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txt:渡辺健一 構成:編集部

数多あるマイク種類とその用途について

連載の第2回。今回は誤解が多いマイクの種類と用途について解説してみたい。

まず、大まかにマイクの種類を分けてみよう。見た目で言うと、カメラの上につける長細いショットガンマイク、カラオケでおなじみのボーカルマイク、そしてスタジオで見かけるナレーションマイクだ。

などと並べてみたが、実は見た目と中身は必ずしも一致しない。つまり、見た目と用途は必ずしも同じではないのだ。ショットガンマイクのような形状なのにボーカルマイクだったり、ナレーションマイクのような形なのにボーカルマイクだったり。

さてはて困った。そこで今回は、主要なマイクの種類と用途をまとめてみよう(ナレーション専用のリボンマイクなどもあるが、今回は解説しない)。

■用途と種類
感度 種類 構造 用途 使用場所
高感度 ショットガンマイク
ステレオマイク
コンデンサーマイク 人の声
自然の音
楽器
静かな場所
離れたものを録る
ピンマイク コンデンサーマイク 人の声
楽器
万能だが使い方にコツがある
低感度 ボーカルマイク
インタビューマイク
ヘッドセットマイク
ダイナミックマイク 人の声
大きな音の楽器
うるさい場所
目の前のものを録る

この表のようにマイクは、ターゲットとする被写体の種類と使用する場所で使い分けが必要だ。大雑把に言えば、静かな場所で使うマイクと、雑踏の中で人の声を取るためのマイクに分類することができる。ピンマイクは静かな場所でもうるさい場所でも使える万能なマイクだが、遠く離れたものを録ることが苦手だ。ちょっと特殊なマイクなので、この連載では別途まとめて解説することにしたい。

■機構による分類
種類 製品 電源 電圧
プロ用コンデンサーマイク ショットガンマイク
ピンマイク
ステレオマイク
ファンタム(XLR端子) 48V(旧製品は12Vや24V)
民生用コンデンサーマイク ショットガンマイク
ピンマイク
ステレオマイク
プラグインパワー
(3.5mmジャック)
2V~5V程度
メーカーによってマチマチ
ダイナミックマイク ボーカルマイク
インタビューマイク
ヘッドセットマイク
なし なし

カメラとの接続方法でマイクを分類することもできる。大別すると、電源の必要なマイクと電源の要らないマイクがある。まずは、電源の要不要の違いによる分類を解説することにしたい。

大きく分けると2種類。電源が必要なマイクと不必要なマイク

マイクを構造で大きく分けると、電源が必要なマイクと電源が不必要なマイクに分かれる。何が違うかと言うと、概して言えば、

  1. 電源が必要なマイク=高感度マイク
  2. 電源が要らないマイク=低感度マイク

これを読んで、「高感度マイクの方がいい」と思うなかれ。写真と同じで高感度カメラが万能ではないのは当たり前。感度は用途によって使い分ける。マイクも同じで、高感度マイクと低感度マイクは用途が全く違うのだ。

わかりやすい例を挙げると、雑踏の中でインタビューをする場合、高感度なショットガンマイクを使うと周囲の雑踏まで入ってしまう。そんな時には低感度なインタビューマイクを使えば、周囲の雑踏が圧倒的に軽減される。音質自体は電源の要不要とは別のもので、高感度だろうと低感度だろうと、実績のあるマイクは高音質だ。

1.電源が必要なマイク2種類について

さて、電源が必要なマイクも大きく分けると2種類になる。プロ仕様のファンタム電源と一般機器向けのプラグインパワーだ。

XLRのファンタム電源はプロ仕様

プロが使っているファンタム電源タイプだ。通常はXLR端子というノイズキャンセル機能のあるケーブルで電気を供給する(ケーブルと端子だけでノイズキャンセル機能を持っている。ただし、ここでいうノイズとは「バリ」という電気ノイズで「サー」というノイズではない)。

電圧は主に48Vだ。かつては12Vや24V仕様のものもあったが、現在は概ね48Vを供給する。

大雑把だが、ファンタム電源が必要なマイクの代表はコンデンサーマイクという。ファンタム仕様のマイクには、他にもリボン式などもあるが、通常はコンデンサーマイクだと思っていい。

電源が必要な代表的なマイク、ゼンハイザーMKH 416

ゼンハイザー社のMKH 416はテレビでも映画でも定番のマイク。静かなところであれナレーションにも使える。

プロの現場としては、俗称416(ヨンイチロク)と呼ばれるゼンハイザーMKH-416が定番である。テレビでは、ピンマイクと416でほとんどの現場が成立している。弊社も20年前に買った416が未だに現役最前線である。一生物のマイクだと言える。

