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Vol.01 映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」EIZO ColorEdgeシリーズだからこそ実現したリモート制作

2021-04-19 掲載

txt:小池拓 構成:編集部

コロナ禍で広がるリモート制作

先日、EIZOのクリエイティブ市場向けカラーマネージメントモニター「ColorEdge CGシリーズ」の企画・開発に関して、映画芸術科学アカデミーが主催するアカデミー賞の一部門である「アカデミー科学技術賞」が贈られた。ColorEdge CGシリーズに搭載されている自動キャリブレーション技術などの企画・開発に貢献した社員が受賞したようで、これは映像業界で喜ばしい出来事ではないだろうか。今回は、そのColorEdge CGシリーズを活用した作品を紹介したいと思う。

映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」のカラリスト 齋藤精二氏と、撮影監督の石坂拓郎氏に、最新のリファレンスモニター「ColorEdge PROMINENCE CG3146」をはじめとするColorEdgeシリーズの活用についてと、コロナ禍のリモートでの制作ワークフローについて話を伺った。

ColorEdgeシリーズ活用とコロナ禍のリモート制作ワークフロー

(左)撮影監督の石坂拓郎氏、(右)DIFactory カラリストの齋藤精二氏

――ロングラン大ヒット映画となった今作ですが、いよいよ最終章が2021年4月23日に上映開始になります。1作目の公開から長い年月となりますが、お二人の携わり方や作品への印象、実際の作業について教えてください。

石坂氏:1作目から撮影監督として参加しています。この作品は主人公が歴史上の人物として実際に存在していたかもしれないというリアル感のある題材で、そこに新撰組などの登場もあるので派手なことができそうだと考えました。

侍映画といえば、どうしてもしっとりと心情を描く作品が多いのですが、この作品は派手なアクションを取り入れたエンターテインメントにしたいとスタッフ全員が考えていました。おかげさまで1作目がヒットして、そこからは何年かに一度やってくるお祭りのような感じでしょうか。参加している側としてはとても大変ですが、とても楽しくできる現場でした。

齋藤氏:私は2作目からカラリストとして参加しています。1作目が成功していて、そこからバトンを渡されたという形でした。最初に台本を渡されて読んだ時に考えたのは「芝居に重みが出るトーン」でした。そこをしっかりと考えないと単なるコスプレ映像になってしまう怖さがあります。

カラーグレーディングとは作品の世界観を創ることだと考えています。単純な加工にならないよう、非常にデリケートな調整が必要です。作品のルックのセンターライン、ベースとなるものは撮影前のテスト段階で関係者で打ち合わせをして決めていきます。実はこのテストが一番難しいです。

石坂氏:テスト段階では役者さんが衣装を着ていても実際のセットではない場合もあり、実際のシーンを想像するのは難しいですね。例えばとある感情表現として特定の色を用いる場合、それをどのように使うのか、衣装に入れ込むのか、背景のどこかに配置するのか、それを気にしすぎると映像そのものが破綻しかねないので、そうならないようバランスも相談します。実際の撮影時に変更する場合もありますが、試行錯誤の結果得てして最初に考えていたことが正しいことも多く、テスト段階できっちりと決めておくことはとても大切です。

齋藤氏:この作品では大胆なトーンにしていますが、その微妙な調整が難しかったですね。

石坂氏:最初に齋藤さんが作ってきてくれたトーンはとても「綺麗」なものでした。それはそれでもちろん良いのですが、大友監督と話しをして「もう少しエネルギーを感じられるように」ということになり、色のバランスを少し崩す方向にしました。

しっとりとした時代劇の場合サチュレーションを落とすことが多いですが、この作品では色味は落としたくない、派手にしたい、でも安っぽくなってはならない、というイメージで齋藤さんにベースとなるLUTを変えてもらいましたが、「どこまでやって良いのか」を決め込むのがとても難しかったですね。

齋藤氏:私はフィルムでやってきた人間なこともあり、色の発色の考え方としてサチュレーションの他にColor Density、色の濃淡、色の深みという考え方で色を表現します。今回はこれが石坂さんとの共通言語となりました。それによってお互いのイメージが繋がってトーンを決め込むことができました。

