txt:江口靖二 構成:編集部

渋谷PARCOが11月22日にリニューアルオープンした。渋谷という街、PARCOという業態が新たに展開する施設だけに、注目度は非常に高い。いくつかデジタルサイネージ関連について特徴的なものを紹介したい。

OMOを具現化する「PARCO CUBE」

5階には、OMO(Online Merge Offline)型の売り場「PARCO CUBE」がある。オンラインとオフライン、あるいはリアルとバーチャル、デジタルサイネージとスマートフォンとリアル店舗がどう溶け合っているのか、どんな体験価値を提供してくれるのかを紹介する。

まずフロアの目立つ場所に70インチくらいの大型タッチパネルが4枚、連張り状態で設置されている。これら4面は連動しているように見えるが、独立したものが4台設置されているもので連動はない。背景の商品のサムネイルはゆっくりと横に動いているので、買い物や操作ができそうなことは伝わると思う。

4面が並んで設置されているが連動はしていない

このサイネージ自体は普通のタッチパネルディスプレイによる購入端末だ。PARCO ONLINE STOREというコマースサイトの中から、渋谷PARCO 5階のPARCO CUBEエリアにリアル出店している店舗の商品を探すことができる。コマースサイトとデジタルサイネージはデザインやUIが異なり、それぞれで使いやすいように配慮されている。サイネージを操作して気に入った商品を選ぶと、選んだ商品はサイネージ内に表示される「カート」に保存することができる。

カートに入れたら、さらにサイネージを操作してQRコードを表示させる。このQRコードをスマホで読み取ると、パルコが運営するECサイト「PARCO ONLINE STORE」に遷移する。PARCO ONLINE STOREのカートには、先程サイネージのカートに入れた商品が自動で入っているので、そのままPARCO ONLINE STOREで購入することができる。

サイネージを操作して商品を探し、気に入ったものをカートに入れる

(左から順に)
サイネージ画面に表示されたQRコードをスマホで読み込む

カートに入れた商品がスマホを介してPARCO ONLINE STOREのカードに移動する

スマホ側で購入することができる

クラウドファンディングのCAMPFIREがリアル店舗に登場

1階にはクラウドファンディングのCAMPFIREがPARCOとはじめた「BOOSTER STUDIO by CAMPFIRE」のショールーム店舗がある。BOOSTERは、クラウドファンディングのCAMPFIREとPARCOの共同プロジェクトで、クラウドファンディング中、あるいは発売中の商品を渋谷PARCOの店舗でのリアルな販促の場として提供するものである。

BOOSTER STUDIO by CAMPFIRE

ここの天井には複数のカメラが設置されている。このカメラで店内の回遊状況、どんな属性の人が興味を示したか、どういう操作をしたか、どこでつまずき、どこで諦めたかなどを解析できるとしている。店内の壁面に設置されたディスプレイには取得している情報の内容や扱いに関しての説明表示をしている。

天井に設置されたカメラ

カメラを利用している旨をサイネージ画面で表示している

設置カメラの台数や状況から、来店者の属性や店内の回遊状況はかなり詳細に把握できると思われるが、それ以上のことがどこまでわかるのか気になるところである。またディスプレイに表示されている内容を客が見てどう思うのかについても気になる。

こうしたカメラの利活用はまだ始まったばかりであり、個人情報やプライバシーに十分配慮して行うことは当然として、そのことを顧客に告知すること、その告知方法はどこまでどうやるのが適切かつ現実的なことなのか。そしてそれらを顧客は受け入れるのかどうかという点である。いわゆる社会受容性の話だ。こうしたテクノロジーを利用しようと考える会社はこうした点について十分に配慮する必要がある。

デザイン先行で使いにくいタッチパネルのフロアガイド

館内のさまざまな場所に設置されているフロアガイドサイネージ端末

館内にはタッチパネルによるフロアガイドがいろいろな場所に設置されている。サイズは小型のもので、15インチくらいだろうか。設置場所はエスカレータ周りや、インフォメーションセンターにも設置してあった。

フロアガイドサイネージのトップ画面

「Touch」と書いてあるピクトグラムがあり、ボタンに見えるエリアが一番大きい左の部分を触るのではないだろうか。そうではないのである。ここはボタンではないのである。どうやらこれは「この端末はマルチリンガル端末であり、タッチまたは音声で操作ができますよ」という「説明部分」なのである。「あ、A、文」という吹き出しのデザインの意味は多言語を表しているようだ。

全く食欲が沸かない飲食店のリスト

この段階で表示される「どちらをお探しですか?」という意味不明の問いかけとともに、6店舗と思われるリストが表示される。全てモノクロだ。これは飲食店を探している状況なのだが、このモノクロ画面からは残念ながら全く食欲がわかない。初見ではこれら6つの店で何が食べられるのか全然わからない。ここは店舗のロゴと料理写真を出すのが鉄則ではないだろうか。あえてこうしたモノクロ画面にする意味メリットが何かあるだろうか。どう見てもデザイン先行でしか無い気がする。

JINSのバーチャル試着が素晴らしい

5階の眼鏡店JINSのバーチャル試着「MEGANE ON MEGANE」がとてもよい。こうしたバーチャルフィッテングはいろいろ試したが、最も便利で自然なのである。

ディスプレイ上部にカメラがある

試着したいメガネを置くところ。レンズ部分のQRコードのシールが張ってあり、それを読み込む

このとき自分のメガネを掛けたままで試したい商品がきれいに合成されている

別のメガネを試したところ

使い方はシンプルだ。カメラが付いたサイネージディスプレイ前にメガネを掛けた状態で立つ。この状態で顔認識される。次に試したいメガネを所定の場所に置く。メガネにはQRコードのシールが付いていて、システムがこれを読み込む。するとディスプレイ上に試したいメガネがきちんと合成される。自分の元々のメガネは掛けたままで、である。

3次元合成なので横を向いてもきちんと合成される。レンズ部分もちゃんと処理されているところには注目してもらいたい。こうして店頭でメガネを試す場合に、目が悪い人は鏡に写った自分の姿がぼやけてはっきり見えないのだが、この場合には自分のメガネをかけたままで試せるのではっきり見える。これは決定的なメリットだと思う。

あえて難点を上げるとすれば、画像の解像度が低いことだろうか。使っているディスプレイが50インチくらいで、鏡と同じように顔が実物大で表示される。これは鏡っぽいのでとても良いのだが、使っているカメラの解像度が高くないので50インチで見るとちょっと眠たい絵になっている。これはシステムをハイスペックな環境に変更すれば解決できるはずだ。逆にスマホの方が画面は小さくなるがはっきり見えるように思う。スマホでの自撮り慣れしているだろうからスマホアプリ化した方がいいと思う。

スマホであれば、試着から購入までを全部店頭以外の場所で完結できる。検眼なしで販売すると色々問題があるのかもしれないが、フッティングはいつでも店舗に来てくださいで問題ないような気がする。また、どれくらい似合っているかの「スコア」も表示されるが、これは本当に買おうとしている場合で、店頭に一人で来た場合や、店頭以外で使う場合には結構影響力がありそうな気がした。

WRITER PROFILE

江口靖二

放送からネットまでを領域とするデジタルメディアコンサルタント。デジタルサイネージコンソーシアム常務理事などを兼務。