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[オタク社長の世界映像紀行]Vol.56 Cine Gear 2019でスモールシネマカメラ、フルフレームレンズの盛り上がりを確認!

2019-06-10 掲載

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Angénieuxブース

Angénieuxブースは、新しいOptimo Primesシリーズを強く推していた

続いて、シネマレンズの覇者の一社、Angénieuxのブースをご紹介したい。フランスのレンズメーカーAngénieuxは、言わずと知れた圧倒的な質感を誇るズームレンズを出しているシネマレンズメーカーだ。オールドカメラユーザーであればAngénieuxと聞くと、超広角のとろけるような絵を出す同社製のレンズを一度は触れたことがあるだろう。

筆者も同社の普及ラインシネマレンズであるAngénieuxのEZ-2レンズをBlackmagic Design社のBMPCC 4Kと組み合わせて使う事が多く、大変気に入っているメーカーだ。

AngénieuxのOptimo Primesは、40mmのものを出してきていた

そんな、Angénieuxが、また野心的なレンズを出してきた。それが、Optimo Primesシリーズだ。最終的には12本で全領域をフルカバーするようになるという同シリーズだが、このCine Gear 2019には、40mmのものを一本だけだしてきていた。

同社のズームレンズを越える圧倒的な高画質を誇りつつ、同社製ズームレンズと近い色味を実現することで、同社のズームレンズと組み合わせてここ一番という場面で活躍するであろうレンズだ。このレンズの特徴は、後玉など各パーツにバリエーションがあり、その組み合わせで多彩な表現を持てること。レンタルハウス毎にバリエーションを出せるようにという意味でもあるようで、面白い試みだと言えるだろう。

ユーザーサイドのカスタマイズポイントとしては、後玉の手前に簡単に外せるガラスフィルタが装着されていることが挙げられる。筆者はこれを誤解して、ゼラチンフィルタホルダだと思い込んで会話をしてしまって大いに恥をかいたのだが、これは別売りの後玉フィルタを装着した際に、ノーマルレンズとの光軸差が生まれることを防ぐためのフィルタ無しの時用のブランクのガラス板だということで、いや、そんなところまで精密に考えているのかとただただ驚いた。

Optimo Primesシリーズには、後玉の手前にガラスフィルタが付いている。後玉フィルタを「使わない」時用のガラスフィルタだと言うから、その精密な思想には驚く他無い

お値段は、全セットでざっくりとなかなかいい家が買えるほどになりそうではあるが、元々レンタルで使うレンズだ。決めシーンでは是非レンタルしてみたい一本だ。

SIGMAブース・Chroszielマスタークラス

SIGMA社のブースは、同社の多彩なシネマレンズ群を幅広く展示して居た

日本のレンズメーカーも負けてはいない。中でも、SIGMAは世界最速で全領域のシネマレンズを用意して、一気にシネマレンズメーカーとして台頭した。まだまだハリウッドでは採用実績は浅いようだが、このCine Gearにシネマレンズメーカーとして立っていることには大きな意味があるだろう。

さらに、同社は意欲的な挑戦も数々行っていた。そのうちの1つが「Chroszielマスタークラス」でのレンズテストマスタークラスの講演だ。Chroszielは言わずと知れたレンズテスターメーカーで、今回のCine Gearではその最新レンズテスター「Lens Test Projector P-TP7」を持ち込んできていた、超高性能なこのレンズテスターはなかなかお目にかかることが出来ないもので、そのハイエンドな性能はハリウッドのお墨付きだ。

そのテスターに、敢えてこのCine Gearの場で後悔でテストをかけようというのだからとても新参シネマレンズメーカーとは思えない大胆な講演だ。

Chrosziel「Lens Test Projector P-TP7」によるマスタークラス。レンズの光学性能の全てを暴き出す素晴らしくも恐ろしい装置だ SIGMA 40mm T1.5 FFのテストの一部。しっかりと隅々まで解像していることがわかる

マスタークラスではSIGMAの新しいフルフレームシネレンズ「SIGMA Cine 40mm T1.5 FF」をテストしていた。同レンズでは、6K指標を越えた線数でも、44mmを越えたライトサークル周辺域ですら全く問題無く読み取れるのにはただただ驚いた。簡易スクリーンで周辺域で6K指標の160本は軽く読めているので、ちゃんとした測定設備であれば8K指標である200本は行けるのではないだろうか?

