txt:岩沢卓(バッタネイション) 構成:編集部

生まれ変わった「STUDIO302」

コロナ禍において「集わずに集う」ための新たな拠点として、オンラインスタジオ機能を有したスペースに生まれ変わった「STUDIO302」。これまで、レクチャーやイベント会場としての利用や、全国各地のアートプロジェクトのアーカイブ資料の収集・公開をしてきた「アーツカウンシル東京ROOM302」(3331 Arts Chiyoda内)の一角をリニューアルした空間である。

機材部分の選定・調整から空間設計まで、筆者と兄のユニット「岩沢兄弟」で手がけた。今回の記事では、主に機材面での選定ポイントなどを紹介したい。

イベント機能とオンライン機能の両立を目指す

これまでもイベントスペースとして利用されていたスペースの改装ということもあり、イベント機能は維持しつつ、オンラインにも最適化したスペースを作る、という課題からスタートした今回のプロジェクト。通常の人が集まる形でのイベントをすぐに行うことは難しいとしても、ステージ(出演者スペース)とフロア(客席スペース)という形を基本形として考えることで、必要な機能の絞り込みを行った。

これまでは、展示からレクチャーまで行えるように自由度の高い配置となっていたが、ケーブルの取り回しや機材配置など、自由過ぎても最初は使いにくいのではないか?と考えることとなった。

スペース活用方法についてのヒアリングを通じて、オンライン会議向けのスペースに向いているのは、公開収録のラジオブースなのではないか?という仮説を立て、ステージからフロアに対してイベントをするように振る舞えば、配信にも収録にも対応できるような空間配置を作り上げることができた。

仮設と常設の両方の使い勝手

空間は建築足場などに使われる単管を使用し、カメラ・モニター・スピーカーなどの機能を全て単管に接続するようにし、アームの動く範囲での自由度に限定した。それによって、ケーブルの抜き差しなどを最小限にし、準備時間を短くすることを実現している。

また、卓上のマイクもグースネックマイクがテーブル天板から生える形になっており、グースネックの長さの範囲でのみ移動が可能としている。ほぼ、テーブルのどこに着座しても、マイクフォロー可能な位置にはしているが、ここでも一定の制限の中で利用してもらうというコンセプトは変わらない。音響関係については、ミュートスイッチ類含めて池田匠氏(匠音響)に制作を依頼した。

単管の組み上げやすさ、パーツの組み合わせやすさを生かすことで、仮設のような自由さや軽さを持ちながら、基本の収まりがアームによって規定される常設イベントスペースのような使い勝手を、映像・音響・通信の全ての機能で感じられるよう工夫した。

操作パネルのレイアウトが直感的で、機材に詳しくない人でも操作できること

ローランドのV-8HDを採用した理由は、ほとんどの操作を本体パネル上で完了できることが大きかった。

STUDIO302で機材を操作する人は、アートプロジェクトのスタッフやサポーターなど、これまでビデオスイッチャーに触れたことが無い人たちが大半だったが、本体上のパネル操作と結果が結びつきやすいためか、スイッチングからピクチャーインピクチャーの操作まで、短時間で理解してもらうことができた。

両サイドに設置された大型モニターについては、表示の組み合わせを自由にできるためにV-8HDの機能が役に立っている。STUDIO302の場合には、出演者自身がスイッチャーの操作をする場合も想定して設計したので、両サイドに設置された大型モニターの出演者側から見た位置関係と、マルチビュー上のプログラム・プレビューが一致するようにしている。

それぞれの画面に任意の画面を表示させるために、マトリクススイッチャーやビデオルーターなども検討したが、直感的な操作が難しいこと、複数台を組み合わせて使用する必要があることなどからV-8HDを選択することになった。

iPadを使用してリモート操作ができることで自由度が格段に上がる

V-8HDのメモリー機能が充実していることで複雑な演出や画面構成も事前に仕込みやすくできることも使用方法の説明などにも大きく役立った。

2画面分のPinP機能が使えることで画面レイアウトの自由度が大きく、いろいろな画面構成を簡単に作ることができる。iPadを使うことで画面構成を視覚的に認識できることで、PC上のソフトウェアスイッチャーなどに似た感覚で使用することができる。

今後は、ロックできるメモリー番号を複数指定できるようになれば、常設設備向け機械としての可能性も大きく拡がるだろう。

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