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なかなかいいぞ!「AG-CX350」

2019年1月末にPanasonicより映像制作・放送に対応するハンドヘルドカメラの発表が行われた。この発表で登場したのは新シリーズとなるCXシリーズ。その第一弾として登場したのが「AG-CX350」である。発表が行われた翌月の2月中には発売となっており、Panasonicの本機に対する意気込みが感じられるように思えた。実際に手にしてみてのファーストインプレッションをお伝えしたいと思う。

本機の主な特徴(Panasonic報道資料より)

  • 広角24.5mm/20倍ズームと高精細・高感度新1.0型15メガMOSセンサー搭載
  • 4K(UHD)/10bit/HDR対応の高画質、高効率の新コーデックHEVC記録
  • NDI|HX対応のIP接続、RTMP/RTSPストリーミング対応

※ カムコーダーとして業界初。2019年1月現在(当社調べ)。使用には別途、NewTek社が提供するアクティベーション用キーコードが必要。NDIはNewTek社の「ネットワークデバイスインターフェイス」技術です。

使える光学系

CX350の光学系は8.8mm~176mm(35mm換算24.5mm~490mm)、20倍ズームレンズというなかなか使いやすい光学系を搭載している。実際に手に取って電源を入れ液晶画面を見た瞬間、「これは広い!」という印象であった。

普段同レビュー記事では毎回カメラの引き代の重要性を話しているのだが、本機に関してはほぼ問題ないレベルのワイド撮影が可能である。とくに室内でのインタビューやロケなど被写体までの距離が取りにくい現場では大変重宝する。35mm換算で24.5mmという広角は今までのハンドヘルドカメラではなかなか実現できなかった広角域と言ったところだろう。

ちなみに2/3インチカメラで換算すると6mm弱という広角なのだ!さすがにショートズームの引き域とまではいかないが、標準ENGレンズでの引きよりもさらに引けるという事に驚きである。

マニュアル用3本リング

マニュアルコントロールにこだわった3リング構成のレンズにも好感が持てる。それぞれ各部の駆動は機械式ではない電子式なため、タイムラグやリングの回転角に対するレンズ動作の進み具合が一定しないという、この種の機構にはどうしてもついて回る問題もはらんでいる。

しかしながらそれぞれ独立したオート機能とを組み合わせる事により上手く操作できるのではないだろうか。実際にズームリングでの操作は最広角から最望遠まで190°弱回さなければならず、マニュアル操作で最広角から最望遠まで一気にズームという事はちょっと厳しい。しかし、本機はグリップ部分に搭載されているズームレバーが実に良い位置にあるため、三脚での収録時でも写真の様に左手でズームレバーでのズーミング操作が容易に行うことが可能である。

このカメラは特にズームリングとズームレバー操作を切り替える操作が必要ないため、リングでの操作からズームレバー操作を一連で行う事が可能となっている。発売前のデモ機であったため、ズームリングでのじわっとした微妙な動きは分解能の問題のためかスローな動き出しが苦手な印象であったが(こちらは近日改善されるファームアップがリリース予定)、ズームレバーでの動きでは特に問題は感じず、他の機種とほぼ同様な動きという印象であった。

ローノイズで高画質

高精細・高感度の新1.0型15メガMOSセンサーを搭載し、10ビットの高画質で、4K(UHD)収録が可能(SD~UHD)となっている。搭載されているコーデックとしてはH.264の他にH.265/MPEG-H HEVC Main10 Profileによる最大UHD 400Mbps 4:2:2 All-I(29.97p)記録が可能。この辺りはHEVC規格に準ずるため、他社カムコーダーとほぼ共通のようである。Intel製CPUのPC(Skylake世代以降)であればCPUに搭載されたQuicSyncVideo機能を利用する事でH.265/HEVCの再生がスムーズに行うことが出来る。

このカメラは非常にローノイズで、レンズの明るさがF2.8~4.5という事もあり通常の明かりの室内でも何ら問題なく撮影することが出来た。仮にゲインを上げたとしてもノイズの乗り方は非常に細かく目立ちにくく処理されているので+12dBまで上げても気にならないレベルではないかと思う。メニューから標準モードと低照度モードの選択可能だ。

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Gain 0dB
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Gain +18dB


