txt:石川幸宏 構成:編集部

VR-50HD MK II活用事例

アジア最大級のプロジェクションマッピング国際大会「第8回プロジェクションマッピング国際大会~1minute Projection Mapping in 小田原城~」が9月20~23日の4日間、神奈川県小田原市の小田原城天守閣で開催された (企画:一般財団法人 プロジェクションマッピング協会)。

この中で開催3日目となる、9月22日には最終審査の模様がライブ配信され、その映像配信設備として、ローランドの最新AVミキサー「VR-50HD MK II」が現場に実戦投入された。

2012年からスタートしたこの大会は、アジア最大のプロジェクションマッピングの国際大会として、ほぼ毎年1回のペースで日本各所で開催されており、今年で8回目の開催となる。

審査発表当日は、雨天にも関わらず会場には多くの来場客が溢れた

毎年異なる会場とテーマで、1作品が1分~1分59秒という短い時間の中で、世界一の表現を競うプロジェクションマッピングの国際大会となる。

回を追うごとに世界中からも注目を集める大会に成長し、今回は過去最多となる43の国と地域から、全177組の作品エントリーが寄せられた。その中から厳選なる審査で勝ち残った20組の最終エントリー作品が、9月20日から23日の4日間に渡って、小田原城の天守閣へ作品投影され、最終審査でグランプリが決定された。

世界レベルのクリエイターたちによって鮮やかに描き出される小田原城天守閣

世界中から集まったハイレベルでバリエーションに富んだ作品群を、同じ投影モチーフを対象に一度に見られる、唯一無二のプロジェクションマッピングコンペティションであり、世界からの評価も年々高まっている。

最終ノミネートに残って上映された作品を制作したクリエイターも世界中から来日。小田原城に集結した

今年の開催4日間は、天候が不安定であったにも関わらず、連日満席でチケットも売り切れの回が出るほどの人気となった。世界各国から最終エントリーに残ったアーティスト/クリエイターたちもこぞって来日したが、全員の参加はさすがに不可能だ。そこで、作品エントリーが世界中からある中で、最終審査の模様をライブで全世界向けに、ネット配信が行われるようになった。

最終審査が行われた9月22日はあいにく雨天での決行となったが、ゲストの光のダンスパフォーマンス集団「EL SQUAD(イーエルスクワッド)」の出演などもあり、有料販売席も満席となるほど観客が来場した。

22日の審査会の模様はローランドVR-50HD MK IIを使用して、YouTube Liveで世界配信された

今回のライブ配信にあたっては、PA卓からの音とビデオカメラから直接収録する上映の模様、そして審査員の表情などをマルチでスイッチングする必要があり、発売直前のローランドVR-50HD MK IIが現場投入された。

■システム構成

AVミキサー:VR-50HD MK II

映像入力
カメラ:
ソニーハンディカム(FDR-AXP35)2台(マッピング用、表彰式典用)
GoPro 1台(審査員席用カメラ)

静止画入力
USBメモリー

音声入力(PA卓からのライン入力)
マイク音声
プロジェクションマッピングBGMサウンド

出力
Mac Book Pro YouTube Liveで配信

アーカイブ

屋外撮影に設置された、ソニーハンディカム「FDR-AXP35」

審査員席の横にもGoProを設置して審査の様子が世界配信された

今回のライブ配信を担当した、プロジェクションマッピング協会の会員で、映像プロデューサーでもある、株式会社ソルメディエージ(SOLU MEDIAGE Inc.)の代表取締役社長、丸山健太氏にお話を伺った。

国際コンペでは3回目の世界配信

株式会社ソルメディエージ 代表取締役社長、丸山健太氏

丸山氏:プロジェクションマッピング国際大会は今回で8回目の開催になりますが、ここ数年で世界からのエントリーも増えたので、YouTube Liveで最終審査の模様を全世界配信しようということになり、2018年の5月に開催された長崎ハウステンボスでの大会からライブ配信を始めました。

僕のところにそこそこ配信できる機材もあったので、前回の宮崎大会まではV-1HDを使って行いました。僕自身も、昔からローランド製品を使っており、V-4、V-5といったアナログ入出力のビデオ・ミキサーを使用していました。

今回初めてVR-50HD MK IIを現場で使用してみましたが、最初に触った感じの印象としては、まずインターフェースがわかりやすく、ローランド製品に慣れている自分としては、マニュアル等を見なくても操作のリテラシーもすぐに理解でき、とても使いやすかったです。

