txt:岡英史 構成:編集部

悩み多き2020に光差す2つの製品

Inter BEEもオンライン開催となり、実機を手にする機会はほとんどなかったと言えるだろう。奇しくもオリンピックイヤーという事もあり、例年より多くの新製品がリリースされている2020年となった。

新しい製品を手にしても、実践投入する現場がない歯痒い状況だった。2020年前半は撮影中止となる現場がほとんどだった。このコラムは、実際現場投入してレビューと感想を反映させるスタイルのため8月以来の執筆となった。ようやく最近現場が再開された。心機一転、その第一弾が今回のAZDEN「MC-1」と「SMX-30V」だ。

コンパクトマイクアダプター「MC-1」

AZDENと言えばワイヤレス、特にB帯での低価格デュアル受信機を最初に作ったメーカーだ。この小さい箱型ガジェットMC-1を紹介しよう。これは簡易的に音声をミックスするインターフェースと言えばわかりやすい。業務用音声入力は、基本はキャノン入力がデフォルトだ。ビデオカメラでもENGやハンドヘルドではキャノン端子にミキサーやワイヤレス機器からの入力になる。キャノン入力が付いていないビデオカメラなどは民生機扱いで業務使用することはなかった。

しかし、DSLRでの撮影の隆盛もあり状況は大きく変化した。キャノン入力に変わって3.5mm入力端子、いわゆるミニステレオ端子での入力という選択肢がでてきた。カメラ筐体の小ささを利点として、各メーカーから3.5mmミニステレオ端子に入力できるマイクなどが販売され、高音質な音声が入力可能になった。

筆者が匠音響に作って頂いた物。前の入力部分がほとんど同じ仕組みだ

しかし業務用途ならステレオ音声よりも1・2chへの振り分けの方が使いやすい。困りごとは自ら解消してきたが、やはりメーカーからの商品化を願いAZDENさんに話を持ち掛けたところ「前向きに考えます」との回答を頂いた…。しばらく経ち、「これ作りましたよ」と見せてもらったのが今回のMC-1だった。

3.5mmで振り分ける

MC-1の出力は3.5mmステレオ端子を使用している。つまりL/Rへの入力が可能で、そのL/Rに各々別の音声を入れるには?とこれが製品開発のスタートになっている。できれば電源などなく、簡単に入力できることを一番の要素に入れたという。なので入力も3.5mmプラグを2個付け1chをL側、2chをR側に振り分ける。これだけではレポーターマイクや業務用のワイヤレスを入れる事が難しい。そのため2ch側にキャノン入力を設け(排他使用)、入力可能とした。

DSLRだけではなくキャノン端子を持たない小型ハンドヘルドにも利用可能。他社マイクでも使用可能

MC-1は左右のchにボリュームを付け、ダイレクト入力でも左右の音量を同じレベルにする事が可能だ(減衰での調整)。また中身も単純にボリューム調整するだけではなく、プラグインパワーにも対応しているが、3.5mm入力を纏める時のノイズを取るべく最小限の回路を搭載しているなどさすが長年音を作っているメーカーの製品だ。

3.5mmステレオ入力があればスマホでもその恩恵は享受できる。スマートフォン取材は今では結構アリになっているし、そのままYouTube LiveやFacebook Liveにも高音質で使用可能だ。

最近のスマホは4K収録も可能なので、今までガイドやメモ代わりに使っていたスマホでも音声をしっかり入れる事により、使い方によっては業務でも使えるカメラに変わる可能性もある。

マルチマイクロホン「SMX-30V」

もう一つはステレオマイクとガンマイクを一つの筐体に搭載したSMX-30Vだ。二つの相反するマイクを同じ筐体に搭載した製品として、同社にはSMX-30という製品があった(今はSMX-30 II)。ではこのSMX-30Vは前モデルと何が違うのかというと、SMX-30がステレオマイクとガンマイクをスイッチで切り替えるのに対して、SMX-30Vは二つの種類のマイクをボリュームでステレオマイクからガンマイクに無段階MIXで切り替える事ができる。

マイクのAZDENの文字は白文字からレーザーカットになった

ステレオでオーディエンスを録りつつガンマイクで被写体を狙う事は良くあるはず。2種類のマイクを立てミキサーを使って音を作りカメラを戻す。この方法はもちろんベストだがミドルレンジならワンマンでのインタビュー収録も多々ある。SMX-30を筆者も使っているが、そういう時にどちらを犠牲にするか非常に悩ましい。その回答はSMX-30Vに引き継がれたことになる。

現場でその音をヘッドホンで聞き、ガンマイクとステレオマイクのバランスを聞きながら調整すれば後はRECするだけだ。もちろん、音声マンが作った音にはおよばないとは思うが、それでもワンマン収録なら十分過ぎるほどの音を作る事ができた。

マイクミックスボリュームは視認性高く使いやすい位置にある。細かい所ではマイクケーブルが分離式になりそれをキャッチできる突起がある

またマイク自体はアクセサリーシューに固定をするタイプだが、その部分が若干左右に首が触れる構造になっている。これは被写体をセンターに置いてなくても、その方向にマイクを振る事でよりよい音を収録する事ができる。この辺もワンマンオペレートをよく考えている製品だ。

よくミドルレンジの現場をわかっている製品だなと思い、メーカーに聞いたところ、PRONEWSでもお馴染みの柳下氏が開発アドバイザーとして参加していたとの事。それで全てが納得できた。DSLRユーザーには間違いなくカメラバックに入れておくことをおすすめしたい。

左側方部から音源を出しステレオからガンマイクにボリュームを動かすとこの様な感じで変化する(ピーク時の部分に注目)

総評

今回の二つの製品は奇しくも、ミドルレンジのカメラマンがメーカーに対して切望した物がそのまま形になったといっても良い。メーカーがいちユーザーの意見を取り入れ、形にしてくれたことは非常に嬉しい。

今回は小さいガジェットの発表だったが、そろそろワイヤレスでその本領を発揮して貰いたいところだ。最後になかなか現場でのレポートが書けない中、デモ機材を貸与して貰ったAZDEN、そして全てのメーカーさんに感謝します。

WRITER PROFILE

岡英史

モータースポーツを経てビデオグラファーへと転身。ミドルレンジをキーワードに舞台撮影及びVP製作、最近ではLIVE収録やフォトグラファーの顔も持つ。