txt:井上晃 構成:編集部

BenQは台湾を本拠地とし、デジタルプロジェクター、プロ用モニター、インテラクティブの大型ディスプレイ、画像のソリューション、モバイルコンピュータおよびLED照明のソリューションといった広範囲の製品や、サービス・ソリューションを提供しているメーカだ。皆さんも、プロジェクターや液晶モニターなどの映像機器分野で目にする機会が多くなり、その存在感を感じつつあるのではないだろうか?

BenQはプロ向けAQCOLORシリーズの新製品として、HDR10/HLG対応、27インチ4Kカラーマネジメントモニター「SW271C」を2月18日より発売した。

筆者もちょうどHDR対応の手頃なモニターを探していたこともあり、レビューの依頼に対してこれは興味深いと二つ返事で応じた。今回は特に、本機を映像編集用のモニターとして使用してみたらどうだろう?と少し変わった視点でのレビューをお届けしたい。

BenQ SW271Cの概要

以下はSW271Cの概要となる。赤字は特に筆者が注目したポイントだ。

  • 4K UHD(3840×2160)解像度の最新IPSパネル採用
  • Adobe RGB 99%、Display P3/DCI-P3 90%以上、Rec.709/sRGB 100%をカバーする広色域
  • BenQ史上最高レベルのパネルを採用し、反射を最小限まで抑制
  • 10bitパネルx16bit 3D LUTにより、平均ΔE≤2を実現した正確な色再現
  • BenQ独自のムラ補正技術にて実現した均一なユニフォミティ
  • Pantone認証、CalMAN認証を取得しており、色再現に安心
  • 工場出荷時に個別校正がされており、キャリブレーションレポート付き
  • ハードウェアキャリブレーション対応
  • キャリブレーションソフトウェアPalette Master Element無料提供
  • HDR10およびHLGの両方に対応
  • 映画編集に最適な1080/24P出力をサポート(※SW271Cは24/25/30Pに対応)
  • USB Type-C端子を搭載し、60W給電可能
  • Gamut Duo機能により異なる色空間を一目で比較
  • 3段階のモノクロモードで編集時間が短縮
  • 最新デザインのOSDコントローラー「ホットキーパックG2」
  • 遮光フード(横・縦)が標準搭載
  • 高さ調整、回転機能付き
  • 修理期間中に代替機貸出できる「センドバックサポート」対象製品

SW271Cは、「映像・写真編集用プロ向け"AQCOLOR(エイキューカラー)"シリーズ最新モデルで、正確な色再現を可能にする27インチ4Kカラーマネジメントモニター」とうたわれている。写真編集用ともあるように、PCに接続しカラーマネジメントされた環境で使用するのが本来の使い方であるかと思う。

ただ今回はHDR10/HLG対応、映像編集用に1080/24/25/30P入力をサポートするなど、映像編集向けの機能を強化してきた。そこでPCのモニター端子ではなく、映像用のインターフェースに接続して、バリバリの4K映像モニターとしてその実力に迫ることにしよう。

本レビューの機器構成

本レビューでは筆者の自作Windows 10 PCに、ブラックマジックデザインのDeckLink 4K Extreme 12Gを搭載。DeckLinkより信号を出力するビデオ編集ソフトウェアにはGlassValley EDIUS Xを使用してDeckLink 4Kより各種4K信号をHDMIで出力し、それをSW271Cに入力して視聴レビューする形式をとった。

この場合、SW271CはWindows PCの管理外のデバイスという事になるため、キャブレーションソフトウェアは使用できないため、特別なキャリブレーションは行わず、工場出荷状態のままレビューを行うことにした。

実使用ファーストインプレッション

最初に断っておきたい。モニターのインプレッションということで、モニターに表示された画像をカメラなどで再撮影して評価するのも一つの方法だとは思うが、4K映像の階調や色再現について正確にお伝えするには、この手法では心許ない。このため再撮影した画面ショットは最低限にし、その代わり可能な限り筆者の印象を記して、このSW271Cの性能をお伝えすべく努力したいと思う。

