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放送カメラマンへの道のりとは

2020年7月8日にライブ配信した放送・シネマ業界の旬な情報を生配信でお届けするPRONEWS主催の新企画「Broadcast&Cinema EXPO」。第一回目となる「FUJINONスペシャル」では、共同テレビでカメラマンを務める佐藤勝彦氏にお話を伺った。佐藤氏が語った「放送カメラマンへの道」とは?その内容を紹介しよう。

佐藤勝彦 氏
株式会社共同テレビジョン 技術センター所属。カメラマン歴8年。バラエティ、ライブ、スポーツ中継を担当。プライベートでもシネマカメラの撮影を楽しんでいる。

カメラマンの魅力や楽しさとは?

――共同テレビジョンに入社して何年目になりますか?

業界に入って13年目です。バラエティなどの放送番組、コンサート、スポーツの収録や生放送など、ドラマと映画以外はほとんどやります。その中でも個人的には好きなのは中継制作です。サッカー中継や、ライブ、コンサート収録は特に好きです。

――中継制作が好きな理由を教えてください。

バラエティ番組や情報番組のスタジオ撮影は、長くても27倍のスタジオ・中継制作ズームレンズが一般的です。しかし、スポーツ中継の場合は、101倍ズームレンズを使います。カメラワークはまったく異なり、長玉の距離感、バランスの取り方も変わってきます。

その両者のうち、好きなのはスポーツ中継です。被写体が自分からかなり離れている場所でも、自分が意図して気持ち良いサイズで撮れたりするのは、カメラマンをやっていて「幸せだな」と思う瞬間です。

――記憶に残る現場のエピソードを教えて下さい。

音楽フェス「FUJI ROCK FESTIVAL」には毎年撮影に関わっており、カメラチーフを担っています。イギリスのバンドOasisがすごく好きで、2015年開催時に元Oasisのノエル・ギャラガーのバンドが大トリだった時、最終日の一番広いマウントステージでカメラを回しながら、サビを聞いて泣いてしまいました。あれは最高の瞬間でした。

――入社当初からカメラマン希望だったのでしょうか?また、この業界を目指した理由も教えてください

入社時からカメラマン希望でした。学生の頃に観ていた自分の好きなコンサートは、フィルムライクでテレビの質感ではありませんでした。

あとで年数を重ねて気がついたのですが、24コマ/秒もしくは30コマ/秒の世界ということがわかりました。そんな体験を通して、映像はすごく素敵で、カメラマンって面白そうだなと思いこの業界を目指しました。

2020年7月8日にライブ配信した「Broadcast&Cinema EXPO」のインタビューシーンより
(左)MC:仲 雷太 a.k.a. raitank、(右)佐藤氏
――カメラマンとしてのキャリアはどれぐらいですか?

カメラをオペレートするようになり約8年です。もちろん、思い通りにいくことなんて未だにありません。なぜうまくいかないかを考えたときに、ハードとソフトの部分に原因があると考えています。

ソフトの部分では、ディレクターやスイッチャーの思っていることや感じていることを汲み取らないといけない。カメラマンには、そういった面白みというのはありますね。

ハード面で難しいのは、ディレクターから「こんな画がほしい」と言われ際に、自分の用意したレンズよりもディレクターがもっと引きたかった場合です。「あぁ、もっと引けるレンズを用意すれば、ディレクターが満足いく画が撮れたのに」というのがハードの難しさでもあります。

僕の中でハードの部分は極力自分で勉強をしながら、ソフトの部分はカメラマン同士で飲み明かし、話をしながら高めていきました。

――映画やドラマの世界はカメラが独立して動く感じで、テレビ番組制作はスイッチャーやディレクターの方がいて、その指示に従ってチームワークで番組を作っていきます。ご自身はテレビ制作に向いていると感じられますか?

もちろん映画業界も同じだと思いますが、密に話をして「もっとこうしたい」「もっとああしたい」というのをカメラマン同士で話していく環境が、すごく楽しいです。今は経験を積んで、カメラチーフやスイッチャーのポジションを任していただける環境が増えています。そうすると、「この人はここでこのカメラを任せよう」という考え方もできるようになりました。

カメラマンという職業に近づく方法

――カメラマンの理想像があれば教えてください

ディレクターとスイッチャー、カメラチーフが「ここはこうするよね」「ここはお前こう来るよね」という阿吽の呼吸で行動できるのが一番の理想だと思います。

「1」「2」「3」「4」「5」というカメラ番号がありますが、「このカメラはA君だな」「このカメラはC君だな」と画を観るだけで特性がわかる。「そうだよね。お前こうくるよね」「では俺は、この子の画に逃げておいて。この子をおかずにして、まだ戻る」みたいなことができると最高に楽しいです。

打ち合わせでも「いつも通りね」っで済んでしまう現場が一番クリエイティブな現場になると思います。自分のチームの理想は、こういう形だと考えています。

――その中で、カメラマンの個性とはなんでしょうか?

カメラマンの個性はたくさんありますが、「お前こう撮るんだね」と思われる人って基本を身に着けています。個性を出すためには、個性の前段階がすごく大事で、基本を身に着けていないと個性は認められない。個性を認められないのであれば、それは個性ではなくて、うぬぼれでしかありません。まずは、基本をしっかり勉強して、昔から受け継がれている守破離(しゅはり)が大事かなと思います。

――カメラマンになるためにはどのような勉強をしたらよいでしょうか?