416がなぜいいのかというと、音に温かみがあり自然に聞こえる。また、超狭指向性マイクに分類されているが、マイクの向きが多少違っても音質の変化が少なく、失敗しにくいマイクだ。インタビューからセリフ、自然の音を録ることまでこれ一本でできる。ただし、雑踏や残響のある室内では使いにくいので、プロはピンマイクと併用して416の苦手な場面を乗り越える。

416の弟分、ゼンハイザーMKE600は電池駆動も可

MKE600は、416の音質を踏襲した比較的安価なショットガンマイクだ。乾電池でも駆動できるのが特徴で、ファンタム電源を持たない一眼レカメラにも接続可能だ。音質は416に非常に近い。画角(第1回を参照)もほとんど同じだ。ただし、画角を外すと416よりも音質が下がる(高音が一気に失われる)ので、416よりは難しいマイクと言える。

また、ローカットフィルターが内蔵されているのも特徴で、ローカットをオンにすると風切り音が軽減できるだけでなく、横方向の感度が下がるので416よりもピンポイントで音が狙える。雑踏の中では416よりも音がクリアにできる。価格も416の3分の1程度と、かなりお買い得だ。

ちょっと余談だが、マイクの性能を語る場合、どんな場所で録るかで、上記のように性能が逆転する場合がある。マイクには適材適所が顕著になるので、お持ちのマイク、もしくは購入しようとするマイクがどんな場面が得意なのかを頭に入れておくべきだろう。

筆者の独断で言えば、416を持っていればプロとしてお金が取れる。しかし、416の苦手な場面もあるので、もう一本違うマイクを持つというのがベターだ。

ビデオグラファーの場合では、MKE600は救世主だと思う。ファンタム電源のことを気にせず使えるからだ。ただし、MKE600は電池駆動よりもファンタム電源で使った方が若干だが音質が上がる。しかし、それは映画館のような理想的な音響で聞かないと判別できない。通常の使い方では416と聞き分けはできないと思う。

相性問題があるのがプラグインパワー

もう1つの電源はプラグインパワー。これは民生用の音響機器の分野で発展した。ヘッドホン端子と同じ3.5mmのステレオプラグで接続する。ステレオ端子なのだが、片方が電源、もう片方が音声になっている。ステレオ音声仕様のプラグインパワーマイクもあって、こちらは音声信号と電源を共用している。このプラグインパワーに接続するマイクもコンデンサーマイクという種類になる。ファンタム仕様もコンデンサーマイク、こちらもコンデンサーマイク、同じように見えて、実は全く別物なので注意が必要だ。

このプラグインパワーは非常に難しい。最近の一眼レフカメラにはプラグインパワー対応のマイク端子が付いていて、電源が必要なプラグインパワーのマイクが簡単に接続できる。そう思うと、プラグインパワーがマイクの主流のように思えるが、プロの世界ではほとんど使われないのがプラグインパワー仕様のマイクだということも付記しておく。

なぜかというと、実はプラグインパワーには統一の規格が存在せず、電源電圧も2〜5V程度とメーカーや機種や時代によってまちまちなのだ。端的に言えば、マイクとカメラをつないでみて、マイクが本来持っている性能が100%出せればラッキー。酷いと全く音が出なかったり、音が出ても「サー」というノイズだらけだったり、音が割れてしまったりする。

まぁ、最近はマイクを作っているメーカーもここに対応して、どんなプラグインパワーであっても接続できるような構造にしているようだ。何れにせよ、プラグインパワーのマイクは相性があると思った方が無難だ。

我々プロの録音部は、プラグインパワーのマイクをほとんど使っていないとだけ書いておこう。ただし、カメラとプラグインマイクのドンピシャな組み合わせであれば、ファンタム仕様のマイクに匹敵する性能になるはずだ。

さて、この電源についてYouTubeで間違った解説をしているものが散見されるので注意が必要だ。プラグインパワーとファンタム電源は全く別規格であり、そのまま接続することが絶対にできない。ファンタムは比較的高電圧なので、プラグインパワー仕様のマイクをつなぐと、最悪、火を吹いてマイクが焼けてしまう。逆に、変換プラグを使ってプラグインパワーのマイク端子にファンタム仕様のマイクをつないでも音は出ない。

