IP、クラウドやAI、イメージングソリューションの3つを展示

ソニーは、放送業務用ビジネスの説明と商品を紹介するメディア向け展示イベント「映像ソリューション内見会2021」を開催した。ソニーは毎年6月に品川本社大会議室で映像制作機器の内見会を開催しているが(2020年度は未開催)、今年は先に紹介した「ディスプレイ内見会」と「映像ソリューション内見会」の2つに分けて開催。今回は映像ソリューション内見会の様子をレポートする。

今回の映像ソリューション内見会では、「IPを活用したライブ映像制作ソリューション」「クラウドやAIを活用したソフトウエアソリューション」「制作者の表現を広げるイメージングソリューション」を基軸に展示。会場の様子を紹介しよう。

イメージングソリューションコーナーではスーパー35mmの新4Kカメラシステムに注目

開発中HDCシリーズの新4Kカメラシステムを参考出展

    
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イメージングソリューションエリアでもっとも存在感を放っていたのが2021年内に発売予定の新4Kカメラシステムの参考出展だ。ブースの展示名も「Super 35mmセンター搭載システムカメラ」と、正式名称は決まっていないようだ。

グローバルシャッター機能搭載のスーパー35mm単板CMOSイメージセンサーを使用したHDCシリーズの新4Kカメラシステムで、システムカメラの使い勝手を継承しながら、被写界深度の浅いシネマライクな表現が可能。23.98P/29.97P撮影に加え、HDR(HLG・S-Log3)とSDRの同時出力が可能で、ソニーのSR Live for HDRワークフローに対応する。

筐体はHDC-5500のように見えるが、レンズマウントはPLマウントを採用。スーパー35mm相当に対応するキヤノンのCINE-SERVOレンズ「CN10×25 IAS S ⁄ P1」と組み合わせて稼働していた。

また、カメラコントロールユニット「HDCU-5500」にオプションの「HKCU-REC55」を追加することで他の外部記録装置を必要とせず、4K映像と音声をCCUに直接記録可能だ。録画はCCU側でビデオエンジニアがコントロールできるため、カメラオペレーターは気を散らすことなく美しい映像の撮影に集中できるとしている。

    
カメラコントロールユニット「HDCU-5500」と組み合わせて稼働。同時出力のデモも行われた
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HDCシリーズ対応の光学式可変NDフィルターユニットを実機展示

    
可変NDフィルターユニットを光学式に交換したHDC-5500をデモ
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カメラスタジオコーナーでは、システムカメラ初の光学式可変NDフィルターを世界初展示。これまでのHDCシリーズのNDフィルターは複数枚のNDフィルターで段階的に濃度を変える仕組みで、素通し、1/4ND、1/8ND、1/16ND、1/64NDと段階的に濃度変更に対応していた。

新開発の光学式可変NDフィルターユニットは、従来入っていたNDフィルターユニットを取り出して入れ替え可能で、クリアー、1/3から1/256までNDフィルターの濃度を連続的に変えることが可能。NDを可変NDフィルターのポジションにセットした後は、リモートコントロールパネルのRCPシリーズから濃度変更が可能。

被写界深度を替えずに露出調整する方法、レンズの絞りすぎによって発生する小絞りボケ対策、レンズ絞り羽根由来の光芒を回避する方法として活用が期待される。

VENICEで使えるテクニカラーLookライブラリを公開中

    
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VENICEは機能追加のバージョンアップを紹介。ファームウェアの最新バージョン6では、16:9画角のハイフレームレートの撮影対応や、ART(Advanced Rendering Transform)ファイルのインポートを目玉としている。

また、ハリウッドの大手ポストプロダクションのテクニカラーはVENICEで数多くの長編映画などのプロジェクトを手掛けており、そのテクニカラーのカラリストの協力を得てARTテクノロジーを利用したTECHNICOLOR Lookライブラリを公開。VENICEの標準ルック「S709」に加えて、様々なルックをプロジェクトの狙いに応じて試すことできる。

FX9は外部レコーダーによる4K 120P RAW出力をデモ

    
FX9はファームウェアのVer.2.10を紹介
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FX9は、すでにリリースされているファームウェア2.1を紹介。2.1では、ATOMOS NINJA 5と組み合わせて3840×2160や4K(3840×2160)120P RAW出力対応を大きな特徴としている。

また、FX9はファームウェアバージョン3を今年中にリリース予定。アダプターを経由する形でネットワークケーブルのコネクターからカメラのリモートコントロールに対応。2KセンタースキャンやセンサースキャンのB4対応と専用アダプターによるB4レンズ対応を予定している。

FX6はファームウェアバージョン1.10を紹介。4K120P RAW収録に対応し、FX9と同じProRes収録を外部レコーダーより収録可能。FX6やFX3は35mmフルサイズイメージセンサーを使った多彩な映像表現を特徴としており、ライブ配信やミュージックビデオ、CM、企業VP等で、幅広く活用されているという。

    
FX6はファームウェアVer.1.10を紹介
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FX3は冷却ファン搭載により長時間収録を実現。会場のデモでは一度もRECが落ちることはなく長時間収録を行っていた。

    
FX3の長時間収録の様子を公開
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マスターモニターとカラーマッチングを提供する32インチ4K HDRピクチャーモニター「PVM-X3200」

    
左はマスターモニター「BVM-HX310」と右はピクチャーモニターのPVM-X3200
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モニターコーナーでは、2021年10月発売予定のピクチャーモニター「PVM-X3200」と、PVM-XシリーズHDR-SDR変換ライセンス「PVML-HSX1」を展示。BVM-HX310とPVM-X3200を並べて展示し、BVM-HX310と同じ色域や同じ1000cd/m2対応、バックライトの分光特性などの見た目に統一した画の出力、マスターモニターからピクチャーモニターまで一貫した色再現が特徴と紹介。両者の違いは、BVM-HX310は光漏れの心配がない点や、ピクチャーモニターは広い視野角が可能だという。

