txt:ノダタケオ 構成:編集部

主要機材たちが軒並み入荷待ちとなる状況が続く

いま、私たちの働き方は大きく変わろうとしています。「テレワーク」「リモートワーク」と呼ばれる働き方はかなり前から提唱されてきていたものの、「働き方の手段のひとつ」としてなかなか浸透してきませんでした。

しかし、新型コロナウィルス感染症が世界的に広がったことによって、2020年は「遠隔勤務」「場所や時間を有効に活用する柔軟な働き方」を取り入れていかなければならない状況となり、毎日当たり前のように通っていたオフィスへ行くことが減った、なんて人もいるかもしれません。オフィスそのものの規模を縮小する動きもあるようです。

また、会社組織の意思決定の場であった会議室をはじめ、社内の空きスペースを「ライブ配信(ウェビナー)のスタジオに変える」企業も多いと聞きます。

その動きがものすごく活発化していることを実感する理由のひとつは、いま、YouTube Liveなどのライブ配信やZoomをはじめとしたウェビナーをするために必要となる主な機材(ビデオスイッチャーやオーディオミキサー、ビデオキャプチャー機器、ライブストリーミング専用機器などの)たちが軒並み「入荷待ち」となることが3月以降から頻繁に起きている状況にあります。

さらに、それらの機器メーカーの人たちだけでなく、納入する販売店の人たちからも「ライブ配信(ウェビナー)のスタジオ化」の動きが活発化していることを直接耳にします。コロナ禍によって急に生まれたこのニーズの大きさは、私たちの予想をはるかに超える大きなものとなっています。

スタジオ化するにあたって機材の選定は最も重要であることは言うまでもない

多くの人(企業)たちはおそらく、こうした機材たちを取り扱う販売店へ依頼をして、必要となるものをリストアップしてもらい、その中から予算に応じた取捨選択をして納入してもらうカタチがほとんどでしょう。あるいは、コンサルティングの人(企業)たちにお願いすることもあるのかもしれません。

いずれにせよ、オフィススペースをスタジオ化するにあたり、そのために必要となる機材の選定はとても重要であることは言うまでもありません。もちろん、販売店やコンサルティングの人たちはどのような機材が必要となるかをヒアリングした上で、オススメの機材を選んでくれているはずです。

でも、その機材たちを購入して設置し、いざ実際に運用のフローへ入ったときに「やりたかったことに対して機材が合っていない」などのミスマッチが起きてしまうことも意外に少なくありません。ありがちなケースとしては、販売店やコンサルティングの人たちがオススメした最適な機材の構成を(購入決裁者が)予算の都合によって若干手直ししたことによるもの。

また、いくつかの仲介業者が入ったことによって、販売店やコンサルティングの人たちと現場で機器を実際に操作する人たちの直接対話の場がなかった、などがあるでしょう。その結果、(現場で機器を実際に操作する人たちが)やりたかったことをこのままでは実現できない、さらに機材を追加しないと実現できない、という結果へつながることもあります。

特に、オフィススペースをスタジオ化したいと考える企業そのものの規模が大きくなればなるほど、販売店やコンサルティングの人たちと現場で機器を実際に操作する人たちの距離が大きくなり、こうしたミスマッチケースが起きがちです。いわゆる「伝言ゲーム」となってしまうと、本当のニーズが正しく伝わらないことも少なくありません。

もし、オフィススペースをスタジオ化し、その機器たちを実際に操作するのは自社の社員が担う、いわゆる「内製」で運用していくことを検討しているのならば、販売店やコンサルティングの人たちと購入決裁権を持つ人、その機器たちを実際に操作する人たちの「三者が一緒になって決める」ことが必要です。

ほとんどの場合は、購入決裁権を持つ人が機器たちを実際に操作する人たちにヒアリングをし、その購入決裁権を持つ人が(仲介して)販売店やコンサルティングの人たちへ要望を上げる(リストアップしてもらう)ことが多いかと思います。

でも、「三者が一緒になって決める」場があれば、販売店やコンサルティングの人たちは実際に操作する人たちへ直接ヒアリングすることも可能となり、その人たちが持つであろうスキル(そもそも全く操作してない人が扱うのか、それとも若干の心得があるのかどうかなど)までを加味したオススメの機材リストに近づけてくれるはずです。

それによって、先に挙げたような「やりたかったことに対して機材が合っていない」などのミスマッチが起きないようにするための一助となると思うのです。

予算都合でどうしても機材選定を見直さなければならないとき

そして、必要となるのは「機材を購入する費用」だけではありません。機材を揃えるにあたって、販売店やコンサルティングの人たちにお願いする機材設置のための費用や、設置された機材の使い方をレクチャーしてもらうための費用、ケースによってはスタジオ化するためにスペースそのものの内装を変えることもあるでしょう。そうなれば、おそらく数百万円(どんなに少なく見積もっても百万円以上)規模の初期コストが大きくかかるはずです。

