txt:宏哉 構成:編集部

海外ロケの思い出

困難と苦悩ばかりの海外ロケをこの数回綴ってきた…。カルネに苦しめられ、飛行機に乗り遅れ、賄賂を要求され、限定ヘッドフォンは盗られ…いやそれは大阪環状線か…(汗)。

とにかくも国内ロケとは色々と勝手の違う海外ロケだが、大変な事だけか?といえば、そうではない。海外ロケならではの、数え切れにないほどの楽しみがある。

それは、日本では見られない景色であったり、味わえないグルメであったり、素敵なリゾートホテルであったり、人との出会いであったりだ。

今回は、そんな海外ロケでの楽しかった思い出振り返りたい。

花の島

「海外ロケによく行く」と言うと、しばしば聞かれるのが「どこの国が一番良かった?」という質問だ。

この質問にはなかなか容易に答えられない。どの国にもそれぞれ良さがあるし、どこに軸足を置いて物事を見るかで評価は変わってくる。とりあえず、午前中に頼んだ商品が夕方に自宅に届くアマゾンジャパンは最高だなと思うので、日本最高説が自分の中では有力なのだが、美しい街並みや雄大な大自然などは日本にはないスケールで海外に存在する。

その中で一つ、思い出深いロケを紹介したい。

インドネシアはフローレス島をメインにしたロケ。フローレス島はポルトガル語で「花」を意味し、バリ島の東、フローレス海に浮かぶ面積13,540km2(長野県ぐらいのサイズ)の島である。

フローレス島沿岸部

観光の島として人気があり、美しい海でのダイビングやフローレス島を起点とした周辺の島々へのクルージングなどで人気が出始めている。コモドドラゴンが見られる地域…といえばなんとなく想像つくだろうか?

コモドドラゴンにも至近距離で会える!

日本人観光客の姿はほとんど無く、欧米系の白人に人気のある観光地だった。当然、インドネシア観光局も日本へのプロモーションに力を入れており、我々のロケも彼らの全面バックアップがあってのものとなった。

イギリスやカナダから来ている観光客にインタビュー

バリ島にも行ったことがあるが、有名観光地で観光客でごった返し、ある意味飽和状態にあるバリと比べると、フローレス島はまだまだ未開発で、ホテルなども山や森を切り拓いて建設が始まったばかりという印象だ。

街は素朴で、観光客が飲食できる店も限られている。島の元々の文化も色濃く残っているので「作られていない観光地」をまだ十分に楽しむことができるだろう。

村の寄り合い序で休憩する村人に出会う

宿泊させていただいたホテルは、ビーチリゾート。ロケスタッフ一人一人にコテージが割り当てられ、広い部屋を独り占め。天蓋付きのベッドで贅沢に数日を過ごさせてもらった。

プライベートビーチを持つリゾートホテル

スタッフ一人一人に提供頂いたホテルの部屋

このロケの撮影機材は、

  • メインカメラ:JVC GY-HM660
  • ミラーレス一眼:Panasonic DC-GH5
  • アクションカメラ:GoPro HERO 5
  • ドローン:DJI Phantom 4 Pro

この旅の撮影機材

GH5は当時最新のミラーレス一眼カメラで、その他の機材は発売から大体1年程度経過した実績のある物ばかりだ。今回のロケは、陸はもちろん、海からも空からも攻める!

船の旅

フローレス島、リゾートホテルの他には、クルーザーに乗って周辺の島や海へのツアー取材。実際にクルージングを行っている帆船を一隻借り切っての一泊二日の洋上ロケも行った。

このクルーザーロケが実に楽しかった。2階デッキ付きの小さな船だが、それが良い。船長はもちろん船員たちとも仲良くなるし、スタッフみんながくつろぐのはメインデッキのテーブルか、2階のオープンデッキのソファーだ。

メインデッキのテーブルを乗客と乗員が囲んで団欒

個室は船内にあり、小さいベッドが一つギリギリ入る程度のこぢんまりとした船室。小さい丸窓が一つと、狭いシャワールームがあるだけのシンプルながら十分な作りだ。それがチョットした冒険感があって少年心をくすぐるのだ(30代・男性)。

クルーザーで目的地まで移動して、目的地付近に着いたら小型ボートに乗り換えて上陸――というのを何度か繰り返しての船の旅。

撮影に当たっては、空は私の担当、海はディレクターとロケマネージャーさんの担当。ロケマネージャーさんは、以前に南の島で年中ダイビングのインストラクターをされていたので、潜水時間は既に何万時間の大ベテラン。

クルーザーでのシュノーケリングツアーもあり、ロケマネさんはGoProを持って見事にマンタと共に海中を泳ぐ映像を撮ってきた。ちなみに、運が良いとシュノーケリングの水深でもマンタを間近に見ることができるそうだ。

お天気にも恵まれ、何処をどう切り取っても最高の画になる

私はドローンを使って船の周辺を撮影。ドローンの導入によって劇的に撮れ高が向上したのが「船ネタ」だ。船を使ったツアーやアクティビティーは船の中を撮るのは勿論のこと、船の外観も撮影する必要がある。だがそれが大変で、大抵の場合は洋上に出てしまうと船を客観的に撮るのは、まず無理だった。ある程度のサイズの船なら、その船を母船として小型ボートで少し離れて撮影することもできるが、撮影の為だけに船長の許可と船員の力を借りてボートを出して…というのは現実的にはなかなか難しい。一般のツアーに同行させてもらっているなら尚更だ。

そのため、従来は港に泊まっている船を撮る。もしくは、別の日に洋上を航行している当該の船を陸上からみつけて、望遠で撮影するしかなかった。運が良ければBロールが借りられたりするが、SD画質だったりテロップが入っていたりしてオンエアに差し込むには難有りという事も多い。

船の客観を、景色と絡めながらダイナミックに空撮る!

だが、ドローン空撮のお陰で、船の外観は簡単に撮れるようになった。洋上で停泊中は勿論、航行中でもテクニックさえあれば、船上から離陸・着陸が可能だ。航行中の離陸は、船が常に動いているので船の構造物やロープなどにドローンがぶつかってしまうリスクがある。基本的には船尾から後方に向けて飛ばし、帰還時はハンドキャッチとしている。当然、船への帰還はGPSを使ったリターン・トゥ・ホーム(RTH)機能は使えない。離陸地点を座標記録して戻ってくるRTHだと、船は既にその地点には居ないからだ。ドローンの機体を見失わず、自力で船に戻す最低限の操作技術は必要だ。

緊張の面持ちの筆者。航行中の船上からの離陸はロープやワイヤーが命取りに…

ドローンでの船体外観撮影は、一気に船の旅をリッチに見せてくれる。航行する船にドリーインしていったり、船を中心にノーズインサークルなどを行うと大変に効果的だ。

またエメラルドグリーンに輝く海は、船や浜辺などからの低い位置からの撮影よりも、少し俯瞰目から撮った方が遥かに映える。それが更に船での旅を素敵に演出してくれるのだ。今や、船ネタにドローンは必須の撮影道具になっている。

さて、我々は洋上で一晩を明かす。

次回は、翌日の島上陸と雄大な自然の風景を綴りたい。

マジックアワー。船上での時間はゆっくりと流れる

WRITER PROFILE

宏哉

のべ100ヶ国の海外ロケを担当。テレビのスポーツ中継から、イベントのネット配信、ドローン空撮など幅広い分野で映像と戯れる。