txt:宏哉 構成:編集部

膨大なデータ量を整理可能なSSD

映像制作を生業にしている限り、頭と財布を悩ますのがストレージの問題だ。HDから4K、いまや8Kと、年々動画データのストレージ消費量は増大している。私の場合、まだ8Kとは無縁だが、4K動画を扱うことは日常になった。業務内容的には4Kのイントラフレーム圧縮や、ましてやRAWなどを扱うことは特になく、最大150Mbps程度の動画データを遣り繰りするのが現状だ。

しかし、たとえHDであってもイベント収録などの長時間撮影や、4KによるPV撮影での膨大なカット数の管理と保存は、日々ストレージの遣り繰りとの戦いでもある。データの消費容量が増えれば、コピーやバックアップなどにも時間が掛かる。データのコピーが終わらないと本題の編集作業に取りかかれなかったり、バックアップ作業という非生産的な作業に時間を費やしたりと、データ量の増加と転送速度の問題は常に表裏一体で、業務の効率性にも影響する。

旧来、大容量ならHDD、転送速度ならSSDという棲み分けの考え方があったが、昨今の状況は変わりつつある。SSDが転送速度を向上させつつ、大容量化を実現しているからだ。

今回、日本サムスン株式会社(以下:Samsung)より、同社のSSD製品をお借りする機会を得た。お借りしたモデルは、

【内蔵モデル】

  • 860 PRO 4TB
  • 860 PRO 1TB

【USB接続モデル】

  • T5 2TB
  • T5 500GB

これらのSSDを私の映像制作の現場での活用してみた。

Samsung SSD 860 PROの仕様

Samsung SSD 860 PROシリーズ

Samsung SSD 860 PROシリーズは、2.5インチの内蔵型SSD。容量のラインナップは4TB/2TB/1TB/512GB/256GBがある。コントローラに同社開発の「Samsung MJX」を搭載し、高速処理を実現。スペック上の転送速度は、シーケンシャルライトが最⼤530MB/秒、シーケンシャルリードが最⼤560MB/秒を謳っている。これらの転送速度は接続するPCの性能や仕様にも左右されるが、HDDよりも十二分に高速な転送を期待できる。

収録データの転送をチェックしてみたが、読み込み速度は430MB/秒を出していた。この時に使用したインターフェイスはネット通販で購入した1,000円強の怪しげなS-ATA to USB3.0変換アダプタであったが、これだけの転送速度を出せている。SSD 860 PROに対するネット上の第三者のベンチマークテストなどを見てみると、リード/ライトともにほぼスペック値を出している結果をみるので、接続方法さえ最適化すればSSDが持つ本来の速度を十分に引き出せそうだ。

さて、SSD 860 PROシリーズは容量と転送速度の点で現場の強い味方となるが、さらにTBWの点でも優れている。TBWとはTotal Byte Writtenのことで「総書き込みバイト数」を意味する。SSDは半永久的にデータを書き込めるわけではなく、書き込み可能な上限値がありそれをTBWという形で示す。TBWは謂わばSSDの寿命でありSSDが生涯書き込める総データ量だ。

SSD 860 PRO 4TBモデルは4800TBW、1TBは1200TBWで、仮に全データ領域を書き換えたとしても1200回の書き込みが可能で、365日毎日全領域を使っても3年以上使える計算になる。映像制作の現場ではそういう使い方はまず行わないだろうから、現場的にはSSDの寿命を気にする必要の無いTBWだと言える。

これは勿論、編集用データストレージとしてPCに組み込んだ場合でも大きなアドバンテージだ。TBWの限界はSSDが書き込めなくなるだけではなく、不良ブロックやデータエラーの増加にも関係してくるため、より長寿命を謳うTBW仕様のSSDが安心だ。

SSD 860 PROの現場利用

Samsung SSD 860 PRO/4TB

今回お借りしたのは4TBと1TBのモデルで、いずれも動画製作向きの大容量タイプだ。4TBもあれば、ノンリニア編集用のPCの動画用ストレージとしても十分に活用できるが、今回はロケで使う一次収録メディアとして利用した。

既に、映像制作の機器にはSSDに直接収録できるモデルが多数存在する。私はATOMOSのSHOGUNやSAMURAIシリーズを初期の頃より導入しているユーザーだが、現在でもこれらを主要なレコーダーとして活用している。私の住む関西圏でのテレビ取材は、まだHDCAMカメラの需要が残っている。減価償却も終わったHDCAMの様な機材で仕事が稼げるのは有り難い事だが、同時に経年劣化による機器トラブル…特にテープ走行系の故障などの可能性も常に頭に置いておく必要がある。さらに、ノンリニア編集への完全移行が終わっている現状、テープメディアからのインジェストは手間と時間を増大させるワークフローのボトルネックだ。

