過去の"戦利品"の一部から。この画像の中にも、トリビアが隠されている

はじめに

先月号の本欄でもお伝えしたように、SIGGRAPH 2021が8月9日(月)から13日(金)までの5日間、バーチャル・コンファレンスという形で開催された。今回はSIGGRAPHの開催月という事もあり、せっかくなので(←何がせっかくなんだか)SIGGRAPHのトリビアをご紹介してみたいと思う。

Production Sessionの待ち時間に表示される「トリビア」

Production Sessionに参加すると、開演前の待ち時間などに、前方スクリーンに「SIGGRAPHトリビア」が表示される事がある。これは歴代のSIGGRAPHでの出来事や、CG/VFX業界のミニ知識など、「日常生活においては全く役に立たない、細かくて、極めてどうでも良い情報」が惜しげもなく紹介され、見ていて飽きない。

待ち時間の間に表示するというアイデアも、SIGGRPAHならではの楽しい演出である。毎年SIGGRAPHに参加して、「いつか、これをコラムの中で紹介したら、面白いかも」と企んでいた事もあり、今回はそれを実行に移してみる事にしよう。

まずはこちらから。

問題:ドリームワークスが初めて制作した、長編アニメーション映画の第1作目は、何でしょうか?

正解:1998年10月2日に全米公開されたアニメーション映画「アンツ」でした。

備考:各キャラクターのフェイシャル・アニメーションの完成度の高さに驚いた事が記憶に残る映画である。当時、ピクサーの映画「バグズ・ライフ」が1カ月程後の11月に公開され、「虫をテーマにしたアニメーション映画」が同じ年に2本重なった事も話題となった。


問題:ピクサーがSIGGRAPH機器展のレンダーマンのブースで配っていたノベルティグッズ、ぜんまい式の「歩くティーポット(Walking Teapot)」が初めて配布された年は、いつでしょうか?

正解:ギフトとして参加者に提供されたのは、2003年のSIGGRAPHが最初でした。

備考:SIGGRAPHの機器展会場で、と~んでもなく長い列が出来ていて、並んでいる人に「この列、何ですか?」と聞くと「歩くティーポットだよ」と。で、すかさず列に加わる。すると、また別の通りすがりの人から「何で並んでるの?」「歩くティーポットですよ」「並ばないと♪」このチェーンリアクションによって列が延々と長くなり…数量限定なので、どこで打ち切られるか人生と運命を掛けたハラハラドキドキ感が半端なく、SIGGRAPHの楽しい風物詩であった。
タイプが毎年異なり、通な人(?)は毎年並んで全種を制覇していると聞く。近年は、ピクサーがレンダーマンの機器展ブースを持たなくなったので、このノベルティグッズはレンダーマンのユーザー会などで入手可能なようである。
このレンダーマンのティーポット、最近はツイッターのアカウントもあるらしい。


知っていましたか?:2DのCGIが映画の中で初めて使用されたのは、1973年に公開されたSFアクション映画「ウエストワールド」でした。また、3DのCGIが初めて採用されたのは、その続編となる1976年公開の映画「未来世界」で、コンピューターを駆使して作られた手および顔面は、かのエド・キャットマル、そしてフレッド・パークによって制作されました。

備考:
日本においては、初2Dはテレビアニメ「子鹿物語」(1983)、CGはJCGLが担当。また初3Dは長編アニメーション映画「ゴルゴ13」(1983)で、トーヨーリンクスがCGを手掛けた。


問題:SIGGRAPH Asiaが初めて開催された年は?

正解:2008年、SIGGRAPH Asiaが初めてシンガポールにて開催されました。


問題:SIGGRAPHがアメリカ国外で開催された事があるって、本当ですか?

正解:本当です。2011年、カナダのバンクーバーにて、初めてアメリカ国外でのSIGGRAPHが"Make it Home"(目標にたどり着こう)という標語で開催されました。機器展では、世界中から140社が出展しました。


知ってましたか?:映画「アリータ:バトル・エンジェル」(2019)の主人公、アリータの目は、片目が900万ポリゴンでモデリングされています。映画「ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔」(2002)での事例と比較してみると、ゴラムは、全身のモデルがたったの15万ポリゴンだったそうです。


知ってましたか?:映画「アベンジャーズ/エンドゲーム」(2019)は、「マーベル・シネマティック・ユニバース」22作目の映画作品です。


問題:ハリウッド映画の主要登場人物に、全編を通してモーションキャプチャーが初めて使用された作品は、何でしょうか?

筆者お詫び:写真が手ブレしてしまいましたー^^

正解:映画「スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス」(1999)で俳優アーメド・ベストが演じたジャー・ジャー・ビンクスは、劇場用長編映画の主要登場人物が、全編を通してモーションキャプチャーを使用して制作された、初めての作品となりました。


知ってましたか?:映画「スパイダーマン: スパイダーバース」(2018)の制作には、140人ものアニメーターが必要とされました。これは、ソニー・ピクチャーズ アニメーション史上、最大のクルー規模(2018年当時の記録)だったそうです。


問題:最初の3Dアニメーション・ソフトウェアは何でしょうか?