ひたすら映像を見ることです。僕がアシスタントの頃は家にレコーダーを4つ買って、CSやBSを全部撮って観ていました。今の時代はすごく恵まれていて、何でも観られる。レンタルもできます。

カメラマンになってからも勉強は必要だと思います。というのも、僕らの世代は置いてかれるのではないか?と危惧しています。20歳台の若い子の驚くようなアングルや、視覚効果に優れた映像作品が増えてきています。今は年上のカメラマンの作品ではなく、逆に若い子の作品を意識して観ています。ビデオグラファーやVlogをやっている子が放送の世界にきたら、どんな画を撮るのかなって、ちょっとワクワクします。

――キャリアによってカメラワークが違うということですか?

全然違います。たぶん、僕らよりもちょっと上の人たちだと、Vlogとか何ができるの?と思う世代が多いです。しかし、YouTubeのVlog出身のクリエイターからか、著名なPVを撮る方もでてきています。だからそういったところは絶対に無視しちゃいけない。なおかつ、そういうところも勉強しなければいけないでしょう。

FUJINONレンズの魅力

――共同テレビに納入されている放送用レンズは、大部分がFUJINONレンズと伺いました。FUJINONレンズをお使いになって、使い勝手や気に入っているところを教えてください

2019年7月から運用を開始した4K大型中継車に搭載しているポータブルレンズはすべてFUJINONです。なによりも軽いのと、グリップの持ちやすさもポイントが高いです。

その中には、18倍で引きじりが広角5.5mmの「UA18×5.5BE」があります。FUJINONにしようと思った決め手の1つは、4K対応で寄って引けるという万能型レンズなところです。

また、UA24x7.8BERDは、持った瞬間「軽い」と思いました。4Kレンズで、24倍の広角7.8は万能ですね。とりあえず、スポーツ中継でもバラエティでも「標準レンズを1本用意して」と言われたら、まずこれを揃えます。

――実際に業務をされていて、HDから4Kになることで、ハード部分で一番どのような変化を感じましたか?

ハード部分では、すごく変わりました。6年前ぐらいに、2Kから4Kの移行期間がありました。当時(2014年)に、初の4K放送となるサッカーのライブ中継を実施しましたが、その頃はまだ4K放送用カメラももちろんありませんでした。ですので、ソニーのシネマカメラ「F55」にソニーのカメラシステムアダプター「CA-4000」をつけて伝送したり、PLマウントにマウントを変換し、FUJINONの高倍率ズームレンズ「ZK12×25」などを使って実現しました。

ZK12×25だと寄りが足りないので、寄る場合は長玉のシネレンズに変えて対応しました。4K映像を送るために、どれだけ大変か、どれだけセッティングに時間を要したか、という期間でもありました。ですので、4K放送がフォーマットになったとき、放送もPLマウントになっていくのかなと思っていました。

そこから約2年後、B4マウントの4K対応XDCAMショルダーカムコーダー「PXW-Z450」が登場して、4KでもHD撮影と同じように撮影できるようになり、「嘘でしょ!?」と思いました。さらに、FUJINONの107倍などの登場がありました。昔の苦労を経験しているので、今はこれだけスマートに4K信号が出力できるのはちょっと驚きでもあります。

――これまでのHDから4Kになって変わったことはありますか?

変わると思っていましたが、あまり変わりません。ユーザーの気持ちを汲み取ってHDから4Kに移行してくれたと思いました。あと、ハード部分でいうと、やはりフォーカスが追いつかない部分がありました。スポーツ中継だと、ベースのカメラはルーズショットの構図でずっと追っていくのですが、VEからちょっとボケてるよ、なんて言われることがありました。

しかし、FUJINONの107倍のAF機能を搭載した4K対応放送用レンズ「FUJINON UA107×8.4BESM AF」が登場し、ここまで来たか!と思いました。ここはとても満足しているところです。

――今年は誰も想像していなかった新型コロナウイルスの世界的感染に見舞われています。こういう時期を経て映像を作ること、見ること、の意味が変わってしまったと思います。こんな時に、カメラマンとしてどんなことを考えながら、コンテンツを作っていこうと思いますか?

実際に撮影現場では、人と人の間隔を1.5~2mを目安とするソーシャルディスタンスを確保するというのは必須になってきました。もう2ヶ月もの間そういう状況を体験してきて、正直慣れてしまった部分はすごくあります。

あと、無観客で実施する現場が増えています。サッカー中継も始まりましたが、無観客です(インタビュー時)。今までスポーツやコンサートが始まる前は、お客がワクワクした表情を切り取り、選手が出てくる、というシナリオづくりがありました。それが今、エピローグの部分がなくなってしまい、どうやって盛り上げていくか?というのは、これから考えていく必要があるのではないかと思います。

――最後になりますが、これから映像業界を目指す方たちへのメッセージをお願いします。

沼なんですよ。映像沼。入り込んだら出てこれない。それって楽しいじゃないですが。現場って99%キツイですが、1年に1回とか1%の最高の瞬間が絶対にあるんですよ。それを味わっちゃうと、もうやめられないですね。そのためには、色々な人と話たり、色々な情報を見たり、聞いたりしてほしいです。事前準備で現場のほぼ9割は決まります。

なので、今映像に興味がある方は、そのままでいいんじゃないかなと思います。そのまま今の好きなものを観て、感じて、それをもっともっと深堀して観る。今のままでいいと思います。

「Broadcast&Cinema EXPO ~FUJINONスペシャル~」の株式会社共同テレビジョン 佐藤勝彦氏インタビュー映像。こちらも是非ご覧いただきたい

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PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートを中心にお届けします。