――コロナ禍となり感染予防ガイドラインが提示されて映画の制作も制約される中、リモート環境でのコミュニケーションは具体的にどのようにされたのでしょうか。

石坂氏:撮影は2019年6月頃には終わっていて、2020年の1月にはThe Beginningの仕上げも目処がついていました。そしてThe Finalの仕上げを始める予定だったところで緊急事態宣言が発動しました。

齋藤氏:当時東宝スタジオもクローズしており、海外のポスプロもクローズしているところがほとんどでした。なので石坂さん在住のロスとのリモートでのやりとりも難しい状態でした。そのような状況は想定しておらず、しかも突発的に始まってしまった。それまでは石坂さんとの作業は当然二人で同じリファレンスモニター、スクリーンをみながらやってきていたのでこれはどうしたものか、というところからのスタートでした。

石坂氏:私はその時ロスにいて動くことができませんでした。日本に帰国したのは2020年6月頃ですが、それまでは日本とアメリカでリモートでのコミュニケーションとなりました。

齋藤氏:まずファイルの転送が大変でした。ファイルを圧縮すればやりとりも簡単ですが、そうすると画の階調がなくなってしまいます。

石坂氏:特に難しかったのが、圧縮によって黒の部分のコケ方が変わってしまうので全体のトーンがわからなくなることです。それではどういう作業を追加すべきかの評価がしづらくなるので非圧縮データでのやりとりになったわけですが、とても時間がかかりました。

また、当初は私が所有しているビデオI/Oインターフェースを使って表示させようとしましたが残念ながらDCI-P3に対応しておらず、試行錯誤の結果その方法は見送りました。そこでEIZOの方に相談したところ、ColorEdgeのカラースペースを設定してディスプレイとしてPCと繋げれば大丈夫だと伺ってロスにColorEdge CG319Xを取り寄せました。実際に行ってみるととても簡単にこの問題は解決しました。

キャリブレーションセンサー内蔵、HDR対応31.1型カラーマネージメント液晶モニター「ColorEdge CG319X

齋藤氏:当時こちらではColorEdge PROMINENCE CG3145-BS(EIZOのリファレンスモニターCG3146の前機種)を使用していましたが、石坂さんとのやりとりの際にはこちらにもCG319Xを用意して、お互いの環境を全く同じ状態にしてリモートでのコミュニケーションを行いました。

石坂氏:リモートではお互いが見ているモニターが別々なわけで、自分が見ている絵を相手も同じように見ているのか、というのが不安材料になります。CG319Xであれば工場で同じように調整されたキャリブレーションセンサーを内蔵しているので「同じものを見ている」という安心感を持って作業できました。

実際に作業をしてみてわかったことが、DCI-P3の輝度は48cd/m2と暗く、作業する部屋を真っ暗にする必要があります。当初は夜を待って作業をしていましたが、途中から窓を遮光して作業をしました。そういうことも普通の家でのリモート作業で発見できたことかもしれません。

齋藤氏:それまではリファレンスモニターでグレーディングしたものを「スクリーンで見ながら作業しないとわからない」というイメージがデフォルトになっていてモニターの画を見ながら何かジャッジすることはほぼありませんでしたが、リファレンスモニターとして信頼しているCG3145-BSと同じColorEdgeで、制作用モニターであるCG319Xを使って石坂さんとのリモート作業を進めた結果、モニターでの作業の時点でこれまでよりもかなり方向性を決めることができました。もちろん最終的にはスクリーンでの作業となりますが、それまでにモニター上で積み重ねた作業にとても意味があったという印象です。

――昨今、4K・HDRの作品が少しずつ増えてきていますが、HDR表現についてどのようにお考えでしょうか。

齋藤氏:私も参加していますが、配信系での制作では4K・HDRが前提になってきています。

石坂氏:できるだけ大きな解像度で撮影、マスタリングすることが未来への投資となるので本来であればそうするべきだと思いますが、邦画はまだ2Kマスタリングが一般的で、今回の作品も2Kです。