正解:最初のフル3Dアニメーション・ソフトフェアは、1990年にヨスト・グループのゲリー・ヨストによってDOS用に開発された、3D Studioでした。

備考:これについては、異論を唱える方も多いと思う。

なぜなら、SGI(Silicon Graphics)のワークステーション上で動作したAlias(Alias Systems Corporation)、Wavefront Technologies等が、アニメーション機能も含めて、80年代から開発&販売されていたからである。

もし、問題文の記述が、「アメリカで開発された、PCで動作する最初の3Dアニメーション・ソフトウェアは、何でしょうか?」と書かれていたとすれば、この答えは正解と言えるだろう(もしかしたら、SIGGRAPHのスタッフさんが、文字数を減らす為に原稿を編集した際に、誤って削り過ぎてしまい、起こった弊害かもしれないが)。

おまけ&余談

SIGGRAPHに70年代、80年代前半から参加されている先輩方は、さらに沢山の楽しいトリビアをお持ちの事と思う。SIGGRAPH開催に合わせて、そういうネタで盛り上がるのも楽しいかもしれない。

さて、下記は筆者個人が知る限りのSIGGRAPHトリビアである。いずれも、日常生活ではほとんど役に立たない情報ばかりだが、SIGGRAPH開催月に併せて、軽~く流し読みして頂ければ幸いである。

SIGGRAPHがたった一度だけ、ラスベガスで開催されたのは

SIGGRAPH 1991。余談だが、「コンベンション開催期間中に、ラスベガスの街にあまりお金が落ちなかったので、その後SIGGRAPHは2度とお呼びが掛からなくなった」という都市伝説を聞いた事があるが、真偽の程は不明である。信じるか信じないかは、アナタ次第です。

Electronic Theaterの名称は、いつから始まったのか

Electronic Theaterは、古くは、
-Film and Video Show(~1983)
-Film and Video Theater(1984~)

という名称だった。ラスベガスで開催されたSIGGRAPH 1991から、より優雅にElectronic Theaterという名称に変更された経緯がある(このコラムの見出し画像にも、その歴史が見てとれる)。

ピクサーの短編「ルクソーJr.」が初めて公開された場は

ダラスでのSIGGRAPH 1986 Film and Video Theaterが、事実上のワールドプレミアとなった。

制作クルーの集合写真が紹介されていた時期も

80年代のFilm and Video Theaterでは、各作品上映前のスレートに、作品名と一緒にチーム集合写真が表示されていた時期がある。制作クルーが少人数だった時代でもあった。

Film and Video Theaterのプログラムには、上映作品の制作に使用したハードウェアが紹介されていた時期があった

80~90年代のFilm and Video Theaterのプログラムには、各作品の制作に使用したハードウェアが掲載されていた。 当時はコンピューターが非常に高額だった背景もあり、どんなマシンを使用したかを掲載する事は、威厳を示す事にも繋がっていたようだ(一例: Cray X-MP, VAX11/750, PDP-11, HP100, IMI/Interactive Machines Inc, Sun 3, Symbolics, Silicon Graphics 3020, Silicon Graphics 4D/340VGX, Personal Iris )。

SIGGRAPH会場内には伝言コーナーがあった

スマホ普及前は、ロビー近くに伝言コーナーがあった。掲示板にメッセージを張り付ける場所だが、ここはいつも盛況で、多くの人が待ち合わせの伝言を張り付けたり、日本からの参加者の方に飲み会の場所と集合時間を伝えるという外交上極めて重要な役割も果たしていた。

日本の大学の研究成果が高く評価された80~90年代

特に80~90年代のFilm and Video Theater、Electronic Theaterでは、論文のみならず日本の大学の研究成果の映像の入選が多く見られ、高く評価されていた。

日本から最初に論文が入選した年は

SIGGRAPH 1974(第1回)

日本から最初にFilm and Video Showに映像作品が入選した年は

SIGGRPH 1982

日本の作品が、Film and Video Theaterのトリを飾った事がある

SIGGRPAH 1989

最高入場者数を記録した年は

SIGGRAPH 1997 参加者48,700人

LAでのSIGGRAPHで使用されるMicrosoft Theaterとは

LA Live敷地内にあるMicrosoft Theaterは、旧Nokia Theater時代からElectronic Theaterの会場として何度か使用されている。ここはAKB48がAnimeExpo2010に併せてコンサートを行った事でもちょっとだけ有名だが、マイケル・ジャクソンがロンドンで予定していたコンサートTHIS IS ITのダンサー・オーディションを実施した会場として同名映画の中に登場し、世界的に知られている。

以前はシャトル・バスが乗り放題だった

以前はシャトル・バスが乗り放題だった。これは各ホテルとSIGGRAPH会場を結ぶ無料のバスで、5種類程のコースがあった。各ホテルで開催されるソフトウェアベンダーのイベントやセミナー、パーティへ行く時や、ランチを食べにいく時などにも大変便利であった。

Electronic Theater会場への専用バスが用意された年もあった。しかし参加者減少で予算がカットされた為か、ある年から自分の宿泊ホテル方面でないと乗れなくなり、近年ではバスそのものが無くなってしまった。悲しい。

デジタル上映化される前のElectronic Theaterの上映設備は壮観だった

  • ビデオ・プロジェクター
  • 各フォーマットのビデオデッキ(U-Matic, BETACAM, D1, D2など)
  • 35mm映写機
  • 70mm映写機(立体上映の場合は2台でシンク)

などがズラリと並び、作品ごとに切り替えていく。プロジェクションニスト(映写技師)の方の緊張と苦労が偲ばれる光景であった。

WRITER PROFILE

鍋潤太郎

ロサンゼルス在住の映像ジャーナリスト。著書に「ハリウッドVFX業界就職の手引き」、「海外で働く日本人クリエイター」等がある。