実はSW271Cを上記構成にて映像モニターとして使用する前に、まずはPCに接続しPCモニターとして使用してみた。接続してPCを起動しWindowsデスクトップを表示しての第一印象は「隅々までスッキリと見通しが良い」だ。

SW271CはBenQがプロフェッショナル向けに展開するAQCOLORシリーズの最新モデルであり、高精度の色再現にこだわりをもって製造された製品。パネルにはこれまでにない低反射を実現したコーティングを施したIPS ARTパネルを厳選して採用しており、工場出荷段階で手間暇惜しまず1台1台個別校正を施している。このため、極めて高い均一なユニフォミティが実現している。

それは筆者がデスクトップを見た瞬間の印象そのものであり、隅々までの均質さが「スッキリと見通しが良い」と感じさせてくれたのだろう。このモニターの再現性はかなり高いのでは?という印象を最初から抱かせてくれた。

4K映像信号を入力してみる

HDR10(PQ)信号入力時・SW271C HDRモードオン
Rec.709信号入力時・SW271C Rec.709モード

まずはカラーバーを表示し、SW271Cの素性を探ってみる。EDIUS Xはプロジェクト設定を変更することで、出力解像度、フレームレート、ビット深度、HDR設定など自在に切り替え可能。入力信号に対してSW271Cはどのような描写を行うのか詳細に探ってみた。

Rec.709での白黒スイープ信号をEDIUS X内蔵のウェーブフォームビデオスコープと共に観察してみると、白は105%くらいまで描写されており、それ以上は白へと飛んで行く。黒は7.5%、5%、2.5%は判別可能で、その下-2.5%までは潰れずに判別可能だ。-5%は黒へ潰れて判別不能となる。

黒から白へのグラデーションだが、目視では部分的に偏った描写もなく素直で好ましい。どこかでステップが飛ぶことなく美しく階調が描写されていく。これはさすがメーカーこだわりの個別キャリブレーションが効いていることを伺わせる。

EDIUS Xは編集時のビット深度を8bit、10bitと簡単に切り替えできるが、この微妙な深度の違いさえもきちんとSW271Cは描き出す。同じ4Kでも8bitはハッキリとトーンジャンプを描写するが、10bitではそのトーンジャンプさえ見えなくなるほど精細な描写をするのだ。

入力信号QFHD 8bitモード時トーンジャンプが見受けられる
(筆者注:虹色のモアレはモニターと撮影時カメラの干渉で起きたものである。また本画像はトーンジャンプが判別しやすいように画像加工を施している)
入力信号QFHD 10bitモード時トーンジャンプが見られない
(筆者注:虹色のモアレはモニターと撮影時カメラの干渉で起きたもの。また本画像はトーンジャンプが判別しやすいように8bitモード時の写真と同じ画像加工を施している)

このようにSW271Cは入力信号に対してよく反応し、非常に繊細な描写をすることが確認できた。

色再現性能

SW271Cはビデオ信号の基本色域Rec.709/sRGBを100%カバーするだけでなく、Adobe RGBのカバー率も99%を実現。iPhoneなどの色域Display P3や、デジタル映画用の色空間であるDCI-P3を90%以上カバーする高色域を誇る。

筆者は以前から4K映像は解像度を上げるだけでは片手落ちであり、Rec.2020という豊かな色域を存分に活用してこそが4K映像であると主張してきた。SW271CはさすがにRec.2020をカバーするまでには至っていないが(Rec.2020をカバーできるモニターは現状ではまだまだ少ない)、それでもRec.709を超える色域をカバーしてきた事は評価したい。

実はRec.709の色域はHD時代の色域であり、4K映像の現代となっては相当狭いものとなる。この狭いRec.709の色域をSW271Cは、加色なく実にそっけなく描写する。いやそっけなくというのはある意味誉め言葉で、色域も精度高く描写しているということだ。

この広いダイナミックレンジ、高輝度、高色域が特長となる4K映像に対してSW271Cは、新しい映像規格HDRをサポートすることで対応を果たした。パッケージコンテンツで使われる「HDR10(PQ方式)」と、4K放送や4Kビデオカメラで対応が進む「HLG」、この双方に対応する画質モードを装備し、編集中にもHDRの効果を正しくプレビューすることが可能となっている。通常この2つの方式はHDMIで機器を接続すると、HDMI経由でメタ信号が送信されるため自動的にモードの切り替えが行われる。

