txt:山本遊子 構成:編集部

映画監督の坪田義史さん・映画プロデューサーの池田将さんを迎えて

「訊かせてよ。」第二回!

みなさんこんにちは。フリーランスの映像ディレクターの山本遊子です。この連載は、映像を観ていただければ分かるのですが、映像業界内外で活躍する様々なクリエイターの方々とこれからの「映像のカタチ」について語りあう、というふんわりした内容と、ゆるい雰囲気でお届けしています。

今回のゲストは私の大学時代の友人で映画監督の坪田義史さん・映画プロデューサーの池田将さん。2人が手がけた、現在ロングラン公開中・映画「だってしょうがないじゃない」について、私個人が気になったことを訊いています。ミニシアター・横浜シネマリンの楽屋をお借りして3月21日に収録されました。緊急事態宣言が出る20日くらい前でしょうか。ですので、めっちゃ「密」な空間での収録になっています。

この収録からここまでのあいだ(今日は5月12日です)全国で映画館は閉鎖され「映画」は大変な窮地に立たされてしまいました。地方では徐々に開館するところが出てきているようですが、まだ営業が再開できていないところがほとんどではないでしょうか。

一方で、多くの人がオンライン会議やリモート飲みをして、自分が映し出される画面と向き合い日常を送っている。「映像」のもつ役割が嫌でも変化せざるをえない状況になりました。そしてリアルな「場」を奪われてしまった映画や演劇、ロケのできないテレビ、もしかしたらYouTuberさえもぎゅーっと狭い中に押し込まれてしまっているような、もしくは空気が分断されたまま陳列されているような、モヤモヤした状況が続いています。

コロナ禍は映画だけでなくテレビ・Webコンテンツなどにも確実に変化をもたらしています。

このような状況の中「だってしょうがないじゃない」が「仮設の映画館」というオンライン上の映画館で上映することになったというので、追加でメールでいくつか質問をし、回答を送ってもらいました。映像と合わせて読んでもらえると面白いと思います。監督とプロデューサーという立ち位置の違いが回答に反映されていて興味深いです。

そして、映画「だってしょうがないじゃない」を見てもらえたら、もっと嬉しいです。

追加で訊かせてよ

――現在このコロナ禍において、様々な映画監督、映像クリエイターが様々な方法で作品発表している中で「だってしょうがないじゃない」が“仮設の映画館”で上映することになった経緯をお聞かせください。

坪田D:配給会社東風の代表と昔からの知り合いで、「仮設の映画館」の理念を知り、賛同しました。

池田P:4月末日まで劇場上映が決まっていましたが、コロナ禍により2月くらいから徐々に客数も減り、イベント中止、上映中止にいたる事態に直面しました。

そのような中でも歩みを止めない活動をしようということで、“仮設の映画館”の試みに賛同しました。DVD販売やオンライン配信などの選択肢もある中で、一時的な資金回収よりも劇場との一蓮托生での歩みにする活動のほうが、今後の制作活動において財産になるだろうと考えました。もちろん、ボランティアではないので資金回収は念頭においての活動ではありますが。

――自社で配給会社を兼ねていたため、オンラインで映画を上映するということのハードルが低かったということはありますか?(大きな配給会社や映画会社が絡んでいるとすぐにオンライン上映、という動きになりにくいのではないか?と想像しています)

坪田D:スムーズでした。緊急事態宣言後、映画の興行がストップして、予定していた自主上映イベントも延期となった時、Sundyのテレワーク会議中に「仮設の映画館」で配信しようとなり、スタッフ一丸となって3日くらいで立ち上げることが出来ました。

池田P:大きな映画館という定義は曖昧ですが、東宝や松竹などが独立系劇場やミニシアターへの収益分配をするオンラインシステムの導入は考えないと思います。このような事態になると、大きな配給会社のほうが劇場公開を早めに切り上げて、オンライン公開での資金回収にシフトすると思います。