PVM-X3200は、予算の都合上すべての場所にBVM-HX310(マスターモニター)の導入が困難な現場に最適として、サブモニターや編集用モニター、VFX、CGテロップなどのHLG信号やPQ信号を確認するモニターとしてオススメとしている。

ピクチャーモニターに対応したHDRからSDRへ信号を変換する有償ライセンス「PVML-HSX1」

    
PVML-HSX1を活用して、クワットビューとユーザーLUTの様子をデモ
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PVM-X3200の隣では、2021年6月3日に発売したモニター内部でHDRからSDRへ信号を変換するオプションライセンス「PVML-HSX1」を展示。

従来モニターは入力信号をままスルーアウトで出力可能だったが、PVM-Xシリーズはそれとは別に拡張SDI出力(Enhanced Monitor Out)より変換した信号をライブ出力が可能。他のSDRモニターに出力可能な機能を実装しているほか、モニター内部でコンバートの内容を細かく設定可能。

IPを活用したライブ映像制作ソリューションを展示

IPライブプロダクションシステムは全世界で140システム以上導入

IPを活用したIPライブプロダクションシステムとは、中継車やスタジオサブなど、放送局の中や外にある映像制作をするための設備を、すべてIPで各機器を接続して運用するためのシステムソリューション全体の総称としている。

ソニーは、各設備をIP化する部分や放送局全体や管理監視するためのソリューションとして2020年9月にnevionを子会社化し、中継車などの外にある設備も含めてIP・クラウドベースでの統合的なリモート映像制作ソリューションを強化。ソニーのIPライブプロダクションシステムは現在、全世界で140システム以上の導入が進んでいるという。

    
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会場にITライブデモ中継車を展示

IPライブソリューションのデモとして、ソニーマーケティング所有のITライブ中継車を展示。IPの伝送規格であるSMPTE ST2110規格や、制御の規格であるNMOSに対応した中継車で、全国の放送局にIPのテスト運用や実証実験に活用しているという。中継車には、施設設備の一括制御・総合監視するライブエレメントオーケストレーターを搭載しているのが特徴だ。

    
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会場に展示されたIP liveデモ中継車
    
システム構成は、ライブエレメントオーケストレーターやIPライブシステムマネージャー、ビデオサーバー、スイッチャー、カメラコントロールユニットなど
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クラウドやAIを活用したソフトウエアソリューションを展示

IP・クラウドソリューションをラインナップ

ソニーが提供するクラウドやAIを活用したソリューションは、映像制作コラボレーションツール「Ci Media Cloud Services」、コンテンツ管理システム「Media backbone navigatorX」、コンテンツ管理サービス「Media Analytics portal」、2020年11月に発表されたクラウドソリューション「Media Solutions Toolkit」や「オートフレーミングソフトウェア」があり、その実機展示が行われた。

    
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Media Solutions toolkitは、従来コンテンツマネージメントシステムとして提供していたMedia backbone navigatorXをベースとしてアプリケーションの構成要素を「マイクロサービス」として独立・進化したもの。素材を取り込む部分や映像コンテンツを管理する部分、全体のシステムを管理する部分など、主要な部品に分けることをマイクロサービス化と呼び、マイクロサービス群で構成されたコンテンツマネージメントシステムをMedia Solutions Toolkitと呼ぶ。

マイクロサービス化されたMedia Solutions Toolkitは、従来の大きな塊のMedia Backbone NavigatorXに比べて部品が有機的につながって稼働し、万が一どこかの部品で障害が起きても全体に波及しにくいのをメリットとしている。

    
Media Solutions toolkitはファイルベース系クラウドシステム構築のためのマイクロサービス(標準部品)群のこと
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AI技術を活用して4K映像からHD映像の自動切り出しを行うオートフレーミングソフトウェア

    
4K映像(左)からAIの技術で自動的にHD映像(右)を切り出すソフト。4K映像の赤枠の部分を右のHDモニターに出力している
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AIを活用したソリューションコーナーでは、AI技術を活用し、4Kカメラの映像から出演の顔を認識し、HD映像として最適な画角で自動切り出しを行う「オートフレーミングソフトウェア」を展示。2021年4月にプレス発表をして、2021年9月に発売を予定している。

従来のスタジオでは、3カメ体制だと3人のカメラマンが必要だったが、4Kの俯瞰固定カメラで全体像を映し、中の人間をAIが自動で抜き出だし、タッチパネルで選んだフレームを送出するソリューションを開発。従来はスイッチャーを必要としていたが、それをAIを活用し、ディレクターが1人だけでオペレーションできる環境も将来的には提供予定だという。

画面の左側に実際に4Kで撮影した映像を表示し、右側が4K映像からHDを切り出した映像。GUIには、左上に4Kの入力映像が表示され、4Kの入力映像の中からAIが自動的に人物を検出して、検出された人物が左下に表示される。表示したい人物をタッチパネルで選ぶだけでHD映像として自動的に切り出して表示可能。切り出される画角は、自動設定できるが、ウエストショット、ニーショット、バストショットの選択も可能。

また。一人だけの切り出しではなく、2人同時、3人同時に切り出すことも可能。グループ機能があり、切り出したい人物を事前にグループに登録することによってグループでの切り出しが可能。

また、顔と名前を事前に登録可能で、AIが自動的に顔検出をして、顔と名前の表示が可能。実際の運用時には、顔と名前を確認しながら選んで出力することが可能になる。

    
旋回型4Kカラービデオカメラ「BRC-X1000」を使えば、特定の人物をターゲットに設定することで自動的に追尾をしてくれる
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