いずれにせよ、プラグインパワーのマイクを使う場合には、メーカーサイトで動作確認が取れているものを選ぶべきだ。

2.電源不必要なマイク(ダイナミックマイク)

さて、一方の電源を必要としないマイクは、ダイナミックマイクという。音を受けて振動する振動板にコイルを付けて、磁石の前に配置する。音で振動板が揺れると電気が生じて、それを音声信号として出力する。自分で発電しているので、電源が不必要なのだ。

ダイナミックマイクの代表はボーカルマイクだ。ダイナミックマイクの使い方は、口元に配置するということだ。先ほどの電源が必要なマイクは、電源を使って音声信号を作り出すアンプが内蔵されているので高感度だ。一方、音量に応じて発電するダイナミックマイクは、先ほどの電源が必要なマイクに比べると低感度になる。

低感度の利点は、遠くの音を拾わないことにある。だから、口元へ近づけて、その周辺だけの音を収録することができる。ボーカルマイクというのは、すぐ近くで大音量の楽器が鳴っていても、ボーカルの音だけを拾えるのが特徴だ。この特徴を使えば、雑踏の中でもインタビューの声を明瞭に録音できることがわかるだろう。

ファンタム電源には事故がつきもの

さて、プロ仕様のファンタム電源だが、48Vと高電圧なので誤接続の事故もよくある。

1つは、古い仕様の12Vのマイクに48Vファンタムをつないでしまって、マイクを壊してしまう事故がよくある。中のアンプが焼けてしまうのだ。また、電源が必要ないダイナミックマイクにファンタム電源を供給してマイクを壊してしまう事故もよくある。ファンタム電源を使うには最新の注意が必要なのだ。

ファンタム電源を使うには専用機器が必要だ

ファンタム仕様のマイクは、概ね、高音質でプロの現場では主流であると言える。ただし、一眼レフカメラに直接つなぐことが難しい。業務用ビデオカメラであればファンタム対応のXLR端子があるのでそのまま繋げられるのだが、一眼レフカメラの場合には、別途にファンタム対応のミキサーなどを使う必要がある。パナソニックのGHシリーズには専用のXLR接続機器がある。

一眼レフ用のミキサーはこれ

TASCAM社のDR-701Dは、プロ用のレコーダーでミキサーとしても使える。カメラからHDMIケーブル(映像ケーブル)をつなぐと、録音のオンオフがカメラの録画に連動する。ちょっと高価だが、これさえあれば映画まで対応可能である。ミキサー機能だけなら、同じTASCAM社の製品が低価格でおすすめだ。

ビデオカメラに搭載されているショットガンマイク

用途別のマイクの種類

上記はカメラとのつなぎ方によるマイクの分類だった。次に、用途別にマイクを分類してみよう。まず、マイクは大別すると、手で持てるハンドマイクと、直接手で持てないマイクに分かれる。

■ハンドマイクの代表はボーカル・インタビューマイク

手で持てるマイクをハンドマイクという。これ以外のマイクは、手で直接持ってはいけない。

ハンドマイクは、集音部がマイクケースの中で音を通しにくい素材で浮かせてある。マイクケースを手で触った時のノイズをハンドリングノイズと呼ぶが、ハンドマイクはこれを軽減する機構が内蔵されているのだ。

また、口元で使うので、息が直接当たった時の「ボソ」という音(ポップノイズ)を軽減するための機構も入っている。マイク先端の網の中に特殊なスポンジが入っているのだ。ポップガードと呼ぶ。

ハンドマイクでプロがよく使う機種

映像で使うハンドマイクで定番なのが、ナレーションからインタビューまで万能なSHURE社のSM58、もしくはBETA58Aだ。もともとボーカル用マイクなのだが、FMラジオの放送品質にも達する。SM58は比較的広範囲(いい加減な角度)で使えるマイクで、低音まで艶やかに拾ってくれるため、重厚なナレーションを収録するのにも使える。マイクの向きをあまり気にしなくていいので、扱いやすい。

一方、BETA58AはSM58の指向性を強くしたバージョン。指向性が非常に強い。マイク前方の音だけを拾う。周囲がうるさい場所で録音するのに適している。普通の部屋でもスタジオのような音で録る事ができる。ただし、マイク角度がずれると一気に音が痩せる。扱いが難しいマイクでもある。故に、SM58とBETA58Aは用途に応じて使い分けるのだ。どちらか一方を買うということであればBETA58Aならうるさい場所でも使えるのでオススメだ(ただしセッティングが面倒)。

