txt:岡英史 構成:編集部

新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

2020年は新型コロナウイルスの影響で新製品になかなか触れられなかったが、年末にかけて2社の三脚「Manfrotto FASTシリーズ」「Libec NX100シリーズ」をお借りできたので、少しばかりボリューム多め。最後まで見ていただければ幸いだ。

Manfrotto FASTシリーズ(645/635

新しいツインチューブレッグとシングルチューブレック

2020年、新型コロナウイルスの影響を受けたメーカーは多いと思うが、Manfrottoもその一つだ。本社がイタリアのため、昨年前半は同社の製品を全く見る事ができなかったが、デモ機申請をお願いしたタイミングでちょうど新型の脚が入荷し、Nitrotech 612(以下:612)と、それに組み合わされる新型のカーボン脚FASTシリーズを借りることができた。

このFASTシリーズの大きな特徴は、ワンレバーで全ての脚(段数)の伸縮が可能な事。感の良い方はFlowTechシリーズ(以下:FT)を思い浮かべるかもしれない。フィーリングはまさに同じだ。FTシリーズが出た時は同じVitecグループなのでManfrottoブランドでも出るかと思ったが、残念ながらVintenとザハトラーの2ブランドだけにとどまってしまった。

その代わり、同じ様な機構を持ったFASTシリーズがManfrottoブランドから登場した。同じ機構ながらその中身は大きく違い、これはかなり現場向きの脚なんじゃないかと思う。では紹介していこう。

どんな撮影現場でも安心できる高剛性三脚

645 FASTツインビデオ三脚 カーボン

この脚の大きな特徴はワンレバーアクションであることが前提だが、何よりもその丈夫さが目についた。ENGでショルダーカメラを担いでいる方、特にTV取材系のカメラマンが三脚に求めることは軽量よりも壊れない頑丈さではないだろうか?筆者はまさにそのタイプで、FTシリーズは確かに軽量だが、カーボンの厚さと面構成の部分が気になってしまう。

カーボンは同じ重量ならアルミより高剛性にできるが、その分点圧に弱い。点圧で壊れた部分はそこから一気に崩壊する危険性もある。FTシリーズは軽量な分そこを気にしなくてはならないが、少しガチャガチャした現場ではその気遣いは負担になる。FASTツインチューブならアルミ脚と同じように使うことが可能だ。

FTシリーズと比べるとカーボン製品にしては決して軽くはない重量だが、その分剛性感は強い。不慮の行為(三脚の転倒等)で脚が壊れるような不安要素が全くない。これは現場では大きなアドバンテージになる。

スプレッダーなしでもしっかり開脚固定で運用できるのは、ツインチューブレッグとしては新しい

ワンマンでもワンアクションで収納状態から最高点まで簡単に上げる事ができる

645 FASTツインビデオ三脚(以下:645)は、一般的なツインチューブレッグとしては珍しく3段階の開閉ロックが付いている。このため各脚をバラバラに動かしても安定している。特にフル開脚状態ではその地上高は一般的なハイハットと同じ高さでの運用が可能。つまり3cm位の高さから2m弱のハイアングルまで無段階にレンズの高さを変える事ができる。これはワンマンOPが多いミドルレンジの現場では非常にありがたい。

標準装備のミッドスプレッダーとオプションの2in1スプレッダー

また、645にはミッドスプレッダーが装備されている。ミッドスプレッダーは接地面が段差でも斜めでも安定してセッティングできるという面もある。脚の先端の広さが変わるためにとっさの高さ調整にはややコツが必要となるが、オプションの2in1スプレッダー(グランドスプレッダ―)を使えばその煩わしさから解放されるのはENG系の脚を使っている方なら良くわかるはずだ。

では最初から2in1スプレッダーを標準装備に!と思われるだろうが、645のミッドスプレッダーは長さを全部伸ばす事によりグランドスプレッターの代わりとして使用可能だ。もちろんオプションの2in1スプレッダーと比べると剛性感は落ちるが、機能としては十分なのを確認している。

645と一緒に新型612のヘッドも装備されていたのでそこにも触れてみよう。すでにNitrotech 608(以下:608)のレポートは書いているが、612は前モデルのNitrotech N12(以下:N12)のマイナーバージョンアップという位置づけで良い。チルト方向でのドラッグとロックが一般的な右回転方向になったので、他のヘッドからの移行でも間違う事はないだろう。

フィーリング的には新品という事もあり非常に感触は良い。動くべき所で動き、停まるべき所で静止し、カウンターバランスは前モデルからの窒素封入ピストン、その動きも癖がなく滑らかだ。N12と比べるとペイロードのMAX値は変わらない感じだが、最小荷重値がN12より若干軽くなったように思える。つまりHXR-NX5RやGY-HM660サイズのハンドヘルドでもバランスが取れるようになった。この振り幅はなかなか便利だ(612のプレートは608とは違いロングプレートが標準装備になっている)。