記録フォーマットはSD 720×480iからUHD3840×2160 59.94pまで対応している。またコーデックはAVCHD、MOV(AVC)、MOV(HEVC)が用意されており、カラーサンプリングも4:2:0、4:2:2ビット深度8、10bitと様々な組み合わせの中から最適な組み合わせを選んで収録できる。最大ビットレートは400MbpsAll-I 4:2:2 10bit。

今後のファームウェアのバージョンアップにより、放送用のP2ファイル形式MXFにも対応予定で、AVC-Intra/AVC-LongGコーデックによる収録が可能になる模様。MXFフォーマット記録の場合、収録媒体はmicroP2カードを使用することになる。

カードスロットはダブルメモリーカードスロットとなっている。プロの現場では信頼性が重視されているのでありがたい。また使用できるメモリーデバイスはSDXC/SDHC/microP2が使用可能となっている。

シーンファイルは6種類ノーマル/FLUO/SPARK STR/CINE/HLGとなっている。CX350はLCD画面にWFMとVECTORを出すことが出来る。この表示もかなり見やすい。今回映像出力にこのWFM・VECTORを出すことが出来なかったのでLCD画面の再撮となるが各シーンファイルの違いを参考にしてほしい。

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ノーマル
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蛍光灯

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SPARK


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STR
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CINE

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HLG


ノーマルを基準とすると各モードのガンマカーブ以外にも蛍光灯・SPARK・CINEは色成分も積極的に変えて雰囲気を変えている事が分かる。また調整項目もかなり充実しており、なかでも16軸独立色補正機能は厳密な色管理を行う場合大変助かる機能である。これらの機能はAG-UX180に搭載されていた機能を踏襲しているようだ。

16軸独立色補正機能

この機能をうまく使うことで他社製カメラとの色味を合わすことも可能となり、番組収録やマルチカメラ収録の現場ではかなりアドバンテージを持つことになるだろう。

オーソドックスにまとめられた側面パネルのボタン配置は現場での運用を助けてくれる

ネットワーク機能

今回CX350の特長の一つでもあるストリーミング機能・NDIなどのネット環境に接続した場合の使い勝手等の検証が残念ながら時間の都合上出来なかった事をお詫びいたします。

本機にはストリーミング方式としてRTSP・RTMPをサポートしているためFacebookやYouTubeなど多くのストリーミングサービスに対応している模様。これからのIP接続に対応した機能を搭載するなど今までのカメラとは違った使い方を提案している。

まとめ

実際に手に取ってみての印象をざっとご紹介させていただいたが、何よりも最初に本機を手に取った時の“軽さ”が特に印象に残っている。最近の4Kハンドヘルドカメラは重量や消費電力が大きい事が気になっていたのだが本機は約1.9kg・消費電力17W・広角なレンズ・16軸独立色補正機能という優れた特性を持っているので、番組取材などのハンディでのロケにはとても向いているのではないかと思う。残念なことに上部ハンドルを持った時の重量バランスがあまりよろしくない。

ぶら下げた時にどうしても傾いてしまう。大型バッテリーを使用した場合バッテリー搭載位置の関係からこれ以上にカメラが傾いてしまう。デザインの段階でハンドルの位置があと1cm程度マイクホルダー側に移動していれば、このような現象は起きなかったのでは?と思ったが、撮影時、液晶パネルを開いたときにバランスが取れる様に設計されているようだ。LCDには水平を確認するための表示を備えているのでハンディ運用でも確実に水平を意識することが出来る点は良いと思う。

ビューファインダーの接眼レンズが小さいため見かけ視界が狭くなってしまい接眼レンズにピッタリと目を付けなければ表示されている画像の全体像を見ることが出来ない。要はケラレてしまう。この辺りがもう少し改善されると現場でもっと使いやすいカメラになっていくのではないかと思う。

これらの点を考慮したとしてもなかなかいいカメラに仕上がっているのではないかと思う。総合的なバランスの良さという印象を短い時間ではあったが感じ取ることが出来たカメラであった。今回新たなシリーズの先駆けとして登場したAG-CX350。この先いったいどんなカメラが出てくるか楽しみである。

WRITER PROFILE

猿田守一

猿田守一

企業、CM、スポーツ配信など広範囲な撮影を行っている。PRONEWSではInterBEE、NAB、IBCなどの展示会レポートを行った経験を持つ。