正直なところ、ユーザーとしては同社のレンズにはメカニカルな部分はもう少し成熟が欲しいが、光学製品の要はその光学性能だ。そう考えると、SIGMAのシネマレンズ群は、その要を余裕で達成しているわけで、価格帯を遥かに超えた性能を持っている、と言っていいだろう。こうしたテストに挑めるだけの新しいシネマレンズメーカーが日本に誕生したことは、本当に喜ぶべき事だ。

Tokina Cinemaブース

Tokina Cinemaブースでは、VISTAシリーズを前面に出して大型ブースを展開していた

ハリウッドにいち早く受け入れられた日本の現代レンズメーカーといえば、このKenko VISTAシリーズを置いて他無いだろう。カメラ周辺機器の最大手Kenko Tokinaグループの一員が評価の高いシネマレンズを出していることは、確かな安心感がある。

このCine Gear 2019でのビッグニュースとして、このKenko VISTAシリーズで、新しく135mmのシネマレンズを出す、と宣言があった。まだ、開発発表だけで特に実機もないが、この秋には試作機が出てくることだろう。大いに期待したい。

シネマガラスフィルターシリーズは、なんと贅沢なサンドウィッチ構造

また、同社は大判のシネマ向け「Tokina Pro Cineフィルター」も発売を開始した。特に、5.65インチx4インチなどのシネマサイズのガラスフィルタは、表面コーティングではなく二枚の合わせガラスの中央にフィルタを置くハイエンドな構造で、比較的低価格な同社のフィルターでは考えられないような贅沢な構造となっている。

従来はNDXフィルタだけのラインナップであったが、このCine Gear 2019で、その他のフィルタも幅広く扱うことを発表していた。日本での取り扱いは未定とのことだが、楽しみに待っていたい。

その他ブース雑感

ここ5年ばかりのCine Gear名物に、中華系メーカーの安くて高性能なシネマカメラ・シネマレンズ群が挙げられるだろう。日本では見かけないそれらの機材は、値段の割に驚異的な性能を謳っており、実用の難しさと合わせて大いに注目を集めていた。

しかし、やはり、米中関係の悪化の影響か、それとも中国の経済成長でそこまで低価格でなくなったためか、ブース数こそ以前から増えているものの、以前ほどの人だかりで無いのが気になった。普通に良いものだけど、普通に高いとなれば、そりゃ、サポートでも安心の出来る自国産のものを選ぶのは当然と言えるが、とりあえずそれでもなおご紹介したいものをいくつかお見せできればと思う。

Z CAMの新しい「Z CAM E2 F8 FF」は価格の割に高性能だ

まずは、話題の「Z CAM」。日本円で60万円程度~と比較的安い本体に、独自RAWを載せて売り出し中の同社カメラは、フルフレームセンサーのラインナップ「Z CAM E2 F6 FF(4995ドル)」と「Z CAM E2 F8 FF(5995ドル)」の2つのラインを新たに揃え、強烈に売り込んできていた。

独自RAWのため、ファイルの扱いがなかなか難しいところだが、そこさえクリアすれば、非常に軽量でなおかつ小型なユニット型カメラであり、非常に使い勝手がいいだろう。

レンズでも優れた新興メーカーが出てきている。中でも「SPIRIT LAB」のシネマレンズ群は、中華系カメラに必ず装着されているほどの普及率を誇っていた。価格は4000ドル前後と欧米の安価なラインのレンズと同等であるものの、その大きさは非常に小さく、まるでスチルカメラレンズのよう。しかもブリージングもちゃんと抑制されていて、もちろんフルフレーム対応。まっとうなシネマレンズと言える。

