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txt:土持幸三 構成:編集部

甲府での映像制作ワークショップ

正月があけて間もなく、甲府商工会議所主催の映像制作ワークショップの講師として甲府市に行ってきた。甲府では脚本・監督作の「我王伝」三部作や、ネットシネマフェスティバル用の短編を同じ甲府商工会議所と制作したりとご縁があり今回のイベント開催となった。

甲府市は東京からも近いため便利で、最近特に映像作品で使われる場所。今回も東京から参加してくれた方もあり、朝から夕方までワークショップを受け、日帰りで東京へ戻るということも負担なくできるのが魅力の一つとなっている。

会場は歴史ある桜座

会場は甲府文化の発信地として名高い、桜座。甲府市は甲府駅周辺と、少し離れた旧甲州街道沿いに栄えた商店街があり、桜座は駅から徒歩10分少々、昭和の香りのする商店街にあるとても個性的な建物だ。午前中は小学校での授業と同じく映像の基本、引き画と寄り画の違いと役割を説明した。

その後、筆者も楽しみにしていた地元のプロガイドであるNPOつなぐの方々が古い商店街を以前撮影された映画やドラマの話を交えながら説明していただいた。この旧甲州街道付近の商店街は実に多種多様で歩いていて飽きることもなく、様々なシーンが撮影できると感じた。実際に撮影が行われた場所を説明して頂いたときに、「あのシーンはここだったのか!」と驚かされた場所も多い。

このような商店街が数多くある

筆者がロケハンで注意することは、ストーリーにマッチした場所であることはもちろんだが、近くで他のシーンが撮れるかや、車で来れるか、駐車場は確保できるか、トイレはあるかなど、様々な事を考えて決める。低予算が常なので効率的に撮影できることは非常に大きな決め手となるのだが、「我王伝」を撮影した場所は路地が入れ込み、路地によって個性も違うので非常に効率的で計三話の中にまんべんなく挿入されている。実は甲府市はじめ山梨県下で全体の3分の1程度は撮影しているのだ。

「我王伝」ではこのラーメン屋は抗争をのぞみこんでいる二階という設定で使用した

ロケ地めぐりが終了し、全員で昼食をとった後は桜座に戻って撮影機材の説明と監督・助監督など役割の説明をした。今回のワークショップの肝は参加者に実際、「我王伝」で使った場所で1シーンを再現してもらうということ。参加者を撮影チーム・出演チームに分けて終わったら入れ替わってもらうようにし、出演者が変わると監督やカメラマン、照明と録音も交代というシステムにして、できるだけ多くの役割を体験してもらった。

面白かったのはカメラを向けると場の空気がなごみ、出演者になると緊張でセリフを間違えたり、先ほどまでおとなしかった方がもの凄く良い演技をしてくれたりで、小学生もそうだがカメラの持つ力を再認識させられた。意外だったのは録音で、今回はワイヤレスは無しにしてマイクブームだけにしたのだが、セリフに合せてマイクを振るのが難しかったり、マイク自体を重いと感じたりと、この辺りは小学生とは違う反応で面白かった。

ご夫婦による怒鳴り合いシーン

撮影が終わったら再び桜座に戻って、筆者のノートパソコン画面を投影して撮影素材の取り込みから編集を見てもらった。やはり撮影に詳しくない方には編集作業で引き画と寄り画が組み合った時に歓声があがる。筆者はその感覚がマヒしているのかもしれないが、編集を見せる時にハッとさせられる瞬間でもある。ご夫婦でヤクザを演じて頂いたシーンは笑い声があがり、全員で撮影した素材で1シーンをつくりあげる体験を楽しんでいただけたみたいだった。

甲府商工会議所の今回のイベントは甲府市にある商店街の魅力を発見してもらい再活用するために実施されたものであるが、このような商店街は群馬県の高崎市周辺にもある。都心からの距離もあまりかわらないが、それぞれが刺激し合って昭和の香りのする商店街文化を後世に残していただきたい。そして、そこで撮影するドラマや映画が増えることを望んでいる。

WRITER PROFILE

土持幸三

土持幸三

鹿児島県出身。LA市立大卒業・加州立大学ではスピルバーグと同期卒業。帰国後、映画・ドラマの脚本・監督を担当。川崎の小学校で映像講師も務める。