そこで、SDカードやSSDなどのソリッドメディアによる収録は現場では必須となっている。テープ系トラブルのバックアップになり、また編集時にテープからのデジタイズをスキップする事ができる。それなら最初からXDCAMで行けば…と思うのだが、制作プロダクションがXDCAMに対応していなかったり、XDCAMによるワークフローが確立できていない現場があったりと、まだもう少しだけHDCAM利用が続くだろう。

HDCAM+SAMURAI BLADE+Samsung SSD 860 PRO

さて、今回SSDをお借りしたタイミングで少年野球大会の収録があったため、その現場にSamsung SSD 860 PROを投入した。8月半ばの屋外炎天下、朝から夕方までの長時間収録だ。そうした環境下に於いても安定した収録が可能かを確認するためのテストだ。ただし、今回のカメラはXDCAMを使っている。そこにSAMURAI BLADE+SSD 860 PROという組み合わせでテスト使用した。

SamsungとATOMOS製品の組み合わせというのは、私は以前から使っている組み合わせで今回も特に不安は無かった。実際、2日間に渡って行われた少年野球大会の全試合をトラブル無く記録でき、現場での安定性をみせてくれた。

さらに、SSDそのものを収録メディアとして利用できるカメラレコーダで、SSD 860 PROを利用してみた。今回、特別にBlackmagic DesignよりBlackmagic URSA MiniとBlackmagic URSA Mini SSD Recorderをお借りすることができたので、併せてレビューしたい。

今回お借りしたURSA Mini 4.6K EFは、EFマウント採用の4.6Kスーパー35センサーを搭載するカメラ。最大15ストップのダイナミックレンジを持ち、12G-SDIや5インチ液晶モニターを備える。標準対応メディアはCFastだが、オプションのURSA Mini SSD Recorderを取り付けることによりSSDに直接Cinema DNGまたはProRes形式の動画を収録することができる。また今回は、セットでフルHD有機ELを搭載するURSA Viewfinderと肩乗せ/三脚利用に対応するURSA Mini Shoulder Kitもお借りできた。

URSA Mini 4.6K EF

URSA Mini 4.6Kは設定の多くを、5インチ液晶モニターのタッチパネルを使って行うカメラで、独立したスイッチなどで操作できる設定は限られている。テレビENGに慣れているユーザーには、よりENGカメラライクなURSA Mini Proをお勧めしたい。

しかし、URSA Mini 4.6Kはワンカットワンカットをしっかりと決め込んでレンズを向けるには、安心して使えるカメラだ。特にデジタルフィルムのしっとりとした質感は何か制作意欲を掻き立てるものがあった。今回は4.6K 12bit RAWを使ってSSD 860 PROへ直接収録するテストを行った。使用したSSDの容量は1TBで、圧縮率はLosslessで44分の収録が可能だった。それを編集PCにてDaVinci Resolveを使ってフィニッシングするという流れを試してみた。

LossLess圧縮の場合、計算上のデータレートは約380MB/秒となったがSSD 860 PROであれば十分に受け止められる転送速度で、実際44分間の連続レコーディングを行ってみたが問題なく収録できた。

収録後のDaVinci Resolveでの利用は、RAW展開の速度やデータレートを考えてPC内蔵HDDではなく収録したSSD 860 PROを直接使って行っている。あくまでもテスト環境での使い方なので、実際の業務で使う場合は内蔵SSDなど、高速ストレージへのコピーを済ませてからポスプロ処理することをお勧めする。SSD 860 PROとDaVinci Resolveを使ったRAW素材の展開は軽快で、ポスプロ処理もストレスなく行うことができた。

DaVinci Resolveでのフィニッシング

Samsung Portable SSD T5

私の映像編集におけるメインマシンはタワー型のデスクトップ機で、内蔵HDDを編集用データストレージとして活用し、アーカイブズ用にリムーバブルHDDを複数活用している。そして、さらに外付けのHDDやSSDをノートPCでの編集に活用することが多い。ノートPCを利用した編集は、国内外問わず出張の多い私には必須の環境だ。

出張前にメインマシンから編集データ一式を外付けストレージにコピーし、出張先のホテルで夜な夜な編集することが実に多い…。その際に、どのような仕様の外付けストレージを利用するかは、悩ましい。大容量で低コストを求めればHDDなのだが、移動時の耐久性や転送速度、またサイズなどを考えるとSSDに軍配が上がる。

