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Column

Vol.122 コストパフォーマンス最強のカットページ用キーボード「DaVinci Resolve Speed Editor」を検証

2020-12-29 掲載

txt:井上卓郎 構成:編集部

DaVinci Resolve 17発表と共に驚きの声!「DaVinci Resolve Speed Editor」の登場

「ほぉ、これはこれは便利そうじゃないですか」と思った深夜の発表会。いや待て!おまえ去年何か巨大なキーボード買ってなかったか?ほら10万円くらいするEditor Keyboardとかいうやつ。しかもカットページは自分には合わないと言ってホコリかぶってるじゃないか。などと天使と悪魔が頭の周りをクルクル回っていたのだが…。

「DaVinci Resolve Studio 17をご注文いただくと、Speed Editorを無料でプレゼント!!(期間限定)」

いやいや。何を言ってるのかわからないよ。ソフトのおまけにプロ仕様のキーボードが付いてくる。実質タダ!今ならタダ!今まで何台もBlackmagic Designのカメラを使ってきたので、Studio版のライセンスをいくつも持っている事は忘却の彼方へと消し去り人柱 井上卓郎行かせていただきます。だってタダだし(違う)。

そんなダメ人間のような経緯で今、私の手元にはSpeed Editorがある。結論から言わせていただこう。

「Studio版のライセンスに付属しなかったとしても買う価値はある!」

Editor Keyboardがホコリをかぶっている身としては「多分あんまり使わないだろうな」と思っていたのだが、自分で想像していたより出番が多い。エディットページによる編集からカットページへと宗旨変えも近いのではないだろうか?

先日数日間のロケに出た際、Speed Editorを持参しなかったのだが、出先でのノートパソコンで使えるカットの選別が苦行でしかなかった。Speed Editorさえあればもう少し寝る時間を稼げたのにという事があった。そんだけ便利ならEditor Keyboardを使えばいいんじゃない?と考えるのだが、編集をしない時の存在感が大きすぎてちょっと使う気が起きない。必要な機能をコンパクトにまとめただけでこんなに出番が増えるなんて。ただし、まだ全部をカットページとSpeed Editorに置き換わってはいない。便利な部分だけ使用している状況だが、自分にあった使い方を試行錯誤している。

DaVinci Resolve Speed Editorの特徴(以下、メーカーサイトより抜粋)

編集が劇的に高速化するよう、カットページでの作業を念頭にデザインされています。物理的なコントロールを手で感じながら操作できるので、ソフトウェアのみの編集と比べてはるかに優れた感覚が得られます。マウスとは異なり、ゴムコーティングが施されたメタル削り出しのサーチダイヤルは、タイムライン上の的確な検索・移動を可能とします。タイムラインを手で持っているような感覚です!トリムキーを使用すれば、サーチダイヤルでライブトリムを行うことも可能です。サーチダイヤルは大きく、より正確な操作が可能なので、作業がスピードアップします。

DaVinci Resolve Speed Editorは、編集に必要な特定のキーのみのデザインに、メタル削り出しのサーチダイヤルを搭載しています。Bluetoothおよび内部バッテリーを使用したワイヤレス接続や、USB-Cによる接続が可能なので、フルサイズのキーボードと比べて携帯性に優れています!

高い質感と品質

Mini PanelやEditor Keyboardを使ってきたが、Blackmagic Designのコンソール製品の質感はとても良い。Speed Editorも手に持った時の重量感感は操作していても安定している。ボタンやサーチダイヤルの安っぽくないタッチ。よくある汎用のコントロールパネルとは段違いだ。少しマニアックだがキーボードの軸は「赤軸」が使われている。メカニカルキーボードには「赤軸」「青軸」「茶軸」があり赤軸はキータッチが軽くタイピングのカタカタ音も控えめで、長時間使用しても疲れにくいという特徴がある。わかってらっしゃる。

サーチダイヤルはちょうど良い大きさとメタル削り出しの高い質感で無意識にクルクル回したくなる。ただダイヤルの機構にEditor Keyboardのようなクラッチは付いていない。

