txt:江夏由洋 構成:編集部

ラージフォーマットセンサー・有効画素数1億以上。GFX100登場

いよいよベールを脱いだ100M機のGFX100

2019年5月26日、27日に東京都内で富士フイルムの展示会「FUJIKINA2019東京」が開催された。先立って記者発表が行われ、話題の新製品GFX100の詳細が明らかになった。GFX100は44mm×33mm中判サイズ規格の「ラージフォーマットセンサー」を搭載した、なんと1億画素を超える解像力を持つフラッグシップ機で、対角55mmというセンサーの大きさはフルサイズセンサーの1.7倍の大きさの面積となる。

センサーサイズの対角は55mm

有効画素数約1億2百万画素。人間の目では到底捉えきれない被写体の細部まで記録を可能にするGFX100のコンセプトは、「人の人生を保存する」ということ。この画素数は単なる技術の追求から生まれた数字ではなく、人が生きていくその瞬間瞬間を未来に残していこうというのがテーマにあるという。

それにしても5.5段階の手振れ補正や、最先端のAFなど、このラージフォーマットセンサーを支える技術はどれも驚くものばかりだ。次世代のスペックを身にまとい、GFX100がミラーレス一眼の新しい世界を切り開くことになると言っていいだろう。

FUJIKINA2019ではPreserveというキーワードでGFX100が捉える写真の意味を訴えた

異次元の4Kデジタルシネマ機

撮影現場から。4Kのデジタルシネマ機としては想像をはるかに超える画を捉えてくれた

スチルカメラとして能力の高さもさることながら、このGFX100でなんと4Kの映像を撮影することができる。ミラーレスでは史上初となる、中判サイズのセンサーによる4Kのデジタルシネマカメラとなるわけだが、これまでのXシリーズのミラーレスカメラが培ってきた様々なデジタルシネマのノウハウがぎっしりと詰まっている。

10bit記録やフィルムシミュレーションを使った撮影、Log撮影やHLG撮影といった一連の機能が搭載されているため、恐ろしい可能性を秘めたデジタルシネマの一台が登場したということになる。

今回のFUJIKINA2019で展示するために、GFX100の動画制作を行ったのだが、その画質の高さと美しさにしばらく自分の目を信じることができなかった。その制作のワークフローも含めて、新しい時代の幕開けを皆さんと共有できたらと思っている。

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撮影素材からの切り抜き。あまりにも美しい画質に息を飲むばかりだ
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撮影にはシネマレンズを使用。新登場のPremistaにも注目

使用したシネマレンズの数々。LPLマウントのSignature Primeレンズシリーズと、新登場のPremista28mm-100mmをPLマウントで使用した。Premistaはズームレンズであるにも関わらず、単焦点に匹敵する画質を見せてくれる

最初に悩んだのがレンズ選びである。GFXシリーズにはすでに8本のGマウントレンズがあるのだが、今回はマウントアダプターを使って別途シネマレンズを使うことにした。シネマレンズを使用する大きな理由はフォーカシングにある。これだけ大きなセンサーとなると4Kのフォーカスは相当シビアだ。今回の被写体がダンサーであったために、自在なフォーカスワークが求められた。

ただ問題はイメージサークルだ。なんといってもラージフォーマットセンサーをカバーするレンズがあまりない。当然フルサイズ対応だけではカバーしきれないため、GマウントをLPLマウントに変換する特別なマウントをKIPON社に用意していただき、ARRIのSignature Primeレンズシリーズを撮影で使うことにした。

さらに、今年のNABで発表になった富士フイルムの新シネマレンズPremistaの試作機をPLマウント変換を介してGFX100で使用した。それにしてもそのセンサーサイズの大きさには驚かされる。4096×2160のDCI4Kで撮影すると43.8mm×23mmというとてつもなく大きなセンサーサイズを使用するのだが、これはARRI ALEXA 65に匹敵する大きさだ。

LPLのレンズやフルサイズ仕様のレンズであっても、焦点距離によっては若干のケラレが見られるほどで、編集時に多少の調整を要した。ちなみに今回使用したPremistaは28mm-100mm、T2.9通しのフルサイズズームレンズで、この夏以降に出荷が予定されており80mm-250mmと合わせた2本のラインナップとなっている。FUJINONの技術を集結させ、最高峰といわれるHKレンズを超えるハイエンドの画質が大きな特徴だ。

画質の素晴らしさを全面に。4K映像2面のイマーシブインスタレーション

展示の様子。光と影をテーマに制作。イマーシブ環境を作るために5.1chの音楽と200インチ2面でGFX100の美しい映像を演出した

今回の展示はGFX100の圧倒的な解像感を体感してもらいたいという狙いで、約200インチのスクリーンを直角に2枚並べて4K 2画面の投影空間を演出し、音楽も5.1chのサラウンドで制作を行い、正に没入感のある体験型のインスタレーションに仕上げた。そのため撮影は2台のGFX100を使って行った。

