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[デジタルシネマの歩き方]Vol.15 HYDROGEN ONEの今

2019-02-27 掲載

txt:林和哉 構成:編集部

HYDROGEN ONEのその後

平成の終わりが近づき、CP+やNABを控えて楽しみな機材が目白押しのこの頃。みなさんいかがお過ごしですか。筆者は暫く水面下に潜っていろんな事にチャレンジしていました。

あまり声高に語ったことのない経歴の中に、若かりし頃にミュージカル劇団の劇団四季で歌って踊って芝居をしていた、というものがあります。その身体表現方法、具体的な体のコントロールの仕方、ドラマ表現の実際を、演じ、演出するスキルとして最大限活用できる仕事をしておりました。

人の一瞬の機微を切り撮り、その世界をささえるトーンをグレーディングし、効果を加え、瞬間で勝負する実写作品。その対極にある、全てを計算しながら創るアニメーション、原点である舞台の演出。そこで溜めた知見を、またこの場を借りて少しずつご紹介して行ければと思っています。

さて。皆さんも既にRED DGITAL CINEMA社のスマートフォン「HYDROGEN ONE」についての情報は結構お持ちだと思います。いろんな意見がありますね。

  • でかい
  • CPUの世代が古い
  • スペックが周回遅れ
  • H4Vって期待外れ
  • カメラアプリの出来が悪い
  • スピーカーの音質が悪い
  • バッテリーの容量が大きいはいいね

っととと、ネガティブな意見が多いですね…。

筆者はRED党なものですから、PreOrderしたHYDROGEN ONEを使用しています。っで、ネガティブな意見を言っている人たちの気持ちも分かりつつ、多くのネガティブ意見の発信者はユーザーでない人が言っているのかな、と思ってしまいます。発売直後のHYDROGEN ONEは、それはそれは確かに「アレ」でした。はい。

スペック

筆者はAndroid OS機をはじめて使いました。前を知らないので比較が難しいですが、iPhone Xよりもサクサクと動いて、ストレスはない印象。操作体系がiOSよりもオープンでPC的なので、使いやすく感じています。

H4Vは期待外れ?

ここがユーザーと非ユーザーの境目な気がします。もちろん、ユーザーからの否定的な声があるのも当然ですが、筆者は、これこそ、じわじわとHYDROGEN ONE大好きになっていった理由です。もちろん、これが売りの機能ですから当然と言えば当然ですけれども。HYDROGEN ONEが発表された当時、

「これまで誰も見たことのない映像体験だ」

「写真では伝わらない。手にした者だけが時代の先端を見られる」

という触れ込みで、期待を煽りに煽っておりました。Leia Inc.というメーカーのデバイスを使っているらしいので、社名からして、立体ホログラムのデバイスではないか、という予想が立ち、日を追う毎に加熱していきました。

そうした中、リリースされたものは、「裸眼3D液晶を備えたアンドロイドスマホ」でした。裸眼で見られることはスゴいことですが、3D映像自体には目新しさはなく、

「…」

「…これじゃないんだよ…」

「見たことあるよ…」

という反応が少なからずあったのでした。

とはいえRED好きな筆者、何か新しい可能性を感じて触りまくる日々が始まったのでした。何かPV的なものを創ろうかと仕込み、あれこれと努めてみるのですが、普通のカメラで撮るものと大きな差異を出すことが難しく、アイデアに苦しむ日々が続きました。

ある日、我が愛息がはじめて歩き出し、その姿をHYDROGEN ONEで捉えた時のこと。今目の前に起こっていた事と、HYDROGEN ONEの撮るH4Vの裸眼立体視画像の、記憶とも静止画の記録とも違う空間自体を箱庭に納めたかのような小宇宙に、目を見張りました。何気ない瞬間もキラキラとした瞬間にしてしまうトイカメラ感に、わくわくしたのです。

撮った直ぐ後に家族友人と一緒に見ることの出来る写真と同じ感覚で、立体視画像が複数人と同時にチェックできる。今までは、立体視の画像・映像を見るにはメガネや何かしらの両目を外界から遮断するデバイスが必要でした(裸眼立体視を可能にしたテレビはありますが、角度によって非常に見づらかった&大きかった&高かった)。

