txt:鈴木佑介 構成:編集部

RS 2は美しい

冒頭から何を言っているんだ、と思われるだろうが、すでにRS 2を購入した人であれば、筆者の気持ちはわかるであろう。すっかり定番の形となったアイスクリーム型のジンバルにまったくと言って興味がない筆者にとって正直このレビューは乗り気ではなかったのだが、今回レビューしたRS 2 Pro Comboが届いて開封した瞬間、その考えが180°変わった。RS 2は「美しい」のだ。

B5サイズ程度の大きさの収納ケース

両面開きになっているケースの表面側を開けると、フォローフォーカスやプレート類など一式が綺麗に収納されている

開封すると、先代のRonin-Sと比べてひとまわり以上小さくなった収納ケースが現れる。ファスナーで両面開きとなっている収納ケースを開いて中を開いてみるとロゴ側にはプレートやら、ミニ三脚やら、バッテリーやら、無線モニタリングを司るRavenEyeの本体やネジ類など様々なものが綺麗に収納されている。

ケース裏面側を開けると小型化されたジンバル本体がコンパクトに収まっている

ケース裏面側を開いてみると「え?こんなに小さいの?」とジンバル本体がコンパクトに収納されている。Ronin-Sユーザーだった方はわかるだろうが、収納ケースが付いているものの出荷状態の形に復元しないと収納できないのが面倒な上、ある程度のバランス設定を保ったまま他のカメラバッグなどに収納するのも、頭を使う上、思いの外かさばるのでその運用以上に運搬に苦労した方が多かったと思う。

RS 2はとてもコンパクトな上、ロール、ティルト、パンの可動部分にスイッチ式のロックをかける事ができるので、収納する形で固定できるのがケース以外に収納する際にも役に立ちそうだ。さて、美しいのはそれだけではない。RS 2のデザインは現行のRonin 2のデザインが踏襲され、スリムでコンパクトに変化した。

唯一残念なのがバッテリーのロックダイヤル。これを締めることでバッテリーと本体を固定できる。なぜか鍵マークの位置までロックが回らない。仕様らしいが、ここだけは美しくない

サイズは小さくてもカメラを維持するパワーは上がっているのだから驚きだ。ジンバル本体を開き、バッテリーとなるグリップを装着する。今までと違いバッテリーの装着はスライド式ではなく、差込式となっている。本体側にバッテリーグリップを差し込むと、本体側のバッテリーのロックがされるのだが、完全に閉まりきらない仕様のようで、鍵マークの途中で印が止まってしまうのが残念だ。ここだけが唯一美しくない。

RS 2にソニーFX6を搭載。RavenEyeを経由してスマホ画面にて無線でのリアルタイムプレビューを行い、かつRS 2本体背面の液晶でも画角を確認できる

バッテリーを外す時はこのロックを外して、本体から抜く。本体と接続せずとも、バッテリーグリップ単独でUSB-C充電ができるようになっている。今年のInter BEEで発表され話題になっているソニーの新型シネマカメラFX6が手元にあったので、RS 2に搭載させてみた。

シネマカメラとしてはボディだけで0.89kgと軽量のFX6ということもあるが、このクラスのカメラを気軽にジンバルに搭載させることができるのは嬉しい。初代Ronin-Sから比較した際に特筆すべきなポイントとして3つある。「バランス調整が抜群に取りやすいこと」、「本体だけでほとんどの事が調整できること」、そして「RavenEyeを使用する事で本体背面の液晶モニターでモニタリング含め大抵のことができる」ということだ。

しやすくなったバランス調整

前後の調整がダイヤルでできるようになったプレート

ティルト軸、パン軸、ロール軸、各パートを調整する際に調整したいもの以外をロックする事ができるので、初心者でもバランス調整がしやすくなったのではないだろうか。一番嬉しいのはカメラプレートに前後調整するための操作ノブがついた事で、ノブを回すだけでカメラの重心を前後に調整する事ができる。よく考えられている。

3軸をそれぞれロックできるようになった

本体だけで何でもできる

DJI製品を使用した事がある方はご存知の通り、DJIのギアはほとんどがスマホアプリを通じて制御、コントロールするものが多い。便利といえば便利なのだが、正直面倒と言えば面倒だったりする。RS 2はRonin 2のように、本体にカメラをセッティングさえすればジンバル本体だけでキャリブレーションをはじめとした細かい調整が可能になっている。