インタビュー用マイクの定番SHURE SM63(L)も非常に優秀なマイクだ。テレビのインタビューで見かける長細いマイクがSM63である。パチンコ屋のようなうるさい場所でも的確に明瞭な声が録れる。ただし、前述のSM58、BETA58Aに比べると低音が少なく、軽い声になる。ナレーションに使うとちょっと安っぽくなる。屋外でのインタビュー専用だと思った方がいい。

■ショットガンマイクは手で持てないマイク

ショットガンマイクMKH-416にショックマウント付きグリップを付けた状態。風防であるウインドジャマー(俗称ソフタイ)も付けられている。この状態で、プロレベルの音質になる

ハンドマイク以外は手で直接持つことは厳禁だ。通常はショックマウントと呼ばれるノイズ軽減の機器を使うか、マイクスタンドの載せて触らないようにする。

撮影で使うマイクは、ショットガンマイクという指向性の強いマイクがほとんどだ。長細いマイクである。俗に「望遠マイク」として売られているが、第1回でも書いたように、カメラレンズのような望遠なんてマイクの世界には存在しない(パラボラ集音器というものはある)。

手で持てないマイクでショットガン以外では、無指向性のバウンダリーマイク(据え置きマイク)などがあるが、特殊用途だと思っていい。無線のピンマイクも手で持てないマイクの1つで、テレビ収録では定番の機材だ。

さて、ショットガンマイクというのは、前方の音が高音質で録れるマイクのことで、左右や後方の音は高音が下がった状態で収録される。つまり、高音質のエリアが狭いマイクがショットガンマイクなのだ。

高音質のエリアのことを「マイクの芯」と呼んでいる。芯の中にある音を「オン」と呼び、外した音を「オフ」と言っている。オンの音の良し悪しがマイクの音質なのだが、映画では、オンとオフの音をうまく使って臨場感を作り出している。オフの混じり具合で部屋の大きさ様子がわかるのだ。

またオンに比べるとオフの音は小さめになる。静かな場所なら、オンの音だけに聞こえる。しかし、周囲がうるさい場所でショットガンマイクを使うと、マイクを向けた先のオンはもちろん綺麗に聞こえるが、オフの位置にある雑踏も聞こえる。それ故、撮りたい被写体の声は入るものの、雑踏も入ってしまいって不明瞭な音になってしまう(第1回の音のボケ)。

つまり、ショットガンマイクを望遠レンズのように狙った被写体だけを切り取れると思うのは禁物で、第1回でも書いたようにマイクは被写体から離れてはダメなのだ。

まとめ

構造と用途別にマイクを解説してきたが、ここでビデオグラファーが持つべきマイクを考えてみる。あらゆる場面に対応するには、三種の神器ではないが、最低でも3種類が必要だ。

1つは雰囲気からセリフまで録るショットガンマイク(MKH-416やMKE600など)、2つ目はインタビュー・ナレーション用マイク(SM58やBETA58A)、そして3つ目は次回以降で解説する無線ピンマイクがオススメである。

正直言えば、録音の面白さにはまってしまうとマイクがどんどん増えてゆく。カメラマンがレンズを増やすのと似ている。マイクというのは、被写体(音源)数だけ種類があると思ってもいいくらい多種多様だ。鉄道用に最適なマイクであるとか、自然の音を録るのにいいとか、女優の声をセクシーに録音するにはこれだとか、映画に最適なのはこれというようなものだ。マイクが一本増えるごとに楽しさが増すのである。

しかも、カメラレンズと違って、コネクターは2種類(XLRかミニジャック)しかない。XLRに関して言えば、メーカーが違っても刺せば使える(ただし、ファンタム電源の電圧に注意)。1950年代のJAZZに使われていたマイクでさえ、現役で使えるものがある。また、マイクの寿命は長く、私の416は20年間も使っているが、古びていないし現役最前線。後から出たマイクに負けることもない。

などと、録音が楽しくなると「マイク沼」にはまってしまう。どうか皆さんもこの魅惑のマイク沼にはまってみてほしい。

いずにせよ、どんなマイクを購入するべきか非常に難しいことである。今回の内容だけでは、まだなんだか分からないのではないかと思う。単に種類の違いがわかっただけだからだ。そこで、次回は、マイクの性能を理解するための技術的な解説をしてみたいと思う。

WRITER PROFILE

渡辺健一

渡辺健一

録音技師・テクニカルライター。元週刊誌記者から、現在は映画の録音やMAを生業。撮影や録音技術をわかりやすく解説。近著は「録音ハンドブック(玄光社)」。ペンネームに桜風涼も。