はじめに

アメリカでは新型コロナウイルスのワクチン接種が進み、その恩恵もあって「少しずつ」日常生活が戻りつつある。もちろん、まだまだ通常通りとは言えないが、ロックダウンが1年近く続いていた状況は、徐々に改善しつつある。今回は、そんなLAの街の様子を、筆者独自のVFX目線からご紹介しよう。

進むワクチン接種

アメリカでは昨年12月から新型コロナウイルスのワクチン接種が開始された。ロサンゼルスにおけるワクチン接種のプロセスは、アメリカにしては驚異的にオーガナイズされており、オンラインですぐに予約が取れ、近くの病院やドラッグストア(薬局とスーパーマーケットが一緒になったようなお店)等で接種を受ける事が出来た。

予約枠は、最初に医療従事者や学校教育関係者→50歳以上→16歳以上と段階的にプライオリティが設定され、混乱なく予約が行われた。アメリカ市民だけでなく、アメリカに居住している我々外国人も、その恩恵にあやかる事が出来た。

ワクチン接種会場にて。「受付はこちら」のパネル(4月中旬、筆者撮影)
会場内にあった、コロナウイルスのぬいぐるみ(4月中旬、筆者撮影)
事前予約制なので、列に並んでも待ち時間は15分程度であった。奥に見えるテント状のブースで接種を受ける(4月中旬、筆者撮影)

オンライン予約すると日時と場所が選べるので、当日現地へ行き、受付けを済ませ、接種を受ける。接種後は急なアレルギー反応や副反応等に備え、念のためにスペースで15分間待つよう指示される。

6フィートのソーシャル・ディスタンスを空けた待機スペース

そして、特に異常が見られないようであれば、その場で2回目の予約を済ませて帰宅する。所要時間は1時間ほどであった。

SNSでも「今日打ってきた」「2回目無事完了」という書き込みが多数見られ、筆者の周囲でもかなりの率の人がワクチン接種を済ませている事が伺える。

ワクチン接種後の副反応には、個人差が

ワクチンの種類によって、1回だけ打つワクチンと、2回に分けて打つワクチンとがある。筆者が打ったモデルナ製ワクチンは2回の接種が必要で、1回目を打った後、28日間をあけて2回目の予約日が指定された。

「1回目より、2回目の方が副反応が強い」という説明も受けた。筆者の場合、1回目の副反応は腕の筋肉が多少痛かったくらいだが、2回目を受ける前はちょっと心配であった。

筆者の周りで、既に2回目を済ませた方々によると、男女を問わず、

  • 悪寒と頭痛が2日続いて辛かった
  • だるくて2日間寝込んだ
  • 熱が出て、2日ほどベッドの中で過ごした
  • インスタント食品などを買っておいた方が良い

などなどのお話を伺っていたので、それなりに覚悟して2回目に臨んだ。

当日:午前中に接種。夕方から、腕の注射を打ったあたりの筋肉痛がひどかった。

翌日:軽~い気だるさ&なんとなく頭が回らない感じ。しかし、仕事が出来ない程ではない。

翌々日:ほぼ、何ともなし。回復。

という事で、筆者の場合は幸いにも副反応が軽くて済んだのだが、上記のように個人差があるようだ。

副反応が心配な方は、2回目の予約日を金曜日や休日前にしておけば、仕事への影響が少なく、気分的にも安心かもしれない。

コロナがハリウッドに残した爪痕

カリフォルニア州では昨年3月、市の衛生局の命令によってレストランや映画館、劇場、ジムなどが閉鎖され、レストランに至ってはTo Go(お持ち帰り)のみ営業が許可されるという状況が続いていた。

コロナによる影響はアメリカにおいても計り知れず、多くのビジネスが廃業に追い込まれた。ハリウッドの映像業界も例外ではない。

その中の1つ、ハリウッドの有名な映画館シネラマ・ドームは1年前から閉鎖状態が続いていたが、シネラマ・ドームが属するアークライト・シネマ・ハリウッドを保有する大手シネコン・チェーンが4月12日に営業再開断念をアナウンス。シネラマ・ドームだけでなく、300スクリーンにも及ぶ傘下の全シネコンの閉鎖を決定した。シネラマ・ドーム自体は、将来また別の新しいオーナーによって継続される可能性が残されているというが、非常に残念なニュースであった(詳細はこちら)。

コロナの影響により閉鎖になった、ハリウッドのシネラマ・ドーム(4月中旬、筆者撮影)

このように、コロナはハリウッドにおいても大きな爪跡を残した。

しかし、前述のようにウイルス接種が進んだ事から、3月後半頃からレストランや映画館が限定的に営業を許可される運びとなった。

ソーシャル・ディスタンスをキープする事、マスクを着用する事、レストランは屋外営業に加えて収容人員の25%であれば店内営業が可能、などのガイダンスに沿っての営業再開が始まった。

これまで、夜になるとひっそりと静まり帰っていた市街地に、レストランの明かりが戻ったのを目の当たりにして、なんだかとても嬉しい気持ちになった。

さっそく映画館へ行ってみた

そんな訳で映画館が段階的に開きだしたので、さっそく足を運んでみる事にした。映画館は1年ぶりである。

しかしながら、2回目のワクチンを打ったとは言え、とりあえずは人が少ない平日夜の遅めの回を狙って行ってみる事にした。

営業再開初の映画は、せっかくなので「ゴジラvsコング」のIMAXにした。

映画館へ行ってみると、平日夜の回とあって、ほとんど人がいない

オンラインの予約システムは、シート2席分を空けて予約が取れるように設定されており、ソーシャル・ディスタンスを取りながらの鑑賞となった。

写真ではちょっと分かりづらいが、観客はシート2席分を空けて座っているのがわかる。カップルや家族数人で行った場合は、一緒に並んで座れるようだ。そして次の観客が2席離れて座るように予約システムは設定されている

まぁこんな感じで、普通の感覚だと「ガラガラ感」の劇場内だったが、久しぶりのIMAXシアターである。やっぱり映画は映画館で観るに限る!