そんな私の悩みを笑い飛ばすかのように、目の前に現れたのがSamsung Portable SSD T5だ。とにかく小さい。シャツの胸ポケットにスッポリ入ってあまりある小ささで、縦57.3mm×横74mm。厚みも10.5mmで重さは51gだ。

これだけ小さいと、バッグの何処に収納するかも考えなくて良い。HDDと違って耐衝撃などを考慮したHDDケースも不要なので、本当にちょっとした隙間に差し込んでおくことができる。海外出張のように少しでも荷物を減らして軽量化したい時などは、このPortable SSD T5は最適だ。

だが、映像を扱うストレージとなれば問題は容量と転送速度だ。Portable SSD T5には、2TB/1TB/500GB/250GBがラインナップされている。今回は2TBと500GBのT5をお借りした。2TBもあれば通常の編集業務には十分な容量で、HDマルチカム収録したようなプロジェクトでも十分に格納できる。

Portable SSD T5はUSB3.1Gen2接続対応でT5側のコネクタはType-Cだ。付属するケーブルはType-C⇔Type-Aと、Type-C⇔Type-Cの2種類が用意されているので、最新のMacBook Proを使うユーザーも旧来のPCを使うユーザーも即利用可能。

今回、実際に編集プロジェクトを出張先に持ち出す為に、Portable SSD T5/2TBにデータをコピーしてみたが、USB 3.0接続でシーケンシャルライトが最⼤430MB/秒、シーケンシャルリードが最⼤410MB/秒前後をマークした。

スペック上は、USB3.1Gen2接続で最大540MB/秒の転送速度を謳っているので、PC側のホストコントローラ次第では更に転送速度の向上が期待できる。大容量のプロジェクトの転送も高速に行えるため、出張準備の最中にデータコピーの事を思い出して、急いで転送しても余裕を持って間に合いそうだ(笑)。

また、この小型・軽量なSSDはUSBメモリ感覚で使うこともできた。数メガバイトの小さなデータだとUSBメモリが使うことが多いが、Portable SSD T5ならUSBメモリのようなラフな扱いができるので、お借りしている間は細々としたデータ移動にも活用した。ハンドリングの良さはやはりHDDの比ではない。

ただ、ラフな…と言っても価格は高く、2TBで8万円台だ。この小型軽量・高速転送・耐久性に何処まで価値を見いだせるかはユーザー次第だろう。だが、MacBook ProのBTOで内蔵SSDストレージを2TB追加するよりはリーズナブルになる。私の様に複数のPC間で編集データを往き来させることがある場合は、外付けストレージでの運用も必須となるため、Portable SSD T5の価格設定は十分に魅力的で現実的だ。

まとめ

今回Samsung SSD 860 PRO とSamsung Portable SSD T5の2製品をお借りして、私の映像制作の現場で使ってみたが、容量と転送速度においては十分に満足できるものだった。耐久性や信頼性などは長期利用でしか判断できないので、この試用期間の範囲では明言できないが、少なくとも私の日常業務の環境下では遺憾なくそのスペックを発揮してくれたと思う。

Samsung SSD 860 PROを使って改めて認識したことは、4K~8Kとデータ量の増加する動画制作においては、大容量で高速転送を両立するSSDをカムコーダーで直接利用できるメリットは大きいということだ。RAWやProResによる収録を可能にするカムコーダも増えつつあり、大容量のストレージを求められる潮流はますます加速している。そして、コストパフォーマンスに優れる点も低バジェットの現場には重要なチェックポイントだ。今後、SSDを収録メディアに利用できるカムコーダーが増えてくることを期待したい。

そして、Samsung Portable SSD T5は外付けストレージの運用姿勢に転換をもたらしてくれるとも思える出会いだった。容量が必要となる映像制作では2.5インチHDDによる外部ストレージがコストパフォーマンスにも優れ現実的だが、2.5インチHDDとはいえ場所を取るし、扱いにも慎重さが求められる。一方、Portable SSD T5はその小型軽量さ加減が気軽な扱いを可能にし、運用の頻度も上げてくれた。このサイズからは想像できないような大容量と高速転送の実現は、ノートPCでのポータブル編集の場面を増やしてくれそうだ。

今後、更にSSDが大容量・高速化し、それに伴い低価格化が進めば映像制作の全てのワークフローがSSDの中で成り立つことは間違いなく、また現にそうなりつつある事を実感した。

機材協力:ブラックマジックデザイン株式会社

WRITER PROFILE

宏哉

宏哉

のべ100ヶ国の海外ロケを担当。テレビのスポーツ中継から、イベントのネット配信、ドローン空撮など幅広い分野で映像と戯れる。