ワイヤレス接続

接続はBluetoothとUSB-C。特にUSB端子の少ないノートパソコンなどではワイヤレス接続は嬉しい。電源スイッチがないのでオンオフはどうするの?と思ったが、DaVinci Resolveが起動している時だけ自動で接続される。Bluetooth接続の場合はケーブルが1本減り机の上がスッキリする。ただ環境によっては接続が不安定な事もあるようだ(私は今のところ問題はないが)。初回はUSB-Cによる接続が必要だ。ある程度充電すると認識される(もしくはBluetoothの接続設定を行う)。なおUSB-Cケーブルは付属していないため、自分で準備が必要だ。

マルチカム収録したライブ配信映像の再編集に

昨今の情勢によりライブ配信が活気を帯びているが、ATEM Mini Pro ISOなどを使いマルチカム収録した配信映像のアーカイブ公開のための再編集などにとても便利そうだ。私は配信事業には手を出していないのだが、Speed Editorを使う事で少し興味を持ってしまった。

どんな人におすすめ?

どんな映像を作るかによって向き不向きはあると思う。

まず、DaVinci Resolveをこれからはじめてみよう、もしくは動画編集自体をこれからはじめてみようという人、およびリニア編集に長けている人は、Speed Editorとカットページの組み合わせで覚えてしまうのが良いのではないだろうか?最初からそんなもんだと思えば何も違和感は感じず素早く映像を作る事が出来る。またTipsや商品紹介などとりあえず一通り撮影して必要な部分だけを切り出していくいわゆる番組的、YouTuber的な動画やドキュメンタリーの制作にはとても向いている。切って詰めてといった作業がマウスを使うより圧倒的に速く、繊細にできる。

問題は私のようにノンリニア編集で育って骨の髄まで染み込んでしまった世代だ。ここ1カ月ほど頭を切り替えカット編集を中心に編集をしているおかげで、内容によってはSpeed Editorとカットページをメインに使った編集の方が速くなった。ただBGMに合わせて決まった尺で映像を組み立てる場合は今までの編集方法の方が速いしストレスもたまらない(ただし色々試行錯誤中で下記に現状の編集方法を記載する)。

Blackmagic Designも今後エディットページを廃止して全部をカットページで編集しようとは考えておらず、編集方法の選択肢を増やしてくれているのだと思う。カットページ自体マウスを使った操作でなくSpeed EditorやEditor Keyboardを使った編集が前提に作られている気配がある。その中でSpeed Editorはとても良い武器となる。もう頭を切り替えて便利な部分を享受するのが良い。

BGMに合わせて編集する方法の一例

試行錯誤を繰り返しているが、今のところ下記方法で編集している。ただし日々アップデートしており「やっぱりエディットページだよね」となるかもしれない。

■エディットページで作業

  • (01)音声トラックにBGMを敷く
  • (02)BGMに合わせマーカーを打つ
  • (03)トラック1にカラーマットを尺の分だけ敷きロックを掛ける

■カットページに移動

  • (04)TIMELINEに切り替えクリップを入れたい範囲のマーカーに合わせてIN / OUTを設定
  • (05)SOURCEに切り替えソーステープで必要な部分を「PLACE ON TOP」で上位トラックに挿入するとマーカーの間にクリップを入れる事ができる

以下(04)~(05)を繰り返し、映像をBGMのマーカーに合わせて組み合わせていく。

Speed Editorを使ってBGMに合わせて編集する一例をムービーダイジェストにまとめてみた

どう配置するのが良い?