さて、続いて翌週に足を運んでみたのが、LAでも劇場公開が始まったばかりの「Demon Slayer: Mugen Train」(邦題:「劇場版「鬼滅の刃」無限列車編」)である。筆者はてっきり日本語音声と英語字幕による上映だと思い込んでいたのだが、筆者が見たのは英語吹替版であった。

しまった!英語吹替版だと、オリジナル作品が持つ良さや雰囲気が伝わってこない。どうせだったら日本語版で見たかった…。

筆者以外の観客は全員アメリカ人である。映画の途中で何度も登場する謎のコミカルな描写では笑い、エンディングでは涙し、アメリカ人観客の皆さんも「鬼滅の刃」を心から楽しんでいたようだ。

「Demon Slayer: Mugen Train」(邦題:「劇場版「鬼滅の刃」無限列車編」)を上映する、センチュリー・シティのAMCシアター
「ソーシャル・ディスタンスにご協力頂き、ありがとうございます」というポスター。センチュリー・シティのAMCシアターにて

テーマパークも段階的に再オープン

LA近郊にあるディズニーランド、ユニバーサル・スタジオ、マジック・マウンテン、ナッツベリーファームなどのテーマパーク&遊園地も、人数制限をしつつも徐々に営業が再開されている。

カリフォルニア州は6月15日から経済活動が全面的に再開

カリフォルニア州は、6月15日からの経済活動全面的再開を発表した。6月15日からはソーシャル・ディスタンスを取る必要がなくなり、レストランもフル・キャパシティでの営業が可能になるという。

報道によると、マスク着用義務も6月15日からは解除される可能性が高いという。ただし、5千人以上が集まる屋内イベント、1万人以上が集まる屋外イベント等では、ワクチン接種記録の提示や、マスク着用などが引き続き義務づけられる予定だそう。

ハリウッドの有名なミュージカルシアター「Hollywood Pantages Theatre」も8月からミュージカルが再開されるというニュースが流れ、徐々に明るいニュースが増えてきたのは良い事である。

さてVFX現場は?

ハリウッドのVFX業界は、依然としてリモートワークによる勤務形態が続いている。「オフィスに戻った」という声は、今のところまだ聞こえてこない。

このリモートワークは、「おそらく秋頃か、少なくとも年内は続くのではないか」とも言われているが、コロナの収束状況に依存する事もあり、正解は誰にも分からないのが実情である。

またVFXスタジオによっては、「元々限られたオフィス・スペースに人員を詰め込んでプロダクション・ワークを行ってきたので、今後はリモートを推奨していくかも」と言い始めた会社もあるとか。

一方、映像業界以外の職種では、「来週からオフィスに戻って良いと言われた」という知り合いの方もチラホラ出始めている。

各業界とも、今後の方向性を模索しているのが実情と言えそうだ。

SIGGRAPH2021はどうなる?

今年のSIGGRAPHは久しぶりに地元LA!と個人的には楽しみにしていたのだが、公式サイトを覗いてみたところ、SIGGGRPAH2021 VIRTUAL 9-13 AUGUSTと書かれており、今年もバーチャルでの開催が正式に決定したらしい。

LAコンベンションセンターで開催されないのは残念だが、逆に言えば日本の方もリアルタイムで参加出来るという利点もある。

バーチャルによるSIGGRAPH2021の見どころや詳細は、来月号の本欄でご紹介させて頂く予定である。こうご期待!

終わりに

最後に、1枚の写真をご覧頂きたい。このような光景は、LAでは本当にひさかたぶりである(5月前半筆者撮影)。

ここは元々タイヤメーカーのサービス拠点だった歴史的な建物をそのまま使用し、地ビールとタコスを出すという意外性を売りに、最近お目見えした施設である。コロナの影響でオープンが遅れ、この程、ようやく開店出来たという。屋外スペースが広いため、入場人数を制限しつつも営業を開始し、人気を呼んでいる。

待ち行列に並んでいる人々を見ると、マスクをしている人/していない人が混在し、ソーシャル・ディスタンスの甘さも気になってしまうが、これだけの人数が集う姿は「数か月前にはあり得ない光景」だった。

つまり、多くの市民がワクチン接種を済ませ、心にも余裕が出てきたという事なのだろう。

もちろんコロナの感染には引き続き十分な注意が必要であるが、ここLAでは、このように少しずつ日常が戻りつつあるという光景を、日本の皆さんにお届けしたいと思う。

WRITER PROFILE

鍋潤太郎

ロサンゼルス在住の映像ジャーナリスト。著書に「ハリウッドVFX業界就職の手引き」、「海外で働く日本人クリエイター」等がある。