また、今のインフラ的にはオンライン上映のハードルは高くないと思います。自主映画の方々でも有料オンライン配信ができる時代ですので。逆に上映用DCPなどをたくさん作ってたくさんの劇場で公開するほうが我々にとってはハードルが高いといえます(費用対効果的に)。

――映画をオンラインで上映するという試みについてことについてどう思いますか?劇場というリアル空間がネットという仮想空間に移行せざるを得ない状況になっていることについて、何か思いがあれば聞かせてください。

坪田D:収益の約半分はミニシアターへ分配される「映画の経済」を守るための、あくまで「仮設」の試みです。

池田P:映画館というのは「場」ですので、あたりまえですが「場」に足を運んでもらうハードルがあります。単館での少ない上映ですと尚更で、公開しても上映時間に合わなかったり、足を運べなかったということが多々あります。

その点でいうとオンラインでの視聴は場を拘束されないので、本来上映されない地域の方や、お身体の具合や生活環境によって外出しづらい方などに作品を届けられるので、新しい出会いを作り出せたとは思います。

ただ、この映画は上映して終わりではなく、見終わった後に監督自身が観客の前に立ち、具体的に出会うことで映画が醸成されると監督ともども考えていますので、「場」へのこだわりは強く持っているといえます。

※下記の2つの質問は坪田監督のみに訊いています。

――これまで複数のミニシアターで上映活動をされてきたと思いますが、このような状況になって、改めて、監督にとって「劇場」はどのような場所だと思いますか?

坪田D:作り手は、映画館で上映することを前提に企画段階から作品を設計しています。暗闇に浮かび上がる光景、聴こえてくる言葉や音、映画芸術の現在を鑑賞するに適した空間だと思います。

――世界がこのような状況ですが、今後も映画を作り続けたい、と思いますか?

坪田D:作りたいと思います。

「だってしょうがないじゃない」上映情報

5月23日(土)までオンライン映画館「仮設の映画館」にて「だってしょうがないじゃない」上映中 

■ゲストプロフィール

坪田義史(つぼたよしふみ)
1975年、神奈川県出身。多摩美術大学映像演劇学部在学中に制作した『でかいメガネ』がイメージフォーラム・フェスティバル2000で大賞を受賞。2009年には、『美代子阿佐ヶ谷気分』(英題:MIYOKO)で、劇場デビュー。第39回ロッテルダム国際映画祭コンペティション部門「VPROタイガー・アワード」選出。イタリア・第46回ペサロ映画祭 審査員特別賞受賞。主演女優の町田マリーが、第31回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞受賞。また、韓国・ソウルの映画館CGVにて「美代子阿佐ヶ谷気分」(英題「MIYOKO」)劇場公開する。2012年 文化庁在外芸術家派遣によりNYで一年間活動。2016年2月、リリー・フランキー主演映画『シェル・コレクター』(監督・脚本) テアトル新宿、桜坂劇場他、全国42カ所で公開。「だってしょうがないじゃない」は初の長編ドキュメンタリー。第24回釜山国際映画祭 Wide Angle部門出品。

池田 将(いけだ しょう)
1983年東京生まれ。東京造形大学デザイン学科映画専攻領域入学後、映画監督・諏訪敦彦に師事。2008年、卒業制作で制作した「亀」は造形大学造形賞を受賞後、下北沢トリウッドにて劇場公開し監督デビュー。2013年に制作した「Voyage」は、山形国際ドキュメンタリー映画祭2013年ラフカット部門選出、同映画祭2015年にも日本プログラム部門選出。2014年には鈴木洋平監督作「丸」をプロデュース。2015年には柏田洋平と共に映像プロダクションのサンディ株式会社(Sundy inc.)を設立。2016年、ミニシアターのユジク阿佐ヶ谷にて「映像歳時記 鳥居をくぐり抜けて風」を2ヶ月間ロングラン公開。所属しているサンディ株式会社で製作したドキュメンタリー映画「だってしょうがないじゃない」のプロデューサーとして配給・上映活動をしている。

WRITER PROFILE

山本遊子

フリーランスの映像ディレクター。1999年からテレビ、WEBなど様々なメディアで映像を作り続けている。うぐいすプロ