635 FASTシングルビデオ三脚 カーボン

635 FASTシングルビデオ三脚(以下:635)は昨年のNABで参考出品されており、筆者としてもワンアクションでの三脚はこれだけだと思っていた。先にツインチューブの方が届き驚いたのだが、ようやくFASTシングルチューブが日本に上陸した。

FASTシリーズなので脚の伸縮はワンアクションでできるが、645やFTのようなレバーアクションではなく脚の中間部分を捻る事でロックとアンロックができる。この辺の機構は写真用の三脚と同じような感覚だろう。レバーよりもその動作部分が大きい(長い)ため、645よりは伸縮しやすい。

ハイアングルからローアングルまでの移行は645よりも635の方がスムーズだ

645と635の違いはツインチューブかモノチューブかの違いと考えて良い。最低地上高から最高地点までの高さはほとんど変わらない。635の方がアンダーセット時の高さがわずかに低い位だ。元々モノチューブ系の三脚は脚の開脚部分にはロックが掛かるのでそのままでの運用が可能だが、脚が開き過ぎるのが難点でもある。

また、スプレッダーがないために脚のセッティングの広さが変わるので、折角のシングルアクションがスポイルされてしまう。これはスプレッダーで脚の広さを決めていないからだが、今までのモノチューブではスプレッダーにその設定がないので取り付けるにしても自作パーツを作るしか方法がないが、635はFASTシリーズの純正スプレッダー(ミッド/2in1スプレッダー)をそのまま使う事ができる。

純正スプレッダー(ミッド/2in1スプレッダー)の取り付けが可能(ミッドスプレッダーは同梱されているパーツを自分で取り付ける必要あり)なので、635と一緒にスプレッダーを同時購入するのがお勧めだ。グランドとミッドのどちらかを選ぶとすればミッドスプレッダーを購入した方が、モノチューブ三脚としての使い勝手は良いかもしれない

カーボンモノチューブレッグの536と比べると最高地上高が約40cmほど低い

ミドルレンジ、特に舞台系やセミナー系をメインとしてる方には今や定番的な脚が536カーボン4段脚だ。この脚と比べると高さ以外は全く遜色がない。むしろワンアクションで調整ができる分635の方が使い勝手は上だ。この高さの違いは完全に脚の段数違いといって良い。536は生粋の4段伸縮になるが、635は中の脚にロック機構があるため、実際には3段三脚と同じになる。536が4段脚なのでちょうど1脚分の高さが足りない感じだ。

モノチューブ脚ではクランプが咬めないため(そもそもカーボン脚にクランプはNG)お椀部分に3/8inchネジがある。645は100mmボールだが、635は75mmボールが標準な事を考えても2本のFASTシリーズの運用の違いは容易に想像ができる。

ワンレバーアクション

FTシリーズといいFASTシリーズといい、ワンアクションでの三脚の伸縮ができるモデルが非常に多くなってきた。ワンアクションは基本的に3本の脚がバラバラで動いているので設置場所がどのようなな形状でも安定してカメラを載せる事ができる。特にFASTシリーズはスプレッターを装着しなくてもそのまま使えるので、今までの三脚に比べるとアドバンテージは大きい。

しかしワンタッチでセットアップできるため、ロックをしっかりしていないと一気にバランスは崩れてしまう。645はレバー式なのでロックが外れる事はまずないが、635は回転式のロックなのでしっかりと確認をした方がより確実だ。では購入するならどちらが良いか?カメラの重量を目安(大体6kg前後)にするのが最もわかりやすい。

ツインチューブとモノチューブの一番の違いは回転方向(パン方向)の捻り剛性だ。カメラを振り回す撮影なら645を、ワンマンで荷物を運びこむような現場(例:里山や舞台最後部)では軽量の635を選びたい。ヘッドに関してはNitrotechでも問題ないがこの辺はフィーリングの違いがあるので自分の使い慣れたヘッドで良い。他社三脚で脚の部分はFASTシリーズに変更することも十分にありだ。

Libec NX100シリーズ

世界最軽量三脚(同クラス機種と比較)を達成

今は平和精機工業という会社名よりLibecというブランド名の方が知れ渡っているが、筆者的に新型三脚NX100シリーズ(以下:NX100)に関しては漢字での社名が似合っていると思う。その一番の理由は100%日本製だからだ。ちなみにNX100という型番はどこかのカメラの型番に似ていると噂もされている。筆者も同じことを思ったので山口社長に直接聞いたところ「N(日本)」「X(Xボディ)」「100(新規型番)」という事だった。

※Xボディ=TH-XやTH-Zと共通の筐体デザイン

目指したのは最軽量

和テイストな彫刻とフルカーボン脚の融合

NX100の一番の特徴はその軽さ。全重量3.8kgはこのクラスでよく使われているSachtler Ace M MSと比べても600gも軽い。このサイズで使える三脚となるとその選択肢は極端に少ない。HXR-NX5RやGY-HM660等の中型ハンドヘルドが載るヘッドは多種多様、各々の好みで選べば良いが、そこから小さくなったPXW-Z90やGY-HM175等の小型ハンドヘルドやRIGを組んでないソリッドなDSLRやミラーレスカメラになるとSachtler AceかManfrotto Nitrotech N608の二択しかない。