結果、感動は一人で享受するしか有りませんでした。

それが、あまりにも気軽に他者と感動を共有できることは、全く新しい映像体験でした。REDのJIMさん自体もこれが何を生み出すものなのかをつかみ切れていない雰囲気がありつつも、無限の可能性があると思ってHYDROGENの生態系まで創り上げてしまった。その勢いは本当にスゴい。

使っていくうちに、このカメラは、デバイスとしての新しい映像「体験」を提供してくれているものだということを理解しました。HYDROGEN ONEは、裸眼立体視を手軽に実現して、時間と空間を立体的に留めて記録したり、他者と共有できる「体験」を提案してくれているのでした。

これが今現在、HYDROGEN ONEでのみの楽しみであることに、ちょっとした喜びを感じるのでした。

カメラアプリの大幅なアップデート

HYDROGEN ONEは、カメラアプリがREDというメーカーが関わっているにもかかわらず、露出オート以外で撮影出来ないという状況でした。また、H4V撮影では、背面にあるレンズでは横撮りでないと立体視撮影が出来ず、インサイドカメラでのみ縦撮りが可能でした。さて、発売して3ヶ月過ぎた現在。

  • ISOとシャッタースピードのマニュアル調整モード
  • メインカメラで縦撮り(カメラを縦にすると「Beta」と表示されるあたり、慎重に開発を進めている様で好感が持てます)
  • インサイドカメラで横撮り(同じくBeta表示)
  • 他のSNSアプリとリンクして直ぐにシェアが可能

といったアップデートが公開されています。

マニュアル調整画面 Beta表示の画面

こうした頻繁なアップデートがREDらしいな、と思います。ベンチャー系は、ある程度製品が形になったらバグフィックスに時間を掛けず、顧客を巻き込んでベータテストみたいなところがありますが、REDは高い次元でそれを行っている希有な会社ですね。

アップデートで追加されたプロモード

「プロモード」。パッと聞くとフルマニュアルのモードのような印象ですが、メニューは一切変わりません。これは、記録方式にあらたな選択肢が追加されたものです。そもそも、H4Vで撮った画像が他のスマホに送られたときにどう処理されるのか、という疑問が湧くかと思います。

通常、JPGとして記録されたH4V写真は、他の携帯に持って行くと通常の2D写真となり、不思議なことに、その写真をHYDROGEN ONEに戻すと、また3D写真となります。行った先で上手く姿を変えるのですね。そうなった場合、困ったことがありました。加工をするにはどうしたらよいか。

その答えがプロモード。コンテナに押し込めないで、サイドバイサイドの画像として記録してくれるのです。

サイドバイサイドの画像

動画はどうかと言いますと。PCなどに持って行くと、拡張子が.H4Vとなっています。これをVLCなどに放り込むと、MP4として認識して再生してくれます。ピクセルサイズは3840×1080でフルHDサイズのサイドバイサイド動画として記録されていることが分かります。

サイドバイサイドの再生 https://www.pronews.jp/pronewscore/wp-content/uploads/2019/02/hayacinema_15_o.jpg Invisorによる画角表示
※画像をクリックすると拡大します

これをコンポジットのベースとして使えば、H4Vのアクションムービーも簡単に作れますね。こうして、コツコツとユーザーへの利便性を高めてくれているHYDROGEN ONE。これがスタートとして、3DVRの映像も柔軟に再生対応していくでしょう。

デジタルシネマ界隈を歩き回る筆者として、HYDROGEN ONEには注目していきたいと思っています。そして、キワモノと呼ばれてしまいそうなデバイスをブランディングも含めて一気に立ち上げたHYDROGENのメンバーに敬意を表しつつ、沢山の人に注目され、日本国内でもキャリアから発売されることを願っています。

何せ純アメリカ産のスマホです。大統領が黙っちゃいないでしょう(笑)。


WRITER PROFILE

林和哉 映像プロデューサー/ディレクター。入口から出口まで全てのポジションを守備範囲にしている。最新技術が好物で、各種セミナー活動も豊富。


[ Writer : 林和哉 ]
[ DATE : 2019-02-27 ]
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