EDIUSではプロジェクト設定でこの各HDRモードの設定が可能(カラースペースで設定する)だが、SW271Cはこの設定にもきちんと反応し、各HDRモードへ切り替わる。このため、HDR10やHLGに切り替えると色域はRec.709の縛りから解き放たれてSW271Cが持つポテンシャルを最大限発揮した高色域の描写となる。

HDR10(PQ)信号入力時・SW271C HDRモードオン
Rec.709信号入力時・SW271C Rec.709モード

実際筆者が過去撮影し様々な機器で視聴してきた4K HDR映像が、SW271Cでも十分に広い色域で美しく描写されることが確認できた。本来HDRの描写には1000nitの高輝度が必要だが、SW271Cは最大300cd/m2(300nit)とそこまでの輝度は持たない。

ただ1000nitの高輝度が必要なのは家庭のリビングなどでの視聴であり、モニターを見続ける編集中には眩しすぎるともいえる。実際Rec.709の編集中でも最大輝度にすると眩しいので実際の使用時の輝度は本機の表示で50%くらいのポイントであり、HDRモード時にやっと100%輝度を使う程度の感覚だ。300nitの輝度ではあるが、HDRの色域のプレビューは十分可能であろうかと思う。

様々な解像度・フレームレートへの対応

SW271Cは4:2:2/4:2:0/4:4:4それぞれの圧縮形式における2160/1080/24P/25P/30Pといった多様なビデオ再生をサポートする。通常のPCモニターだと波打ったように生じる動画の歪みを解消し、編集者が求める正しいフレームでの編集作業が可能となったのもSW271Cの大きな特長の一つである。

実際筆者はDeckLinkからの映像だけでなく、様々なカメラなどと接続し、様々なフォーマットでビデオ出力してみたが、フレームレートによって映像が変になることもなく、きちんと描写されることを確認した。1080/59.94iといったレガシーなフォーマットも含めて、安心して使用できそうだ。

総評

これまで書いてきたモニターとしての基本性能だけでなく、SW271Cには特筆すべき点がまだまだある。

  • 60W充電可能USB Type-C端子を装備
  • ハードウェアキャリブレーション対応
  • 操作が便利なホットキーパック(OSDコントローラー)付属
  • Pantone/CALMAN認証取得
  • 本格的な遮光フードの標準装備

等々。これらも詳しく記したいところだが、今回は割愛させていただくので、興味のある方はSW271Cのホームページなどを参照していただきたい。

その中でもう一つだけ紹介したいことがある。それは、

修理期間中に代替機貸出できる「センドバックサポート」対象製品(一回あたり5,000円+消費税の有償)

であることだ。故障しても代替機を宅配で手配してもらえるサービスは、まさしく作業を止められないプロフェッショナル向け製品ならではと言えよう。

最後に少しSW271Cに対して要望を述べておきたい。まず信号が入力されたら、その入力信号の解像度・フレームレート・bit深度といった基本情報を数秒で良いのでスーパーインポーズで表示して欲しい。現代のビデオ信号は複雑化しており、どんな信号が入ったのか正確に判別できる事が必要だからだ。

また映像編集用モニターとなりたいのなら、簡易なものでも良いのでスピーカーが欲しい。これも映像は音声とセットであることから入力信号の確認としても必須の事項だ(現状イヤホンアウトは装備されており、HDMI経由の音声は出る)。

以上の2点は次期機種へのお土産となったら、このシリーズ製品の魅力もさらに上がるかと思う。

この高度な色再現力を持つBenQ AQCOLORシリーズSW271Cの市場想定価格は約20万円前後。性能からすればお買い得な製品であるかと思う。HDRにも対応した4K動画モニターが必要な場合には、ぜひ検討してみて欲しい。

機材協力:ブラックマジックデザイン株式会社

WRITER PROFILE

井上晃

有限会社マキシメデイア代表。FacebookグループATEM Tech Labo、Grass Valley EDIUS UGで世話人をしてるでよ。