GFX100はHDMI経由で10bit 4:2:2の信号を出力できるため、それをATOMOSのレコーダーでProRes422 HQにて収録。Logでは撮影せずにETERNAのフィルムシミュレーションを使用した。まさに富士フイルムのカメラで撮影する醍醐味だ。撮影フレームレートは29.97fpsで、プロジェクト自体は23.976fpsのタイムラインを使用し80%のスローモーションを随所に活かした。

撮影のテーマは「光と影」。大型のセンサーだからこそ捉えられるダイナミックレンジの広い、立体感のある映像を組み立てていくのが狙いだ。自然光を活かしつつ、普段よりもコントラストの強い画を敢えて作っていった。

Yoshihiro Enatsu x GFX100-Quietude/FUJIFILM

4K映像1枚に再編集したもの。メイキング映像も併せて、GFX100が持つ可能性を感じてほしい。

Making of Yoshihiro Enatsu x GFX100-Quietude/FUJIFILM

息を飲むような美しさ。ノイズがほぼない驚きの画質

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素材からの切り抜き。暗部にノイズが少ないのがわかるだろう。解像感といい、スキントーンといい、最高の画質と言っていい
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素材からの切り抜き。
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撮影素材を見て、正直驚いた。というか信じられないほど美しく、立体感を感じる画質である。特筆すべき点は、暗部にノイズはほとんどないということだ。さらには暗部の表現力は、今まで見てきたどのカメラよりも高いと言っていいだろう。ハイライトの伸びも併せて、GFX100が捉える4K映像はハイエンドクラスのシネマカメラと並べてもおそらくトップクラスだ。

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素材からの切り抜き。
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ETERNAで表現されるスキントーンの美しさも相まって、想像をはるかに超える素晴らしい撮影を行うことができた。細部の解像感、ダイナミクスレンジ、そしてノイズレベル、これこそがラージフォーマットセンサーが可能にする新しい世界なんだと感じる。これがミラーレス一眼からの動画となれば、まさに新時代の幕開けを感じざるを得ない。

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編集画面から。AfterEffectsを使った。トーンカーブだけをメインに編集を進められた。素材が素晴らしいと編集も効率よく進められる
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ETERNAはDR400で撮影。ポストの色補正はとても簡単であった。2つのレンズの色を若干合わせる必要があったのだが、修正はトーンカーブだけでほとんど問題がなく、一部マスクをかけて編集する程度である。あまりにも美しい完璧な描写であったために、編集自体は3日間で終えることができた。通常のデジタルシネマの編集では、ノイズをある程度除去する工程が必ずあるのだが、今回は全くノイズ除去をする必要がなく、そのためレンダリング自体も短く済ますことができたのは嬉しい限りだ。

Xシリーズのノウハウが詰まった一台。動画機としても高い完成度

慣れ親しんだシステムで挑める。これからのミラーレス動画を大きく変えていくことになるだろう

簡単にGFX100の動画スペックを記しておく。最大DCI4K(4096×2160)の解像度の映像を29.97pまでの撮影が可能で、内蔵収録のメインコーデックとしてはH.265(HEVC)10bit 4:2:0を収録することができる。Intra-Frameであれば400Mbpsで記録可能で、Long-GOPであれば400Mbps、200Mbps、100Mbpsから選ぶことができる。その他にも8bitのH.264も使えるのが嬉しい。センサーもクロップされることなく、最大の大きさで捉えるので、画質の劣化などは全く心配がない。

そしてHDMI出力として10bit 4:2:2を出力できるため、GFX100の画質を最大限生かすのであればこの信号を収録ラインとして使うのがいいだろう。また内部収録しながら外部出力を同時で行えるので、バックアップ体制も問題がないというのが素晴らしい。Log撮影やHLG撮影にも対応しているので、様々な新しいスタイルで撮影に挑める。

もちろん「写真機」として1億画素を超えるパワーは圧倒的ではあるが、デジタルシネマカメラとしても相当高いパフォーマンスを見せてくれる一台といえるだろう。デュアルスロットのSDカードで収録ができるので、内部収録で撮影を進めるのであれば、V90のSDカードを用意することになる。

読み出し速度との闘いが課題か?

一点あるとすれば、読み出し速度の問題だ。これだけ大きなセンサーとなればさすがにローリングシャッターの現象を避けることができない。このあたりは個々の印象にもよるとは思うが、今回撮影した動きのあるダンスシーンなども参考にしてもらえればと思う。個人的にはそこまで気になるようなカットは全素材の中から一つもなかった。

無論4K30pというスペックも仕方のないことであるが、今後プロセスのスピードが上がっていけばその進化は間違いないだろう。兎にも角にも、ラージフォーマットセンサーが描く世界は異次元であるということだ。デジタルシネマとしての完成度も含めてGFX100が作る新しい世界には多くの夢が詰まっていると感じている。

WRITER PROFILE

江夏由洋

デジタルシネマクリエーター。8K/4Kの映像制作を多く手掛け、最先端の技術を探求。兄弟でクリエイティブカンパニー・マリモレコーズを牽引する。