて苦労したところなどあれば教えてください。

まず過去の話になりますが、2012年に放送番組仕立てとしておそらく世界で最初の4Kによるパブリックビューイングを実現させた時の中心メンバーが、アストロデザイン・富士通・スカパーJSAT・ソニービジネスソリューションでした。これらのメンバーで色々意見交換している中で、そもそも8K送受信が既存4エンコーダー/デコーダーの組み合わせでできれば、8Kのハードルが下がるのではないか、ということでまずはアストロデザイン・富士通・スカパーJSATの3社で17年6月から検討をスタートしました。

当初はSQD分割(Square Division:田の字に4画面分割する方法)による送信をテストしましたが、4画面の複雑度の違いで画面の境界に線が出てしまいました。そこで、4Kシステムで2SI分割にエンコードすることで、違和感のない8K映像として伝送実験に成功したのが今年の5月で、この成功を元に、今回のチャレンジにつながったのです。

現場収録のシステムを構築する上で難しかったのは、今回のような既存の放送システムへ接続して4K放送を成立させながらどうやって8Kを実現させるか。既存の3G-SDI機材を使いつつ、新しい方式の12G-SDIを混在させ、HD/4KのSDRと8K/HDRの配信を同時に成立させたのですが、実際の映像を相互で視聴しつつ、手探りで妥協点を見つけるような調節が必要なケースもありました。

しかし、この環境が成立し、8Kカメラのダウンコンバート信号を4K放送の本線で使う事ができました。8Kカメラの映像を4K放送からスカパーオンデマンドのHD配信まで含めて、様々な帯域と解像度での送出に成功しました。これは現在までほとんど実例がないと思います。

4Kの世界においても、2012年に最初の4K中継をやった頃からは技術もかなり進み、12G-SDI、IP、2SI、などI/Fが大きく変わってきていますが、どういう場所や現場でどのような組み合わせが最適なのかについて、もっと知見を積まなければならないと考えています。

今回の8Kパブリックビューイングの経験でも、まだまだ検討しなければならないことがたくさんあることがわかりました。現在は4K/8K機材の混在ですが、数年経てばすべて8K機材で製作できるかもしれません。それに向けて今後も検証を重ねたいと思っています。

――話しは変わりますが、プレスリリースを拝見すると、IIJさんとの協力でハイレゾ音声での収録を行ったとあるのですが、今回の放送でハイレゾ音声を用いたりしたのですか?

私が最初にそうかえんを現場で見た時に、本物の音はこんなに違うのか!!と思い、なんとか近づく方法はないかいろいろな方々に相談しました。ハイレゾといっても、そうかえんは超弩級すぎる音声なのでどうなるのかやってみないとわかりません。

しかし、この難しい素材に対して、どこまで迫れるかをチャレンジするには非常に面白い試みだと思います。このチャレンジにIIJさんが賛同してくれて、今回のハイレゾ収録にご協力頂きました。ハイレゾ用にマイクを4本立て、4ch+1ch(放送で使用したコメンタリーブースの音声)を5.6MHz DSD(TASCAM DA-3000)で放送用の音声とは別系統で収録しました。

残念ながらライブ放送にハイレゾ収録の音声を使う事はできませんが、今回収録した音声を、既存のリニアPCM系とどう違うか、どこまで生の音に近づいているかを聴き込んでみて、今後の使い方を考えます。試験的にどこかのライブ会場のPAで鳴らして見ても面白いですね。なお、今回マイク位置に騒音計を持ち込んで測定して見ましたので、PA経由の音声と実際の音量と比べることもできるようにしてあります。

音声車の中

インタビューを終えて

8Kの送出と4Kの送出を独立して行う。一見すると豪勢に感じるが、通信衛星を運用するスカパーJSATならではの取り組みで、放送とパブリックビューイングの両立という新たなアプリケーションの提案という意味もあるのだろう。そうかえんの場を、映像、音声共に先端のフォーマットでの制作と収録の実験の場としたスカパーJSATが今後どの様なチャレンジを行うのか、これからも注目したい。


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[ Writer : 編集部 ]
[ DATE : 2018-09-06 ]
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