齋藤氏:撮影は6Kですので4Kマスタリングは理論的には可能です。しかし、限られた制作費やCG部への負担を考えると現状は難しいかもしれません。また、映画を上映する劇場では2Kのスクリーンと4Kのスクリーンがあって、4Kで上映するとなると2Kとは別に4Kを納品しなければなりません。4K対応サーバーなどの劇場側の設備投資に依存している面もあります。

ただ、4K・HDRマスタリングすることで配信系に販売する場合もより高値になるはずで、世界マーケットを視野にいれたビジネスを考えると邦画も移行を考えても良いかもしれません。また、若い世代のクリエイターが新しい技術に挑戦したいと思った時に、配信系であればハイスペックでの制作ができるとなるとそちらに流れてしまうのではないかという危惧もあります。

石坂氏:予算によってはより安価な提案が必要になります。それは国際的なスタンダードからは外れてしまうものなので、それでは乗り遅れてしまいます。

齋藤氏:我々も実際に経験することで技術を完全に習得することができます。情報だけでは理解はできますが習得は難しい。ハイスペックでの作業も含め、経験することはとても重要だと思います。

高輝度1000cd/m2、コントラスト比100万:1の31.1型HDRリファレンスモニター「ColorEdge PROMINENCE CG3146

――長年EIZOのColorEdgeシリーズを使用されていますが、製品の印象や今後の要望などあれば教えてください。

齋藤氏:キャリブレーションセンサーが内蔵されていることへの信頼感はとても高いです。実は、「るろうに剣心」のカラーグレーディングに取り組んでいる時期に、CG3145-BSの後継のリファレンスモニター「ColorEdge PROMINENCE CG3146」が発売され、当社はいち早くこれを導入しました。それ以降もCG3146を使って4K HDR作品を作っていますが、とても安定します。EIZOのモニターをこれまで使用して、極端な個体差を感じたことはありません。その信頼性はとても高いです。

今回の石坂さんとのリモート作業も安心してやりとりすることができました。また、前機種CG3145-BSからCG3146になって最も重要な進化ポイントはSDIに対応したことだと思います。様々な機器とそのまま繋げられるようになりましたし、機材同士の距離も気にしなくて良くなりました。12Gでの入力にもどんどんシフトしていますので、この変更はとても大きいですね。

EIZO齋藤氏が使用する編集室にはColorEdge PROMINENCE CG3146が設置されている

石坂氏:今回のリモート作業において、ColorEdgeを使うことで齋藤さんとのコミュニケーションはとてもスムーズでした。しかし、大友監督とのやりとりは難しかったです。作業途中に監督にコメントをもらいたい際に以前のように1箇所に集まることが難しく、機会を作るのが大変でした。EIZOで、HDRがしっかり表示できるコンパクトな機種があるとそういった場合に便利だと思います。

また、HDR撮影の際、現状では現場での堅牢性を重視した簡易的なHDRモニターを使うことが多く評価しづらいことが多いので、そういったコンセプトの小さなモニターもあると良いと思います。

齋藤氏:HDRのチェック環境は現状マスモニが高価なため、編集やVFXなどの工程では民生テレビなどで代用する機会も多く、マスモニを持つポスプロに来ないと正確な確認ができない場合が多いです。CG3146をセンターに据えて、監督チェックやクリエイターのジャッジが必要な際に使える、しっかりと表示できるサブ機のような位置付けのコンパクトなモニター群をラインナップしていただけるとよいですね。関係者が同じモニターで確認でき、リモート作業での色管理がより安全に行えると思います。

▶HDRリファレンスモニター「ColorEdge PROMINENCE CG3146」

▶HDR、DCI 4K対応カラーマネージメントモニター「ColorEdge CG319X」

EIZO アカデミー科学技術賞受賞スペシャルページ

▶ColorEdge直販サイト「EIZOダイレクト


WRITER PROFILE

小池拓 (有)PST 代表取締役。1994年より Avid、Autodesk、Apple、Adobeなどの映像系ソフトのデモ、トレーニンングを行っている。


[ Writer : 小池拓 ]
[ DATE : 2021-04-19 ]
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小池拓 (有)PST 代表取締役。1994年より Avid、Autodesk、Apple、Adobeなどの映像系ソフトのデモ、トレーニンングを行っている。


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