txt:柏原一仁(銀一株式会社) 構成:編集部

日本初!ステディカムワークショップを撮影所で開催

ステディカムの歴史や文化について書いてきたこの連載だが、番外編として2019年12月に行われたワークショップについて書いておきたい。というか、個人的に記録しておきたい!と編集長に無理を言って書かせていただいた。

2019年12月10日から12日の3日間、東映京都撮影所にて、Tiffen社公認ステディカムシルバーワークショップを開催した。リードインストラクター(主任講師)にはニュージーランドでステディカムオペレーターとして活躍するRebecca Wilson-Jennings氏(通称:Bex)を招き、その他講師陣として、大阪でステディカムオペレーターやカメラオペレーターとして活動する松田健氏、銀一から荒井茂と、柏原一仁の4名体制でワークショップに臨んだ。

本コラムのVol.2ではワークショップがどのような思想で行われているかについて書いたが、講師陣も皆、過去に参加者としてワークショップに参加し、その思想や雰囲気作りを体で理解している。ワークショップで一番大事なのは、機材でもテクニックでもなく、その雰囲気かもしれない。

概要はそれくらいにして、どうしてこのワークショップを記録しておきたかったかというと、その場所である。東映京都撮影所。非常に多くの時代劇がここで生まれ、また現在も撮影し続けられている。ホンモノの撮影所でワークショップを開催できたのは、日本では初めてのことで、大変に良いワークショップになった。

東映京都撮影所

ここでやることになった経緯

関東に住んでいる筆者は、東映京都撮影所のことを知らなかった。そんな数年前に遡る。ステディカムの“布教活動”をしている中で重要なイベントがワークショップだが、毎度企画から運営までは不定期で、その時、どういうニーズがどこの場所であるのかを見たり聞いたりしながら進めていた。

当時、Tiffen社公認ステディカムワークショップの中で期間も内容も最上位の、ゴールドワークショップを開催するための場所を探していた。世界中から様々なジャンルの講師を招き、6日間に渡って開催される“合宿”。日本初の開催となるこのゴールドワークショップを、一番日本らしいところでできないか。と考えたのが始まりだった。

時代劇は日本の映像文化を支えるひとつのジャンルとして、世界に誇れる唯一無二のものだし、外国人で憧れをもつ人も少なくない。ワークショップは日本で開催されるからといって日本人だけを対象にしたものではなく、英語と現地語で運営されるよう極力配慮している。アジア諸国のオペレーターがわざわざ日本に来て学ぶなら、より楽しんでもらえるだろうと考えたのが、ここでワークショップをやりたいと考えたのがはじまりだった。

一方、ゴールドワークショップを開催する場所に求められるいくつかの要件もあり、それを解決するためにヒヤリングや現地調査を実施した。結果として、東映京都撮影所でゴールドワークショップを開催することは難しいという結論に。

ゴールドワークショップは合宿のため、寝食をともにすることを基本にしており、撮影所のある太秦エリアで30人近くが一同に宿泊、食事をとれる場所を確保できなかったことが理由だった。どんなにアクセスが悪い、駅からも空港からも遠いところでも、離島でも構わないが、寝食ともにするという要件は、ゴールドワークショップには重要な“雰囲気”の一部だ。

そんなわけで京都まで行ってスタジオの方にも親切にいろいろご案内いただいたにも関わらずお流れ。その後いろんな場所を探して静岡に行ってみたり、千葉だ、茨城だ、と検討した結果、2018年10月に無事埼玉で日本初のゴールドワークショップは開催された。

2018年開催 ステディカムゴールドワークショップ

無事終わることができたゴールドワークショップ、肩の荷降りたものの、心残りはひとつ。“あそこでやりたい”。

そんなわけで、通いでできる3日間のシルバーワークショップを、仕切り直しで2019年に入ってから企画。撮影所や講師のスケジュールを調整し、無事12月開催となった。

セットの中でワークショップを行うメリット

なぜ撮影所の中でワークショップがやりたかったかと言えば、見た目。セットの中でモニターをのぞけば、たとえ役者が本物じゃなくても、イメージは大きく違う。映像の動きやフレーミングをある程度以上委ねられているステディカムオペレーターならば、その見た目でスイッチの入り方も変わってくるだろう。

撮影所の中でお互いに撮影や演技を行う

ステディカムワークショップでは、ひとつひとつの基本的な動作を、少しは練習室のようなところの中で行うが、そのひとつひとつを組み合わせた内容を演技をつけて行うことが多い。実際の芝居により近い、というかホンモノの撮影所の中にいるわけで、そのショットはよりリアルなものに近づく。ワークショップ内では参加者が交代で演者も行うが、自ずと芝居に入っていく参加者も多い。リアルな撮影現場に近い環境を作れれば、習得効率も自ずと上がっていく。何より、楽しい。

日本らしい風景とショットデザインの片鱗

映画村内のセットは江戸時代や明治初期を再現したものが多く、現代の建物とはちがう部分が多い。町づくりそのものが違う部分もあり、気づきも多い。

戸や襖の幅や高さ、屋根の高さは、現在よりも幾分か小さい寸法で、当時よりも身長のある現代の役者が通れば結構タイト。また、戸があれば必ず段差がある。そこにカメラやステディカムが入るわけで、気をつけないといけない部分はそれだけ増える。

土間から部屋に入る段差は大きく、セットそのままではステディカムを担いだままでは上がれない。町の通り自体が狭く、路地は細い。色々な物が置いてあり、出っ張っている。

どういうショットデザインをするのか、普段と違うイメージを作ることが求められる時もある。これも時代劇セットの中で学ぶひとつ。講師陣すら初めてのことだから、みんなで一緒になって気づくところも。学びがあれば、やはり楽しい。

またやりたい!という余韻

まるきり個人的な意見だが、日本で開催されたTiffen社認定ステディカムワークショップの全てに参加してきて、毎度終わって思うのは「またやりたい」ということ。

しかしまるきり個人的な意見と言いながら、同じように感じてくれる方も結構いらっしゃって、様々なワークショップに“連チャン”で参加される方も。度が過ぎるとステディカム病なので、そういう方にはお手伝いをお願いしたり、講師をお願いしたりと、更なる沼に引き込んでいく。

今回は場所良し、機材良し、人良し、ご飯良しの良し尽くしで大変エンジョイしたのもあるが、毎度違って毎度楽しいのがワークショップだ。場所やタイミング、参加者によってその内容は都度アジャストしながら行うからこそ、一度も同じワークショップはない。

同じワークショップはないが、雰囲気は世界中どこでいつ受けても変わらない。これがワークショップを出たステディカムオペレーター皆が共有できる、僕らの宝物かもしれない。

WRITER PROFILE

柏原一仁

リリーヒルワークス代表。銀一株式会社にて映像機器・写真用品のセールス・マーケティングを経て独立。好きな食べ物はからあげ。