txt:ふるいちやすし 構成:編集部

「千年の糸姫」の映画館上映が決定!

私事で恐縮だが、「千年の糸姫」の上映が、10月よりやっと2館決まった。ロンドン、台湾、マドリッドで多くの賞を戴いた本作も、日本での上映となるとままならない。かと言って、貸し館を借りて自主上映するという事は絶対にやめておこうと決めていた。

以前から読んでいただいている読者の皆さんはご存知だと思うが、モナコで賞を取った作品をそういう形で上映して酷い目にあったからだ。お金を払ってしまえばもう知らんぷり!ポスターも差別的に隅っこに貼られ、予告編を流してくれない所も多々ある。これではとても集客できるわけがない。

まぁ、集客の見込めない作品をプログラムに組み込んでくれというのにも無理はあるのだが、せめて宣伝くらい協力してほしいものだ。はなから儲かるなどとは思っていないが、そういう「勝手にやって下さい」的な態度を見ることが耐えられないのだ。お声をかけて頂こうなどとは思っていないが、せめて作品を見て、「一緒にやりましょう。」という映画館が出てくるのを待った。ひたすら待った。もう無いなら無いでもいい。世界配信は果たしている。そんなつもりでいたら、周りが動いてくれた。

最初に、私のマネージャーがシネマノヴェチェントと繋いでくれた。わずか28席のミニミニシアターだが、ちゃんとプログラムとして組み込んでくれた。それでも一週間となると結構な人数が必要になる。それも個人的には殆ど縁のない横浜という土地でだ。

まずは館長に会い、正直に動員に対する不安を告げたのだが、どういうわけか過去の作品も同じ日に特集上映をやろう!などと言い出して下さった。これはもう頑張るしかない。ポスターやフライヤーはもちろん、予告編もDVDに焼いて、ロビーにポータブルプレイヤーを置かせてもらい、回しっぱなしにしてもらうようにお願いした。すると館長は「こんなに一生懸命やる人はそうそういない」と感心して下さった。なるほど、映画館の冷たさに文句ばかり言っていたが、制作者側にも熱意が足りない人がいるのだな。

映画館は経営だから仕方がないとしても、制作者側がお客さんに観て頂くという事に熱意が持てないというのはどういうことなのか?その熱意を見せ合えばお客さんに来ていただくという共通の目的の為に必ず手を取り合えるはずなのに。結局、館長のご協力により、ポスターやフライヤーは他の映画館や周辺の商店にも置かせてもらえるようになり、もちろん私も飛び込みでいろんなお店にお願いして回った。

直前になったら通りがかりの人にフライヤーを配ろうとも思っている。今、集客力がないのは事実だ。だけどそれを得ようとするならこの上映を機会に頑張るしかないのだ。

幸せの連鎖は続く

さて、ひとつ決まったのならこの際続けてみようと思い、以前、映画祭の招待作品に選んで下さった群馬県伊勢崎市のシネコン、プレビ劇場の館長にもお願いしてみたら、ここもまたすぐにプログラムに組み込んで下さった。撮影地の下仁田町にも近いので、ポスター、フライヤーは多くの場所に置くことができた。ここは場所柄、お昼間の方が人が来るらしく、朝一と昼間のなんと二回上映だ!一番小さなスクリーンと言ってもシネコンだ。席数200は下らない。いやいや、無理でしょうと思わず弱音を吐いてしまったが、とにかく一人でも多くの人にこの作品を観てもらいましょう!という館長の言葉に胸を打たれた。ああ、頑張りたい。

また、プレビ劇場ではDCPではなくBlu-rayでの上映に対応してくれる事になった。が、予告編だけはDCPにしてほしいという。そりゃそうだ、予告編一つずつ手がけするなんてあり得ない。またかなりの出費になるが予告編を流してくれるだけでも有難い事だ。そう思って業者を検索し始めて目を疑った!DCP変換の値段がとんでもなく下がっている。アシストという専門業者では基本料金が30,000円であとは1分につき950円。予告編は3分なので全部で32,850円。にわかに信じられず電話してみるとすぐに営業の方が飛んできてくれた。エラーも出したこともなく実績は充分で、知識量もあり、様々なアドバイスを頂いた。これなら本編でも15万くらいで収まる。本当にビックリした。昔にとある業者から一本50万の見積もりをもらい、それ以来怖くてDCPにするなんて事は考えもしなかった。せっかく入選した映画祭もDCP上映だったので辞退したこともあった。とんだガラパゴスだ。

ところで私は24pのパタパタ感が好きではなく、ずっと30pで作品を作っているが、この業者は30pでもなんでもやってくれ、また、様々な変換技術も持っている。だが映画館の方はまだまだ24pにしか対応していなかったり、前例がなかったりで結局予告編は24pにするしかなかった。このようにDCPに関してもまだまだ過渡期であるようで、恐らく来年には環境も価格もまた変わっているだろう。安くなったとは言え、プチシネ的には手痛い出費。インディー映画の為に例えばProResでの上映とか、コピーガードを諦めれば、上映館の負担にならないハイクオリティー上映の方法もあるはずだし、ハードウェアはとっくに揃っている。しっかり見守っていく必要があるようだ。

「千年の糸姫」の上映は調子に乗って東京や大阪のいくつかの映画館にも話をしたが、こちらはあえなく失敗。すぐに貸し館を勧められたりシカトされたりと結局嫌な思いをする事になった。もちろん全部回った訳ではないので、これで終わりではないのだが、まずは動員力をなんとか付けなくてはならない。皆さん!是非是非お越し下さい!

WRITER PROFILE

ふるいちやすし

映画作家(監督・脚本・撮影・音楽)。 日本映画監督教会国際委員。 一般社団法人フィルム・ジャパネスク主宰。 極小チームでの映画製作を提唱中。