txt:土持幸三 構成:編集部

台湾の食・街・人

なかなか良いロケーションはない

ある企画で10月末から11月頭まで台湾までシナリオハンティングへ出かけた。企画にプロデューサーの要望で、台湾を舞台にしているシーンがあるからだが、筆者が一度も台湾に行った経験がなく、脚本を書くにあたりプロデューサー2名と訪れることになった。そのうち1名が台湾生まれで現地に親族も多く、コミュニケーションにも問題がなかったため非常に助かった。日本語もある程度は話せる人が多いという事だったが、残念ながら筆者は会う事が出来なかった。

車窓から見る台北は大都会で、日本の都会と比べてスクーターが多いこと、路線バスがアメリカサイズなこと、商店の看板が少し違う以外、あまり街並みに変化はないように思えた。滞在中は今回のアクション映画企画のために廃墟とか、台湾らしさが出る、古い中国風の街並みを探してまわったのだが、プロデューサーの親族に様々な場所に連れて行ってもらっても、いまいちピンとくる場所は見つからず、事前に調べていた場所も、街中にポツンとあり周囲は普通のマンションなどで、撮影するとなると、かなりアングルはじめ撮影に制約が多い所ばかりだった。やはり台北ではなく、地方都市のほうが筆者が望むロケーションは多いのではないかとアドバイスされ、次の機会に地方都市をまわることとした。

街中に古い建物を探すのは日本より難しいと感じた

特定の街が登場する脚本を書く場合、当然だがその街の様子を知っておかねばならない。たった数日滞在しただけではわからない事の方が圧倒的に多いののだが、筆者の場合、地元の庶民が集うバーや食堂、特に朝食は人々の生活が見れて面白いと思っている。なぜなら朝食はその街に住む人々の、かざらない姿を見せてくれるからだ。

以前、同じくシナリオハンティングで訪れたニューヨークも朝食に街の特徴というか特別な雰囲気を感じた。大きなホテルの朝食は違うだろうが、街中にあるデリの朝食は、シンプルなものが多く、人々は時間をかけずにさっと食べ、コーヒーを飲み去っていく。アメリカらしく卵の焼き方やら細かく設定できるが、客も店側も全く気取っていないのだ。まぁそのような、日本でいう食堂のような店が筆者の好みなのだろう。

朝食は窓際で外を見ながら食べることが多い

今回、滞在した台北の豪華ではない。ホテルの朝食も悪くはなかったが、数日で飽きたので友人から得た情報を元に地下鉄に乗り街へ出た。駅からしばらく歩き、観光客が行かないような地域で、こんな小道は日本にはないよなぁ、と思いながら小道を曲がると目的の肉まん屋を見つけることができた。店先で数人の女性がネタを皮でくるんでいたので悪い予感がしたが、案の定、店は開いているが肉まんが食べられるのは30分後とのことだった。店内ではベトナムのフォーのような麺を食べている老人が数人おり、店員のススメに応じてスープを頼んで肉まんができるのを待つことにした。

店内から見える人々が行き交う姿や声を掛けあっている姿を見ると、この地区の雰囲気が感じられ、その後ろの狭い道を独特の音をたてながらスクーターが走り過ぎていく様子は映画のワンシーンを見ているようだった。たどたどしい英語で何回か肉まんの数を確認していた店員が蒸し上がった肉まんを運んできて、それを頬張りながら次々と肉まんを注文しては消えていく人々を眺めていると、今回の映画のシーンが少しずつ創られていくような気がした。

肉まんは絶品だったが地元の人々はもっと興味深い

海外だけではなく、国内でも地方の都市に行くと筆者は朝食が楽しみだ。撮影の時は、昼食がいつになるか予想できない事も多いので自宅で食べる量の3倍ほど朝食をとる。それも出来るだけ窓側の席で。今回はあの肉まん朝食のおかげで少しは筆が進むかも知れない。脚本が完成してロケハンで再訪する事が今から楽しみだ。

WRITER PROFILE

土持幸三

鹿児島県出身。LA市立大卒業・加州立大学ではスピルバーグと同期卒業。帰国後、映画・ドラマの脚本・監督を担当。川崎の小学校で映像講師も務める。