筆者の会社名が同じラボラトリ系(~Lab)だったため話が盛り上がり、中国語交じりの会話で非常に楽しい時間を過ごすことが出来た。一本60万円前後と日本国産レンズや米国の安価な個人所有ラインのプライムレンズ群と比較しても決して安いレンズではないが、この高性能は特筆に値するだろう。

「SPIRIT LAB Prime AI」シリーズは中華の枠を越えた小型高性能プライムレンズ群だ。お値段も中華を軽く超えているが

米国系でもATLASやCookeなど、メジャーどころもブースを出していた。こちらはNABでご紹介済みで特に新製品というわけではないので今回は省いたが、安定してハリウッドのユーザーを集め着実なユーザーとのコミュニケーションを取っていたのが印象的だ。

ATLASやCooke等、定番のレンズメーカーも定番通りにブース展開していた。これもやはりフルフレームセンサー対応が売り

他には、Blackmagic Design社のBMPCC 4Kが事実上のS35センサー向けのリファレンスカメラ的に各ブースに置いてあったのも面白かった。同カメラは知っての通りマイクロフォーサーズ規格最大サイズのセンサーを積んだカメラで、S35より一回り小さいセンサーサイズだ。それでも、やはり、ダントツの普及率は見逃せない、ということなのだろうか。

また、カラーグレーディング環境には必ず同社の製品が使われていたのも印象的だった。DaVinci Resolveは、完全にカラーグレーディングソフトのスタンダードになっていた。

Blackmagic Design社のBMPCC 4Kは会場の各所で見ることが出来た。参加者もBMPCC 4Kを手にしていることが多かったのが面白い

主催側であるASC(American Society of Cinematographers)もいくつか展示を出していて、今年は結成100周年ということで様々なグッズを出していた。中でも面白かったのは、カラーメーターやスピードメーターにASCのロゴが入っているモノで…。でもこれで日本のAmazonで買うより高くなるのはどうなのだろう?と思って筆者は買わなかった。

ASC100周年記念のシグネーチャーモデルのカラーメーターやスピードメーターも売っていた

さて、このように駆け足で、会場をご案内してみたが、まだまだご紹介し足りない部分は山ほどある。特に、会期の前後で訪問したイベントや周辺施設などのご紹介は、今回は省かせて貰った。Cine Gearは映画撮影関係者のお祭りであり、実は、そうした周辺イベントこそがメインである、という人も多い。これらは機会があれば是非ご紹介させて貰えれば幸いだ。

今回のCine Gear 2019の流れは鮮明に、スチルカメラサイズの本体、フルフレームセンサー対応、半生RAW現像、HDR対応が当たり前の光景となっていた。ほんの10年前にファイルベースの移行が本当に実現するのかとやきもきしていたのが嘘のような超ハイスピードの展開だ。

この一端として「映画」の概念が広がり、ネット映画も含めて全て映画だ、と割り切ることで、一気に業界全体の資金繰りが改善したというのが大きいだろう。折しも、米中の争いが激化して世界経済が傾きつつあり、会場でも中華系機材の大幅値上げという形で、その実感を得ることとなった。何とかその荒波を乗り越えて、来年以降の展開に繋げて行きたいものである。

余談だが、In OutバーガーはもはやCine Gearの定番ブースの1つと呼んでいいだろう。円安の今でもたった12ドルでバーガーセットが食べられるのは、本当に助かる(実質購買指数では1ドル=69円前後であるため、なかなか米国出張はキツいのです…)
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WRITER PROFILE

手塚一佳 CGムービー制作、ネットワークゲーム制作を得意とするデジタルデザイン会社アイラ・ラボラトリの代表取締役。


[ Writer : 手塚一佳 ]
[ DATE : 2019-06-10 ]
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