txt:オースミユーカ 構成:編集部

“新しいことを知る”は楽しい!

「がっこうだいきらい」「べんきょうきらい」と小学二年生になった娘はよく口にする。学校大好きになってくれなくてもいいけれど、学ぶことの楽しさは知って欲しい。でも、それを伝えるのはなかなかどうして難しい。私も4月から二つの大学で先生をやることになって楽しく学びのある授業を試行錯誤している最中だ。

新しく授業をはじめる学校は美術系でも技術系でもない普通の大学のCM制作実習ゼミ。実習ならなんとか通常のディレクター業務を圧迫せずにできるかも、と引き受けてはみたけれど、最終的にCMを一本作りあげるまで生徒たちを持って行くのは簡単ではなさそう。たくさんのCMや映画をみて「考え」→「学び」→「作る」という作業をどう伝えればいいのか。普段やっていることを系統立てて話すという作業は自分の仕事を見つめ直すことになる楽しさはあるけれど人を育てるという別の緊張感が伴う。映像に興味がある生徒がそろってはいるが、はたして自分にできるのだろうか…。

メディア社会学科がある大学は緑にあふれ学校の中に川が流れている。都心とは思えないオアシスのような環境

NHKで去年やっていた「ハリウッド白熱教室」という番組が好きだった。アメリカ南カリフォルニア大学の映画論研究の授業をそのままみせてくれるドキュメンタリーだ。そこでは先生がまるで司会者のごとく質問を投げかける。そして生徒が自分の言葉で答えることで授業が前に進んで行く。今回の私の授業も少人数ゼミなので、その手法を取り入れてみた。いわゆるアクティブラーニングというやつで、知識を詰め込む授業ではなく自分の頭で考えさせる授業だ。

でも、やはり、アメリカのように自分の言葉で答えられる生徒がとても少ない。考えて自分の意見をいう、という訓練を積んでないので当たり前なんだけど、反応の薄さにこちらがひるんでしまうほどだ。先生と生徒の間にある壁の厚さをどうやって砕き、頭の中のものをさらけ出させられるのか?きちんと考えて自分の言葉で話せるようにさせるには、まだまだ私の修行が足りない。

授業と授業の間に沖縄でロケ。海を飛行機の上からしかみないほどの過密スケジュールだった

授業をはじめてから一ヶ月がたち、生徒たちにもCM企画を描いてもらった。選ばれた企画に対して5人一組でチーム分けをしていよいよ制作のはじまりだ。企画までは、なんとなく先生に言われているからやっているような雰囲気だった。が、これから自分たちだけで一本のCMを撮影し仕上げまでやらなくてはならない…と現実味を帯びた途端、生徒たちの顔つきがあきらかにかわった。「やべえ!」である。学期末には各チーム1本のCMを仕上げてコンテストに応募するのだ。やっぱり勉強は実践がいちばん学びがある。この授業でものを作る楽しさを知って大きく学んで欲しいなと思う。

ずっとディレクター業だけをやってきたはずなのに、Eテレの番組制作や大学での授業などが増え、いつのまにか教育について考える機会が多くなった。先日、小学生プログラミングコンテストで優勝した子どもに映像制作を教えるワークショップをやった。彼らの親と話す機会があったので、どうやって日本一の子どもを育てたのか聞いてみた。

「うちの子は12時間もゲームをし続けることができるんです。あの集中力はすごいですよ。好きなことに没頭しているときは邪魔をしないようにしています」。思わず絶句してしまった。私は自分の子どもが朝から晩までずっとゲームをし続けたら邪魔せずにほっておけるだろうか?まったくもっていろいろ考えさせられてしまう。

でも深く長くのめりこんだからこそ、自分でも楽しいゲームを作ってみたいと思い、必要にかられたからプログラミングを覚えて日本一にまでなってしまった。彼の作ったゲームはデザイン性も伴っていて、とてもクリエイティブに仕上がっている。好きなこと、楽しくてたまらないことをとことんやりきった結果に開けた道なのは間違いない。いくら親がこれからはプログラミングが大事だからと勉強をさせたところで、「大好きだから」というモチベーションでやっている子には勝てない。人を育てるとは…、なんとも試される。

私も勉強が決して好きではなかったけれど、いま仕事で必要にかられてする勉強は本当にたのしいし、よく頭に入ってくる。あんがい学ぶことの楽しさを教えるには、夢中になれるものをみつける手助けやサポートをするのこそが近道かもしれない。その道をつきつめたら、仕事や学びにつながるというご褒美があとからついてくる。そんなふうにしていつか好きなことと仕事がつながったら毎日がちょっと楽しくなるはず。

WRITER PROFILE

オースミ ユーカ

CMやEテレ「お伝と伝じろう」「で~きた」の演出など。母業と演出業のバランスなどをPRONEWSコラムに書いています。