ステディカム習得方法&国内外のワークショップについて

今回は、ステディカムを習う場所、ワークショップについてご紹介する。

ワークショップは、世界中で様々なプログラムが開催されている。そこで、「日本と外国のワークショップ、どう違う?」の部分を、実際に外国のワークショップに参加されたステディカムオペレーターの方々に伺った。

筆者は2012年に、アメリカ、ジョージア州で開催された、Tiffen社主催Eastern Classic Steadicam Workshop(6日間・現在はゴールドワークショップに統合)に参加し、その後日本国内でのゴールドワークショップ(5日間)、シルバーワークショップ(3日間)、ブロンズワークショップ(2日間)の主催や講師を行ってきた。国内外のワークショップを経験したこと、参加側、開催側の両方を見てきた経験から、実際に参加される方がどういうポイントにフォーカスして参加されるのか、苦労話などを、4名の様々な立場のオペレーターに伺った。

ワークショップについては、過去のコラムを参照いただくか、ステディカムのホームページで、予備知識を入れてただけると幸いだ。

今回も、ニッチ中のニッチな話なので、「なんのこっちゃわからない」という話が続いてしまうかもしれないが、何卒ご了承のほど…。

ステディカムオペレーターの雄 木村太郎氏

第一回目はステディカムオペレーターの木村太郎氏。木村氏は、CF、PV、映画やライブなど様々な現場で活躍するステディカムオペレーター。PRONEWSでもARRI祭レポートに登場いただいている。Queen Mary Steadicam Gold Workshop 2015に参加された時の話を伺った。

この時、木村氏の奥様も同行されていたので、奥様目線のお話も一部盛り込んでいる。外国のワークショップでは、家族が一緒に参加することも結構ある。日本ではそのようなことはないのだが…。そういうところも、日本と海外で異なる部分かもしれない。

木村太郎氏、奥様とDan Ikeda氏(元Steadicamセールス担当)

ステディカムとの出会い

木村氏:高校生の時に入っていた放送部の活動内容として、テレビドラマ、ラジオドラマ、ドキュメンタリーを制作していて、その中でテレビドラマを担当していました。

当時テレビドラマなど見ている時に、歩きながら会話するシーンが印象的でしたが、どうやって撮るかわかりませんでした。調べているうちにステディカムに行き着き、そこで初めてステディカムと出会いました。

本格的にステディカムを扱い始めたのは、JSC育成塾に通うようになって、金子さん(金子雪生氏)に知り合ってからです。大学4年生の時、映テレ(一般社団法人 日本映画テレビ技術協会)の機材展に行き、ステディカムの体験会で初めて体験しました。

映テレの展示会後、JSCのカメラバランスシステム講習会の見学に行きました。その1年後の講習会に参加し、まずはベストを買えと言われそのまま購入し、そのままデビューしました(笑)。助手から始まり、そのうち先輩の現場で…初担ぎは助手で行った長渕剛ライブでした。24歳頃の話です。

映画デビューはベストを買った直後でした。「沈まぬ太陽」の海外部分をPanavision Genesisで1カットだけ撮影しました。イランの町並みを歩く渡辺謙さんのひっぱりショットを撮りました。渡辺謙さんは、デビューしたてで見習いだった私のことを名前まで覚えてくださり、ちゃんとひとりのオペレーターとして扱ってくれました。今の仕事は仕事量が多すぎて忘れがちですが、最初の頃の出来事は失敗も含めてきちんと覚えています。

関わった中で印象的だった作品

海外の、名の通っている役者さんは、カメラの前に立つと謙虚な印象があります。日本だとカメラに写っていない役者さんはそもそも立ってくれないなどがありますが、しっかりした役者さんはきちんとその辺も演技してくれる印象があります。

自分がちゃんと映るために努力を惜しまない。作品のために努力を惜しまない。海外の役者さんと仕事していて、そういったプロ意識の高さが印象的でした。ステディカムオペレーターは、普通のカメラよりも役者さんの近くに行くので、そういう雰囲気を一番近くで感じられます。

ワークショップ参加の動機、苦労など

何年も前から参加したい気持ちだけはありました。技術というよりは、ギャレット(Garrett Brown:ステディカム発明者)から直接教えてほしい気持ちが強かったです。日本の先輩たちにも色々教えてもらいましたが、海外の先輩たちからも教わりたいという気持ちですね。ステディカム第1世代、ギャレットに直接教えてもらった世代になりたかったです。

行くまでに大変だったこと

ダン(Dan Ikeda:当時Tiffen社でSteadicam担当だった日本人スタッフ・インストラクター。現在もアメリカでSteadicamに関わっている)がいたので色々と助かりました。言語の面で困ることはなかったです。彼がいなかったら言語的なところで結構大変だったかもしれません。ワークショップ自体は船(岸壁に固定された船の中)で開催され、一歩も出られないと言われていたので、何もわからないまま行ったのが不安でした。