キーボードを手前に置くかSpeed Editorを手前に置くのが良いか、はたまたキーボードの左右どちらかに置いたらいいのかまだ試行錯誤中だが、他の画面で作業している時にSpeed Editorのキーを不意に押してしまうと強制的にDaVinci Resolveの画面に移動してしまうので、最近はキーボードの左側に置く事が多くなっている。ただコンパクトなので邪魔だったら移動すれば良い。Editor Keyboardの存在感に比べればかわいいもんだ。

Speed Editorの操作方法

何度も繰り返し使う事で動作が手に染み付いてくると思います。考えなくてもスッと手が動くようになった時Speed Editorの本領が発揮されるでしょう。Speed Editorは大きく5つのセクションとサーチダイアルから構成されています。基本的に右手はダイヤルの操作と動作の切り替え、左手で各種キーの操作を行う。

■右エリア

ソースとタイムラインの表示モードの切り替え

SOURCE:ソーステープモード。BIN内のクリップを1本のロールにならべて見ることができる。

TIMELINE:タイムラインの編集

SHTL:ダイヤルの回転によって再生速度が変わる。タイムラインの全体を見るのに便利。少しの回転で一気に加速するので最初は戸惑う。プレビュー画面の下に速度が表示される。

JOG:一番使用頻度が高い。半周で30フレーム、1周で60フレーム。30FPSで編集している場合は1回転で2秒進むと覚えると良い。

SCRL:半周で30秒、1周で1分移動する。長い映像を素早く移動するのに便利。

■左上エリア

SMART INSRT:最寄りのカットポイントにクリップを挿入。

APPND:タイムラインの末尾にクリップを挿入。

RIPL O/WR:再生ヘッドの位置にあるクリップと置き換える。元のクリップより長い場合は後ろのクリップは後ろに押し出される。短い場合は前方に詰まる。

CLOSE UP:150%に拡大されたクリップが上のトラックに配置される。IN/OUTを設定した場合はその間を、設定していない場合は再生ヘッドがある位置から5秒のクリップが一番上のトラックに配置される。どこを中心に配置されるかはAIが自動的に判断するが、インスペクタで変更する事が可能。また以下のYPOSで上下方向の調整がSpeed Editorで可能だ。

YPOS:CLOSE UPを押しながらサーチダイヤルを回転させる事でクリップの上下位置を調整できる(横方向の調整はできない)。

PLACE ON TOP:再生ヘッドの位置の空いている一番上のトラックにクリップを配置。

SRC O/W:クリップのタイムコードとタイムラインのタイムコードを一致させ、同期させて上のレイヤーに配置する。

■左下エリア

IN:クリップ及びタイムラインにIN点を打つ。

OUT:クリップ及びタイムラインにOUT点を打つ。IN/OUT範囲を選択し、SMART INSRTやAPENDなどのキーを使ってタイムラインにクリップを挿入する使い方が多いと思う。2度押しでIN / OUT点を削除する。

TRIM IN:TRIM INを押したままホイールを回転させ、再生ヘッドに近い編集点のクリップの頭をトリムをし、クリップの長さを調整する。

TRIM OUT:TRIM OUTを押したままホイールを回転させ、再生ヘッドに近い編集点のクリップの末尾をトリムをし、クリップの長さを調整する。ポイントは再生ヘッドのあるクリップではなく、再生ヘッドの近くの編集点のクリップがトリムされるという事。

ROLL:ROLLを押したままホイールを回転させ、再生ヘッドに一番近い編集点の位置を前後に移動させる。

SLIDE:ROLLを2度押ししてホイールを回転させ、クリップの位置を変更。ROLLが一番近い編集点の位置を変更するのに対しSLIDEはクリップが前後する。クリップののり代以上には動かせない。

SLIP SRC:SLIP SRCを押したままホイールを回転させ、再生ヘッドに一番近い編集点の左側のクリップを前後に移動させる。編集点は動かない。またクリップののり代以上には動かせない。

SLIP DEST:SLIP DESTを押したままホイールを回転させ、再生ヘッドに一番近い編集点の右側のクリップを前後に移動させる。編集点は動かない。またクリップののり代以上には動かせない。

TRANS DUR:TRANS DURを押しながらホイールを回転させ、トランジションの長さを調整する。

CUT:トランジションを削除する。

DIS:最寄りの編集点へトランジションを追加する(基本はクロスディゾルブ)。

SMTH CUT:最寄りの編集点へスムースカットトランジションを追加する。前後のカットをモーフィングでスムーズにつないでくれる。インタビューなどで不要な部分をカットした後に入れるとスムーズにつながる。YouTuberなどの動画などにもいいかも。