この2機種も各々得意不得意があり、レンジは意外と穴がある。ようやく日本メーカーが本気で作ったのがNX100という事だ。

カウンターバランス

このサイズのカメラがドラッグではなくカウンターバランスで止まる

NX100はカウンターバランスによってスマホサイズから中型ハンドヘルドまで同じ操作感でオペレートできる。そもそもカウンターバランスの使い方を知らない方が意外といる。特にDSLR+ジンバル系から入ってきた方にその傾向が多いと個人的には思っている。

後ろのダイヤルがカウンターバランス。水準は照明付き。スライドプレートはサイドから入れるタイプ

カウンターバランスとは要するに上に載せているカメラと同じ重さ(荷重)を逆方向に持たせることでドラッグに頼らずどこでも手を離せばその場に留まる機構の事。Vitenの無段階カウンターバランスは有名だ。Libecも上位機種は同じ様に無段階だが、NX100はSachtlerと同じクリックでの段階方式。どちらが良いかは完全に個人の好みだ。

セッティング方法はカメラを本番シュート仕様(色々な補器類/モニター・デマンド等装着)にしてからドラッグをゼロ(又は最小)にする。前後に傾けた斜め状態の所で手を放してもその場に留まる様にカウンターをセットし、後の操作感は好みのドラッグで調整すればいい。

無段階式ではダイヤルで微調整できるが、段階式では少し弱くしたい場合、カメラとヘッドの間に底上げできるものを入れてカメラの重心を上げる事で解決する。カメラの上部に何かアクセサリー的な物を付けて重心を上げる方法でも良い。これで完全バランスをとることができる。

軽さは武器

最大荷重4kgなのでそれ以下ならオールマイティに使える

小型ハンドヘルドでの三脚の重要性はこの1~2年で急速に増えた。その理由の一つは、企業が行うセミナーが非常に多くなった事にある。そのセミナーのコンパクト化に伴い予算感の縮小で現場が小さくなった。そうなると機材を小さくして現場バランスを考えるが、さすがにテレ端一杯での操作性を考えると従来の小型ハンドヘルド三脚ではどうしても繊細なコントロールができず、ミドルサイズの物を持ち込むしかなかった。

そう言った現場にNX100は救世主的な三脚かもしれない。筆者もデモ機をお借りした後、5つの現場で使ってみたが、GY-HM175やX70のような小型ハンドヘルドがすっと動いてそのまま静止することはカメラマンの負担もかなり違う。微妙な動きの時にパン棒の動きがしっかりとカメラに伝わるだけで一現場終わってからの疲労感が大分違うものだ。

カーボン脚だと気になるのがモニター等のアクセサリーを取り付けるアームだ。アルミ脚なら簡単にかませる事もできるが、カーボンだとそれもなかなかできない。カーボンの特性として面圧に対してはその剛性を保てない。NX100はそのあたりもしっかり考慮している。

ヘッド部の荷重がかからない部分に大小インチネジがある。この場所なら大き目のモニターを付けても雲台の動きを損ねる事はない。そもそも他の製品とは違いアルミ設定がないため必然と考えられたものだが、現場の事も考えている所に好感が持てる。

Libecらしさ

三脚を畳む時に指を挟まないように隙間があるのはLibec特有で、全製品に採用されている。もちろんNX100にも継承されており実際にはこの通り。余程指が太くない限り大丈夫だ。MAXペイロード4kgとはどの位なのか?イメージはHXR-NX5Rクラスと思って良い。試しにGY-HC550を載せてみたが、カウンターバランス・ドラッグ全てMAXで一応オペレートできるレベルだった。

ただしカメラが重いのでミッドスプレッターよりもグランドスプレッターの方が取り回しは良かった。そしてNX100の予算がまだ足りない方、裏技的にTH-Zという選択肢もありだ。ペイロードは5kgあるのでドラッグの感触さえ問題なければ中型ハンドヘルドならオペレート可能だ。コスパも踏まえれば隠れた名品かもしれない。

総評

今回は2社の新型三脚レビューとなった。どちらもFacebookのタイムラインで評判が良かった製品だ。どちらも共通事項としてカーボン脚を採用している。少し前はカーボン脚は高価だったが、カーボンの生産数が多くなったからなのか価格がかなり低くなっている。

他の金属と同じ重さなら高剛性、剛性が同じなら軽量がポイントになるが、Manfrottoが高剛性、Libecは軽量性と、その方向性の違いは三脚運用時の方向性の違いでもあるので、ぜひ実機を触ってみて欲しい。

WRITER PROFILE

岡英史

モータースポーツを経てビデオグラファーへと転身。ミドルレンジをキーワードに舞台撮影及びVP製作、最近ではLIVE収録やフォトグラファーの顔も持つ。