キャリブレーションやフォローのモード切り替えなどが、背面液晶へのタッチ操作で簡単に変更できる

背面液晶は大きくないが、大人の男性の指一つで操作するには何も不自由はない(デモ機だったので、液晶のビニールは貼ったままで使用していたが、それでも問題なく使用できた)。キャリブレーションやフォロー設定、フラッシュライトモードへの切り替えなど、使いたい項目にすぐさまアクセスできるのが嬉しいところだ(先代同様、トリガーとMボタンを同時押しでキャリブレーションも可能)。

フラッシュライトモード

つまりアプリ接続がなくてもジンバルとしての最低限の機能は本体だけで使用できるということ。アナログ要素を入れることで洗練されながらも更にシンプルになっていて、そこも美しい。

さらに、フォローフォーカスを装着した際はRS 2本体のダイヤル部分を人差し指で回す事でフォーカスの操作が可能になる。正直人差し指でのダイヤル操作の方がフォーカスリングを回すよりもフォーカシングはしやすいのでこの辺りの進化は「わかっているなぁ」と思わず唸る。

カメラコントロールのポートとカメラ側のUSBを接続することでRS 2側でカメラパラメーターのコントロールができる

また、対応しているものに限るがカメラ側のUSBポートとRS 2本体前面のカメラマークのUSBポートを結線することでカメラのRECコントロールや絞り、感度など、その他のパラメーター調整がRS 2本体側で可能となる。撮影時にカメラ本体を触る事なく操作できるのは便利だ。

その際には前述のダイヤルに調整したい項目を好みにアサインできるのも嬉しいポイントだ。RS 2は本体だけでこれだけのことができるようになっているのだ(ちなみにFX6は未対応。後述するソニーα7S IIIなどソニーのカメラはRS 2でコントロールするには専用の別売USBケーブルが必要だが、RECコントロールと超解像ズームしか現状動作しないので注意)。

RavenEye

RavenEye(バッテリー内蔵)。RS 2本体のカメラの下あたりに装着できる

今回お借りしたPro ComboにはRavenEyeという専用のWi-Fi伝送機器が付属している。ジンバル本体の裏側(写真参照)にデフォルトでセットできるようになっているがカメラのアクセサリーシューにもつける事が可能。

RavenEyeとRS 2を結線することで本体の背面液晶でもプレビューできる

USB-CケーブルやHDMIケーブルは付属している(ありがたい)

Roninのアプリを経由してRavenEyeへ接続する

スマホホルダーは付属。挟み込むタイプで回転もできる

RavenEye本体にはHDMI-MiniのポートとUSB-Cポートが2つ備えられており、HDMIとUSBのポートからカメラに繋げ、反対側のUSB-CポートからRS 2本体に接続する事で手持ちのスマホ(アプリは必要)にワイヤレスで転送しつつ、なんと本体の背面液晶でもカメラの画がプレビューできるようになるのだ。これは素直に驚愕した。RavenEyeを接続すれば最悪スマホがなくても本体でプレビューが行える。

RavenEyeを使って便利になるのが「アクティブトラック」の設定だ。プレビューされたスマホの上でトラックしたい被写体をなぞることでトラック目標が設定され、ジンバルが常にその被写体を追ってくれる。ある程度の動きの速度で、被写体が極力画面の中心にあればほとんど外れることはない。ジンバルを任意の方向に動かすだけでカメラは被写体をセンターフォローし続けてくれる。

実際に現場で使用してみたが、カメラワークをあまり考えずに動きたい方向に動くだけで済み、テイク数が少なくて済んだ。ちなみに背面液晶のセンター枠に被写体を合わせて本体のトリガーを引くことで、スマホを使わずともアクティブトラックの設定ができるのは便利の極みである。その辺りも考えてくれているのにも美しさを感じる。

優しさのフロントハンドル

本体横面にパーツを装着

いくら軽くなってもシングルハンドのジンバルは腕に負担がくる。よもやローアングルで撮影するときはかなりキツイ。他社製のジンバルではローアングル時に上からぶら下げて撮れるようにフロントハンドル(呼び名が正しいかは不明)が付いているような型が増えてきている。

三脚を取り付ける穴が付いている

三脚を畳んだ状態で取り付けるとグリップになる

ただその場合、デザインがゴテゴテと大きくなってしまう場合が多い。RS 2はその形を取り入れつつも、まさかの脱着式というソリューションを展開してきた。そして肝心のハンドル部分はグリップの下の三脚を流用するデザイン。そうすると自立させられないので、私物のミニ三脚を使ってみた。