■中央上エリア

ESC:エスケープキー。2回押しでUNDO。多分Speed Editorで一番使うキーだと思う。

SYNC BIN:タイムラインの再生ヘッド上のクリップと同期しているクリップを同期ビンおよびプレビュー画面に表示する。マルチカム編集にて使用する。

AUDIO LEVEL:AUDIO LEVELを押したままホイールを回し、クリップの音量を調整する。

MARK:AUDIO LEVELを2度押しでタイムラインにマーカーを打つ。2度押しして長押しし、ホイールを回転させるとマーカーカラーのホイールが現れマーカーの色を設定可能。

FULL VIEW:プレビューウィンドウを全画面表示にする。2度押しで全画面表示になり、自動的に再生される。

TRANS:トランジションを追加する。TRANSを押しながらホイールを回転させるとトランジションの種類を変更可能。

TITLE:テキストの上でTRANSを2度押しして長押ししながらダイヤルを回すとフォントを変更できる。

SPLIT:再生ヘッドの位置でクリップを分割する。クリップが複数重なっている場合、全てのクリップが分割される。分割したポイントで再度SPLTを押すと元に戻る。

MOVE:SPLITを長押ししながらホイールを回すとクリップの位置を入れ替える事が可能。

SNAP:タイムラインのスナップ機能のオンオフ。エディットページのスナップほど強力にスナップせず軽く吸着する程度。2度押しして長押ししながらホイールを回転させるとビューアーのサイズが変わる。

RIPL DEL:リップル削除。削除したクリップより後ろのクリップは隙間を空けず前に詰められる。

■中央下エリア

STOP / PLAY:再生および停止

「CAM1~9」と「LIVE O/W」:「同期ビンで同期されたマルチカム編集で使用する。「CAM1~9」の数字を押したままホイールを回転させると最上位のトラックにクリップが追加される。「LIVE O/W」がオンになった状態で「CAM1~9」を押すとカメラを切り替えるようにクリップが配置される。

VIDEO ONLY:映像だけタイムラインに配置される。

AUDIO ONLY:音声だけタイムラインに配置される。

カットページだけでなくエディットページでも使える

カットページでの使用を前提としたSpeed Editorだが、実はエディットページやカラーページでも使用する事ができる。エディットページでは一部機能を除き一通りの動作が可能だ。カットページになじめない人はエディットページで使うのも良いかもしれない。エディットページ以外でもサーチダイヤルによる移動はできる。

    ■カットページとは違う挙動

  • 「SMART INSRT」は最寄りの編集点にクリップを挿入ではなく、再生ヘッドの位置にクリップが挿入される。その位置にあったクリップは再生ヘッドの位置で分割され後ろ半分は挿入したクリップの後ろにズレる。
  • 「SYNC BIN」は使えない。
  • ■カットページに移動

  • 「TRANS」トランジションの追加はできるが、長押しをしても種類の変更はできない。
  • 「マルチカム編集」CAMやLIVE O/Wといったマルチカム編集のボタンは使えない。
  • 「SOURCE」「TIME LINE」ソースとタイムラインのビューアーを切り替える。もちろんソーステープ機能は使えない。

ここまで書いて気がついたのだがBlackmagic Designのキーボードのページの操作説明がとてもわかりやすいので併せて参考にしてほしい。

この記事を書くにあたって一通り勉強し直したのだが、カットページ編集とSpeed Editorの組み合わせはかなり奥深いが、とても簡単という事がわかったので今後もっと活用していきたい。

井上卓郎(Happy Dayz Productions
北アルプスの麓、長野県松本市を拠点に、自然やそこに暮らす人を題材とした映像作品を自然の中にゆっくり溶け込みながら作っている。現在は企業や自治体のプロモーション映像や博物館などのコンテンツを中心に、映像作品を手がけるかたわら、ライフワークとして自然を題材とした作品を制作しています。一応DaVinci Resolve認定トレーナー。
代表作:ゴキゲン山映像「WONDER MOUNTAINS」シリーズ、くらして歳時記など

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[ Writer : 編集部 ]
[ DATE : 2020-12-29 ]
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