© 2018 「palette」制作委員会
PRN Magazine ISSUE 10掲載分を加筆編集

もう一つの魅せ方を提案できるPanasonic AU-EVA1

発売以降人気を誇るデジタルシネマカメラPanasonic AU-EVA1(以下:EVA1)。その特徴的な機能である赤外線撮影を駆使し、作品「palette」を完成させた貫井勇志監督にお話しを伺った。InterBEE2018で実際にパナソニックブースでもデモが行われ大変好評だったEVA1による赤外線撮影。はたしてpaletteはどう制作されたのか貫井監督に迫った。

Panasonic AU-EVA1で現実的となったIR撮影

撮影現場の一部ともなった広大なアトリエで語る貫井勇志監督

――今回の制作スタイルは非常に珍しいと思いますが、IR撮影について教えていただけますか?

IR撮影自体はフィルム時代からの撮影方法で、新しくはありません。フィルムでのIR撮影といえば、空の青い部分が黒く落ち、白い雲が真っ白で、遠景がシャープに仕上がる。草木は白く写るというのがイメージされます。デジタルのIR撮影は、一般的には馴染みがないかと思います。これまでIR撮影は、フィルムにあたるカメラのセンサー前にIRカットフィルターが付いているため通常は困難です。

それをEVA1が変えてくれました。メニュー操作のみでIRカットフィルターがオンオフ可能な唯一のカメラだからです。屋外でのIR撮影はその都度太陽光の赤外線量に大きく影響されます。ロケ当日に天候や時間帯などの影響でIR撮影に不都合な状況に追い込まれても、即通常のシーン撮影に切り替える事が出来るのはスケジュール的にも大きなメリットです。

タイトルの「palette」に込めた思いとは?

――作品名の「palette」の由来を教えてください。

パレットは、絵画の道具です。画家たちのパレットそれぞれに色の配置や使い方などのルールがあります。作品名に意味が込められています。まさにカラーテーブルなんです。このIR撮影が絵の具であれば、どういう色合いの映像が描けるかな?と取り組みました。

今回、主人公だけが見ることのできる独自の色彩世界シーンを表現するためにIR撮影が必要でした。撮影映像をグレーディングさせ、この素材はこういう色に仕上がるという法則を見出しまして、まさに「palette」となりますが、この法則で、結構ビジュアル的にインパクトが強く、非日常や日常も表現できると確信しました。

いかに「自分のイメージした画」に近づけられるかが最大の課題でした。撮影する被写体の素材、時間帯、通常とIRライトのバランス等、さらに自作のIRライトも準備し、テストを繰り返しました。

デジタルでのIR撮影は、一つの表現手段となりうるのか?

――改めてデジタルでのIR撮影現場はいかがだったでしょうか?

今回の撮影現場は特殊でした。目測や露出計で明暗の判断など通用しませんし、何色に写るという事も一概に言えません。

例えば素材が異なる2つの黒い箱は、通常撮影であれば、黒い箱として映るでしょう。しかしIRの場合、素材によってはこの辺はオレンジ色っぽく、一方黒に映るという違いが出ます。 メカニズム的に物を見るということは、可視光では、反射する光の波長で色を判断しています。ところが、IRは降り注いだ赤外線がどれくらい物体に吸収されて、どれくらい「放射」されるかで色味が変化します。しばらく実験した経験則から、大体わかるようになりました。

IR撮影可能なカメラの登場により、これまでに無い映像表現の領域が大きく広がったと思います。ミュージックビデオや実験映像の類いと相性が良いのはもちろんですが、ドラマ作品においても「一体どのように撮影したのだろう?」IR撮影とは「目に見えない光を操って作り出す映像世界」だからです。

――今後もIR撮影での作品制作は行っていきますか?

IR撮影の経験があったからこそ、次の表現方法のヒントがありました。次回は、ぜひVARICAMでIR撮影したいですね。フラッグシップ機でもフィルターを外せばIR撮影は可能です。現場でセンサーむき出しで、フィルターを外すのは現実的ではないですけどね(笑)。

しかしその場合は、4台必要です。通常撮影とIR撮影2台を1組としてマルチカメラで押さえ、同じアングルで焦点距離コントロールを同時に行います。既に機材のことも考えています。

通常の映像制作も行いますが、Cinema41の名義でいろいろ制作活動をしていきます。これどうやって撮っているのだろうという映像を目指していきます。間を空けずに作品を短くても継続的にアウトプットしていきますのでご期待ください。

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PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートを中心にお届けします。