一番良かったと感じたのは、オーディオとプレビューモニター、そしてOUTの映像まで、全ての確認がVR-50HD MK II上でできるということでした。あとオーディオ部分までも1台で制御できるのがすごくいいですね。

こういう現場ですと、PA卓からメインの音声入力等は貰いつつ、カメラ周辺のマイクなどで必ずガヤ(環境音)も入れながらとか、音響面でも気を使う場面が多いのですが、ビデオ系スイッチャーとしては、かなりしっかりとしたオーディオコントロールが付いているので助かりました。

コントロールパネル自体も必要なものだけが厳選して配置されていて、これは使ってみてわかることですが、スイッチの配置、パネルの文字や間隔もシンプルにデザインされて整理されているのが見やすく使いやすかったです。あと筐体自体の質感が上がったことで、トータルな面でプロ機材的な質感が上がったと思いました。

セッティングロスのないI/O仕様

VR-50HD MK IIを使用して、ワンマンオペレーションでライブ配信

上部のモニターに全ての映像が出るのもいいですね。よくこうした現場では、色々と並列でコントロールしなければならないことが起こります。

他の映像出力の作業と重なることも多いので、結果的にライブ配信用のプレビューモニターを忘れた!とか、モニターが足りない!といったこともあったりするのですが、VR-50HD MK IIならば、付属のモニターで全ての画像のプレビュー確認もしっかり出来てコントロールできるので問題ありません。

あと今回VR-50HD MK IIを使用して感じた利点は、違った解像度の映像ソースが入ってきても、内部で自動的にコンバートしてくれているので、どんな映像ソースでも一発で繋がるという安心感がありました。HDMIでもSDIでも直接筐体にケーブルを挿して入力できることは便利でした。

これまでV-1HDを使っている現場も多かったのですが、HDMI入力しかないために、SDI-OUTの機材だと必ずSDI-HDMIコンバーターを挟むことになります。

しかし、この際の機材同士の相性というのが意外にあるんですよね。そうなると画が出ない等のトラブルが出た時に、忙しい現場では何がどこでトラブってるのか探すのにかなり苦労するんです。そういう点でもSDIでもHDMIでも直接差し込めて、全てVR-50HD MK II内でコンバートしてくれるのは、非常に便利でセッティングロスがなかったです。

あらゆるINPUTも制御できるVR-50HD MK IIは、ライブイベントの現場で実力を発揮した

さらにSTILL/INPUT SOURCEの4つのセレクトボタンで、SDI、HDMI、VGAなどのソースを選択すれば、簡単に設定できるので、間違いも少ないと思います。

よくこうした現場で起こることですが、映像と音響の会社が個別に入っている現場では、各々どんな機材を持ってくるかわからない場合もあるし、古い機材が混じっていると、いちいちDIPスイッチを切り替えるなど、現場でいきなり面倒なセッティングが結構必要になったりします。

それがVR-50HD MK IIならば、そういう手間は一切不要です。ローランド製の機材は頑丈で滅多に壊れないので、接続される機材を選ばず、操作が初めてでも簡単に習得できて、しかもマシントラブルの少ないという意味で、今回のような世界に向けたライブ配信、特に一度きりの失敗できない現場には非常に向いていると思いました。

ライブ配信もクオリティを求められる時代へ

審査の模様はアーカイブとして、ATOMOS INFERNOでもREC

最初VR-50HD MK IIを見たとき、ビデオ・ミキサーにつきものの、フェーダーレバーがなくなりましたよね。それはそれで今の時代向きというか、スイッチングだけで充分だなと思いました。約80万円という価格も、オーディオ系、ビデオ系を別個に考えて、先ほどのセッティングトラブルとかを考えれば、決して高い金額ではないのではないでしょうか?

また今回使ってみて感じましたが、AVミキサーが良いとカメラ側の画質も気になってきますね。しかもひと昔前は、ネット配信なんて、画質は悪くて当たり前、といった風潮でしたが、今や4K画質などのネット配信も多くなり、画質も良くないと気になりますね。今回も一部のカメラの720pの画質の悪さが気になってしまいました。

VR-50HD MK IIでは、大手メーカーのPTZカメラの入力はもちろん、VR-50HD MK II本体からのカメラコントロールまで出来るようなので、次回の配信ではPTZカメラも現場にぜひ導入してみたいと思っています。

丸山健太氏とVR-50HD MK IIの実際のオペレーションを担当した、映像ディレクターの桑原康孝氏

WRITER PROFILE

石川幸宏

映画制作、映像技術系ジャーナリストとして活動、DV Japan、HOTSHOT編集長を歴任。2021年より日本映画撮影監督協会 賛助会員。