txt:岡英史 構成:編集部

IDX

IDXは、バッテリーメーカーとして特にVマウントバッテリーに関してはSony製品に引けを取らない事で有名だ。小倉氏(正ちゃん)が加わってからお家芸のVマウントバッテリーもシネマ系カメラのハイワッテージに対応すべく第二ステージに入ったと言っても過言ではない。

そしてバッテリーと同じく映像伝送機材メーカーとしても有名である。伝送といってもIDX製品は自分達のようなミドルレンジが自己所有できる位のコスパに優れた製品が多い。HDMIコネクターに刺すだけの初期モデルは低価格ということもあってミドルレンジ界隈では一種のデフォルトといっても良く、色々なアタッチメントもふまえ、どんなカメラにも簡単に取り付けられるのも特徴だった。

しかし、日本の電波法の中でマージンを取りつつ誰もが簡単に運用できる事を第一に考えて行くと、特に野外での運用は中々厳しい物があった。筆者所有の初期型のCWシリーズも室内であればそこそこの性能を発揮できたが、野外ではさすがに安定した伝送を期待する事が難しく、本番での本線に使用するには厳しい物があったのも事実だ。

そんな中、昨年のInterBEE前に小倉氏から「ちょっと会社に遊びに来ない?」というお誘いが。そこに待ってたのは今回のメインである新型CWシリーズだった。

新CWシリーズ

IDXの伝送は海外製に比べて飛びが弱いとよく聞くが、実は筆者もそう思っていた。特に野外での飛距離は本番では使えないかな?という時もあった(CW7/ディスコン)。さすがに海外製が電波法すっ飛ばして自国仕様を持って来てるとは思えないが(Amazonで売っている中華製は要注意品もある)、それは伝送方法の違いによることが一番大きい。

日本に入ってきている海外製の物なのはブロードキャストで使うというよりも、単体での使用を主に置いている。その結果が遅延の違いなのか。今までのIDX製品は遅延の部分を重視しその分飛距離が犠牲になって来た。

それを根本的に変えたのがCW-F25だ。伝送は野外でも問題なく飛ぶ。筆者の使った環境では500mは間違いなく飛んだ。その代わり遅延は大きいのだ。この部分をどう見るのか?というのがこの手のポータブル伝送の使いどころだろう。そして今回紹介するCWシリーズはCW-F25と同じで多少の遅延より飛び重視ということを最初に伝えておきたい。

CW-D10

DVX200とHM-175への取り付け例

前記もしたがCW-F25は本当に良く飛ぶ。野外であそこまで飛ぶなら簡易的な中継なら全く問題ない。ただもう一台、複数台欲しい時にその価格に躊躇してしまう。定価ベースで100万円強の機材はさすがに個人で複数台揃えるのは難しい。

その声を反映した物が2年前のInterBEEで参考出品されていた。その時は子機4台に対して親機(ベース受信機)1台の組合せだったが、今回のCW-D10はその半分の子機2台に対して親機1台の組み合わせだ。しかも値段はCW-F25の半分以下で50万円を切った。いいこと尽くしに見えるが到達距離は残念ながらCW-F25の半分。とはいえ、野外で400m以上飛ぶのは外ロケでは優位性が大きい。

ベース機(受信機)子機1と子機2の同時受信が可能。スイッチャーと組合わせる事で簡易的なマルチカム運用が可能

D10は伝送距離こそF24に比べると半分になったが、機能的には色々な機材と組み合わせる事が出来るのは同じだ。タリーが返って来るのはもはやデフォ(タリーは各自用意)。その他にもRJ-45からのRTSPストリーミング配信にも対応し、さらにRS232/422によるシリアル通信制御の伝送(つまり旋回カメラ等のコントロールが可能になる)もできる。送信機への入力はSDIとHDMIの二つ(排他仕様)ベースの出力も同じく各々SDIとHDMIに対応している。

受信機/子機1/子機2 ステータスは各々LCDに表示される

セットアップは特に何もない。電源を入れてリンクを待てばOK。その表示はリアルタイムにLCD表示される。リンクされたら後は何も考えずカメラを振れば大丈夫だ。リンクの際に子機と親機が近すぎるとリンクエラーが起こる時もあるので出来ればやや離れた距離での運用が良いだろう(近すぎると言うのは大体20cm以下の距離)。伝送帯域は5Ghz帯、所謂Wi-Fiと同じなので公共会館によってはジャミングで使えない可能性もある。伝送レゾリューションは1080/60PまでOKなのでどのHDカメラでも使用可能だ。