近年、ビデオスイッチャーやオーディオミキサー、ビデオキャプチャー機器、ライブストリーミング専用機器などの多くは低価格化が進み、高性能な機材を揃えやすくなりました。でも、こうしたさまざまな費用を総合的に算出した結果、予算都合でどうしても機材選定を見直さなければならないことが起きるかもしれません。購入決裁権を持つ人はお財布事情を明かすのはなかなか難しいのかもしれませんが、こういうときだからこそ「三者が一緒になって決める」ことが大事だと思います。

新しいコトにチャレンジしていくからこそ“目的”を見失うことがないように

そして、もうひとつ忘れないでいただきたいのは「そもそもなにが理由で、どのような目的のためにオンラインで実現しようとしていたのか?」。このことは機材選定を見直すときに、改めて三者間で共通の認識を持ち直すことが必要です。例えば「コロナ禍によっていままでのようなリアルなセミナーを行うことができなくなったから、それをオンラインで実現したい」ということなのであれば、より具体性のあるカタチへ落とし込む必要があるでしょう。

そのオンラインで実現したいセミナーは

  • YouTube Liveなどのライブ配信プラットフォームで行うのか、それともZoomといったビデオ会議システムのミーティング機能やウェビナー機能を使うのか?
  • セミナーはどのようなものか?発表者はひとりずつ代わりばんこに登壇するのか?パネルディスカッションのように複数人同時に登壇することがあるのか?
  • もしZoomウェビナーの機能を使うのなら、パネリストとしてネット越しに参加する人がいるのか?
  • 発表する内容にはスライド資料だけでなく動画を流すことがあるのか?
  • 完成されたスタジオに、発表者以外の画面に映らない関係者が集まったり、リアルで聴講する参加者がいるのか?
  • スタジオ化するスペースの規模感

など、さまざまの要素によって揃えなければならない機材構成が大きく変わってきますし、その機器たちを実際に利用する(自社の)人たちのスキルにあった操作ができるものを選ばなければなりません。できるだけ、事細かにそのニーズを販売店やコンサルティングの人たちへ伝えることを忘れないください。

さらにいえば、実現したいものに最も近い(他社が行っている)ライブ配信やウェビナーの事例があれば、それを示すのもひとつの方法です。コロナ禍の前に実施してきた自社のセミナーの録画があればそれを販売店やコンサルティングの人たちへ見せるというのも良いかもしれません。

目に見える具体的な参考事例があると、予算都合でどうしても機材選定を見直さなければならないとき、販売店やコンサルティングの人たちは「削っても支障がないモノ」「削ってはいけないモノ」をしっかりと見極めて、代案を提示しやすいと思うのです。

つくったスタジオが負の資産とならないために

とはいえ、ここ最近で急激にニーズが増えている“オフィススペースのスタジオ化”によって、企業が商品やサービスのプロモーションの一環としてライブ配信やウェビナーを行っていくことはとても良いことであると感じています。

大きなコストをかけて“オフィススペースのスタジオ化”をしていくのですから、「コストを作って良かった」とスタジオ構築に関わった購入決裁者の人はもちろん、実際にその機器たちを操作する自社の人たち、販売店やコンサルティングをした人も含め、すべての人が幸せになるカタチとならなければなりません。

特に、先に挙げたような「やりたかったことに対して機材が合っていない」ミスマッチを避けるためにも、三者が一緒になって話す場を設けるように心がける必要があることは忘れないでください。

そして、初めて築き上げる配信スタジオは実際に作ったあとの運用イメージがなかなかわきにくいところもあるのかもしれません。そこは、専門である販売店やコンサルティングの人たちから情報を得ていく努力も必要になります。

さまざまな苦労の末に出来上がった自社内配信スタジオは、出来上がったら終わりではありません。運用をしていくうちに、機材のメンテナンスや消耗品の購入など、スタジオを維持管理していくことも必要です。“つくりっぱなし”ではそのスタジオはいつか使われなくなってしまいます。

ライブ配信やウェビナーで利用される機材は、低価格化によって手軽に揃えることができるようになり、社内の空きスペースを「ライブ配信(ウェビナー)のスタジオに変える」ことの敷居は昔に比べればとても低くなりました。

しかし、スタジオをつくることは、そうしたメンテナンスの部分までをちゃんと見越した設計(計画)が将来的に必要なのです。せっかくつくったスタジオが“負の資産”とならないためにも。

WRITER PROFILE

ノダタケオ

ライブメディアクリエイター。スマホから業務機器(Tricasterなど)までライブ配信とウェビナーの現場を10年以上こなす。