行ってから大変だったこと

食事です。毎回メインがお肉で…。もちろんサラダなどもありましたが、やはりだんだん胃もたれしてくる…という感じです。日本人からすると消化しづらい食事が続くのが大変でした。それから、妻を連れて行きましたが、妻は何をしていればよいのか…みたいな感じはありました。

奥様:最初は写真を撮っていいのかも分からず、誰に聞けばいいかもわかりませんでした。コミュニケーションが言語の違いもあってあまりできなかったので、最初の頃は色々と遠慮して、辛いこともありました。でしゃばるのは良くないかなあと思っていましたが、途中から参加者に撮った写真のシェアなどを行いました。もう少し最初から分かっていれば、色々と記録撮ったり勉強できたなあというのはあります。

ワークショップ参加で得たものとは

オペレーターとしての経験があるので、正直若干旅行気分で深く考えずに参加しましたが、学ぶことが多く、楽しくて、初日から真剣な気持ちになって妻は放置気味に…(笑)。行く前のほうが軽い気持ちでした(笑)。

ワークショップ参加前までに教えてもらったのは、金子さん世代の人たちがワークショップに行って身に着けたテクニックだったので、時代が進んで変化したテクニックをそこまで詳しく知りませんでした。新しい知識や概念を学ぶことができたのは非常に大きかったですね。機材の技術的進化にともない、教え方も進化するので、その時の最新技術・最新情報を学ぶことができました。

それから、セーフティを学べたのは大きいです。日本の現場は安全が軽視されがちですが、アメリカでは安全に撮影を進めるためにどうするべきかの多くを学べました。

奥様:私的には、参加者の奥さんと出会えたのはよかったです。オペレーターの奥さんという共通のポジションに友人ができたのは親近感もあって嬉しかったですね。それから、世界中のオペレーターを見ることができたのも良かったです。ワークショップ中はムードメーカーに徹しました(笑)。

奥様もビークルマウントを体験…!

ワークショップ中にFacebookグループを作って繋がった皆さんとは今もお付き合いが続いています。どんな仕事をしているかなど、たまにメッセージでやり取りします。やはり英語が不安でしたが、言語は関係ないんだと思いました。日本人とだけ仕事するのではなく、他の人種、他の国の人と仕事をしてみるのは楽しそうだなと思いました。

ワークショップ参加でかかった費用

ワークショップ費用3500ドル、妻の食費500ドル、旅費往復10万円台前半×2人分、観光諸々で後泊しているので結構その辺りは費用がかかりました…(笑)。

国内と海外でのワークショップの違いとは

座学が一番大きいと思います。毎日座学があって、概念や仕組み、機材やディレクターとどう接するかなど、オペレーターとしての振る舞いについて話をしてくれたのは勉強になりました。JSCの講習会では、最初に座学があるだけでした。

実際に仕事をどうやって見つけるのか、現場の立ち位置、いかにビジネスとしてやっていくか、などを教えてくれるというか。例えば、プロダクションに機材を買ってもらい、自分を無料で売り込むみたいな感じです。日本はただオペレート技術を教えるだけが多いと思います。お金を払って技術を学んで終わりなのか、知識や入り方から諸々を教えてもらえるか=「職人と捉えるか、ビジネスと捉えるか」の違いかなと思います。

あとは、海外で受けたほうが楽しいのでは?という単純な話もあります(笑)。日本語だと詳しいところまで学べるのはもちろんですが、海外のオペレーターから色々な話を聞けるのは大きいです。参加者同士で話した時にも得るものがたくさんありました。

海外ワークショップをオススメする人物

ステディカムの技術を覚えるだけなら日本で受ける方がお手軽ですし、おおよそのことは学べますが、ゴールドワークショップ以上で、5日間程度のワークショップを受ける時には海外でのワークショップへの参加を考えるのもいいかと思います。

僕が参加したゴールドワークショップは何よりも芝居に特化していました。芝居を構築し、それをどうやって捉えるかを考えたり、そのシーンに対してどれくらいオペレーターが権限を持っているのか、どれくらい我を出して良いのか、演者にどう指示をしていいのかなどを学ぶことができました。ステディカムオペレーターの権限が日本よりも大きいので、そういうところも学べます。

また、海外作品をやりたければなおさら海外でのワークショップ参加をオススメします。日本の場合、助監督が把握してないことはやらない方が良いですが、海外クルーとやっている時に、オペレーター都合でやっていても、あまり助監督どうこうではなく、オペレーターとして尊重されている感じがします。映画をやりたい、海外クルーと一緒に仕事がしたい人にはぜひオススメしたいです。

ステディカムの操作以外の部分を学べることも大きいです。画に責任を持つのは、その画を切り取っているオペレーターで、オペレーターがやるべき仕事だと気づかせてくれます。なので、行ける時、思い立った時に是非行ってみてください。心の準備はなくてもどうにかなります(笑)。

WRITER PROFILE

柏原一仁

リリーヒルワークス代表。銀一株式会社にて映像機器・写真用品のセールス・マーケティングを経て独立。好きな食べ物はからあげ。