使い方次第でかなり便利なモーションコントロール

始点と終点を設定することで同じカメラモーションを何度も再現できる
※画像をクリックすると拡大します

ひょっとしたら以前のモデルから搭載されていた機能なのかもしれないが、RS 2にはモーションコントロール機能が搭載されている。始点のカメラの向きとその位置での滞在時間を設定し、終点のカメラの向きを設定すれば、自動でその動きを何度も再現できる。始点から終点までの動きの時間は任意で設定できる。スライダーなどと組み合わせると色々なショットが撮れるであろう。いつか何かの機会に試してみたいと思う。

買うなら絶対Pro Combo

現状、手持ちのカメラでフィローフォーカスやカメラコントロールなど含めて都合良さそうなのがBlackmagic Pocket Cinema Camera 6K(以下:BMPCC6K)だったのでBMPCC6KでPro Comboの内容をセットアップしてみた。

フォーカスコントロールは予想通り、人差し指でのダイヤル操作がやりやすい。また、BMPCC6KはRavenEyeを介したスマホでカメラの設定を操作できる。ISO・絞り・シャッタースピードの調整ができるので、撮影時にカメラを直接操作をしなくても済むのがありがたい。

さらに、カメラと別にスマホ側でプレビューされた画の記録・再生ができるので、撮影素材のチェックや共有などもしやすく、その辺りの気配りもさすがと言わざるを得ない。ちなみにプレビュー用モニターでLUTを充てることができる。すごい時代だ。こんなに便利なRavenEyeとフォローフォーカスが付いているのだから、購入するならPro Combo一択だろう。

RS 2+ソニーα7S III最強説

RS 2+α7S III Shooting TEST(1分)

現在、進行中の案件でRS 2とα7S IIIを使用する撮影があったので、クライアントと被写体の了承の下、テストを絡めた撮影を行ってみた。小田原駅前ミナカ小田原7階に開業する「小田原箱根健診クリニック」(2021年2月2日開業予定)さんのイメージPVで、ヴァイオリニストの益子侑さんを主役にコンサートホールで演奏しているシーンの一部だ。

ステージ上で被写体の回りをぐるぐる回る

撮影カットはヴァイオリニストの益子侑さんがヴァイオリンを演奏している姿をRS 2でぐるぐる回るという内容で、フォーカスはα7S IIIのオートフォーカス(顔認識・瞳AF)に任せて、ほぼ開放絞りで動き回った。アクティブトラックは試したものの、一定以上の速度が出ると外れてしまうことが多く、カメラの動きはマニュアルで動かした。

最強タッグな気がしている

レンズは12-24mm f2.8と35mm F1.4を使用した。その結果をぜひ映像でご覧になってほしい。安定されたジンバルの動きとソニーの素晴らしいAFの協奏曲がホールに響き渡った。便利を超えて楽、というかこんなことが個人レベルでできてしまうことに驚きを隠せない。

やはり潮流は深センにあり、なのか

プロダクトデザイン、ユーザーが欲しいもの、考え抜かれた機能、それを「小さく、コンパクトに、良いデザイン」で落としこんでいる上、質感も良い。さらに、どう考えても値段が安価なのだ。もし競合の会社に自分が勤めていたら思わず白旗を挙げるレベルだ。

最近、良いなと思う機材は全て中国・深センから生まれているものが多い。正直RS 2のような完成度が高いものをこの価格で出されてしまっては日本企業は勝ち目がないのではないか。大変だと思うが、もっともっと頑張ってほしい。ただ、そんな危機感すら忘れて、DJIをリスペクトしてしまう。とにもかくにも、RS 2は美しい。そう、妖艶なくらいに。

レビュー機到着翌日に私物用を発注したことをお伝えしておく。また、これから登場する予定のマニュアルフォーカスレンズをAF化するものや、カーマウント、両手持ちにできるグリップ系や、TILTAなどとのコラボレーションの周辺機器での機能拡張が楽しみでしかたない。

WRITER PROFILE

鈴木佑介

日本大学芸術学部 映画学科"演技"コース卒のおしゃべり得意な映像作家。専門分野は「人を描く」事。広告の仕事がメイン。セミナー講師・映像コンサルタントとしても活動中。