CW-1dx

スマホに映像を飛ばすことが出来るCW-1dx

もう一つの伝送機器はQBEEで参考出品していたCW-1dx。この機種の登場と共にディスコンになったCW-1シリーズの後継機種であるが、中身は全く別物になった。伝送方式をD10と同じく一新し安定供給できる距離が伸びた。1dxも通常使用にセットアップは特に何も必要はない電源を入れリンクを待つだけ。D10と同じく近すぎる場所でのリンクには注意が必要だ。

1dxの入出力はHDMIのみ、伝送のフォーマットは1080/60Pまで対応しており、こちらもHDカメラならそのまま運用可能だ。価格もCW-1と同じく定価10万円以下と、業務レンジユーザーには嬉しいところだ。

カメラからの映像を1dxで受けスマホやタブレットへのストリーミングを専用APP(Crystal Vision)で受ける事が出来る

ここまでの話ならただ安い伝送機器というだけだが、CW-1dxは受信機側にRTSPを持っているため、スマホ/タブレットに専用クライアントソフトを入れておけば伝送されている映像が手元で各々見えるということだ。同時接続は理論上、10数台繋がるが、実際にはトラフィックの関係もあり4台位がMAX、転送レートも考えると2台位までが快適な試聴環境となる。この受信範囲は室内での見通し距離で約30m前後、気になる映像の遅延だがこれはかなり遅れる。

だがマスモニではなくピクチャーモニターとして使うなら十分な性能といえるだろう。これをどのように使うかといえば、マスモニを見ているVEやディレクター以外の外野陣、照明・衣装・メイクさん等々が現場で各々の部分のチェックに使うのが正しいかもしれない。

流れ的にはカメラのHDMIからTX(送信機)に行き、それをRX(受信機)で受けたものをさらにAPP(Crystal Vision)でRTSPに繋いで映像を見るスタイルだ。この使い方ではリンクも各々の電源を入れソフトを立ち上げ待てばいい。RTSPに接続するのに少々時間が掛かる時もあるが、少し待てば大丈夫だ。

制作現場以外では何に使えば有効なのかを考えてみた。多少の映像遅延が気にならず、最悪映像が途切れても自動復帰するまで特に問題なく、進行がわかる事でその現場が上手く回ることができるのは何か?それは結婚式、ブライダルの現場がもっとも有効かもしれない。

丁度、懇意にさせてもらっている現場でそのテストをさせてもらった。映像を見るのは披露宴を仕切るキャプテン、司会者、スチルカメラマンの3名。各々にアプリを入れてもらい、本番をモニタリングしてもらった。披露宴後の感想はやはり「現場が回しやすい」という事だった。考えてみれば当たり前で、多少の映像遅延はあるが色々なタイミングをリアルタイムに見る事で各々の仕事はしやすくなる現場だ。

特にスチルカメラマンはこちらの画角がわかる事でより被写体に近づくことができ、結果、映像と写真で良いものができる。キャプテンやMCも主役の二人の動きが常に見えるところに良い評価をもらえた。できれば主役のご両親のスマホでも見てもらえばその臨場感は更に良いだろうが、専用アプリを入れなければならないところが少々ハードルが高い。これをQRコードでブラウザで見る事ができれば導入のハードルが下がり、広く受け入れられるのかも?そう言う感触を得た。

総評

国産製品のメリットは色々な欠点をフィードバックする事で確実にファームアップや時期製品につなげる事ができる。IDXは今後さらに、色々な事を考えているのを聞かせてもらった。その話はもう少し時期が経てばわかる事だ。今年は新型コロナウイルスの影響でNABの視察が少々危うい状況(この原稿執筆時はまだ中止ではなかった。結果4月開催は見送りとなった…)だが、できればそこで新しい情報を発掘したい。

一つ伝送を使う際に何よりも大事な事は、送信機と受信機の間になるべく障害物を入れない事だ。できれば受信機は床より2mは上に上げたい。これは成人男性の身長が170cmと仮定すればたった30cmしか上がっていないことになる。人間は電波を吸収しやすい物体なので、2つのアンテナ間はできるだけクリアにしたい。床より150cmと300cmではその受信感度は飛躍的に異なる。送信機はどうやってもカメラに取り付ける限り高さは稼げないのでベース基地での受信機は最低でも200cmは上げたい。

また、室内では反射波も含めて受信感度は大きくなるが、野外では直接波しか受けられないのでさらにアンテナは上げたいところだ。とにかくTX/RXのアンテナ間には何も入れない。これが簡易型伝送機器の正しい使い方と言うのを頭に入れておくと良いだろう。

WRITER PROFILE

岡英史

モータースポーツを経てビデオグラファーへと転身。ミドルレンジをキーワードに舞台撮影及びVP製作、最近ではLIVE収録やフォトグラファーの顔も持つ。